これは8月2日のNY市場の暴落を受けての事でしょう。
日経平均はドル円為替とNY市場に連動して動くので、2日のNY市場が暴落してから、先物が暴落していました。
ところでこれは喜ばしい事とも言えます。
なぜならこれで大幅に資産格差が減りますから。
実はパンデミック以降、世界の資産格差は大幅に広がりました。
例えばアメリカではアメリカでは家庭資産が中央値で見ても4割以上増加しました。
この原因はコロナパンデミックの間から2024年までに、株価と不動産価格が爆上げしたからです。
アメリカ人は持ち家率が高いし、また株を持っている人の割合も非常に高いので、株価と不動産価格の高騰は、そのまま国民的な資産価格の高騰になるのです。
何でパンデミック時に株価が上がったのか?
アメリカのコロナ禍は日本よりはるかに深刻で、人口比で死者も感染者も二桁多く、その為、ロックダウンなど厳しい行動制限が課されました。
その為、多くのアメリカ人は旅行や外食、パーティはもとより、不急不要の買い物もできない状態に追い込まれました。
これだとアメリカのGDPの7割を占める個人消費は激減するし、満足な経済活動は不可能でした。
実際、この状況を見越してコロナパンデミックが始まった時は、株価は大幅に下がりました。
しかし下がった所で、富裕層の買いが入り、更にこれまで株式投資をしたことのなかった人達が、ネットで株式投資を始めたので、株価は直ぐに元に戻りました。
この株式投資初心者達の投資原資は、アメリカ政府が気前よくばら撒いた給付金や失業保険金だったようです。
特に給付金は仕事を喪わない人々にも、与えられたので貰い得だった人達も多いのです。 この給付金は総額単身で総額3200ドル、1ドル150円換算では48万円にもなりました。
で、コロナパンデミックのロックダウンで家に閉じ込められた人達の一部は、使い道のないお金で株式投資を始めたのです。 だって外出もできないのだから、お金の使いようもなかったのです。
今は株式投資もネットだけで可能ですから、自宅で無聊をかこつ人々にとっては、恰好の娯楽にもなったのでしょう。
それでコロナパンデミックが終わる頃には、株価はコロナパンデミック以前より上がっていました。
そしてパンデミックが終わると、人々は一気に消費を増やしました。 コロナパンデミックの間、我慢していた旅行や外食、買い物などを盛大に再開しましたのです。
これがまた企業の収益を増やし、株価を上げました。
更にその後、AIバブルが始まりました。
イヤ、だっていくらアメリカ政府が気前よく給付金をばらまいたからと言っても、全てのアメリカ人が給付金を株式投資に突っ込んだわけじゃなし・・・・・。
それはそうなんですけどね。
でも株価って市場に売買する人の間だけで決まるんですよね。
現実に市場で売買されている株は、例えばテスラでもアップルでもそれぞれの会社の株式のごく一部です。
だからそこに突然、初めて投資をするから株を買いたいと言う人が大勢現れて、「買い」の注文を出したら、市場での株価って一気に上がるんです。
しかし市場での売買価格が上がれば、株を持っているだけで売る気のない人も気分が良いですよね?
だって株価が上がっている時は、持ち株を売れば、儲かるのですから。
またその人の金融資産を計算するときは、計算するときの持ち株の市場価格で計算しますからね。
だから株価が上がると株を持っている人達は、自分の資産が増えた気分になって、喜んで消費します。
また株が上がっているうちに、株を売って家を買う人も増えます。
昔から資産は貯金、株、不動産とそれぞれ3分の1ずつに分散して持つのが理想と言われます。 日本人はしかし株式投資を非常に嫌い、一方持ち家に執着する人が多いのですが、アメリカ人の場合はこの3分割を実践している人が多いので、株が上がって資産の中で株が占める割合が大きくなりすぎると、これを売却して不動産などに変える人も多いのです。
と、言うわけでコロナパンデミックから2024年年初までにアメリカでは株価と不動産価格が爆上げし、その為アメリカ人の資産が4割増えたのです。
しかしこれは逆に言えば、株も不動産も持っていない人は、資産が全く増えなかった事になります。
そうなるとコロナパンデミックから2024年の年初までの4年程の間に、全く資産が増えない人と、資産が4割増えた人ができる事になります。
つまりこれだけで資産格差が4割大きくなってしまったわけです。
富裕層の場合はもっと有利に資産を増やせました。
前記のようにコロナパンデミックで株が下がった時、まず富裕層の人達が株を買い始めました。
多くの人がコロナパンデミックに怯え、将来を悲観しているとき、そして株価が下がり続ける時に株を買うというのは、非常にリスキーに思えます。
しかし富裕層の場合は、元々持っている資産額が大きいので、それほどリスクを恐れる必要はありません。
そもそも彼等だってそんなにリスクを取る気もないのです。 だから自分の資産のごく一部、1%とか5%とかで株を買ったわけですが、それでも母数が大きいの1%でも5%でも十分巨額の投資をできるのです。
そして巨額の投資をすれば、リターンも大きいのです。
このリターンと言うのは、コロナパンデミック時の株価下落時に買った株の値上がり分だけではありません。 むしろこれはごく一部です。
一番大きいのはこれらの投資が呼び水になって、株式市場が好転し、株価が上がった事による利益です。
富裕層は元々多額の株式や不動産を持っているので、株式市場が好転し、それにつられて不動産市場も活況になると、保有資産の全体が爆上げすることになります。
だから経済が好調で株が上がると、資産格差は増えていくのです。
しかしこれは逆に言えば、株が下がれば資産格差は減っていくのです。
これは結局、株も不動産も、その時の経済状況で売買の状況が決まり、金融資産も不動産もその時の売買価格にから算定している事によります。
そしてこれを考えると「金持ちはより金持ちに、貧乏人はより貧乏に」と言う聖書の言葉も、「金持ちを貧乏にしても、貧乏人が金持ちにはなりません」と言うマーガレット・サッチャーの言葉も真実だとわかります。
これまでの解説から「金持ちはより金持ちに」と言うはわかると思います。
一方現実にはコロナパンデミックから2024年初頭までに、「貧乏人はより貧乏に」なったわけではありません。
だってコロナパンデミック時、アメリカ政府はホントに気前よく給付金や失業保険をばらまいたのです。 給付金の額は前に書きましたが、失業保険も多額でした。
普通失業保険で給付される金額は、失業前の給与の7~8割なのですが、この時は給与に関係なく一律週に600ドルでした。 これは低賃金労働者の賃金を遥かに超える額です。
しかもコロナパンデミック時は外出も満足にできなかったので、これを愚かしく浪費するなどと言う事は不可能でした。
またコロナパンデミックが終わってからは猛烈なインフレにはなったけれど、一方その分凄い好景気からの人手不足になり、労働者の賃金も爆上げしました。
つまり資産のない人、低賃金労働者も失業者も、コロナパンデミックと時に収入が減ったわけではありません。 それどころか余分な浪費ができなかったことで、全米でコロナ貯金と呼ばれる貯金が積みあがったほどでした。
でも人間の心理としては他人が資産を増やし、自分が資産を増やせないと「自分が貧乏になった」と言う意識を強く持つのではないでしょうか?
また金持ち・貧乏というのは相対的な概念なので、貧乏な人の所得や資産が減らなくても、所得の上がった人、資産が増えた人が増えると、所得の増えなかった人、資産の増えなかった人達は、「貧乏」な人と言う事になるのです。
だから「金持ちはより金持ちに、貧乏人はより貧乏人」と言うは、心理的には完全にその通りなのです。
一方、「金持ちはより金持ちに」のメカニズムを考えると、「金持ちを貧乏にしても、貧乏人が金持ちにはなりません」と言うのも真実としか言えません。
だって左翼が「格差をなくすため」にと考える事は、金持ちから収奪することだけなのです。
金持ちへの課税を強化したり、更に革命を起こして財産を接収したりです。
しかしそうなると株価や不動産価格はどうなるでしょう?
左翼が権力を握り、個人資産を接収したり、企業を国有化するようになったら、株も不動産も無価値になります。 そしてそのような国の通貨も無価値になるので、貯金も意味がなくなります。
つまりどんな金持ちの資産でも、その資産価値は速攻でゼロになるのです。
だから「金持ちを貧しくする」ことは十分可能です。
しかし資産価値がゼロになってしまうのですから、金持ちから奪い取った資産を貧乏人に分け与える事などできません。 分け与えるべき資産は雲散霧消するのですから。
勿論、共産主義の理論では、企業や農地などの生産手段を国有化することで、人民に富を分け与える事ができるという話になっています。
しかしそれが上手く行くのは、接収した企業や農地を、共産主義政権が元の持ち主同様にうまく運営できた場合のみです。
資本主義国家でも国有企業や公営企業と言うのは結構あるのですが、上下水道や学校など最初から非常に公共性が高い物以外は、殆ど経営破綻しています。
天下りの役人達の食い物になってしまった物も少なくなくありません。
また美術品とか豪邸とかを接収してもあまり意味はありません。 勿論、文化財としての価値はありますが、文化財としての保存には相応のコストがかかります。
また売却も容易ではありません。 なぜなら金持ちから富を収奪した後では、美術品や豪邸を買える人がいなくなるからです。
だから富として分配することは殆ど不可能なのです。
これを考えるとソ連をはじめ共産圏が崩壊した理由も納得できます。
例えば現在のウクライナは世界的な穀倉地帯です。
しかし2022年からのロシアのウクライナ侵略戦争でウクライナの国土は相当部分が戦場になっています。 それでもウクライナは海上ドローンと対艦ミサイルでロシアの黒海艦隊を始末してから、順調に穀物輸出を続けています。 トルコや北アフリカ諸国はこのウクライナの穀物に頼っているのです。
しかしソ連時代の末期、ソ連は穀物輸入国でした。 ソ連は石油を輸出して、アメリカやカナダから穀物を輸入していたのです。 それでソ連国民の食糧を賄っていたのです。
それなのにソ連崩壊後は、ウクライナもロシアも穀物生産を拡大しました。 そして現在その穀物が北アフリカや中東の人々を養っているのです。
ロシアもウクライナもソ連崩壊後、政治はグチャグチャだったのですが、それでも結局共産主義よりはましだったわけです。
格差の拡大は問題ですが、しかし格差の正体を考えると、格差の解消と言うのは、難しいでしょう。
しかし格差の拡大が問題と騒ぐ人達は、そもそも格差の正体を知っているのでしょうか?
知って格差の拡大を憂いているなら、今回の株価暴落を「格差縮小」と喜ぶべきなのですが?