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2024-08-05 12:57

株価暴落!! 格差縮小万歳!!

 日経平均は今日も暴落を続けています。
 これは8月2日のNY市場の暴落を受けての事でしょう。
 日経平均はドル円為替とNY市場に連動して動くので、2日のNY市場が暴落してから、先物が暴落していました。

 ところでこれは喜ばしい事とも言えます。
 なぜならこれで大幅に資産格差が減りますから。

 実はパンデミック以降、世界の資産格差は大幅に広がりました。
 例えばアメリカではアメリカでは家庭資産が中央値で見ても4割以上増加しました。
 この原因はコロナパンデミックの間から2024年までに、株価と不動産価格が爆上げしたからです。
 アメリカ人は持ち家率が高いし、また株を持っている人の割合も非常に高いので、株価と不動産価格の高騰は、そのまま国民的な資産価格の高騰になるのです。

 

 何でパンデミック時に株価が上がったのか?
 アメリカのコロナ禍は日本よりはるかに深刻で、人口比で死者も感染者も二桁多く、その為、ロックダウンなど厳しい行動制限が課されました。
 その為、多くのアメリカ人は旅行や外食、パーティはもとより、不急不要の買い物もできない状態に追い込まれました。 
 これだとアメリカのGDPの7割を占める個人消費は激減するし、満足な経済活動は不可能でした。

 実際、この状況を見越してコロナパンデミックが始まった時は、株価は大幅に下がりました。
 しかし下がった所で、富裕層の買いが入り、更にこれまで株式投資をしたことのなかった人達が、ネットで株式投資を始めたので、株価は直ぐに元に戻りました。

 この株式投資初心者達の投資原資は、アメリカ政府が気前よくばら撒いた給付金や失業保険金だったようです。
 特に給付金は仕事を喪わない人々にも、与えられたので貰い得だった人達も多いのです。 この給付金は総額単身で総額3200ドル、1ドル150円換算では48万円にもなりました。
 で、コロナパンデミックのロックダウンで家に閉じ込められた人達の一部は、使い道のないお金で株式投資を始めたのです。 だって外出もできないのだから、お金の使いようもなかったのです。
 今は株式投資もネットだけで可能ですから、自宅で無聊をかこつ人々にとっては、恰好の娯楽にもなったのでしょう。
 それでコロナパンデミックが終わる頃には、株価はコロナパンデミック以前より上がっていました。

 そしてパンデミックが終わると、人々は一気に消費を増やしました。 コロナパンデミックの間、我慢していた旅行や外食、買い物などを盛大に再開しましたのです。
 これがまた企業の収益を増やし、株価を上げました。
 更にその後、AIバブルが始まりました。

 イヤ、だっていくらアメリカ政府が気前よく給付金をばらまいたからと言っても、全てのアメリカ人が給付金を株式投資に突っ込んだわけじゃなし・・・・・。
 それはそうなんですけどね。
 でも株価って市場に売買する人の間だけで決まるんですよね。
 現実に市場で売買されている株は、例えばテスラでもアップルでもそれぞれの会社の株式のごく一部です。 
 だからそこに突然、初めて投資をするから株を買いたいと言う人が大勢現れて、「買い」の注文を出したら、市場での株価って一気に上がるんです。

 しかし市場での売買価格が上がれば、株を持っているだけで売る気のない人も気分が良いですよね?
 だって株価が上がっている時は、持ち株を売れば、儲かるのですから。
 またその人の金融資産を計算するときは、計算するときの持ち株の市場価格で計算しますからね。 
 だから株価が上がると株を持っている人達は、自分の資産が増えた気分になって、喜んで消費します。
 また株が上がっているうちに、株を売って家を買う人も増えます。

 昔から資産は貯金、株、不動産とそれぞれ3分の1ずつに分散して持つのが理想と言われます。 日本人はしかし株式投資を非常に嫌い、一方持ち家に執着する人が多いのですが、アメリカ人の場合はこの3分割を実践している人が多いので、株が上がって資産の中で株が占める割合が大きくなりすぎると、これを売却して不動産などに変える人も多いのです。
 と、言うわけでコロナパンデミックから2024年年初までにアメリカでは株価と不動産価格が爆上げし、その為アメリカ人の資産が4割増えたのです。

 しかしこれは逆に言えば、株も不動産も持っていない人は、資産が全く増えなかった事になります。
 そうなるとコロナパンデミックから2024年の年初までの4年程の間に、全く資産が増えない人と、資産が4割増えた人ができる事になります。 
 つまりこれだけで資産格差が4割大きくなってしまったわけです。

 富裕層の場合はもっと有利に資産を増やせました。
 前記のようにコロナパンデミックで株が下がった時、まず富裕層の人達が株を買い始めました。
 多くの人がコロナパンデミックに怯え、将来を悲観しているとき、そして株価が下がり続ける時に株を買うというのは、非常にリスキーに思えます。
 しかし富裕層の場合は、元々持っている資産額が大きいので、それほどリスクを恐れる必要はありません。
 そもそも彼等だってそんなにリスクを取る気もないのです。 だから自分の資産のごく一部、1%とか5%とかで株を買ったわけですが、それでも母数が大きいの1%でも5%でも十分巨額の投資をできるのです。
 そして巨額の投資をすれば、リターンも大きいのです。

 このリターンと言うのは、コロナパンデミック時の株価下落時に買った株の値上がり分だけではありません。 むしろこれはごく一部です。
 一番大きいのはこれらの投資が呼び水になって、株式市場が好転し、株価が上がった事による利益です。
 富裕層は元々多額の株式や不動産を持っているので、株式市場が好転し、それにつられて不動産市場も活況になると、保有資産の全体が爆上げすることになります。

 だから経済が好調で株が上がると、資産格差は増えていくのです。
 しかしこれは逆に言えば、株が下がれば資産格差は減っていくのです。
 これは結局、株も不動産も、その時の経済状況で売買の状況が決まり、金融資産も不動産もその時の売買価格にから算定している事によります。

 そしてこれを考えると「金持ちはより金持ちに、貧乏人はより貧乏に」と言う聖書の言葉も、「金持ちを貧乏にしても、貧乏人が金持ちにはなりません」と言うマーガレット・サッチャーの言葉も真実だとわかります。
 
 これまでの解説から「金持ちはより金持ちに」と言うはわかると思います。
 一方現実にはコロナパンデミックから2024年初頭までに、「貧乏人はより貧乏に」なったわけではありません。
 だってコロナパンデミック時、アメリカ政府はホントに気前よく給付金や失業保険をばらまいたのです。 給付金の額は前に書きましたが、失業保険も多額でした。
 普通失業保険で給付される金額は、失業前の給与の7~8割なのですが、この時は給与に関係なく一律週に600ドルでした。 これは低賃金労働者の賃金を遥かに超える額です。 
 
 しかもコロナパンデミック時は外出も満足にできなかったので、これを愚かしく浪費するなどと言う事は不可能でした。 
 またコロナパンデミックが終わってからは猛烈なインフレにはなったけれど、一方その分凄い好景気からの人手不足になり、労働者の賃金も爆上げしました。
 つまり資産のない人、低賃金労働者も失業者も、コロナパンデミックと時に収入が減ったわけではありません。 それどころか余分な浪費ができなかったことで、全米でコロナ貯金と呼ばれる貯金が積みあがったほどでした。

 でも人間の心理としては他人が資産を増やし、自分が資産を増やせないと「自分が貧乏になった」と言う意識を強く持つのではないでしょうか?
 また金持ち・貧乏というのは相対的な概念なので、貧乏な人の所得や資産が減らなくても、所得の上がった人、資産が増えた人が増えると、所得の増えなかった人、資産の増えなかった人達は、「貧乏」な人と言う事になるのです。
 だから「金持ちはより金持ちに、貧乏人はより貧乏人」と言うは、心理的には完全にその通りなのです。

 一方、「金持ちはより金持ちに」のメカニズムを考えると、「金持ちを貧乏にしても、貧乏人が金持ちにはなりません」と言うのも真実としか言えません。
 だって左翼が「格差をなくすため」にと考える事は、金持ちから収奪することだけなのです。
 金持ちへの課税を強化したり、更に革命を起こして財産を接収したりです。 
 しかしそうなると株価や不動産価格はどうなるでしょう?
 
 左翼が権力を握り、個人資産を接収したり、企業を国有化するようになったら、株も不動産も無価値になります。 そしてそのような国の通貨も無価値になるので、貯金も意味がなくなります。
 つまりどんな金持ちの資産でも、その資産価値は速攻でゼロになるのです。
 だから「金持ちを貧しくする」ことは十分可能です。  
 しかし資産価値がゼロになってしまうのですから、金持ちから奪い取った資産を貧乏人に分け与える事などできません。 分け与えるべき資産は雲散霧消するのですから。

 勿論、共産主義の理論では、企業や農地などの生産手段を国有化することで、人民に富を分け与える事ができるという話になっています。
 しかしそれが上手く行くのは、接収した企業や農地を、共産主義政権が元の持ち主同様にうまく運営できた場合のみです。
 資本主義国家でも国有企業や公営企業と言うのは結構あるのですが、上下水道や学校など最初から非常に公共性が高い物以外は、殆ど経営破綻しています。
 天下りの役人達の食い物になってしまった物も少なくなくありません。 

 また美術品とか豪邸とかを接収してもあまり意味はありません。 勿論、文化財としての価値はありますが、文化財としての保存には相応のコストがかかります。
 また売却も容易ではありません。 なぜなら金持ちから富を収奪した後では、美術品や豪邸を買える人がいなくなるからです。 
 だから富として分配することは殆ど不可能なのです。

 これを考えるとソ連をはじめ共産圏が崩壊した理由も納得できます。
 例えば現在のウクライナは世界的な穀倉地帯です。
 しかし2022年からのロシアのウクライナ侵略戦争でウクライナの国土は相当部分が戦場になっています。 それでもウクライナは海上ドローンと対艦ミサイルでロシアの黒海艦隊を始末してから、順調に穀物輸出を続けています。 トルコや北アフリカ諸国はこのウクライナの穀物に頼っているのです。

 しかしソ連時代の末期、ソ連は穀物輸入国でした。 ソ連は石油を輸出して、アメリカやカナダから穀物を輸入していたのです。 それでソ連国民の食糧を賄っていたのです。
 それなのにソ連崩壊後は、ウクライナもロシアも穀物生産を拡大しました。 そして現在その穀物が北アフリカや中東の人々を養っているのです。
 ロシアもウクライナもソ連崩壊後、政治はグチャグチャだったのですが、それでも結局共産主義よりはましだったわけです。

 格差の拡大は問題ですが、しかし格差の正体を考えると、格差の解消と言うのは、難しいでしょう。
 しかし格差の拡大が問題と騒ぐ人達は、そもそも格差の正体を知っているのでしょうか?
 知って格差の拡大を憂いているなら、今回の株価暴落を「格差縮小」と喜ぶべきなのですが?
 
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2023-12-25 12:21

バブル崩壊雑感 クルーグマンの分析

 日本のバブル崩壊とバブル以降の経済についてのポール・クルーグマンの分析が以外でした。

 日本に実際に起きたことを見ると、多くの人が想像するほど壊滅的なことではありませんでした。よく耳にする話は、こういうものです。80年代末期、日本は途方もない株と不動産のバブルを経験した。それは最終的に崩壊し、経営難に陥った銀行と過剰な企業債務が残り、それが長い景気低迷につながった――。

 もちろんこのストーリーには幾分かの真理がありますが、日本の相対的な衰退の最も重要な要素が抜けています。それは、日本の生産年齢人口が90年代半ばから、かなりの速さで下り坂になっているということです。

 しかし、日本の人口動態と比べて、日本の経済の落ち込みはそこまでひどくありません。人口動態に合わせて調整すると、日本は著しい成長を遂げています。1人当たりの実質所得は45%も上昇しているのです。

 以上がダイアモンドオンライン、12月23日のポール・クルーグマンの未来予測!「中国経済は日本のバブル崩壊よりもひどい状態になる」でのクルーグマンの発言です。
 因みにこの記事の本題はバブル崩壊後の中国経済に関するクルーグマンの予想ですが、その前振りに日本のバブル崩壊後の経済に関して説明しているのです。

 興味深いのは「80年代末期、日本は途方もない株と不動産のバブルを経験した。それは最終的に崩壊し、経営難に陥った銀行と過剰な企業債務が残り、それが長い景気低迷につながった――。」と言うバブル崩壊後の日本経済についての定説をほぼ全否定している事です。

 バブル崩壊は1989年です。 1989年の大納会で日経平均は史上最高の38957円44銭を付けました。
 しかし年明けから一気に急落しました。
 ワタシも幾ばくか株を持っていたので、89年までの熱狂とその後の急落については随分と振り回されました。

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 日経平均推移

 この日経平均急落をきっかけにそれまで熱に浮かされていたように上がり続けていた不動産価格も下がり始めました。
 それでも最初の数年間は、楽観ムードで「下がってもまた上がる」「今が買いのチャンス」となどと考える人達も多かったのです。
 少なくともその後30年も、日経平均が3万円を超えられないなんて誰も想像していませんでした。

 むしろ株や土地が下がり始めた時は、マスコミがこぞって財務省や日銀の超緊縮政策を絶賛していました。 当時の日銀総裁は「平成の鬼平」と絶賛されていました。
 尤もバブル崩壊直後は、まだ失業率もバブル期よりも低く、賃金も上がり続けたので、株や不動産に投資していない人達にすれば、何の問題もなかったのです。

 しかし実はこれがバブル崩壊後の経済再生や、その後続いた低成長の元凶でした。 景気回復が遅れるにつれて、失業率が上がり、そして日本が戦後経験したことのなかった新卒者の就職難と言う事態が起きました。
 ワタシはこれが一番悲惨だったと思います。

 それでもこうした日本経済の不振は、クルーグマンに言わせると「それほど壊滅的ではありませんでした。」と言うのです。
 彼はバブル後の日本経済の人口動態から説明しています。

日本の生産年齢人口が90年代半ばから、かなりの速さで下り坂になっているということです。

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 実際、日本の人口動態を見ると、1995年から生産年齢人口が減少に向かい、一方高齢者人口が増えていきます。
 人口動態は経済と違って非常に正確に予想できます。 20年後の20歳の人の人口は、現在のゼロ歳児の人口とほぼ同数です。 同様に20年後の40歳の人の人口は、現在の20歳の人の人口とほぼ同数なのですから。
 それでバブル期には「将来若年労働者を確保できない」と言って必要以上に新卒者を採用する企業も多数ありました。 

 一方、将来の高齢化社会に強い不安もありました。
 ワタシ自身、当時は「高齢者が人口の三分の一を占める社会と言うのは地獄ではないか?」と思いました。
 しかし実際に現在社会はその状況で、しかもワタシ自身が高齢者なのですが、地獄とは感じていません。

 そして何より驚いたのは「人口動態に合わせて調整すると、日本は著しい成長を遂げています。1人当たりの実質所得は45%も上昇している」と言う指摘です。
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 実質賃金の国際比較は為替の問題があって、結構面倒です。 しかし為替は各国の金利政策で大きく変わります。 だから通貨の違う国との比較って凄く難しいのです。
 それでもやはり日本人の実質賃金がこの30年間、全く上がらなかったと言う事は一貫して言われてきました。

 ところがクルーグマンは人口動態から考えると、45%も上がったと言うのです。
 しかし単純計算でも、生産年齢人口比率がバブル期には70%、現在は50%です。 労働者が3割減って、国民全体での所得水準がほとんど変わっていないのは、つまりその分労働者の所得が増えている事でしょう?

 そしてこれを考えると、日本はバブル崩壊後の対応を誤り、その後も随分色々な失敗をしたけれど、それでも結構上手くやってきたと言う事でしょう?
 だから老人ばかり増える状態でも、格別貧困化もせず、バブル期とそう変わらない生活水準を維持しているのです。

 そしてこれを考えると、欧州の移民政策は失敗だったと言えます。
 欧州諸国も皆少子化が深刻化して、若年労働力の不足に悩んだのですが、彼等はこれをアッサリ移民で解決しました。 それで労働人口は移民で維持できました。
 だからその分経済成長していました。
 しかし治安の悪化や混乱で遂にもう移民を入れない、「難民」を自称して押し寄せる移民達は、ルワンダやアルバニアなど国外に移送すると言い出しています。

 日本は移民の受け入れを拒否してきたので、GDPも国民所得も伸びなかったのですが、しかし国民の生活の質は維持出来てきたのだし、移民に寄る治安悪化もなかったのですから。

 因みにこの日本の状況を見ると、有料で読めない中国のバブル崩壊の問題が想像できます。
 実はワタシは2009年に中国の人口動態についてエントリー(中国の明るい未来)したことがあったのです。
 この時期は中国経済は絶好調で、バブル崩壊なんて全く考えていなかったのですが、しかし今この人口動態が極めて深刻な問題になってきたのです。

 中国の高齢化率は現在15%です。 これはバブル期の日本と同じです。
 そして中国の生産年齢人口は既に減少に転じており、一人っ子政策の為に、そのペースは日本より遥かに早くなります。

 こうなると人口動態だけから考えても、クルーグマンは「中国のバブル崩壊は日本よりひどくなる」と言う理由が想像できます。




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2023-02-02 13:13

生活保護カワイソウ物語 凍える母子

 毎度お馴染み、生活保護カワイソウ記事ですが、今年もまた出ました。
 毎度毎度、同じ事を書いているのですが、しかしこの記事は札幌市を基準に書いているので、ワタシも札幌市民としての疑問を書いていきます。

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2023年1月29日 幻冬舎

――寒すぎて、もう死にそう

今回の寒波で、まるで冷蔵庫のような室内。ストーブをつけたいが、灯油代が高くて、贅沢ができない……そんな悲痛の叫びは、日々奮闘するシングルマザーから。生活保護を受けているものの、生活は苦しく、そしてこの物価高。生きていくのも精一杯だといいます。

たとえば30代後半女性・パートタイマーの平均月収は推定11万2,249円(厚生労働省『令和3年賃金構造基本統計調査』より算出)。手取りにすると9万円ほどです。

そして仮に北海道・札幌市だとすると、最低生活費(2022年4月時点のデータ)は、小学生の子どもが1人いる場合で18万9,890円。その内訳は、「生活扶助基準額」として11万7,900円、「母子加算」として1万8,800円、「児童養育加算」として1万0,190円、「住宅扶助基準額」として4万3,000円。住宅扶助基準額は持ち家の場合支給されず、また実際の家賃のほうが低い場合は、実際の家賃額が支給されます。

基本的に生活保護費は、最低生活費と収入の差額が支給されますので、月々9万円強、手にすることになります。

最低生活費は、その地で生きていくために必要な最低金額。昨今の物価高は想定されていませんから、生活は日に日に厳しさを増します。実際にこの親子のように、灯油ストーブなどで暖をとるのを我慢して、家の中でもコートに毛布、などで耐え忍んでいる、というケースも珍しくないといいます。

最近は「異次元の少子化対策」に代表されるように、日本の先々について議論が交わされています。しかしそんな遠い未来でなく、いま、まさに「生きるのも大変」という人たちも。未来はもちろん「いま」にもクローズアップし、議論、さらには実行をお願いしたいものです。

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 まずこの母子の収入ですが、パートの手取りは9万円ですが、それでは生活できないので生活保護を受給しています。
 所得はあるけれど、それが少なくて生活保護を受給する場合、無収入で生活保護を受給する場合との差額が支給されます。
 だから結局この母子の収入は記事の通り、毎月18万9890円になります。

 でも実はこの他に、冬季加算と言う物があります。 これは冬の間、生活保護費に加算されて支払われます。 金額と期間は地域、また家族構成により異なります。
 この記事に合わせて、札幌で母子二人なら、10月から4月まで毎月18140円が、毎月加算されます。

 だから母子10月から4月まで母子の収入は208030円になります。
 これは母子二人が生活するには十分な額ではありませんか?

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 では札幌で灯油代はいくらかかるのでしょうか?
 世帯平均では年1000リットル消費すると言われます。 但し、灯油暖房の家は、給湯も灯油にするので、夏の間に風呂その他の給湯で消費する分も含まれます。
 現在の灯油は1リットル120円程ですから、年間12万円かかる事になります。

 一方冬季加算は10月から4月まで7カ月支給されますから、年間では12万6980円になります。 
 つまり現在の灯油価格で考えても、冬季加算分だけで、平均的な一世帯分の灯油代を全部賄える事になります。

 しかし現実に母子家庭が、毎月2万円の灯油代を必要とするとは思えません。
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 ワタシの1月分の灯油の請求書を見ると、使用料は68.8リットルで、8320円でした。 
 我が家は50.22㎡で、一人暮らしにはかなり広い上、ワタシがほぼ一日家にいるのでストーブを点けている時間も長くなりますが、日当たりが良い上集合住宅なので、これで済んでいます。
 
 ストーブは自動温度調節で、22℃に設定していますが、点けっぱなしにするとやっぱり温度が上がりすぎるので、1~2時間ごとに消しています。 
 また給湯も灯油なので、お風呂や洗い物に必要な灯油代もこれに含まれています。 
 
 他家の情報を調べていたら、賃貸マンション、3LDK、80㎡、家族4人で月使用料が88~114リットルと言うのが出てきました。 これだと毎月12000円前後かかると言う事になります。

 因みに札幌の場合、賃貸の集合住宅には集中暖房でない場合、ストーブが備え付けになっています。 灯油は各戸専用のタンクを用意している場合と、大型のタンクから各戸に配管してある場合があります。 
 現在我が家は配管式なので、毎月の使用料が正確にわかるのです。

 ついでに戸建ても調べたら、4LDK で4人家族、410リットルと言うのが出てきました。 戸建てだと暖房や給湯の他にも、融雪に灯油を使う所もあるので、使用料が跳ね上がります。

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 でもこのサイズの住宅は、母子二人なら生活保護受給者でなくても、必要ないでしょう?

 だから母子家庭なら、我が家と同様、厳冬期の1月、2月でも月1万円前後の灯油代があれば十分なはずです。
 さらに言えば、北海道でストーブを焚き始めるのは10月ごろからで、4月までは絶対に必要です。 これは冬季加算の期間と重なります。
 しかし灯油の使用量は1月、2月がピークで12月でも1月分の7割程度、11月分だと1月分の半分程度です。 そして三月、四月とまた、同様のペースで減っていきます。
 だから冬季加算の大部分は灯油代以外に使えるのです。

 しかも、昨年岸田政権は住民税非課税世帯に10万円の給付金を支給しています。
 その上、札幌市も一世帯当たり、6万円の給付金を支給しています。

 だから灯油の値上がり分は勿論、その他の物価上昇分も十分、賄えるはずです。
 少なくともマトモな人なら母子二人、月20万の収入に、給付金まであれば、凍える事も、飢える事もないはずです。

 こういう事実を全部無視して、生活保護カワイソウ物語を描く人達って一体何でしょうね?

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 ワタシは生活保護制度は、非常に大切な制度だと思っています。
 実はワタシは難病を抱えているので、30代半ばから無職でした。
 そでも父が幾ばくか残してくれたので、何とか暮らしてこられましたが、もし父の遺産がなければ生活保護に頼るしかありませんでした。

 実は現在の日本では、厄介な慢性疾患を抱えて働けなくなり、資産もないとなると、生活保護以外のセーフティネットはありません。
 障害者の場合は、障碍者年金があり、就労支援もそこそこ手厚いのですが、慢性疾患で入退院を繰り返すと言うような場合は絶対絶命になります。
 入退院を繰り返すと結局職場を追われるし、病気持ちでは就職も難しいのです。

 また民間の医療保険では、死亡時や入院時に相当額出る物は多数ありますが、回復の目途の立たない慢性疾患に対応するような物はありません。

 だから資産もなく、家族の援助も期待できない人は、生活保護一択なのです。

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 現在生活保護の予算の半分程が医療費に使われていますが、そもそも難病患者始め、慢性疾患の患者のセーフティネットが生活保護一択だと言う事を考えたら、むしろこれは当然の帰結です。
 
 医療費の割合の高さは、むしろ生活保護受給者の多くが、病人や高齢者など、ホントに働けない人である事を示しています。
 だから色々不正の噂はあっても、基本的にはこの制度は「働けなくて困っている人を助ける」と言う本来の使われ方をしているのです。

 だからこそワタシはこの制度は大事にしていくべきだと思うのです。
 もしこの制度がなくなったら、慢性疾患を抱えた人の多くが自死せざるを得なくなります。

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 そしてそれを思うと、上記の記事のように怪しい「カワイソウ物語」には激しい怒りを感じます。
 事実無根のカワイソウ物語を書いて、彼等は一体何を期待しているのでしょうか?

 お金はあればあった方助かるけれど、納税者が納得しないような要求を続ければ、結局制度そのものが破綻します。
 だから生活保護の問題を書くのなら、正確に支給額を報道して、納税者が納得を得られるようにしていくべきなのです。

 逆に言えば、この手の「カワイソウ物語」を書く人間には、実は生活保護受給者を守る事などとは全く違う目的があるのではないでしょうか?
 


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2021-12-18 11:53

珍説「矢野論文が響かない理由」  

 矢野論文に関して時事通信がすごい珍説を発表しました。
 随分な長文でその上グラフも沢山貼ってあるので、なんか一瞬論理的に見えます。 しかしよく読むと、書いている事に矛盾が一杯です。

 まず時事通信の解説者は、矢野論文は絶対正しい、日本は財政危機にある事を、絶対真理とします。
 その上で、にも拘らず金融市場が矢野論文を無視して、日本国債を買い続け、日本国債の金利が上がるどころか下がり続ける理由を解説しようとするのです。

 それでもこの解説者も「破綻リスクのある債権の金利は上がる」と言う原則は知っているようです。
 そして矢野論文では日本国債は破綻リスクの非常に高い債券なのです。
 ところが日本国債の金利は上がるどころか、下がり続けて遂にはマイナス金利にまでなっている状態なのです。

 マイナス金利ってお金を貸したら、貸した方が借りた方に利息を払うんだから無茶苦茶ですよね?
 でも日本国債はホントにこのマイナス金利でも大人気で、売れたのです。

 これだといくら国債を発行しても日本政府に金利負担はないばかりか、こっちが利息を貰えてしまいます。
 だったらバンバン国債発行して、財政出動すればよいじゃん!!

 しかしそれをそのまま認めては、矢野論文の主旨に反します。
 財務省様に叱られます。

 さあ、困った!!
 
 しかしこの解説者は矢野論文は絶対真理だと言う信仰で思考しますから、これを説明する論理を考えます。
 
 そこで時事通信の解説者は「需給要因」と言う魔法の呪文をひねり出しました。 
 国債の「需要」が沢山ある事が、国債の金利が上がらない「要因」だと言う話です。

 なぜ国債の需要が沢山あるのか?

 それはデフレで国民も企業のリスク回避に専念しているので、国民は貯金に励み、企業は投資を避けて内部留保を増やすからだと言うのです。
 銀行はこうやって集めた貯金の多くを国債の買い入れに回します。 

 なぜなら長期のデフレで、銀行も融資先がなくて、結局集めた貯金で国債を買うしかないと言うのです。
 
 つまりデフレで民間の貯金が、銀行を通じて国債を買い続けていると言うのです。
 これが国債の「需要」になって、政府が「供給」する国債の量を上回るので、国債の金利は下がり続けると言うのです。

 この話を高学歴の解説者が書くとこんなふうになります。  
 
 こうした自己完結的な資金循環が形成されるのは、前述したように経済の長期低迷で将来不安が根強く、国民が預金に励むからだ。通常の金融理論では、金利がゼロになると高い金利を求めて資金は動く。国内に有望な運用先がなければ、金利の高い外貨に流れやすい。ただ、日本人は総じて「リスク回避」の性向が強いため、積極的に外貨リスクを取らない。預金は国内滞留を続けるしかないのだ。

 しかしこれオカシクないですか?
 リスク回避はわかりますよ。
 そして一般国民の貯金も企業の内部留保も、多くは資産形成と言うより、病気や事故に備えて、不況や突発的異変に備えて、急場をしのぐ為の資金ですから、価格変動リスクのあるような資産にはできないのです。

 でもね。
 リスク回避の為に破綻寸前の国の国債買いますか?
 リスク回避が目的なら、破綻の危険のある債権を買っては意味がありません。 
  
 そして現在の日本では、個人でも簡単に外国債券を買ったり、外貨預金をしたりすることができます。
 
 それなのになんでワザワザ、破綻危機にある日本国債を買うんですか?
 日本国債に投資している日本の銀行に日本円で預金しなきゃならないんですか?

 因みにマジに破綻リスクのある国の国債だと10%を超える金利がつきます。 トルコリラ建ての債券なんか今は20%超えの金利がつきます。
 そしてこういう債券も日本で普通に買えます。

 どうせ破綻リスクのある債権を買うなら、金利がマイナスで破綻危機の債券よりも、金利が20%超えの方がマシでしょう?

 また米国債やドル建て債券、ユーロ諸国の国債やユーロ建て債券だって、日本国債に比べたら金利は遥かに高いし、破綻の心配もありません。
 
 小学生のお年玉貯金ならともかく、成人や企業が、まして金融機関がこういう日本国債よりも金利も高く「安全性」も高い国債を買わずに、殆ど金利がゼロで「氷山に向かうタイタニック号のような国債」を買ういう事はあり得ません。

 ホントに自国通貨が破綻の危機に瀕しているような国の場合、国民は皆必死で自国通貨を外貨に換えようとします。 外貨が無理なら換金可能な商品に換えようとするのです。

 ところが日本人は外貨が自由に買えるにも拘らず、敢えて外貨を買うわけでもなく、日本国債を売って外国国債を買おうともしていません。
 
 それどころが日本国債を買う外国人も結構いるのです。 もしホントに日本の財政が危機的ならこうした外国人投資家が円を売り崩して、アジア通貨危機のようなことが起きるはずでしょう?

 ところがコイツラは金利の低さを承知で、安全資産として日本国債を買い込んでいるのです。

 コイツラはホントに銭ゲバなので、他国の破綻なんか知ったことかで、通貨危機でもなんでも仕掛けるんですが、大変不思議な事に、日本には通貨危機が起きた事はありません。

 こういう状況を見たら日本の財政が危機的であると言う話の方がおかしいと考えるべきじゃないでしょうか?
 
 しかしこの解説者は言うのです。

財務省トップが警告しても金融市場が無反応で、金利が上がらない経済の方が財政よりも深刻な病状を抱えていると言えよう。

 どうやらこの解説者にとっては財務省のトップと言うのは、無誤謬の教祖様のようです。
 
 イヤ、だから今の世界で金融市場って日本国内だけじゃないからさ。
 ホントに危機なら、ジョージ・ソロスとか世界中の銭ゲバファンドから襲われるはずだからさ。

 でもそいつらが矢野論文を無視しているってことは、矢野論文はゴミだと言う事でしょう?

 そもそも財務省のトップと言ってもこの人法学士で、商業簿記二級も持っていないし、ましてCDSつまり国債の破綻リスク計算から割り出した国債破綻の保険の保険料の計算もできないんでしょう?

 訂正 矢野事務次官は法学士ではなく一ツ橋大学経済学部卒の経済学士でした。
 経済学部卒なのにクルーグマンやスティグリッツの提言を理解できないと言うのが信じられないので法学士と思ってしまいました。
 ごめんね矢野さん。
 
 そういう人の言う事を有難たがって聞く人って、消費税の控除を受けたり、国有地の払い下げを受けたりしているマスコミ関係者だけじゃないんですか?

 自分の金で投資をしている人が聞くわけないでしょう?
 日本国民の大多数も、いやこの記事を書いている解説者だってホントは聞いていないのではありませんか?

 だってホントに日本の財政が危機的だと思うなら、貯金は全額引き出して、ドル建てとかユーロ建ての債券に換えますよね?
 でもそんなことしてないんでしょう?

 しかしこれが財務省とマスコミのレベルなのです。
 それにしても何でこんなにレベルが低くなってしまったのでしょうか?

 江戸時代、幕府や藩の財政を仕切った勘定方の侍達は和算のエキスパートでした。
 関孝和の公式な身分は、甲府藩勘定方吟味役でした。
 彼等は他の侍からは「算盤侍」と蔑まれましたが、しかし高い計数能力を生かして、暦の編纂など近代以降なら科学者の仕事とされる仕事も行っていたのです。

 当時は所謂科学技術に数学を使う機会は限られていたので、和算のエキスパートは経理に集中したのでしょう。

 ところが明治以降、近代官僚制が確立したら、なぜか法学士が専業主婦の家計簿レベルの「節約第一」で国家の財政を仕切っているのです。
 これはあんまりお粗末ではありませんか?

 一体いつになったらこのお粗末な体制を改革できるんでしょうか?
 江戸時代のように数理のエキスパートを全部財務省に集めるのは無理でも、欧米並みに合理的な財政政策のできる人材を集める事はできないのでしょうか?
 
 しかも彼等は財布の握っている事で、他の省庁まで支配しているのです。 また税務署が財務省の支配下にある事から、マスコミも財務省に逆らえずに、この時事通信の記事のように財務省様絶対正義、国債金利を上げない市場が悪いなんてトンデモ記事まで書くのです。

 日本はバブル崩壊後、経済成長が止まってしまったのですが、しかしコイツラ見ていると、止まって当然じゃないかと思います。
 

  1. 格差と貧困
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2020-09-20 13:54

非正規労働は悪か?

 安倍内閣の内政上の最大の功績は何と言っても雇用を増やしたことでしょう。
 この雇用の内容については飯田 泰之氏が克明に検証しています。

 飯田氏によるとアベノミクスで500万人増えました。 これ以前に日本の雇用が増えたのは2002~2008年のイザナミ景気の150万人ですから、安倍政権はこの3倍以上の雇用を増やしたのです。

 これに対して、野党とパヨクとマスコミは「非正規ばかりだ!!」と非難しています。
 また「実質賃金が下がった!」との非難も盛んです。

 しかしまずリンク先の飯田氏の記事を見て貰えばわかりますが、正社員も約200万人増えています。 そして非正規社員が300万人増えているのです。 2020y09m20d_121220352.jpg

 でも、非正規の方が多いじゃないか!!
 何で正社員を増やせないんだ?
 非正規労働なんか禁止するべきだ!!

 そんな事無理です。

 例えば新卒者の就職内定率は、安倍政権成立以降ドンドン上がり、2016年以降は毎年バブル期以上という状態が続いているのです。

 ワタシもバブルは覚えていますが、この内定率だと大学院への進学その他の理由で就職を希望しない学生以外は誰でも就職できるし、またブラック企業など評判の悪い企業にはいかなくても済むという状態です。

 これは雇用者側からすれば、正社員として雇用したい人間が、全然足りないという事です。

 勿論、正社員になりたいのは新卒者だけではありません。
 しかし安倍政権下では10代から65歳以上まで全ての年齢層で雇用が増え、有効求人倍率も1.8前後を保ち続けました。

 これだと中途退職者でも、能力と意欲のある人なら、誰でも正社員への再就職は可能なのです。
 
 唯一問題なのは就職氷河期に就職に失敗して、非正規職を転々とし続けたまま今も正社員になれない人達です。 
 この人達の境遇は非常に悲惨で、しかしこういう人の正規職への就職というのは非常に難しい問題であるのは確かですが、けれども実はこういう人の数は限られています。

 つまり新卒者や中途退職者など、正社員として働きたい人は、ほぼ全員が職を得ている状態なのです。
 
 一方、日本の労働年齢人口はこの20年来、ドンドン減り続けています。 
 また総人口も2008年をピークに減少し始めました。

 つまり安倍政権下では労働人口も総人口も減るなかで、雇用が500万人増えたのです。
 これを可能にしたのが、非正規労働でしょう?

 正社員は雇用は安定しており、福利厚生などでも有利で、昇進や昇給も期待できるですが、しかしフルタイム労働で、転勤などにも応じるというのが基本です。

 労働年齢人口が減っている中で、こういう人をドンドン増やすというのは、不可能なのです。

 しかし非正規としてなら働ける人はまだたくさんいました。 
 それが主婦や高齢者です。

 実は現在の非正規職の大多数は高齢者と35歳以上の女性で、後は学生など本当のアルバイトなのです。
 
 こういう人たちは家庭の事情や、年金との関係で、必ずしも正規職は望んでいません。
 そういう人たちを非正規として働くようになったことを、「非正規が増えた」と問題にするのはオカシイでしょう?

 実はワタシは2009年の小泉構造改革に関しても同様のエントリーをしています。

 派遣斬り報道への違和感
 
 格差と貧困

 小泉構造改革が格差を生んだ?
  
 2002~2008年のイザナミ景気は実は小泉政権時で、前期のようにこの期間に雇用が150万人増えました。 この時もやはりマスコミと野党とパヨクは、「増えたのは非正規ばかり!!」、そして小泉構造改革が格差を生んだと言って非難したのです。

 しかし実はこの時も非正規も増えたけれど、正社員も増えているのです。
 また増えた非正規の圧倒的多数は、主婦のパートと高齢者の嘱託です。 
 そして国民の所得も全体として増えて、格差も減っているのです。

 この時期から日本の高齢化が本格化して、労働人口の減少が始まったのですが、このころから定年退職した人が嘱託など非正規として働く、主婦のパートが増えるなどして、労働人口の減少を補うようになったのです。

 60代後半、70代を過ぎた人が、誰でも若い時と同じようにフルタイムでハードな仕事はできるわけではありません。
 しかし経験や技術はあるし、勤務時間を短くし、責任の軽い仕事なら十分できるしやりたいという人は沢山いるのです。

 そしてこういう人たちが沢山いて、その人たちをその人たちの体力などに応じて条件で働ける雇用形態つまり非正規雇用があるからこそ、世界最高と言われる高齢化社会であるにもかかわらず、社会の負担も限られた状態を維持できているのではありませんか?

 高度経済成長時代のように55歳で定年退職し、その後は働く事ができない状況だったら大変な事になっていましたよ。
 因みにこのころは定年退職した人が、生きがいを喪って絶望とすると言う話をよく来ました。
 しかしこれが定年の延長と、高齢者雇用の拡充でパタリと消えたのです。

 これは主婦のパートも同じです。
 勿論、正社員として働く意思のある女性をサポートする体制は必要だし、また医師など専門教育を受けた女性が女性であるが故に、家庭を持てない、或いは家庭を持ったら仕事をやめなければならないといのは、本人にも社会にも大きな損出です。

 しかし全ての女性が本当に共働きを望んでいるわけでもないし、母親が傍にいる事がどうしても必要な子供もいるのです。
 その場合、フレキシブルに働けるシステムと言うのは、悪い事ではないでしょう?

 日本の人口推移の現実を考えると、高齢者や子供を抱えた女性など、フルタイム労働の難しい人々も労働力として生かせる非正規労働と言うのは絶対に必要な労働形態で、一概の悪いというのは間違いなのです。

 で、でも就職氷河期は企業が非正規ばかり採用して正社員を取らなかったから、起きたんだろう?
 あれがどんなに悲惨だったか?
 オマイ知らないのか?

 知ってますよ。
 ワタシの甥っ子が就職氷河期に大学を卒業して、その後長い間非正規職を転々として苦労していましたから。
 ホントにかわいそうでした。
 尤も彼もアベノミックスの恩恵か?数年前には正規職を得て、一昨年結婚しましたけど。

 でもね、それで疑問なんですが、それじゃあの時、非正規と言うのがなければ、企業は正社員を沢山採用したと思いますか?

 ワタシはそれはあり得ないと思いますよ。
 だってあのころ企業が新卒者の採用を控えたのは、日本経済全体が大変厳しい状況で、多くの企業が先行きを非常に悲観してたからです。

 この先自社が生き延びる自信も持てなくなったので、将来の為の人材の為に若者を採用して育成するどころではなく、ただもう日々のコストをカットすることで生き延びようとしていたのです。

 だからあのころは新卒者の採用もしなかったけれど、中高年の社員をリストラだてってバンバンやっていたのです。 挙句に多くの技術者が中韓に流れて、更に自分の首を絞める結果になった企業も沢山あります。

 こういう状況では、企業は少し仕事が増えて一時的に人手不足になっても、正社員を増やそうとは思わないでしょう。
 正社員は一回雇えば簡単には解雇できないので、将来を悲観しきっていた当時の企業はできる限り正社員を取りたくなかったのです。
 だから人手が足りなければ非正規だけで済ませようとしたのです。

 しかしこの状況で非正規雇用を禁止されたら、「だったら受注を減らすしかない」と言う事で非正規の雇用さへ辞めてしまったのではありませんか?

 非正規雇用を完全に禁止されたら、正規雇用はほんの少しは増えるでしょう。
 しかしその代わりその何倍もの非正規雇用が失われて、日本全体での雇用は減り、日本全体の経済はドンドン縮小したのではありませんか?

 とりあえず非正規職ならある社会と、非正規職もない完全失業者があふれる社会のどちらが良いんですか?

 悪いのは非正規雇用という形態ではなく、不景気、何より長期にわたるデフレなのです。
 
 デフレが続いて経済縮小するばかりだから、労働市場も買い手市場になって労働条件が悪くなるのです。

 本来なら日本の労働市場は、労働者に有利なのです。
 なぜなら日本は人口減少中で特に労働年齢人口の減少は激しいのです。
 こういう状態であれば、不景気の中で緊縮財政・金融引き締めを続けるような馬鹿な事をしない限り、労働市場は常に売り手市場を維持できるのです。

 だったら正常な政府が正常な経済政策を維持する限りは、労働力不足に対応し、高齢者が働ける非正規と言う労働形態は合理的ではありませんか?

 因みに日本で非正規職を転々として生きる事を選ぶ人が出現したのは実はバブル期です。
 
 バブル期は本当に異常な景気過熱で、「人手不足倒産」が続出しました。
 仕事は受注したけれどその仕事をするはずの従業員に逃げられたりで倒産しちゃんですね。
 だから死に物狂の求人が沢山あったのです。

 それで凄い高賃金の短期雇用が一杯ありました。 
 数か月、或いは数日の間だけの急場の人手を確保するだけだから、正社員にはとても出せないような高給を出すのです。
 だから時給や日給なら、正社員を超えるアルバイトがいくらでもありました。

 例えば居酒屋で、正社員が開店の何時間も前から出勤して開店の準備を済ませると、開店時間にバイトが出勤して、正社員に指示された仕事をして、閉店と共に帰宅します。 けれども正社員はその後、後片付けや翌日の準備等を済ませないと帰れないのです。
 それでも一か月の手取りはバイトの方が遥かに高いなんてこともあったのです。

 だったら馬鹿馬鹿しくて正社員なんかやってられない・・・・・。

 と、言うわけでひたすら非正規職を渡り歩き、楽しく暮らす事を選ぶ人たちが増えたのです。
 こういう人たちのことを当時は「フリーター」と呼びました。

 ワタシはだから菅政権が今後、コロナで落ち込んだ経済の再生に成功して、アベノミックス以上の成功を収めても、正社員はもうあまり増えないと思います。

 それどころかこのまま賃金か非正規職の賃金が上がり、求人が増えれば、令和の「フリーター」が生まれると確信しています。
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