ワタシはこれが大変不思議です。
現在の円安が始まったのは2022年からです。 最初は1ドル140円ぐらいで収まるかと思っていたのですが、これが意外に進んで今日は161円を超えました。
2012年2月には80円割れだったのですから、これと比べると円の価値は半分以下になったと言えます。
しかしそれを「国力低下の為」と言う報道は理解できません。
だって前記のように円安が始まったのは2022年からです。 それが現在161円になっているのは「国力が低下したから」と言うなら、日本の国力はこの2年に激減したことになりますが、しかし円ドルレート以外にそのような兆候はあるのでしょうか?
そもそも円ドルレートは数年単位の短期間では、殆どが日米金利差で決まります。 そして長期間では日米の貨幣流通量で決まります。
「国力」なんて指標は何処にもないのです。
実際、円安が本格化したのは、2022年から欧米でのインフレ率が非常に高くなり、アメリカFRB,ヨーロッパ中央銀行などが、インフレ退治の為に利上げを繰り返したからです。
何でアメリカや欧州の利上げで円安になるのか?
貿易は関係ないのか?
確かに貿易をして、外国と物を売買するには、円をドルなど外貨に交換する必要がありますから、貿易も関係ないわけではありません。
しかし70年代から貿易の為の外貨との交換を、投資の為の外貨の交換量が圧倒するようになりました。 その為、為替レートを左右するのは、貿易ではなく金利差になっていったのです。
そしてこれは逆に言えば、世界中の投資家から見て日本のように国力が安定している国の場合、円を買うか売るかは、金利差だけを考えて、金利の安い方を売り、金利の高い方を買えば済むからです。
勿論、幾ら金利が高くても、トルコとかブラジルのように、インフレ率が60%超え、自国民だって自国通貨の貯金なんかできないような国の場合は、単純に金利差だけで為替レートが決まるわけではありません。
しかし日本とアメリカのような場合を考えると、ホントに単純です。
日本人からすればアメリカの金利が上がったらドル建て債券やドル預金をしたら、円建ての債券や預金をするよりはるかに高い金利がもらえるのですから、円で貯金をしたり円建ての社債などを買う代わりに、ドル建て社債や米国債を買う、或いはドル預金をすれば、金利差分だけ儲かる事になります。
米国債もドル建て社債は個人でも買えるし、また金融機関や年金資金も買っています。
勿論買っているのは日本だけではありません。
それでなくてもドルは基軸通貨なのだし、それで金利が上がるとなると、世界中の投資家が喜んで買うのです。
それでは何でアメリカFRBやヨーロッパ中央銀行が利上げをしたかと言えば、アメリカやヨーロッパのインフレが非常に深刻だったからです。 今だって日本よりはるかに深刻です。
インフレの原因はまずはロシアのウクライナ侵略戦争です。 ロシアのウクライナ侵略で、アメリカもヨーロッパ諸国もロシアに厳しい経済制裁を科しました。
これでアメリカもヨーロッパもロシアからの石油・天然ガスが輸入できなくなりました。 その為エネルギー価格が跳ね上がったのです。
特にヨーロッパ諸国の場合は、天然ガスをロシアからのパイプラインに頼っていたのに、この供給が止まったのですから大変です。
現在の先進国では全ての物の生産には、エネルギーを使用することになるので、エネルギー価格の高騰は全ての物価高騰に繋がります。 勿論、電気代やガス代などの光熱費も跳ね上がります。
更にアメリカの場合、コロナ預金の使用が加わりました。
コロナパンデミックの間、アメリカでは失業保険給付金を大幅に拡大しました。 また一人当たり1200ドルの直接給付金を配布しました。
アメリカのコロナ禍よりはるかに深刻で死者数も日本より二けた多く、そのため大都市の多くでロックダウンが行われました。
それで多くの人が失業する羽目になったのですが、しかし政府が手厚い給付金を出したおかげで、経済的に困窮する人はいませんでした。
それどころかコロナでロックダウン中は、外出もできず、そのため貰った給付金は貯金するか、株など金融商品を買うしかなかったのです。
それでこのパンデミック中に株も上がったし、貯金も増えたのです。
しかし2022年になってコロナパンデミックも完全に終焉すると、このお金を外食や旅行などコロナパンデミック中ずうっと我慢させられてきた娯楽につぎ込むようになりました。
一方中国は延々とゼロコロナ政策を続けるなどしましたから、世界中の流通生産が混乱して物不足になりました。
その為、深刻なインフレになったのです。
そこで2022年からアメリカ連邦銀行・FRBは利上げに乗り出しました。
それでも最初のうちは少し利上げしたらインフレは収まると思われたのですが、現実には利上げしても利上げしても、インフレは収まりません。
その為、アメリカの金利はドンドン上がって、今は米国債で金利5%弱ぐらいです。
一方日本もエネルギー価格上昇の影響でインフレにはなりましたが、それでも元々日銀のインフレ目標だった2%を超えるかどうかというレベルです。
だから今年の4月まで日銀も完全な緩和政策、つまり金利をできる限り低く抑える政策を続けていました。 そして最近漸くこの緩和政策を少しずつ切り替え始めたところです。
それで現在の日本では10年物国債金利でも1%に及びません。
2022年からこの状況ですから、当然円を売ってドルへ投資する人が増えるのです。 そしてそれが円安ドル高を招いているのですが、しかしそうなると益々ドルが有利になります。
それで銀行も「ドル預金」の宣伝などを盛んにやっています。
つまり円安ってこういうメカニズムなのです。
これって低学歴ネトウヨのワタシでも十分理解できるメカニズムなのです。
だって前記のように円ドルレートが日米金利差で決まるというのは、もう何十年も前から決まっている事ですから、普通に経済ニュースを見ていれば誰でもわかるのです。
大変不思議なのは、にもかかわらず大手マスコミやテレビが、円安を「国力の低下!!」「日本は輸出競争力を失った」などと騒ぐことです。
大手マスコミやテレビで記事を書いたり、番組を作ったりしている人たちは、ワタシよりはるかに高学歴で、しかも文系出身者です。
それなのに何で円ドルレートについて最低限の知識もなく「国力が~~!!」なんて馬鹿な事を言うのか?
唯々不思議です。
これは彼等が高学歴マスコミ関係者がホントに経済知識がないのか?
或いは経済知識はあるけれど、意図的に金融緩和政策を妨害するために虚偽の報道をしているのか?
このどちらかとしか思えません。
そしてワタシはこのどちらかを判定できません。
なぜなら大手マスコミやテレビの称賛する政治家達の経済知識もまた信じがたくお粗末で、殆どトンデモ論と言える物だからです。
例えば菅直人、仙谷由人、枝野幸男など旧民主党政権の幹部たちは「金利が上がると景気が良くなる」と信じていました。 これはもう完全なトンデモ論なんですが、しかしこのトンデモ論を推奨する「経済学者」がいて、その経済学者が民主党の経済ブレーンでした。
こういう政治家が存在して、それをマスコミが推奨している以上、マスコミの脳内経済学もこのレベルだと思うしかありません。
一方知識はあるけれど金融監査政策を妨害・阻止するために、虚偽の報道をしているという説も否定できません。
なぜならテレビも新聞も国から様々な優遇を受けています。 国が優遇するという事は、監督官庁の官僚が彼等の生殺与奪を握っているという事です。
一方、財務官僚始め日本の官僚達は何としても緊縮政策を続けたいのです。 つまりできる限り国民から収奪し、官庁が収奪した国富を管理することで自分達の権限を拡大したいのです。
だから円安を攻撃することで緩和政策を阻止したいのです。
更に銀行各社は新聞やテレビの広告の重要な顧客です。 銀行にすれば金利は高い方がもうかります。 だか等何として金利を上げてほしい、だから円安はできるだけ悪く宣伝して、円安の原因である金融緩和政策を止めさせたいのです。
だからマスコミが円安について正確な報道をしたくないホントの理由はわかりません。
しかし逆に言えば、マスコミからすれば正確な報道したくない理由は一つではない、沢山あるという事です。
これが日本のマスコミの現実です。