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「ノーモア・ヒバクシャ記憶遺産を継承する会」のめざすところ(1) 

2012年7月15日、東京・有楽町朝日ホールで開催されたNPO法人「ノーモア・ヒバクシャ記憶遺産を継承する会」の設立記念集会「核時代を生きる 今こそヒバクシャの声を世界に・未来に」の「わたしたちのめざすもの」(代表理事・岩佐幹三氏)の報告を「報告集」から転載させていただき、ご紹介させていただきます。(サイト管理者)
 
「ノーモア・ヒバクシャ記憶遺産を継承する会」のめざすところ
 
ノーモア・ヒバクシャ記憶遺産を継承する会
代表理事   岩佐   幹三
 
本日は、本会の設立、NPO 法人化を記念する最初の行事に、会員の皆さん、協賛くださった団体、個人の皆さん、そしてまたさまざまなルートを通じて本会の活動に関心をもってくださった皆さん、ようこそ多数お集まりくださいまして、ありがとうございます。
 
さて最初に申し上げたいことは、ご参加の皆さんの中にも、呼びかけ文やリーフレットを見て、趣旨には賛成だが、具体的には何をしようとしているのかよく分からないと考えておられる方も少なくないと思います。その通りです。この会は、一言では言い表せないような大きな歴史的な役割をかかえて発足したのです。
 
まず会の名称にある「ノーモア・ヒバクシャ」です。この言葉は、67 年前、広島・長崎の原爆地獄を体験し、こころとからだに傷を抱えながら苦難の人生を歩んできた私たち被爆者の命をかけた叫びとして生まれました。この願いを実現すべく、原爆被害の実相を世界に広げ、核兵器は人類と共存できないと訴えてきた被爆者運動は、国際世論を核兵器廃絶へと大きく変えてきています。この会は、被爆者たちの「ふたたびヒバクシャをつくるな、つくらせるな」という願いを会の存在を特色づける基本精神とし、世界の人々の共有しうる記憶遺産にしていく。そのために、皆さんとご一緒に考え、歩んでいこうという新しい形の活動をはじめたのです。なぜなら考えてもみてください。「ふたたびヒバクシャになる」可能性のある人は誰でしょうか。それは原爆被爆者ではありませんよ。本日ここに参加くださっている戦争も原爆も体験していない多くの皆さん、皆さんこそ次のヒバクシャになるかも知れない存在であること、そして「ふたたびヒバクシャをつくるな」とは、皆さんが、自分の問題として直面しなければならない歴史的な課題であることに思いをめぐらしてください。

人類は、核分裂を利用して原子爆弾=核兵器を開発・使用し、核時代の幕を引きあげました。さらに、核エネルギーの「平和利用」の名のもとに原子力発電にまで手を伸ばして、自らを新たな核被害にさらすことになりました。そして実際私たち日本国民は、昨年 3 月 11 日、ヒロシマ、ナガサキ、ビキニについで、フクシマでも新たな核被害を体験しただけでなく、世界に対する核の加害国にさえなってしまったのです。原爆被爆後アメリカ占領軍に同調して被害の実態を隠し、被爆者を放置し続けた日本政府は、今回も、福島原発事故の原因究明や事故処理対策をし終えぬまま、エネルギー政策を抜本的に見直し将来構想を立てることもせずに、多くの国民の反対の声を押し切って、無責任にも福井大飯原発の再稼働に踏み切りました。
こうした核時代がかかえている危機的な状況の中で、私たちはどのように生きていけばよいのでしょう。核被害の脅威から人類を解放する役割の一端を、この会は果たしたいと思っています。
 
(つづく)
 
【出典】NPO法人「ノーモア・ヒバクシャ記憶遺産を継承する会」設立記念集会報告集
http://www.kiokuisan.jp/
 

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