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労働時間又は労働時間の状況の適正把握の問題

 新年度から段階的に施行されている「働き方改革」関連の法律、「労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律」(労働施策総合推進法)は、「働き方改革を推進する」という国の基本方針を立法化したものです。この法律の第4条では、国は、「各人が生活との調和を保ちつつその意欲及び能力に応じて就業することを促進するため、労働時間の短縮その他の労働条件の改善、多様な就業形態の普及及び雇用形態又は就業形態の異なる労働者の間の均衡のとれた待遇を確保に関する施策を充実すること。」と定めています。なかでも、労働条件の改善と密接に関係している時間外労働の上限規制の罰則付き法定化は特に重要ですが、そもそも労働時間の把握が適切にできていることが大前提になっているお話です。加えて、事業主の安全配慮義務の視点からも、「労働時間の状況」が把握されていることが前提になることは、いうまでもありません。ここでは、社労士TOKYO5月号記事から、労働時間の把握の考え方について、その要旨をまとめてみました。


1.労基法上の労働時間適正把握に関する通達及び指針

 2016年1月の「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン」の内容は、次のように整理されます。

(1)原則
 使用者は労働時間を適正に把握するため、労働者の労働日ごとの始業・終業時刻を確認し、これを把握すること。適正な把握の方法として、現認又はタイムカードなど客観的な記録によること。
(2)例外
 自己申告による場合、以下の措置を講じること。
(イ)労働者に対して、適正申告を行うよう十分に説明を行うこと。
(ロ)自己申告により把握した労働時間が実際の労働時間と合致しているか否かについて、必要に応じて実態調査を実施すること。
(ハ)労働者の労働時間の適正な申告を阻害する目的で、時間外労働の上限を設定するなどの措置は講じないこと。

 一方、管理監督者及びみなし労働時間制が適用される労働者については、労基法上、適法な導入・運用である限り、上記ガイドラインの適用除外とされています。


2.改正安衛法における「労働時間の状況」の把握義務

 改正安衛法では、長時間労働の医師面接指導に係る適用が拡大されました。その前提として、面接指導対象労働者の的確な把握が求められるようになりました。そこで、改正安衛法は、事業者に対して「労働時間の状況」を把握しなければならないこととしています。ここでいう「労働時間の状況」を把握の目的は、長時間労働の面接指導対象者の発見であり、労働者がどの程度の時間、労務を提供し得る状態にあったかを把握することとなります。つまり、安衛法の「労働時間の状況」は、労基法上の労働時間より、広い概念になるのです。施行規則によれば、「労働時間の状況」の把握の方法として、前述のガイドラインとほぼ同じようなことが記されておりますが、自己申告による方法は、あくまでも労働時間の状況を客観的に把握する手段がない場合、例えば事業場外みなしが適用されているときなどに限定的に認められるとしています。

 また、改正安衛法上の「労働時間の状況」の把握は、高度プロフェッショナル制適用対象者を除くすべての労働者が対象となるとされています。これには、管理監督者及びみなし労働時間制が適用される労働者にも適正で客観的な「労働時間の状況」把握が適用されることを意味し、相当に厳しすぎる規定になってしまっています。

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