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富士山三保子さん

世間ばなし①
12 /19 2016
作家・岡本かの子の「東海道五十三次」に、
東海道に魅せられて以来、仕事も家庭も打ち捨てて、
ひたすら東海道を上ったり下ったりする作楽井さんという人が出てきます。
その作楽井(さくらい)さんがこんなことを言った。

「東海道というところはうっかりはまり込んだら抜けられませんぜ」

うっかり幕末にはまり込んだ私は、今まさに作楽井さん状態
これではいけないと気分転換に静岡県立美術館へ行ってきました。

目的はこれ、「富士山三保子」さん。
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説明によると、

日本から母国アメリカへ帰った神学教育者のルイス・ギューリック博士は、
国で「日本移民排斥運動」が起きていることを知り、心を痛めます。
そこで博士は、日本への偏見をなくすには民間レベルの交流が重要だと考え、
子供たちの未来に平和の希望を託すため全米から寄付を募り、
昭和2年、1万2739体の「青い目の人形」を日本へ贈ってきました。

そのときの「青い目の人形」です。
img500 (2)

そのお礼に実業家の渋沢栄一の主導で、
「答礼人形」として市松人形58体がアメリカへ贈られました。

青い目の人形は、その後勃発した太平洋戦争でほとんどを焼失。
でも向うへ渡った日本人形は47体も残っているそうです。

そのうちの一体がこのほど修繕のため、日本へ里帰りしました。
それが「富士山三保子」さんです。
人間国宝・2代目平田郷陽作。アメリカでの名前は「ミス静岡」
いつもはミズーリー州カンザスシティ博物館に保管されています。

CIMG3529.jpg

当初の着物は失われてしまったため、
「ミス神戸」の着物を拝借していたそうです。
今回は新たに、
富士山三保の松原茶の実をあしらった着物と、
みかんをイメージした(たちばな)の帯を作りました。

きれいになったので、あちらへ帰る前にお披露目です。

CIMG3530.jpg

左は最初の着物。真ん中が「ミス神戸」から借りた着物。右が今回の着物。

人形は偉いなあ。物は言わないけれど、
100年たってもちゃんと親善外交を果たしているんだもの。

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雨宮清子(ちから姫)

昔の若者たちが力くらべに使った「力石(ちからいし)」の歴史・民俗調査をしています。この消えゆく文化遺産のことをぜひ、知ってください。

ーーー主な著作と入選歴

「東海道ぶらぶら旅日記ー静岡二十二宿」「お母さんの歩いた山道」
「おかあさんは今、山登りに夢中」
「静岡の力石」
週刊金曜日ルポルタージュ大賞 
新日本文学賞 浦安文学賞