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出色の本

盃状穴②
05 /23 2023
「古代史のテクノロジー」PHP 2023
の著者、長野正孝氏は、名古屋大学工学部出身の工学博士。

そういう経歴の方が、古代史に挑んで本を書いていた。

拝読してうわっとなった。


私の頭にこびりついていた「歴史は歴史学者」という固定観念が、
パッパラパーと吹っ飛んだ。


長野先生、やりますねぇ! とても理系の人とは思えません。(笑)

古代のテクノロジー

だって私が知る理系の人の文章って、一般人向けなのに、
ここぞとばかりに数式やら専門用語を多用して、

「お前らは何も知らないだろうから、俺が教えてやる」
という鼻持ちならない態度がいやらしいほど出ているし。


逆に文学的手法だって使えるんだぞと言わんばかりに書いた随筆などは、
定型文の羅列で面白くもなんともない。

こむづかしく書けば立派な文章とでも思っているのか、
想像力の欠如、発想の貧困が際立つ。


とまあ、十把ひとからげに過剰にわめき散らしましたが、
こんなふうに私が理系を標榜する輩を敬遠するのは、
かつてこんな経験をしたせいかも。しかも二人もの元・リケジョから。

「あなたは文系かしら? どこの大学、出てますの? 
私は一応、名のある大学の理系を出てますから」


そのうちの一人がある日、こう言って自慢した。

「テレビのクイズ番組、主人はダメだったけど私、全問正解よ。
主人より知能指数が高かったのよ」


アホか!

長野氏は、2017年に出した
「古代の技術を知れば、『日本書紀』の謎が解ける」で、こう言っている。

「技術屋として港やマチづくりの仕事に携わってきた経験から、
私は、『海からの人やモノの移動』という立ち位置から謎解きに
挑戦しようと考える」


いいですねぇ。

日本人は「均一化」とか「同調圧力」とか、
なんでもみんなと同じでなければという意識が強い。
そのせいか、間違っていようが一度確立した学説を変えることをしない。

だから私は異分野の人の果敢な挑戦が好き。たとえ荒唐無稽に見えても、
案外、真実を突いているのでは、と思うことが多々あるからだ。

そして私がこれも「出色の本だ!」と思ったもう一冊は、

「装飾古墳の謎」文芸春秋 2023です。

装飾古墳

著者は考古学者の河野一隆氏。
「通説に反証する」、その視座に魅了されました。


今まで私が古墳に抱いていた内部の印象は、
灰色で埃っぽく、ただ巨大な石棺がポツンと置かれた

「古代の残骸」


で、内緒ですけど、私、こんなことも思ったりするんですよ。
古代人が長い年月とものすごい労力を掛けて造った墓なんだから、
掘らずにそっとしておいてやればって。(笑)

それはさておき、
この本の口絵には、極彩色の内部や奇妙な渦巻き文様、船、人体など
古代の世界が生き生きと再現されていたのです。

河野氏によると、
こうした装飾古墳は九州北部・中部と関東、東北南部に偏っていて、
畿内には少ないという。

※高松塚古墳などの壁画は、装飾古墳ではなく「壁画古墳」というそうです。

この装飾古墳、大和王権の近畿中央部には少ないので、
「ローカルな古墳文化」と言われてきたそうです。

この中央重視の風潮はいやですねぇ。

中央は文化の発祥の地で、文化水準が地方に比べて格段に高い。
そういう意識が現代にもありますものね。

自分の所に「装飾古墳」が少ないからといって、
「ローカルな古墳文化」と決めつけるのは、あまりにも傲慢過ぎる。

だって、当時はヤマトの地こそが、
ローカルだったかもしれないじゃないですか。いやその可能性の方が高い。


「装飾古墳の謎」の口絵です。
装飾古墳口絵

河野氏はそこを果敢に突き、「通説に反証」しています。
その一つに、
「石人石馬」と「筑紫磐井の反乱」をあげています。

「九州には固有の石人石馬の文化があった。
記紀をみると、磐井君は大和の大王に弓を引いて滅ぼされ、
石人石馬文化は消滅して、それが装飾古墳に代わったとされている。

しかし、その後の調査で、
装飾古墳でありながら石人は共存していたことが判明し、
その結果、従来の通説は間違いで再検討を余儀なくされている」


「また筑紫君一族とそれを討伐した継体大王の古墳の形はそっくりで、
副葬品も共通していた可能性が高い。
このことから、中央と九州は磐井の乱ごときで断絶するものではなかった
と見るのが正しそうだ」


そうかぁ、そうなるとやっぱり古墳の発掘は必要だってことになる。

そして、河野氏はこうも言う。

「そのころの大和はまだ統一されておらず、各地の大王の連合体だった」

「記紀は勝者の視点から書かれているから、どこまで真実と見てよいか疑問」

「天孫降臨の夢・藤原不比等のプロジェクト」の著者・大山誠一氏が、
「日本人は今なお、不比等の呪縛下にある」と書き、
「古代のテクノロジー」の長野氏もまた、こう記している。

「藤原氏一族の陰謀の闇は深く、1300年後の現在でもなお学者たちは、
そのトリックに惑わされている」と。


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雨宮清子(ちから姫)

昔の若者たちが力くらべに使った「力石(ちからいし)」の歴史・民俗調査をしています。この消えゆく文化遺産のことをぜひ、知ってください。

ーーー主な著作と入選歴

「東海道ぶらぶら旅日記ー静岡二十二宿」「お母さんの歩いた山道」
「おかあさんは今、山登りに夢中」
「静岡の力石」
週刊金曜日ルポルタージュ大賞 
新日本文学賞 浦安文学賞