脱「農業」宣言

3月31日、今年度の最後の日になりました。
丸々8年間、農業をやってきたことになります。
ここ一ヶ月ずっと考えてきたことの結論を出すべきときがきました。

脱「農業」という結論に至りました。

理由は大きく三つあります。
ひとつは、腰椎が「すべり症」になり、重いものを持つことや前屈みの姿勢を長く続けることができなくなったことです。
腰が悪いのは農業を始める前からわかっていたことで、それがあるからこそ農業ができる時間を少しでも長く確保するために、一年早く教職を退く決心をしたのでした。この日はいつか来るだろうと予期していたことですが、そのXデーが今日になったということです。
椎間板ヘルニア、後縦靱帯骨化症、脊柱管狭窄症、脊椎骨変形症、すべり症と、頸椎、胸椎、腰椎の背骨全体にまたがる症状があるので、これからは健康寿命を最優先にした生活を心掛けなければいけないと結論づけました。

二つ目の理由は、経済的理由の束縛から脱したことです。
就農するに当たって、教職を一年早くリタイアした分の経済的損失をどのように補うのかということが、ひとつの課題でした。
確かに、最初の1年目は収入は上がらないし、諸経費はかかるしで、一体どうなるんだろうと不安に感じたこともありました。
しかし、2年目以降は意外なほど野菜栽培が上手くいき、朝早くから毎日楽しく仕事をすることができました。
畑に行くことが楽しくて、農業をやって本当に良かったと思う日々が続きました。
農業をやってみてわかったことは、収入が低いなら低いなりに税制面で優遇されているということでした。
おそらく、学校に残って、再任用の制度に乗って働いていたとしても、経済的にそれほど大きな差はなかったと思います。
とにかく、8年間農業で稼いだ額は大したことはなかったけど、出て行った額も少なかったので、トータルとして経済的に困ったことはありませんでした。もう、時間的には、再任用で働いている人以上に働いたので、これ以上稼ぐ必要を感じません。
脱「農業」というのは、農による生業(なりわい)から脱するということです。野菜づくりをやめるわけではありません。できた野菜を直売所に持って行って販売することから脱するということになります。もちろん、野菜がたくさんできて時間にも余裕があるなら出荷するのは構わないと思っています。しかし、できた野菜を何とか売ろうとあくせくすることからは脱却して、できた野菜を畑にほったらかしにして余裕で眺めていてもいいということです。労働からの解放といってもいいと思います。

三つ目の理由は、昨年の12月、母が亡くなったことです。
この8年間、ほぼ毎日畑に通いました。
畑に通うということは、車で自宅を出て、年老いた母が一人で住む実家に置いてある軽トラックに乗りかえて畑に行くということになります。
午前中の畑仕事が終わったら、実家に帰って母と二人で昼食を食べます。
昼食を食べたら、また軽トラックに乗って畑に行きます。
午後の畑仕事が終わったら、実家に置いてある自分の車に乗りかえて自宅に帰ります。
こんな生活を8年間続けてきました。
母は生まれも農家、嫁ぎ先も農家で大家族の中で過ごす期間が長かった人生でしたが、晩年はひとり暮らしになっていました。
その母を一日に一回は見に行くことが、毎日畑に通うことの、隠れた大きなモチベーションとなっていました。

母は私が作った野菜をほめることは一度もありませんでした。
はじめてヤーコンを見せたとき、そんなもん、買う人いるんか、と馬鹿にしたようにいいました。
しかし、何年かしてから、お昼にヤーコンの炒め物をして私に食べさせてくれました。
大きなハクサイを収穫したとき、母に見せたら、目を丸くしてびっくりしていました。その後、そのハクサイを漬物にしてくれました。私が作ったジャガイモでカレーを作ってくれました。収穫が遅れて大きくなったキュウリをもっていくと、これくらいの大きさの方がおいしいと言って食べてくれました。
私は決して褒めてくれない母のために収穫した野菜をもっていくのが楽しみでした・・・
褒めてはくれませんでしたが、目が喜んでいるのは見逃しませんでした。
その母が亡くなった今、できた野菜を誰に見せたらいいのでしょうか。

本112  野口 勲「タネが危ない」

野口 勲「タネが危ない」
日本経済新聞出版社(2001年刊)
タネが危ない
野口 勲
1944年東京・青梅市に生まれる。
親子三代にわたり在来種・固定種・全国各地伝統野菜のタネを扱う種苗店を埼玉・飯能市で経営。
『いのちの種を未来に』(創森社)

はじめに
 F1全盛時代の理由の第一は、大量生産・大量消費社会の要請である。収穫物である野菜も工業製品のように均質であらねばならないという市場の要求が強くなった。箱に入れた大根が直径8センチ、長さ38センチというように、どれも規格通り揃っていれば、一本百円というように同じ価格で売りやすくなる。経済効率最優先の時代に必要な技術革新であったとえいるであろう。
 固定種は、形質が固定されたとはいっても、一粒一粒のタネが多様性を持っているため、生育の速度がバラバラになる。一斉に収穫できないから、早く畑を空けて次の作付けをすることもできない。一度まいたタネで長期間収穫できるというのは家庭菜園にとってはありがたいことだが、一定規模の畑を年に何度も回転させ、いくら収益をあげるかが生活基盤になるプロの農家にとっては、F1こそが理想のタネになる。
 近年、全国の種苗店のみならず、ホームセンター、JAでも、F1のタネばかり販売するようになったが野口種苗は全国で唯一、固定種のタネの専門店を自称している。揃いが悪いので市場出荷には向かないけれど、味が好まれ昔から創り続けられてきた固定種は、家庭菜園で味わい、楽しむ野菜にぴったりだ。

第1章 タネ屋三代目、手塚漫画担当に

タネ屋に生まれて
 自給用野菜のタネとして、昔から「固定種」という在来種を中心に扱ってきた。固定種のホウレンソウや菜っ葉は、現在、種子業界の主流となっているF1に比べて味がよく、また生育が均一でなく、大きく育ったものから間引きつつ長期間にわたって収穫できるため、まさに自給用として重宝されてきた。
 昭和30年代までは、固定種の需要も多く、日本全国に広く販売していたが、40年代からF1の時代になり、生育速度や均一性や周年性で劣る固定種は、出荷用野菜のタネとしては全く売れなくなってしまった。

50才を契機に固定種タネをネット販売
 2007年、実家に隣接する倉庫を改造して店に造り替え、農薬も、肥料も、苗もF1のタネも、園芸用具も農業資材も一切やめて、固定種のタネだけをインターネット通販で販売する店に衣替えした。たぶん日本で一番店構えのタネ屋であろう。

第2章 すべてはミトコンドリアの采配

人はミトコンドリアによって生かされている
 なぜ精子のミトコンドリアのDNAは遺伝しないのか。哺乳類の場合、卵の中のミトコンドリアは約10万個、一方精子は約100個といわれているが、この数少ない精子のミトコンドリアは卵の中に入るとすぐに分解されてしまうことが最近になって明らかになってきた。(『ミトコンドリアと生きる』瀬名秀明・太田成男著)
 2008年、ミトコンドリアと同時に植物では葉緑体の遺伝子が増殖を終えないと、細胞の増殖も起こらないことが分かった。つまり、ミトコンドリアの増殖が単細胞生物から多細胞生物への引き金になったというのだ。これまでミトコンドリアも葉緑体も核の遺伝子によって支配されていると信じられてきたが、もしかしたら逆で、ミトコンドリアこそ、われわれ人類にまで続く進化の支配者であるかもしれないというわけだ。

第3章 消えゆく固定種 席巻するF1

最初の栽培植物はひょうたん?
 日本の青森の遺跡からひょうたんの遺物が発見された。時代は約9000年前。ひょうたんはアフリカ原産である。この時代の縄文人がアフリカと交易し、ひょうたんを手に入れていたとは考えられない。
 ということは、アフリカ大陸を出るときに、人類はひょうたんを持って出た。ひょうたんの中に水を入れ、旅ができるようになって初めて、人類は海を渡り、地球上に広がっていったのではないかというのが、湯浅浩史先生の説である。南米でも同じ時代の遺跡からひょうたんが見つかっている。

優性と劣性
 湯浅先生によると、ひょうたん型というのはメンデルの法則でいう遺伝子の「劣性」で、くびれのないユウガオ型のほうが「優性」である。味でいうと苦いのが「優性」で苦くないのは「劣性」だという。
 よくF1のタネの長所について、種苗会社の人間は「父親と母親の優れたところだけが現れるからいいんです」と言うが、これはとんでもないうそっぱちだ。F1は人間とって都合のいい形質が現れるように作っているだけで、優れているわけではない。

固定種が消滅した三浦大根
 三浦大根という大根がある。現在流通している三浦大根で、昔からの固定種のものはひとつもない。三浦半島で作られている三浦大根は、すべて「黒崎三浦」という名のF1である。F1になることによっって、形が均一に揃う。成長も早まるから、三浦半島の生産者はみんなこれを作るようになった。
 本来の固定種の大根はきめが細かく、非常に緻密で硬い。生で囓ると辛い。煮ることによって辛味が甘味に変わっていって、どんなに煮ても煮崩れしない、おいしい大根になる。だからおでんにぴったりで、煮れば煮るほど甘味が増し、味がしみてくる。これに対し、F1大根は、生育が早まって、揃いがよくなる代わりに、細胞がざらっとした感じになる。
 F1は放っておいても同じ大きさになる。売れない固定種をわざわざ母本選抜してタネを採る種苗会社はほとんどなくなってしまった。
 固定種の多様性・個性は、販売する場合には邪魔になる。昔、固定種のタネで野菜が作られていた時代には、八百屋さんは一貫目いくらとか、一キロいくらとか、重さを量りながら値付けして売っていた。ところが、それでは今の流通にはまったく合致しないから、固定種の野菜は自家消費に回った。
 試しに、近所の直売所で「黒崎三浦」を買ってきて、固定種三浦と食べ比べてみた。なるほどと思った。「黒崎三浦」は梨のようにみずみずしい。辛味がまったくなく、甘さのない果物のようである。えぐみなし、個性なしがいいとは、人の好みも変わってしまったのだな、とつくづく思った。固定種三浦は収穫まで四ヶ月かかるのに対し、F1大根は二ヶ月半でできる。しかし、細胞は水ぶくれで、味がない。
 今スーパーの店先に並ぶ野菜は、国産と銘打っているものが圧倒的に多い。では、年々、輸入量が増加しているという外国野菜はどこで消費されているのか。
 当然、業務用、外食産業である。外食産業は成長する輸入野菜市場の最大の顧客となっている。
 種苗メーカーや産地指導にあたる農業センターの人の話によると、外食産業の要求は、「味付けは我々がやるから、味のない野菜を作ってくれ。また、ゴミが出ず、菌体量の少ない野菜を供給してくれ」ということだそうだ。こうして世の中に流通する野菜は、どんどん味気がなくなり、機械調理に適した外観ばかり整った食材に変化していく。
 こんな状況の中で、地方の伝統野菜が、数少ない本物志向の消費者や昔おいしかった野菜の味が忘れられない高齢者の指示を集めている。こうした伝統野菜は消滅した地方市場に代わって「道の駅」などの直売所で扱われている。

地方野菜・伝統野菜の可能性
 固定種の地方野菜や伝統野菜を他の地域でまいても、風土と密着したもとの味は出せないかもしれないが、日本のどこでも作れるものばかりだ。もともと日本にあった野菜はワサビやフキ、ミツバ、ウドくらいで、それ以外は世界中から入ってきて、日本の気候風土になじんだ伝来種である。遺伝子が本来持つ多様性や環境適応性が発揮されて、三年も自家採取を続ければ、新しい土地の野菜に育ってくれる。
 販売用の野菜タネのほとんどをF1にしてしまったのは日本くらいで、フランスのタネのカタログを見ると、7~8割が現在も固定種である。外国野菜のタネを取り入れ、新しい日本の野菜を創造するのもおもしろいと思う。

新ダネと野菜種子の寿命
 野菜の種類によって、種の寿命も違うし、採種地のその年の天候によって、充実の度合いも違うから、一概に言えませんけど、普通は、お茶の缶などに乾燥剤と一緒に入れて、冷蔵庫など低温で湿度も低い場所にしまっておけば、数年は大丈夫ですよ。温度と湿度が低くて一定している所なら、タネの生命力はそんなに落ちません。ただ、外気温の変化をそのまま受ける場所や、湿気の多い所に保存した場合、日本の真夏の高温多湿を経験するごとに、確実にタネの寿命は尽きてきます」
A 短命種子(1~2年)
  ネギ、タマネギ、ニンジン、三つ葉、落花生
B やや短命種子(2~3年)
  キャベツ、レタス、トウガラシ、エンドウ、
  インゲン、ソラマメ、ゴボウ、ホウレン草
C やや長命(2~3年)
  大根、カブ、ハクサイ、ツケナ類、キュウリ、
  カボチャ
D 長命種子(4年以上)
  ナス、トマト、スイカ

指定産地制度でモノカルチャーが加速
 単一の作物を生産して都会に提供する農家であれば、価格が暴落して経営が悪化しても、作物を廃棄して生産調整に協力すれば補助金を出すという、指定産地制度のおかげで、日本中の農業がモノカルチャーになり、周年栽培を売り物にしたF1が台頭した。それまで自分でタネ採りしていた農家が種を買う時代になった。F1誕生の歴史である。
 農家は野菜産地指定制度によって、同じ野菜ばかりを作るようになった。長野・嬬恋のキャベツ、熊本のトマト、高知のピーマンなどは一年中作られている。豊作になって価格が暴落すれば、価格調整のためトラクターで踏みつぶす。
 トラック輸送が発達し、おかしなことに大量に作られた野菜は、いったん東京、大阪へ集約され、そこから再び熊本、鹿児島などの産地へ戻っていく現象も起きた。

第4章 F1はこうして作られる

「除雄」を初めて行ったのは日本人
 1924(大正13)年、埼玉県農事試験場が真黒ナスと巾着ナスをかけあわせ、「埼玉交配ナス」というものを作った。これは雑種強勢が強く働き、たくましく、長い期間育って、実がたくさん採れると、評判を呼んだ。世界最初のF1野菜はナスだった。
 固定種時代は縞のないスイカがおいしいといわれていたが、F1の時代になって、日本中のスイカがみな縞のあるスイカになった。「縞王」という名の、縞の美しさを売り物にするベストセラーも出てきた。

自家不和合性を使ったアブラナ科のF1
 アブラナ科の野菜にはおもしろい性質がある。自分の花粉でタネをつけることができず、他の株でないとタネがつかないのである。自分の花粉を非常に嫌がる性質が働くのだ。これを自家不和合性という。ひとつのタネから生えた株の花粉では受粉できないが、同じ母親からとれたタネ、兄弟分であれば実がついたりする。隣の株の花粉でなら受粉ができる。そこで、この兄弟の花粉がかかっても受精しないよう、純系の度合いを強めてホモ化させ、絶対に実らないようにするのである。おもしろいことに、自分の花粉を嫌がる自家不和合性は、つぼみのとき働かず、花が成熟してから働く。そこで、つぼみのときに、つぼみを小さなピンセットで開いて、すでに咲いている自分の成熟した花粉をつぼみにつけてやる。すると受粉してしまう。
 この作業でできたタネは、花が咲き自分の花粉が兄弟分にかかっても、タネはできない。
 こうした状態のカブと白菜をかけ合わせる。すると、カブの花粉でタネをつけた白菜と、白菜の花粉でタネをつけたカブのタネができる。花粉を出す役目を終えたカブを全部ブルドーザーでつぶしてしまうと、カブの花粉のついたF1の白菜タネができる。ヨーロッパ生まれのネコブ病の抵抗性をもつ家畜用カブから、ネコブ病抵抗性を白菜に取り入れるときに使われている。カブの耐病性を取り入れたF1白菜ということになる。

タネのできない花が見つかった
 雄性不稔とは、植物の葯や雄しべが退化し、花粉が機能的に不完全になることをいう。
 このような花があれば、そばに必要な花粉を出す別の品種を植えておけば、容易にF1ができてしまう。
 これをF1の母親株にして、畑にまき、そばに必要な雑種強勢が働く、遠く離れた系統の特徴ある性質を取り込む父親役をまいて交配すれば、販売用のF1タマネギのタネが採れる。こうして雄性不稔利用の技術が完成した。この雄性不稔のF1タマネギが発表されたのは、第二次世界大戦もたけなわの1944年のことだ。その後、ニンジン、トウモロコシなど、雄性不稔はいろいろな作物に利用されるようになる。

雄性不稔はミトコンドリア遺伝子の異常
 ミトコンドリア遺伝子の異常は、母親から子どもに伝わっていく。代々の子どもはみんな子孫をつくれない無花粉症になる。母親の個体異常が子どもへどんどん広がっていく。このタマネギを買って、畑に植えてみればよくわかる。咲いた花は全部いじけた花粉のでない花になる。
 近年、人間の男性不妊症や動物の不妊も、ミトコンドリア異常が原因だといわれている。2006年10月3日付け読売新聞は、「動物の男性不妊症、無精子症はミトコンドリアの変異が一因」と伝えている。ミトコンドリアの遺伝子が傷ついたことにより、精子の数や運動量が減り、不妊症状、無精子症になることがマウスを使った実験で分かったという記事である。
 われわれはそのF1野菜を食べている。我々は日常的に、生殖能力を失った、ミトコンドリア異常の野菜を食べている。タマネギのミトコンドリアはタマネギの全体の重さの1割を占める。

ゲノムを超えて受け継がれる雄性不稔因子
 今、自家不和合性から雄性不稔利用へと、キャベツ、カブ、白菜などのアブラナ科野菜がどんどん生まれ変わりつつある。

春まきの青首ダイコンもすべて雄性不稔に
 サカタの代表的な品種で大きなシェアを誇っている金系201号という春キャベツがある。数年前から「金系201EX」と尻尾に「EX」とついたものが一緒に並んで掲載されるようになった。タキイの場合は「SP」。これがついたものが新たに生まれた雄性不稔のキャベツである。日本の野菜がすべてこういう方向に向かっている。

最近のタネ屋事情
 F1のタネは現在ほとんど一袋525円で、これが最低の値付け。結構高い。わけのわからないものでは百円で二袋というものがある。外国産で大量に仕入れたものを低温貯蔵庫に入れる。売れずに残ったももの処分値なのだろう。

第5章 ミツバチはなぜ消えたのか

F1のタネ採りに使われているミツバチ
 タマネギの採種は日本ではそれほど行われていない。日本の種苗会社は外国の種苗会社に父親と母親を渡し、委託採取している。だから、ほとんどのタネが外国産になっているはずだ。

F1のタネ採りに使われているミツバチ
 タマネギの採種は日本ではそれほど行われていない。日本の種苗会社は外国の種苗会社に父親と母親を渡し、委託採取している。だから、ほとんどのタネが外国産になっているはずだ。

確証は見つからないが
 僕の仮説はこうだ
1 1940年代、タマネギを筆頭に、ニンジンなど 雄性不稔植物に受粉させてF1種子を得るため、養 蜂業者のミツバチが活用されるようになった。
2 ミツバチはミトコンドリア異常の蜜や花粉を集め、 ローヤルゼリーにして次世代女王蜂の幼虫に与える。
3 新しい女王蜂は次の女王蜂と数匹のオスバチを生 む。このオスバチは女王蜂の遺伝子しか持っていな い。
4 ミツバチは代々雄性不稔の蜜と花粉を集めて次世 代の女王蜂とオスバチを育て続けていく。
5 ミトコンドリア異常のエサで育った女王蜂は、世 代を重ねるごとに異常ミトコンドリアの蓄積が多く なり、あるとき無精子症のオスバチを生む。
6 巣のすべてのオスバチが無精子症になっているこ とに気づいた働きバチたちはパニックを起こし、集 団で巣を見捨てて飛び去る。

人間の精子も激減

人間にもたらす影響はなお未解明

守りたい地方野菜と食文化
 僕がいちばん言いたいのは「固定種の野菜を栽培して、どうか自分でタネを採っていただきたい」ということだ。固定種の良いところは、自家採取できるという点である。自家採取を三年も続けていれば、その土地に合った野菜に変わっていく。また自家採取は、有機栽培農家にとって、基準通りの「有機認証」を取得するための唯一の方法でもある。有機認証基準では、「種子も有機栽培で育てられたものを使うこと」と決められているが、実は日本の種苗会社が販売しているタネで、この規格に合致するものは何一つない。有機栽培農家が自家採取する以外、国内でこの基準に準拠したタネを入手する方法はない。
 蚕から始まった一代雑種つくりの原点は、「自家不和合性」や「除雄」による「雑種強勢効果の発現」が目的だった。しかし、「雄性不稔」が見つかってから、いかに雄性不稔株を見つけて増殖し、また近縁種に取り込むかということが基本になった。その株に何をかけたら効率よく商品ができるかという一代雑種つくりに変化したのだ。今では「雑種強勢」はあるに越したことはないが、なくてもいい、ないがしろになってきている。そして現在は雄性不稔を見つけるよりも、「遺伝子組換え」技術によって雄性不稔因子を組み込もうという流れになっている。

 かつて野菜栽培というのは、ただタネをまいて収穫するだけではなく、自家採取して品種改良していくことまですべて含んでいたということが、何にもましてよくわかった。当店のオリジナル絵袋も「採種法」という項目を入れて、栽培する人が自家採取しやすいよう手助けをしている。

付録
 僕は決してF1を否定しない。一億二千万の日本人を養うためには、F1は欠かせないと思っている。しかし、それはあくまで市場流通を目的とした産地経営の視点での話だ。自給用野菜、家庭菜園の世界には、別の視点、別の価値観をもって頂きたいと思う。毎日野菜の顔を眺め、声をかけ、収穫し、できればそのタネを採り、またそのタネをまく。すると野菜が友だちになり、家族の一員になる。

 家庭菜園は固定種がいい。
   周年栽培や収量の増加、そして省力化は、営利栽培にとって何より大切な要素です。しかし、味の低下や栄養素の減少は家庭菜園にとっては大きなマイナスです。自分や家族のための家庭菜園ならば、ホウレンソウは、栽培容易な秋から冬に育て、旬の冬においしく食べる固定種の「日本」や「豊葉」や「次郎丸」のほうが向いています。

一斉収穫か長期収穫か
 家庭菜園にとっては、まいたタネがすべて同時に収穫期を迎えるということは、大変困ったことになります。野菜の成長速度イコール老化速度でもありますから、収穫が遅れた野菜は硬くなったり筋張ったりして、おいしく食べられません。その点固定種は、同じ両親から生まれた兄弟でも、個体差がありますから、生育速度に幅があります。早く大きく育った野菜から収穫していくと、晩生の子が空いたすき間で成長するので、畑に長くおけて、野菜本来の味を長期間楽しめます。

固定種は自家採種で強くなる
 固定種は自家採種が繰り返されることにより、地域で変異を重ねた病害菌にも抵抗性を獲得してきました。つまり固定種は気候風土に合わせ、どんな病気にも対応できる可能性を秘めています。地域外から固定種のタネを取り寄せ、栽培開始した初年度はあまりうまく育たないものが多くても、栽培した中で一番良くできた野菜から自家採種し、そのタネを翌年まくと、どんどんその土地に適応して、無農薬でも、時には無肥料でも、病気にかからず大きく育つ野菜に変化していきます。固定種のタネは、選抜と自家採種によって、土地に合ったタネを産み、土地がそれをまた新たに育んでくれます。固定種のタネを販売するとき、お客さまがタネ採りすることを嫌がらないようにしたいです。F1品種が隘路にはまったとき、そのタネが日本の農業を救う日がくるかもしれないのですから。


(評)
 野菜などの作物のタネにはF1種と固定種とがあり、その性質の違いがよくわかる一冊である。筆者は固定種専門のタネ屋さんだから、タネの世界に起きていることをわかりやすく説き、現在F1一色に染まっている日本の危うい現状を訴えている。それはもちろん、固定種への誘いという意図も隠れているのであるが、筆者は決してF1の価値を否定してはいない。F1種と固定種とは使い道が異なるのだという。
 効率よく、大量消費向きに、ある意味工業製品のように均一なものを市場に提供するプロの農家にとってはF1種がその目的を果たしてくれるであろう。
 しかし、味の良さ、栄養成分のよさ、作物を栽培する楽しさなどを求めるならば、固定種の方がいいというのである。その通りであろう。自然栽培や有機栽培をやっている人たちは早くからこのことはわかっていただろうが、一般の人に向けてこの本は書かれたのである。
 家庭菜園がブームになりつつある今日、この本の意義は大きいと思う。多くの人が固定種の存在に目を向けて、タネ採りまでできるようになってくれればいいと思う。
 話は、タネ屋さんらしく、F1種の作り方に進んでいく。F1種がどうやって作られてきたか、その歴史的な始まりから現在の状況までが詳しく述べられている。そして、現在の状況はそれが本当なら、ぞっとするような危うい状況にあることが明らかにされる。
 「雄性不稔」という聞き慣れない言葉がそのキーワードである。理屈は簡単である。生物にはごく低い確率で常に突然変異が起こっている。その突然変異の中にに花粉を生じないものが現れることがある。この突然変異を取り込んだ作物をつくり、これを母親株とし、もう一つの父親役の株との交雑でF1をつくるというのである。こうすれば、簡単にF1のタネができ、しかもそのF1には花粉が生じないから1代きりで終わる。タネ屋にとっては毎年種を買ってもらえる。この技術が進歩して近年のF1のタネはほとんどがこの方法で作られているという。
 驚愕すべきは、この「雄性不稔」の原因がミトコンドリアの異常にあるということである。ミトコンドリアは細胞質遺伝をするから、母親株を通じて何代も何代も遺伝し続ける。このF1のタネをまいてできた作物のミトコンドリアも当然、異常な母親株と同じものである。
 そして、近年、世界的な話題となり、関連本もいくつか出されている「ミツバチの大量消滅現象」の原因がこのミトコンドリアの異常による「雄性不稔」にあるのではないかというのが筆者の仮説である。異常なミトコンドリアをもつエサをとり続けた女王蜂が生んだオスバチの精子が生殖能力を失ってしまった結果、ミツバチの行動に異変がおきて、ミツバチが大量に消滅したのではないかと考えるのである。さらには、近年、人間の男性の精子の数が少なくなっているのも、現代人がミトコンドリア異常の作物を食べ続けている結果ではなかろうかとまで、推論する。
 もし、それらが本当だとすると、世界中がパニックに陥りかねない一大事である。世界の農業が大きな転換を迫られるであろう。アメリカの大手資本が大反撃をしてくるかもしれない。
 しかし、ミトコンドリアに異常が起きた作物を食べ続けると無精子症になるという科学的根拠はまったくない。筆者もそのことはわかっていて、科学者にこのことを研究してもらいと述べているのだが、いかんせん、生物学的に少し突っ込んだ内容になると、危なっかしい表現が随所にみられる。
 たとえば、p119でタマネギの話をしているのに、「代々の子どもはみんな子孫をつくれない無精子症になる」といきなり動物(おそらく人間を意識している)の用語に飛躍している。ここではタマネギについて述べているのだから、無精子症ではなくて無花粉症としておかないと支離滅裂となる。また、p141では「ミトコンドリア異常の蜜や花粉」とあるが、細胞である花粉にはミトコンドリアが含まれているが、植物の分泌物である蜜の中にミトコンドリアは入っていないだろう。
 ともあれ、異常なミトコンドリアをもつ食べものをとり続けた結果がどうなるかということは、現在の時点では分かっていない。自然界では起こりえないことに人間が手を出したために、BSE禍が起こったように、このことでミツバチや人間の精子の数が減ったという考えを否定することができるだろうか。
 「固定種」啓蒙の書であると同時に、「F1種」警告の書でもある。

平成23年12月

クサイチゴの花

20210329(800t).jpg
 昨年も紹介しましたが、クサイチゴの花は真っ白で遠くからも目立つので今年も近寄って写真を撮りました。
昨年アップしたのはは4月5日で、今年は昨年より1週間ほど早く季節が進んでいるようです。

きままに投資 22

投資
配当金が出ました!!
証券会社から配当金が出た旨のメールが届きました。
初めてのメールでうれしくなってアップしました。
株って持ってるだけで配当金が出るということがリアルにわかりました。
JT配当金
配当金額は7,700円で税金がしっかり引かれて、実入りは6,136円となっていました。
銘柄は配当金が高いことで有名な「JT(日本たばこ産業)」です。
高配当株ということで、ネット上でしばしば話題にとりあげられていたので気になっていた銘柄です。
昨年の11月から急騰してきて、これはすごい株だと思い、ついに12月17日に100株買ってしまいました。
ところが、そこが株価のピークでした。
ホントにうまいですね。高値づかみが。
初心者が買いたくなるとき、そのときが一番買ってはいけないときだということを肝に銘じておきましょう。
JT.png
JTのここ半年間のチャートです。
正確に示せませんが、大きな矢印で示したところが12月17日頃です。
買ったときの株価は、2,190.5円で、今から見ても、ほぼ高値のピークだったことがわかります。
買った直後から株価は下落トレンドに入り、その後大事件(?)が起こります。
今年の2月10日頃に大きな暴落が起こったのです。
配当が毎年増え続けていることで絶大な人気を誇っていた「JT株」が減配を発表したからです。
あのときのJT株保有者達はほぼパニック状態でした。
有名どころの投資系ユーチュバーが皆、このことについてコメントを出していました。
ほぼ全員、「JT株」を手放すという意見でした。
お笑い系のあるユーチュバーは番組中通して絶叫していました。

私はなすすべもなく、やりすごしていましたが、その後さらに株価は下がり続けました。
すると、3月に入って、株価は急激に回復し始め、今日時点でかなりの回復を見せています。
あのとき、絶叫しながら「JT株」をパニック売りしたユーチュバーは一体何だったんでしょう。

配当金も手に入ったことだし、あとしばらく、JT株は保有して様子をみていこうと思っています。
本当に株価の動きは予断を許しませんね。

春が来た!

202103272(900t).jpg
桜が満開です。
畑から桜の見える方角を望遠を最大にして撮ってみました。
春ですね。
季節は間違いなく巡ってくるもんですね。

”Spring has come.”
と知ったかぶりの英語を思い出して、調べてみると、

まだ肌寒さの残る日に急に暖かい風を感じたとします。そんな時「あぁ、今まさに春が来たな」という感覚で”Spring has come.”と表現するのが英語です。すっかり暖かくなって桜も見ごろを迎えた頃、「ここにも春が来ました」と表現するには過去形では不適切です。「春が来た状態である」として、be動詞を使って現在形で表すのが英語です。
Spring is here.
Spring is here in Tokyo.(東京にも春が来た)と場所を特定することもできます。

と、解説したサイトを見つけました。
今さら英語の勉強をしてもしようがないですけど。

畑から軽トラックで2分くらいのところに桜の木があったので近くまで行って見てきました。
202103273(700).jpg
天気予報によると、熊本は今夜から明日の正午にかけて雨が降る模様です。
“花散らしの雨”になるかもしれません。






ネギ 22

20210324ネギ(700t)
 収穫しないで残したネギにネギ坊主ができる季節になりました。 
昨年はネギについては実験的な内容もあり、何度もアップしましたが、今年はこれがはじめてとなります。
ネギ坊主は種が出来るまでこのままにしておきます。
今年の種が出来る前にネギの種をまくので、今年まくのは昨年採った種です。
今年できる種は来年用にとっておきます。


本111 渡辺 巌「田畑の微生物たち」

渡辺 巌「田畑の微生物たち」
農文協(1986年刊)田畑の微生物たち
渡辺 巌
昭和7年愛知県生まれ。
昭和30年より東京大学農学部で主として根粒バクテリアの研究に従事。
昭和37年農林省農事試験場に移り、畑土壌の微生物学的研究に従事。
昭和41年より岩手大学農学部で肥料学講座を担当。

まえがき
 「知から力へ」。これは山形県のある農民指導者の言葉である。知識なしで農業生産の向上はあり得ないが、知識だけでなく、知識を骨肉化して実際に生産をあげてみてこそ、知識を持つことの意義が生まれてくる。

第一編 自然界のしくみと微生物

一、自然界の秩序と生物の役割

二、物質分解者としての微生物
1 物質循環のかなめをにぎる微生物
2 微生物とは何か
  細菌は細胞をつつんでいる細胞壁の性質の違いに よってグラム陽性菌とグラム陰性菌に分かれる。ま た、細菌の中には細胞壁を持っていないマイコプラズマが入る。
 ズマが入る。
3 微生物の多様性と融通性
 1969年7月、人類最初の月着陸に成功して地球に戻ってきた米国の三人の宇宙飛行士は、まちわびる家族のもとにすぐに帰ることはできなかった。三人には検疫という作業が待ちかまえていた。隔離されて、彼らが人類未到の天体から何らかの微生物を地球に持ち込みはしないかという配慮から、厳重な検査を受けた。科学者達が月から持ち込まれるかもしれないと恐れた生物は、SF小説の中で描かれている宇宙人ではなくて、見に見えない微生物だったのである。最高110度、最低零下150度、真空という月の条件で、はたして微生物が存在しうるか大いに疑問であった。しかし、幅広い生存の適応能力をもつ微生物にしてみれば、あるいは月にも何らかの微生物がいるかもしれないと疑うのは当然ともいえる。
 結局、微生物は発見できなかったが、次のアポロ13号のときには、宇宙船が持ち込んだバクテリアが月の上で生きながらえて、ふたたび地球に持ち帰られている。
 第6表は地球上の極端な環境と、そこに住む微生物をまとめたものである。生物の住みうる環境で、限界ぎりぎりに生息しているのは、ほとんどが微生物であることに注意して頂きたい。こうしてみると、微生物こそ、人間を除いた、地球上の主人公であり、地球上のほとんどあらゆる地域に顔を出すのは微生物である。このように微生物は神出鬼没、変幻自在であり、微生物から見れば、死の海はありえないであろう。


第二編 土壌微生物の基礎

一、土壌微生物の生活条件
1 水と空気で生活様式が決まる
(1)堆肥とサイレージ
 サイレージは乾し草の貯蔵法として発達したもので、動物のエサにするのが目的だから、腐らせないようにすることがポイントになる。腐らせてしまったのでは、せっかくの成分が消失してしまうので、ぐあいがわるい。栄養分がひどく消失しない程度に発酵させて、ワラの中の成分組成を家畜が利用しやすい形に変えてやる必要がある。これがサイレージつくりのねらいである。したがって、サイレージに使うワラは、堆肥とは逆に水分を少なく乾燥気味にし、サイロの通気もわるくすることが大切である。ワラの詰め方は堅くし、ぎゅうぎゅうと強く踏み込んでやるほうがよく、トラクターで踏みつぶして詰め込むこともあるほどである。pHは酸性にしておく。
(2)水と空気は相反する条件
(3)微生物の生活様式は生物進化の反映
(4)好気性菌と嫌気性菌
 水分の多いサイレージつくると、しばしば不快な腐敗臭を発することがある。これは酪酸菌によって酪酸発酵が起きたためであって、この酪酸菌は絶対的嫌気性細菌のクロストリジウムの仲間である。

2 微生物の栄養と取り方

3 温度と微生物活動
(1)温度の適応幅が広い
(2)温度の変化と微生物の交替
 ワラの切り返しは、熱がおさまってから行うのが普通である。セルロース分解菌は好熱性の嫌気性細菌であるから、この菌を働かせるためには温度を高く保ち、空気が遮られた条件を作ってやらなければならない。したがって、はじめから切り返しを行うと熱を逃がしてしまうばかりか、空気の嫌いなセルロース分解菌の働きにくい条件にしてしまうわけである。

二、土壌中での微生物の住み方

1 自然界での住み方は複雑
2 微生物の住みか
(1)生活空間は土壌の二~三割
(2)土壌粒子に吸着されて生活
 土に施された肥料は土壌粒子に吸着され、雨水などですぐに流亡してしまうことがないばかりか、徐々に溶け出してきて作物に供給される。したがって土壌粒子の吸着力は、農業上大きな意味をもっているのである。土壌粒子は微生物さえも吸着しているのである。
3 微生物の分布は不均一
(1)団粒構造と分布の不均一
 土壌に何万何千種類もの微生物が住みうるのは、このように、それぞれが、土壌の粒子や有機物の破片に取り囲まれながら、小数の細胞の集まりとして小天国を築いているからなのだ。
(2)土壌中の有機物分布の不均一
① 植物の根と根圏微生物
生きた植物の根の周辺にはたくさん微生物が群がっていて、あたかも根が微生物のさやをかぶったような状態になっている。根の周辺に住んでいる微生物は根圏微生物と呼ばれ、他の場所とは違った種類のものがいるのふつうである。
② 有機物の分布と微生物
4 微生物活動を活発にする条件
(1)環境条件と微生物の住み方
 微生物は土壌中のすき間で、一種類当たりせいぜい10匹内外で一カ所に集まりコロニーを作り、とびとびに離れて生活している。一つのコロニーのまわりには土壌粒子が壁のようにとりまいているため、ほかの微生物と直接ふれ合うことが少ない。エサは土壌粒子で包まれ、空気や水の満ちた小さなすき間で隔てられている。食べようとしても邪魔されやすいため、ほとんどの微生物はエサがありながらも、いつでも飢えた状態でいる。また、少し離れた位置にあるエサは、すぐに食べることができない。このような原因で、土壌微生物いつでも飢えに近い状態にいるということは、微生物活動を知る上で重大な意味をもっている。だから、一カ所で10匹程度しか生育できないのである。
(2)天候の変化は活動を変える
(3)農作業と微生物活動
 微生物の活動を促進させるためにはエサの解放が先決で、それには土壌を攪乱してやればよい。

三、微生物活動の法則

1 有機物分解をめぐる相互作用
(1)植物界と微生物界の共通性
 遷移
(2)一年生植物の分解の過程
 最初に分解されるのは、もっとも栄養分となりやすいデンプンやブドウ糖などの糖分である。糖分を好んで食う微生物には細菌やカビなどがあり、糖分を盛んに消費して生育が速いのが特徴である。そのために糖分がなくなるのも速く、エサのなくなったところで生育は止まる。
 次にあらわれるのがセルロース分解菌である。セルロース分解菌の働きによってイナワラの中の繊維が分解されるが、この分解作用は比較的ゆっくりとすすむ。やがて繊維分もなくなってくればセルロース分解菌の生育はさらに遅くなり、発熱量も少なくなって温度が下がりはじめる。放線菌は、このころになって生えてくるものが多い。すると、遷移は第三の段階へ進むのである。これは、植物体のいろいろな成分のうちで、もっとも分解されにくいリグニンが、微生物のはたらきで分解される段階である。リグニン分解菌が出てくる状態は、有機物・落葉の分解過程の最後の段階だということができる。
 リグニンを分解する働きを持っているものは、ヒラタケのようなおもにキノコの仲間である。そこで、キノコが生えてくるようになれば、有機物の分解はほぼ最終段階にまですすんだと判断してよい。
 キノコはリグニンのような分解しにくい成分を自分のからだに変える。この菌糸を食う微生物をめぐって小さな遷移がおこるけれど、ついにはエサとなるべき有機物はほとんどなくなって、黒々とした食いかすしか残っていないのである。この食いかすが腐植とよばれるものである。もっとも腐植は、食いかすばかりではなく、土壌中に住んでいる小動物の排泄物や微生物の遺体などもまざって、この両者が結びついたものである。

2 微生物の連携作用
(1)微生物間の闘いと協力
(2)利益を分け合う相互の関係
 このように性質が全く相反する両者をいっしょにして、光とブドウ糖を与えて培養するといずれの菌とも生育がきわめてよくなり、チッソ固定能力はそれぞれ単独で培養したときよりもはるかによくなるのである。この事実はまた、本来嫌気的な環境を好む光合成細菌が好気的な条件でも生育することを示している。
 エサの交換を通して、光合成細菌とアゾトバクターとは、たくみな相互の関係を保っている。多くの微生物同士は目に見えない糸でたがいにつながりあっているのである。
(3)好気性菌と嫌気性菌が共存できる状態
(4)一方だけの利益 - 偏利共生
 第18表は、ビタミンを要求する細菌の数と、同じ土から分離した細菌で、そのビタミンをみずから合成して、からだの外へ分泌する細菌の数とを示したものである。これによると、ビタミンをつくる菌はそれを必要とする菌より多く、この数値からみて、土の中でビタミンのやりとりをめぐる細菌間の助け合いがおこっていると解釈してもおかしくない。

3 微生物どうしの敵対・拮抗作用
(1)排除する力、抗菌力
 放線菌の中には、ほかの微生物の成育を抑えたり殺したりする物質、つまり、抗生物質をつくるものが多い。発見された抗生物質の大部分は放線菌から分離されたし、その放線菌もほとんど土壌から拾い出された。
(2)微生物どうしの食い合い
(3病原菌抑止土壌と助長土壌

四、高等植物と微生物の関係

1 植物と微生物の接点
 根からはいろいろな有機物が供給される。光合成した有機物の5~40%、平均で20%くらいが根の外へ出るという測定結果がある。根からは分泌物の他に、根の先端にできる粘質物(ムシゲル)・根幹細胞・根毛・表皮細胞の脱落物が微生物にエサを供給する。

2 共生関係
(1)共生関係の分類
(2)菌根菌と菌根
①外生菌根
 根の表面に菌糸のマットのあるものを外生菌根という。本体は菌糸だが、働きとしては根毛と同じである。根の表面積を広げることで、植物の養分、とくにリン酸の吸収を助けている。
②VA菌根
 内生菌根は植物細胞の中に卵状の袋(囊状体)をつくるばあいと枝分かれした星状のもの(糸状体)をつくるばあいとがある。この菌根はアブラナ科とスゲ・水生植物をのぞく多くの植物でみられる。囊状体の英語の頭文字V、糸状体の頭文字Aをとってこの種の菌根をVA菌根と呼んでいる。土に出っ張っている菌糸の網のせいで、土の中で動きにくい成分とくにリン酸を植物の根よりも効率よく吸収し、この養分は植物に供給される。

3 土壌伝染性の病原菌

4 植物成長ホルモンをつくる微生物
 アゾスピラムとかシュウドモナスという細菌が根圏にふえると作物の生育が促進されるという報告がたくさん出てきた。これらの菌がいると根の形態が変わり、養分の吸収が促され、ときには開花が促されることがある。ホルモンの生成、土壌伝染性病原菌に対する拮抗、植物の鉄吸収の促進などが理由と考えられるが、よくわかっていない。
 シュウドモナスの仲間には根の成長を促したり、植物病原菌の生育を抑えたりする働きのある細菌がいて、根圏微生物の一員となっていることがわかっている。

五、土の生化学的働きと微生物

1 〝土は生きている〟
 肥沃なはたけ土壌1グラムには細菌の菌体が乾物で約0.2ミリグラム、菌糸が長さで100メートル、乾物で約0.2ミリグラムくらい含まれている。
 畑の一塊の土はちょうど発芽中の種子や動物のように呼吸をしている。土壌50キロは一日で2~10リットルの酸素を吸う能力をもっている。ヒトでは体重50キロの成人で一日300リットルの酸素が使われる。1グラムの土の中にはわずか0.4ミリグラムつまり2500分の1しか微生物の重量がないことを考えれば、土の中の微生物の活動が活発なことがわかる。
 尿素はウレアーゼという酵素で分解され、アンモニアになる。この酵素は土の中では、主として微生物によってつくられる。いろいろな生物の組織がウレアーゼをもっているから、尿素を分解するのと全く同じように、土塊もウレアーゼの働きを持っている。
 10アール当たりアンモニア態チッソを10キロ使ったとすると、土壌1キロでは0.1グラムのアンモニアになる。これが10日(地温30度)で硝酸になるには、土1キロで八億匹、つまり1グラムで80万匹の硝化細菌いればよい。肥沃な土壌ならこのくらいの数の硝化細菌はいることがある。こうしてみると、夏季では尿素肥料が施されると一日でアンモニアに変わり、10日もたたないうちに硝酸になっていくのである。
 土が生きているとは、土塊の中にいる無数の小さな生き物の営みの表れである生化学反応に着目して、こう擬人化しているのである。


第三編  微生物の働きと農業への応用

農耕地生態系と微生物
 もとより農業の目標は農産物の増収や品質向上にあり、微生物を育てることが目的ではない。しかし、微生物に都合の悪い条件は、作物に取っても好ましい条件ではないはずである。そしてまた、微生物の生活条件がととのうような土壌管理を行い、有用微生物の活動を促進してやることは、ひいては作物の生育向上にもつながる。

畑と水田の違い
 水を張った水田では、いうまでもなく酸素が不足し、土壌中の微生物は嫌気的な活動をする。ところが、畑では酸素の供給も豊富なので、好気的な微生物の活動がはるかにまさる。こうした水田と畑の条件の違いは、そこに住む微生物の種類にも違いをもたらしている。

二、水田微生物の性質と管理

1 水田土壌の特殊性
2 水田還元化は規則的に進行
3 田水面と土壌表層の微生物
4 微生物応用の水田管理
  生ワラとか粗大有機物の表面施用は分解に伴ってできる有害な有機酸がイネの根に触れないという利点とチッソ固定が促されるというおまけがつくので、技術的に検討する必要があると思う。それを気にしていたところ、『現代農業』昭和60年十月号を見た。ここに鳥取の谷口さんの刈敷を畝間に敷く自然農法のイネつくりが紹介されている。同誌のグラビアに乗っている畝間に敷かれたくさりかけの刈敷の写真はラン藻の盛んな生育を疑わせる青らん色をしている。農民の知恵が生み出した微生物利用の技術といえるのではないだろうか。
5 自然の妙を生かす農業
 日本全国の平均でみると、稲の収量は、チッソ肥料をやらないばあいでも、6~7割はとれるといわれる。少なく見積もっても、半分は穫れる。一方、熱帯の水田では、いまだに肥料はほとんどやらない昔ながらの栽培をつづけている。むろんイネの収量は日本より低いが、それでも収量が年々低下することなく、ほぼ一定の水準が維持されている。
これは、水田は自然に肥沃化することができるからである。その一因は、かんがい水によってたえず、ある量の植物の栄養分が水田に運び込まれることにある。もう一つはいまのべたように、田面水でラン藻をはじめとする藻類によって、炭素(光合成作用)とチッソ(チッソ固定作用)との供給がたえず行われているからである。
 むろん、今日の稲作は、水田の自然肥沃化だけにたよる〝自然農法〟ではない。生産増大のためにつとめて肥料を施す〝人工農法〟である。しかし、自然の妙を否定し、自然を破壊してもよいということではない。水田で、イネ科以外のいっさいの緑色植物を雑草として除去しつくしてしまうことが極端に進むと、ここで述べた水田での〝自然の妙〟が破壊されてしまうのである。長い将来のことを考えれば、これが水田の地力の減退をまねくおそれさえもおぼえる。

三、畑土壌と微生物

1 耕起と土壌微生物
(1)表層に多い微生物
 第58図は、畑を30~35センチまで耕起したばあいと15~20センチ耕起したばあいとで、それぞれ層位別に、微生物の分布を示したものである。表層に最も多いのは当然であるが、耕深20センチまでの区では、それ以下の土層の微生物数がどれも急激に減少していることがわかる。つまり、耕起が深くまで行われるところほど、微生物も深くまで住みついていることになる。これは耕地一般の特徴である。
 耕深が深くなると作物の根張りも深くなり、残根の分布も深くなり、これがいっそう深い層の微生物活動をうながすようになる。
(2)不耕起と微生物活動
 不耕起栽培ではしばしば、前作の刈り株のすぐそばに種子がまかれる。このようなばあい、有機物の局所的な過多が作物種子の発芽、苗立ちに悪影響を与えることもある。この原因としては、ワラ・刈り株・残根の分解に伴って、作物の生育に有害な物質ができること、比較的新鮮な有機物の分解の初期に有機物残渣に発達する未分化寄生菌による根の障害がおこることが知られている。
(3)有機物の分解による障害物質の生成
 有機物が分解するときに生ずる植物生長阻害物質としては、有機酸、フェノール性化合物、エチレンなどが知られており、その生成量も多い。その生成量と作物生育阻害との関連が確かめられているものとしては、酢・酪酸などの脂肪族有機酸がある。
 これらの有機酸は嫌気条件で生成されるので、畑といえども一時の大雨で畑が湛水したときには、植物の生育を害する有機酸がかなりたまり、播種した作物の株立ちがいっそう悪くなる。あるいは畑の中でも排水の悪いところで株立ち障害がひどくなるということもしばしばみられる。

2 新鮮有機物の施用と土壌病害
3 化学肥料と土壌微生物
4 連作障害と微生物

(評)
 食物連鎖や遷移など生態学の基礎的内容から入り、微生物と農業のかかわりまでを解説した、農業を営む人にとっては知っておきたい微生物についての教科書である。
 昭和61年発行で、古い本であるが、最近話題の菌根菌など根の周りの微生物のことにもしっかりと触れてあり、本の古さほど内容は古くなっていない。畑の微生物についておさえておくには格好の一冊といえる本である。

平成23年12月

キャベツ 47

202103241(700t).jpg
12月1日に播種した春キャベツです。
2月18日に冬の嵐で防虫ネットがはがされたすきを狙われて、ヒヨドリに外葉を食べつくされてしまいました。
詳しくは、2月18日の記事をご覧いただければと思います。
成長点のある芯の部分は食べられていなかったので、その後、内側の葉が大きく展開してきて、新たな外葉となり、結球が始まりました。このまま成長してくれれば収穫までこぎ着けそうです。
202103242(700t).jpg
一方、こちらは露地キャベツと同じ日にハウスの空きスペースに定植したものです。温かい分だけ成長が早く、収穫時期を迎えています。数が少ないので出荷に回さず、自家消費分として利用しています。
202103243(700t).jpg
こちらは2月4日に播種したグリーンボールです。
3回に分けて定植し、昨日定植が終わりました。




本110 農文協編「有機物を使いこなす」

農文協編「有機物を使いこなす」
農文協(1986年刊)
有機物を使いこなす

まえがき
 堆肥だけでなく、炭や灰、ボカシ肥として利用する。施し方もただ土に入れ込むのではなく、根の周りに施したりマルチにしたりする。それは〝少ない有機物で大きな効果〟をあげる方法です。今風の土つくりは、手間と金がかかるわりに効果が少なく、むしろ害を出していることもあります。

第一編 根と微生物のただならぬ関係

根に住む微生物の三つのはたらき
1 根の養分吸収を助ける
 菌根菌は根の内部に菌糸を伸ばし、根から養分をもらう一方、根の外に伸びた菌糸は、土の養分を吸収し、作物の根に送ります。菌糸は7~10㎝も伸びるので作物は根の届かないところにある養分も吸収することができます。
 根の中に入り込まない微生物の場合、微生物はマイナスの電気を帯びており、それらはカリ、石灰などプラスの電気をもった養分を引きつけます。根から離れたところにあるカリや石灰などを、体にくっつけて根の近くに運びます。
 リン酸が少ない土では、根はアミノ酸などの分泌物を増やすことが知られています。分泌物が多ければ根圏微生物の繁殖が旺盛になり、それらが根へのリン酸の供給を助けます。

2 微生物の分泌物が根の活力を高める
 微生物が出す分泌物や死んで分解され根に供給する養分の量は、根の排出物の量に匹敵すると言われています。微生物は根の分泌物を取り込み、形を変えて根に供給していると考えられます。
 微生物の分泌物も、アミノ酸、酵素、ホルモンなど多様で、これらは直接根に取り込まれるほか、根に刺激を与え、根の成長や活力強化に一役買っています。
実験から、微生物が出す分泌物には、根の伸びや発根を促す物質が含まれているらしいのです。
 微生物の分泌物は、地上部の見た目の生育をよくするのではなく、むしろこじんまりとしたしまった生育になります。根はよく発達し、地上部はビシッとしまった姿になる、つまり健全な生育です。茎葉の繁茂よりは、病気への抵抗力や品質の向上を促す。それが微生物が供給する成分の働きなのです。

3 有害な菌から根を守る
 菌根菌や多種類の微生物が住みついた根は、土壌病害にやられにくいものです。

根の活力と微生物相
根圏と非根圏の微生物相の違い
 非根圏の微生物相は、種類はきわめて多いがエサが少ないため、繁殖スピードは緩やかで活性が低くなっています。一方、根圏の方は根の分泌物があるので養分の量は多いのですが、養分の中味は非根圏に比べて単純です。したがって、根圏の微生物相は種類が少なく、特定の微生物が高い活性をもっている状態になっています。つまり、非根圏の多様な微生物の中の一部が根圏に寄ってきて繁殖し、根圏微生物相を形成するのです。

連作障害の起こるしくみ
 ある作物をつくるとその根の分泌物を好む特定の微生物が根圏で増えます。これらの微生物は次に同じ作物が植えられると、いっそう力を得て繁殖するようになります。こうして連作するたびに、特定の微生物だけが根圏を占拠するようになり、微生物が単純になってきます。こうした微生物の中には、根の分泌物をエサとするだけでは満足せず、根の中に入り込み、根の細胞を殺してエサとするものもいます。これが病原菌です。病原菌は根がないときは、土の中でじっとがまんして生き続ける強さがあります。エサがないときはじっと耐え、エサがあるときは猛烈な勢いで増える、それが土壌病原菌の性格なのです。
 土壌病原菌も、数が少ないときは普通の微生物です。むしろ、よい働きをしているかもしれません。特定の微生物だけが異常に増え、微生物相が偏ることが問題なのです。この場合、根を直接殺すような被害が表れなくても、根の発達、活力は低下します。

有機物利用の何が大切か
 生きた根は分泌物として有機物を出し、生育終了後は厖大な量の残根として微生物相に大きな影響を与えます。連作障害の原因も、根がつくっているという側面が強いのです。この根をどう活かすか。輪作は、他の種類の作物の根によって微生物相を整えるという意味では根を生かす方法ですが、有機物利用に当たっても、この根をどう扱うかが大切になってくるわけです。
 昔の農家は、堆肥を五トンも六トンも入れるということはしませんでし、できませんでした。有機物をただ土にぶち込むというのでは、芸がありません。


第二編 微生物を味方にする有機物利用法

根こそ まず第一の有機物だ
 収穫直後の弱った根をめがけて、土壌病原菌が集中的に増える事が考えられます。これらは、土の中でしぶとく生き抜く性格が強いので、そのままおいておくことは、連作のように土壌病原菌の密度をしだいに高めることになります。そこで、収穫後に有機質を施し、腐食性の微生物や線虫をふやして寄生菌の密度を減らす、それが田島さんのやり方です。そのための微生物のエサの補給として、収穫後にナタネ粕120kg、米糠30kgの有機質肥料を施すわけです。
 有機物をどう畑にぶち込むかを考える前に、畑の微生物がどう変化しているかをつかむことが大切だと、田島さんのやり方は教えてくれます。

堆肥ばかりが有機物ではない
有機質肥料の真価を引き出すボカシ肥
 山土と一緒に発酵させることにより、土に養分をつかまえさせることができ肥効が長続きします。また、土を入れることで量が増え、しかも、有益菌が土になじんだ形で多く住んでいる形になり、土に施したときの効果が安定するわけです。せっかくの有機物が土の仲の悪い菌に利用されることなく、根圏微生物を豊かにする、これがボカシ肥の最大の特徴です。

化学肥料では代替できない効果 灰
 昔の農家は、カマドの灰をためておき肥料に使ったものですが、それが、微生物のはたらきをよくする、土壌の乾湿の害や病虫害を防ぐなどの効果があり、改めて注目されています。
 尿素、尿酸の濃度が高いナマの人糞尿では作物の根が肥当たりすることが多いのですが、灰のアルカリ分がそれを中和することと、養分の多くは繁殖する微生物に取り込まれることにより、肥あたりや流亡が少なくなり、効果が高まります。

有益微生物のすみかをつくる 炭
 炭は高温で蒸し焼きにされているので、有機物はまったくなくなりアルカリ性である。多孔質で表面積も多く、空気や水を保ちやすい。こんな性質を持ったものを土に入れると、一般の微生物はよりつけず、独立栄養性の窒素固定菌や光合成細菌、藻類などが入り、次いで競争に弱い根粒菌や菌根菌が入ることになる。

写真:炭はダイズの根粒菌をふやす

写真:炭に引きつけられるように伸びるタマネギの根

堆肥は完熟でなければならないか
 完熟堆肥は、病原菌など有害な菌はいなくなっています。一つは発酵熱で死ぬこと、もうひとつは、放線菌や細菌などに食べられてしまうことです。土壌病原菌の体は、キチン質で出来ているものが多く、放線菌のかっこうのエサになるといわれています。

土の窒素を奪い取る
 未熟有機物の欠点は、ひとつは、窒素饑餓を招くことです。未熟なものをエサとして微生物が急速に繁殖するとき、窒素が同時に必要になり、土のチッソ分が微生物にとられて一時的に窒素不足の状態を作り出すわけです。このとき作物が植わっていれば、うまく育たないことになります。

有機物素材は何がよいか
木質素材(樹皮、オガクズ)
 繊維分の多い素材ほど、フェノール類、ヤニ成分などの有害物質が多く含まれています。これらの物質は高温で処理しなければ、取り除くことが出来ません。高温で発酵させることです。
 繊維分の多い素材ほど腐りにくく、効果も出にくい。一度発酵させた木質堆肥ですら、堆肥の効果が出るには三~四年かかります。

窒素質素材(堆肥、ダイズ葉、下水道汚泥)
鶏糞、豚糞、牛糞、尿、汚泥などがこの部類に入ります。

雑草や青草
 生草でまだ青いものは、糖分やタンパクが多く有用菌のかっこうのエサになります。できれば根もいっしょに堆肥にするとなお効果的です。雑草の根には菌根菌などの有益微生物がいっぱいついているからです。山の落ち葉にも天然の有益微生物がたくさんついています。
 イナワラや家畜の厩肥だけでなく、雑草や落ち葉を少し混ぜてやる、それだけで、堆肥の質がぐっとよくなります。
 水の中で腐った有機物も効果的です。これらには、嫌気性の光合成細菌などが多く住んでおり、この光合成細菌は放線菌のエサになるので、これを堆肥の素材に使えば、有益な放線菌が多い堆肥ができるというわけです。ため池などにある腐った有機物も素材として生かしたいものです。
 ほかに堆肥作りの添加剤としては、コメヌカが有効です。コメヌカは栄養に富んでおり、より微生物をふやす方向にはたらきます。

有機物の施用法 微生物との関係
良質のものを根の近くに
 完熟堆肥を量も多くなく使う場合は、植溝施用が有利です。つまり、根が多くはる部分に集中的によい堆肥を施すのです。生育の初期、堆肥施用で有益な微生物が多くなっているところへ根が伸びることによって、根圏微生物相が豊かになります。しかも、初期の根圏微生物相はその後も引き継がれる傾向があり、有益な微生物が少ないところに伸びていっても、根圏の微生物は維持され、有害菌の影響も受けにくくなります。わるい堆肥を多く入れるより、少量でも有益菌の多い堆肥を用意し、上手に使っていく、これが賢いやり方といえそうです。

土を上から作る
 根は土の表層に多くはるもので、表層に施された堆肥はこの根を守ってくれます。一方、表層に敷かれる敷きワラも土の乾燥を防ぐなど根の働きを守ってくれます。こうして施された表層の有機物の肥料成分や微生物の分泌物は、雨などによって土にしみこみ、根に効率よく利用されます。
 そして大切な事は、有機物の表層利用、表層利用を繰り返す中で、土が上からだんだんよくなっていくことです。有機物の表層利用は害も少なくその作物の根を守りながら土をよくする方法です。微生物や作物の根が上から土をよくしてくれるのです。


第三編 農家に学ぶ上手な有機物活用法

刈敷・温水堆肥
無肥料・無農薬イネつくりを支える  鳥取県 谷口如典
農薬・化学肥料を使わず25年、谷口さんの自然農法=刈敷農法
 谷口さんの特徴は、田植え後、ヨシやマコモを畝間に刈敷として敷き込むところにある。
 戦中戦後の化学肥料を使えない時代に、隣村の篤農家はヨシやマコモ、草を刈って堆肥に積み、それを田に入れ、7~8俵の収量を上げていた。
 谷口さんは主にコシヒカリをつくっている。出穂はだいたい八月五~十日前後になる。すると六月下旬に敷いた刈敷が腐り始めて、土へ養分として供給されるころがちょうど穂肥の時期になることになる。気温も水温も上がり始めてくる時期でもあり、刈敷の分解も進んでいく。化学肥料の穂肥のようにすぐに色が出て、あっ・・・効いたな、という感じではなく、たいへんゆっくりと色が変わる。谷口さんの観察では、収穫の時期になって、刈敷の分解がすすんでいる年ほど収量も高い。だから刈敷を十分に腐らせるように、谷口さんは水の駆け引きにも十分注意している。そこでいつも刈敷が湿っているように水を管理して、刈敷が腐りやすいようにしている。
 しかし、刈敷は穂肥の時期にすべて腐るわけではない。ある程度の養分の補給にはなるかもしれないが、刈り取り時までに腐る刈敷は3~4割であることを考えると、刈敷の本田期間中だけの養分では、10俵といった収量は望めないと思われる。
 ところが、刈敷は田んぼの中で根の働きを強める働きをしていることがわかった。
 刈敷は天日に3~4日干すといっても有機物としては生と同じである。その生の有機物を土の中に入れるのではなく、土の上に敷くところにポイントがある。
 自然の中では土砂崩れでもない限り生の有機物が土の中に入っていくことはない。地上に落ちた落ち葉や落枝は微生物などのはたらきによって徐々に腐り、腐植となって土を肥やしてゆく。この原理を田で実現したのが谷口さんの刈敷による自然農法である。
 自然の摂理にかなった方法であれば、たとえば生の有機物を刈敷として土の上に置く形をとれば、自然は刈敷を徐々に腐らせ、稲の根のはたらきを強くする液汁や腐植といった恵みを与えてくれるのである。
 七月に入ってからまた草が生えてくることがある。こんなとき刈敷が入っていれば、その畝間から草が生えてくることは少ない。刈敷がマルチのはたらきをしていることになる。
 また、谷口さんは、刈敷は着物を着ているのと同じだ、という。微生物のはたらきもあって地温も高くなり安い。土が温かければ根も保温される。イネの生育もよい状態に保たれることになる。

燻炭肥料
肥料効果を高め連作障害を防ぐ 愛知県 水口文夫
堆肥になりにくいものを燻炭にする
 燻炭肥料の材料は何でもよいが、堆肥にできるものはなるべく堆肥にして、むしろ堆肥になりにくいものを燻炭にするのがよいと、私は思い、生け垣の刈り枝、果樹園の剪定枝、ササや地下茎、山林の雑木、雑草などを燻炭にしている。

鶏糞利用
鶏糞が草を育て草が土をつくる 和歌山県 西川満佐留 草が大地に生え、それが枯れて土にかえっていく、これが自然する土つくりです。この草を大切にし、大きく育つように手助けするのが鶏糞です。
冬草は深耕の役目を果たす
 私たちの目に届かない土の中にも、地上部をつくり育てていた同じ量の根があり、土の中に埋もれたまま枯れて有機質として土を肥沃にしてくれる。根を1.5~2mまで伸ばす冬草は、特に深耕の役目を果たすのです。
夏草は干ばつを防ぐ
 草刈りは一ヶ月にほぼ一回。一回目は五月、六月に二回目。三回目の七月は夏草の本番です。あまり遅れないように刈り取りますと、精一杯大きくなった夏草は、真夏の干ばつを防ぐにはかっこうの敷き草です。草の根も半分くらい枯れて腐り、肥料化します。八月にも草は伸びてきますが、七月の約半分の量です。草量は半分ですが敷き草と施肥になり、盛夏のひでりから果樹を守ってくれます。
 根が深くまで活発にはたらくことによって、干ばつにもさらに強くなります。地下1mより深いところは、水分は年中ほとんど変わりないいいますから、雨が長い間降らなくても強い日光を天の恵みとしてだけ受け、果樹はますますおいしい果物つくりに精を出してくれます。
 施した鶏糞は、果樹に吸収されるよりむしろ草に吸収されます。その草が枯れたり、敷き草になって土を肥沃にしてくれます。鶏糞と果樹を結びつけてくれるのが草なのです。草の力を借りて土を肥やし、果樹を育てるのです。

モミガラ
生でOK絶大な土壌改良効果 兵庫県 井原豊
 モミガラは邪魔者扱いされるが、おがくずのように有害成分(リグニン、タンニン)を含まないので、最高の土質改善ができる。
 モミガラの入手が困難ならば、ムギワラ、イネワラがその次によい。
 モミガラは堅いから腐植の寿命は長い。腐植は有機物が腐った粕である。これが肥料を捕まえる力、保肥力となって数年間はたらく。ただで手に入る腐植資材、それも地上最高の土壌改良資材といえる。

自然酵素堆肥
病気撃退・味がよくなる 熊本県 古賀綱行
 雨ざらし日ざらしの堆肥では肥料効果も失われてしまいます。堆肥を六時間雨ざらしにしただけで窒素の24%、リン酸10%、カリはなんと80%も流亡したというデータがあり、堆肥のミイラができあがります。
 イナワラや雑草には、すぐれた天然の納豆菌のようなものがうようよしているので、それをそのまま堆肥化します。またイナワラ、雑草には、作物を病害虫に強くするケイ酸が多量に含まれています。
 イネ科の多年草、チガヤの根は、子どもの頃お菓子がわりの甘味としてかんでいたほど糖分が多いので、堆肥中にバクテリアがよく繁殖します。またニンジンの頭の部分には酵素がたくさん含まれているので、これを元ダネにして酵素いっぱいの土コウジができます。 この自然堆肥、ニンジン酵素コウジで、微生物や酵素を生きたまま畑に増殖、増産し、土の中の微生物のバランスをよくしていこうというのが私の考えです。
 自然酵素堆肥は、ハブ草、エビスグサなどの前作と組み合わせればクロルピクリンに優るとも劣らない効果があると思っています。


堆肥つくりの手順 藤原俊六郎

1 材料の選び方
 堆肥化で重要なのは炭素率(炭素と窒素の含量比、C/N比ともいう)と水分含量である。炭素率は30~40、水分含量は55~60%がもっとも適している。微生物の炭素率は糸状菌10,細菌50程度であり、土壌中で有機物は分解し10程度の値を示す。堆肥もこの値に近づいていく。このため炭素率の低い鶏糞(6~8)などは、窒素を放出して炭素率を10になろうとする。そこで窒素が無駄になる。炭素率が高いものはこの心配はないが、炭素率が100以上の木質は、そのままでは分解しない。イナワラだけで堆積しても分解が遅いのは、炭素率が60程度と高いためである。イナワラ1トンに対し、4~5キロの窒素を加えれば炭素率が30程度となり、分解しやすくなる。炭素率をあわせるために窒素を添加するときは石灰窒素が適している。これは、堆肥化にはたらく微生物は弱アルカリ性を好むため、酸性化の原因となる硫安よりは適している。
 水分は55~60%となるように水分調節剤を混ぜるか、灌水をする。水分がやや高いときは十分孔隙ができるよう軽く堆積し、水分が低いときは十分踏み込んで堆積するとよい。
 米糠、鶏糞や落ち葉を少量混合すると微生物が利用しやすい成分が多く、初期の微生物活性が盛んになる。さらに、完熟した堆肥を少量混合してやると、優良な微生物の持ち込みに役立つ。

2 堆積の方法
 堆積場所は、しぼり水が排水できるよう工夫された場所がよい。簡易には土を数㎝盛り土するか、コンクリート製の堆肥盤をつくればよい。スノコのようなものがあれば、空気の流通の点からも最高である。
 堆積規模は5~6立方m程度がよい。これ以上の規模で堆積するときは、強制通気をするか、ムギカラやカヤのような孔隙の多い資材を使い、空気の流通をよくする必要がある。
 微生物の活動には20~40度が最も適している。このため冬期に積み込むと初期の微生物活性が弱い。また冷え込みやすいため、夏期よりも固めに踏み込み、周囲にワラや板で囲いをつくるとよい。一定の大きさの大枠をつくっておくと、堆肥の容量がわかるために便利であり、ぜひとも枠をつくっておくことが好ましい。
 微生物は紫外線に弱いため、直射日光に当たらない工夫をするも大切である。屋根があればよいが、屋外のときはシートやむしろで覆う。
 発酵温度は70度程度がよく、低すぎると腐熟は遅くなり、高すぎても〝やけた〟状態となって養分の減少をまねき好ましくない。

3 二次発酵の方法
 堆積場所は畑に近く、簡単な屋根をもつ堆肥置き場か、屋外の時はビニールシートをかぶせておく。降雨で肥料成分が流亡するのを防ぐためである。雨によって流亡しやすいのは窒素とカリであり、リン酸はほとんど流亡しない。雨に当てることによりカリが流亡しやすいことに目をつけて、積極的に雨にさらされることもある。
 十分腐熟したものは、水分を30%以下に落としておくと、分解がほぼ止まり、長期間保存しておくことができる。
 二次発酵による腐熟は重要なことであるが、イナワラ堆肥や木質を含まない厩肥では行わなくても問題はないといえる。また、土壌施用後、作付けまでに一ヶ月以上の期間があるときは、二次発酵をしないで直接土壌施用した方がよい。これは、この間に土の中で十分に腐熟して、作物に対する障害がなくなり、養分の損失もないためである。

平成23年11月


トマト 16

20210322(700t).jpg
2月1日に播種して、2月25日に鉢上げしたトマトの苗です。
15㎝くらいの大きさに育ってきました。
トマトは育苗期間が長くかかります。
あと一ヶ月位して、一段目の花が咲いたら、定植時期になります。

トウモロコシ 11

202103211(650t).jpg
 1月24日に播種したトウモロコシです。
約2ヶ月が経過して、50cm位まで育ちました。
202103212(650t).jpg
一方、こちらは2月7日に播種したものです。
草丈は30㎝くらいです。播種時期の2週間の差は大きいですね。
202103213(700t.jpg
早く播いたほうは基部からわき芽が伸びてきました。
このわき芽ですが、教科書によって取ったほうがいいと書いてあるものと、取らなくても構わないと書いてあるものがあって、意見が分かれているようです。割と簡単にもぎとれるので、「きまま農園」では今日、取ってしまいました。

本109 細谷 剛「カビ図鑑」

細谷 剛「カビ図鑑」
全国農村教育協会(2010年刊)
カビ図鑑
細谷 剛
1963年、東京都生まれ。国立科学博物館植物研究部勤務。
出川 洋介
1968年、神奈川県生まれ。筑波大学菅平高原実験センター勤務。
勝本 謙
1927年、清津府生まれ。鳥取大学教授。
2010年に日本産のあらゆる菌類の記録を集大成した『日本産菌類集覧』を発刊。

カビの世界へようこそ
 最近は、菌類は人間とさまざまな利害関係を持つばかりでなく、自然界では生物遺体を分解したり、動植物と共生して栄養のやりとりをしたり、増えすぎた生物を間引く役割を担うなど、環境を調和する役割を持つ重要な存在であることが分かってきました。

第1章 カビの世界の扉を開ける
 ミカンに生える緑色のカビはペニシリウム・ディジタートゥムというカビなのです。
 カビは97,000種いますが、菌類の推定種数は150万種とも言われていて、われわれが知っているのは本当にわずかな部分だけだというわけです。

第2章 カビを探してみよう
サクラてんぐ巣病菌  タフリナ・ウィースネリ(子囊菌) 
 ウラジロモミのてんぐ巣病はメランプソラ・カリオフィラセウムによって、タケのてんぐ巣病は、アキクロスポリウム・タケによって引き起こされる。
モモ縮葉病菌  タフリナ・デフォルマンス(子囊菌)
オニタビラコ浮腫病菌  プロトミケス・イノウエイ(子囊菌)
マサキうどんこ病菌  オイディウム・エウオニミヤポニキ(不完全菌)
ツツジもち病菌   エクソバシディウム・ヤポニクム(担子菌)
バラさび病菌
ラグミディウム・ムクナトゥム(担子菌) このさび菌は、5種類の胞子をすべてバラの上でつくる。
異種寄生性のさび菌
  マツこぶ病菌  (マツ←→ナラ類)
  ススキさび病菌 (ススキ←→オオバコ)
  シバさび病菌  (シバ←→ヘクソカズラ)
  モモ白さび病菌 (モモ←→ヒメウズ)
ナシ赤星病菌  ギムノスポランギウム・アシアティクム(担子菌)
タケ赤衣病菌  ステレオストラトゥム・コルティキオイデス(担子菌)
クズ赤渋病菌  シンキトリゥム・ミヌトゥム(鞭毛菌類)
クサヨシ麦角病菌  クラビケプス・プルプレア(子囊菌)
トウモロコシ黒穂病菌  ウスティラゴ・マイディス(担子菌)
オオムギ裸黒穂病菌 (担子菌)
タケてんぐ巣病菌  アキクロスポリウム・タケ(子囊菌)
虫を襲うカビたち
 白きょう病菌   (不完全菌)
 ハナサナギタケ  (不完全菌)
 セミノハリセンボン(不完全菌)
 ハエカビの仲間  (接合菌類)
こうやく病菌  セプトバシディウム spp(担子菌)
すす病菌 (子囊菌)
キズタすす病菌 メリオラ・ディコトマ(子囊菌)
クワ裏うどんこ病菌 (子囊菌)
黒紋病菌 (子囊菌)
カキノミタケ (子囊菌)
マコモ黒穂病菌 (担子菌)
イチゴ灰色カビ病 ボトリティスspp.(不完全菌)
コウガイケカビ (接合菌)
キノコに寄生するカビ
 タケハリカビ (接合菌)
 フタマタケカビ (接合菌)
 ヒポミケス (子囊菌)
クロメロスポリウム (不完全菌)
アンペロミケス (不完全菌)
水生不完全菌
トリコデルマ (不完全菌)
ペスタロチオプシス (不完全菌)
樹液のカビ (不完全菌)
ベト病菌 (卵菌)

第3章 実験!カビを捕まえよう
① 水中のカビを釣る
② 土の中からカビを呼び出す

第4章 カビと深くつきあうために
カビを集めてみよう
ルーペ・顕微鏡で観察しよう
カビの写真を写そう

まとめ 菌類への深い理解をめざして
菌類の役割
 本書で扱ったカビの多くは、植物寄生菌です。これらの多くは生きた植物や動物にとりついて、時としてその命を奪います。一見悪い印象を与えますが、これは増えすぎたり、弱ったり傷んだりした生物を間引き、自然界のバランスをとったり、健全化する働きであると考えられています。
平成23年10月

(評)
 私のように菌類を専攻したものにとっては、よくぞ出してくれたと快哉を叫びたくなるような、わかりやすい菌類の入門書ができたものである。
 写真が新しく、よく撮れていて、しかも美しく撮ってある。どのように撮っても、カビはカビであるから、カビくさいのは避けることができない。しかし、カビを専攻した者にとっては、顕微鏡下の微生物の世界に見られる、思わぬ造形美にはっとすることがよくある。その気持ちが、この本を完成させたであろうことが良く分かる一冊である。

20210318(700t)sumire.jpg
 スミレは私の畑には割と多く見られます。繁殖力が強い植物ではありませんが、はびこって野菜に害を及ぼす植物ではないので、見つけても排除しないでそのままにしておきます。それで人為選択的に生き残って、畑のあちこちで花を咲かせます。

アスパラガス 13

20210318(700t).jpg
 ツクシの子ではありません。
今年1番に芽が出たアスパラガスです。
この株は収穫しないで勢力を維持するため大きく成長させようと思います。

キャベツ 46

202103171(600t).jpg
 2月4日に種をまいて、2月23日に鉢上げしたグリーンボールです。
定植できる大きさに育ってきました。
今日は、「きまま流」キャベツ定植の段取りを順を追って紹介します。
202103172(600t).jpg
グリーンボール用の畝を2本用意しました。
畝の長さは20メートルあります。畝の中央にひもを張って植える位置がずれないようにします。
30センチ毎に移植ごてで穴を掘って、溜めておいた雨水をたっぷり注ぎます。
写真は穴の横にグリーンボールの苗を置いたところです。
202103173(600t).jpg
苗を植えつけました。
今日は30個の苗を植えて終わりにしました。
長時間、前屈みになる姿勢を避けるためです。
苗は120個ありますので、この分だと4,5日かかるかもしれません。
無理はしないと心に決めました。
やれることをやれる範囲でやっていこうと思います。
202103174(600t).jpg
最後に防虫ネットをかけます。
今日もモンシロチョウが飛んでいるのを見かけました。
最初、防虫ネットを買ったとき、値段が高すぎると思いました。
しかし、何年も使えて効果は抜群なので防虫ネットは無農薬栽培には必須のアイテムになっています。



きままに投資 21

投資
第4ラウンド経過報告

 2月15日に日経平均株価が30年半ぶりに30,000円の大台を超えた事を記念して、翌日、衝動買いにも近い形で第四ラウンドを始めました。あれから1ヶ月が経ったので、今日までの結果を報告します。

銘柄、(今日の株価 - 購入日(2月16日)の株価) × 購入株数 = 損益額  の順に書きます。
 
三菱自動車工業  (327 - 300) × 300株 = +8,100円
三菱UFJフィナン (614.5 - 556.6) × 200株 = +11,580円
マルハニチロ   (2713 - 2482) × 100株 = +23,100円
日本電産     (13150 - 15145) × 10株 = -19,950円
大成建設     (4255 -3920) ×  50株 = +16,750円
損益額の合計は、+39,580円となります。

 何と、現時点で四勝一敗の好成績となりました。
第4ラウンドがスタートした明くる日から、全銘柄ともマイナス圏に沈み、日経平均株価とともに下がり続けたので、最悪の場合、個別株投資からは撤退することを念頭に置きながら経過を見てきましたが、どうやら、その心配はなくなったようです。
 ここで手仕舞いすれば、勝ち逃げできますが、株価はもう少し上がっていくと見て、しばらく利益を追求してみようと思います。売るのは4月頃を目論んでいます。そのときはまた報告しますので、お楽しみに。

 3月13日にお知らせした日本電産のチャート分析の結果を報告します。
日本電産0316
株を購入した2月16日は、上向きの矢印で示したところです。
損切りの検討から一転して追加購入の判断へと方針転換したところが横向きの矢印で示したところです。
出来高とろうそく足の下ひげの長さから判断した、この読みは見事に当たりました。
明くる日から三日連続で株価が上昇しました。昨日は下がりましたが、今日また上がっています。
これは株の初心者として、いい経験を積んだと思います。
出来高が大きくなり、ローソク足に長い下ひげがついたときは株価が底をついて反転する可能性が高いということが、リアルに経験できて、いい勉強になりました。今後同じ状況に出会ったら、もっと思い切って株を買うことが出来ると思います。

(このカテゴリの記事は、株をやったことのない人や株は何となく恐いと思っている人や株を始めたばかりの初心者の参考になることを目指しています)


本108 趙 漢珪「土着微生物を活かす」

趙 漢珪「土着微生物を活かす」
韓国自然農業の考え方と実際
農文協(1994年刊)
土着微生物を活かす
趙 漢珪
1935年 韓国で農家の三男として生まれる。
1962年 水原農林高等学校卒業。
1994年 「社団法人 韓国自然農業協会」を設立。現在、その会長を務める。

日本で出会った三人の先生
○山岸巳代蔵先生 - 鋭い観察眼(ヤマギシズムの創始者)
 鶏を育てることにおいても、鶏の基本権を尊重し、愛をほどこすのがまず先生でした。鋭い観察力で徹底的に自然を見つめ、それらを後輩達に対して厳格に伝授しました。「見ずして行うことなかれ、行わずしていうことなかれ」という言葉は、農業で生計を立てているわれわれにとって、今でもこのうえない実践命題だと信じています。

○柴田欣志(けんし)先生 - 酵素と微生物の世界の奥深さ
 その地域の土着微生物、土着酵素を最大限活用する方法でした。また、酵素農法という言葉を初めて使用したのも柴田先生からだったそうです。

○大井上康先生 - 栄養周期理論の体系科学
 ブドウ品種の「巨峰」を作られた大井上康先生の著書「新栽培技術の理論体系」は数十回読みました。植物の生理生態の骨組みが理路整然とまとめられ、全く新しい角度から植物をとらえることができました。私はこの本から、たとえば植物にも「つわり」があることに気付かされました。

 私は以上三人の先生方の愛情あふれる自然観、卓越した発想とずば抜けた観察力、これらをひとつにして、聖書の奥深い真理を根本に置き、韓国の気候風土に合うよう、三十余年間試行錯誤を繰り返し、実践を重ねてきました。

第一章 韓国自然農業の基本

(1)自然の理に従う
 人間の浅薄な知識で組み立てられた化学や物理学的な理論に依拠して作り出された夥しい数の劇薬や商業・工業主義的農畜産学は、生命を尊び、他を認め共に生きていこうとする農心にはそぐわないものです。

(2)必要な農素材は身近にある
 私がまだ幼かった頃祖母からこんな言葉を聞きました。「自分の排泄物を三年間食べないと黄色い花が咲く」というものです。私はこの言葉を理解するのに40年以上かかりました。これは自分のの排泄物で栽培した、その地域の自然野菜を三年間食べないと糖尿病や黄疸になるという意味です。
 自分の体の一部を燃やして発酵させて作った栄養分が、健康を守るには大事なのだということです。キュウリはキュウリのわき芽で、トマトはトマトのわき芽で作った天恵緑汁が良いというのも、ここから考えて実践してみてよい結果が見られたからです。
 私たちは営農費多投と無限の労苦を強要する物理学思考方式の無生命的分析栄養学や商業主義的卓上農学にこれ以上だまされるわけにはいきません。

(3)過程を楽しむ
 農民が一生の間に農業をしても、せいぜい四〇~五〇回ほどの経験を積むに過ぎません。それもまた同一の環境と条件下では二度と経験することはできないものです。変化する環境に合わせて日毎新しくなっていく自分が、動植物と共に未来を開き、相互扶助、共存共栄の自然の大運行に従っていくのが真の農民道であると思います。近代農畜業は、目標達成を急ぐあまり、すべてを型にはめてしまおうと四苦八苦しているのです。
 真の農業者は過程を楽しみ、お互いに信頼し合い、劣等感も優越感もなく、完全自由平等のもと親愛の情を持って自然の理に従うところに喜びがあると思います。
(4)自分を零位において観察
 たとえば作物の根についても、今までは深くやわらかく耕すほど根にとってよいということでした。しかし実際には深耕した畑で育った作物は引っ張ればすぐ抜けてしまいます。それに対して、耕さないで植えた作物を抜こうとすると、茎が切れてしまいます。

(5)相互扶助を基本に
 成長するのは鶏であり、豚なのですから、彼ら自身に仕事をさせればよいのです。その仕事を人間が奪っています。動物の生命力を無視し、機械工学的な育て方をすることによって寒さに弱く病気にかかりやすい豚を作ってしまっています。その結果が薬漬けの畜産です。結局、農民自らが苦痛を味わっているのが近代農畜産なのです。 

第二章 土着活性化資材を活かす自然農業の基盤づくり

1 三つの基盤造成
(1)土壌の基盤造成
 ①土壌を耕してはいけない
  自然農業では、土壌を耕さないことをその基本に置いています。本来、土壌を耕耘機やトラクタなどの物理的機械工学で耕す必要はありません。自然はもともと自分で耕しているからです。微生物が耕しているから、人間は微生物が生きられる条件さえ整えてやればよいのです。
 土壌は人間が耕耘したり改良したりしなくても、微生物や小動物によって大事業がなされていくのです。耕耘機の鋭い鉄の刃の代わりに、ミミズのネバネバした唾と柔らかい体の動きで土壌は豊になり、酸素を深層部へ誘導します。そして他の微生物や小動物の棲息域を広げ、作物の根張りをしやすくします。その結果、地温も自然に上がるのです。
 ②稲わらや落ち葉でマルチング
  草を観察すると、同じ草が年中生えているわけではなく、季節によって違い、相互間の節度を保って棲息していることがわかります。ある種の草の種がいつでもどこでも発芽するというものではなく、条件が揃ったときに発芽するのです。
 草を生えさせないようにするには、落ち葉や稲ワラで土の表面をマルチします。落ち葉や稲ワラが手に入らないところでは、翌年作物を植える畑に、秋のうちにライ麦やクローバーをまいておきます。すると、雑草を抑えることに役立つだけでなく、このライ麦を刈り取ってそのまま畑に敷けば、無理なく自然のマルチが可能になります。しかも、ライ麦の根は深くまで伸びるので土壌環境を非常によくしてくれます。
 ビニールマルチでは、昼間は40~50度のサウナ状態、夜は16~17度の冷水のような状態になります。
③土着微生物で微生物バランスを取り戻す
 私たちはこのような掠奪と搾取によって瀕死の状態にある土壌に、活力を吹き込む方法をとっています。まず、前に述べた有機物の被覆で微生物のすみかを作ってやり、地元で採取し自家培養した土着微生物を活性化して、応援軍として土壌に送り、単純化してしまった微生物の相を多様化させます。そしてこれらのエサとして天恵緑汁などをやり、土壌を豊かにします。
 こうなったとき、多様化した土壌微生物は相互が牽制しあって、どれかひとつだけがのさばるということもなく、尊敬しあって棲息するのです。

第三章 作目別 自然農業の実際

1 冷害にも干魃にも打ち勝った底力
2 稲作 - 直まき栽培を中心に
3 野菜栽培 - 花菜の栽培を中心に
4 果樹栽培 - リンゴ、ナシ、モモ、ブドウ
5 養鶏 - 悪臭・糞出し・病気なし

第四章 実例 自然農業の取り組み

土着微生物の力強さに脱帽 松沼憲治(61歳)
 とにかく土着微生物の強さにびっくりしました。市販の購入した菌との違いは、ボカシ肥作りのときに、土への食い込みがよいことです。つまり土との親和性がよいのです。ここが一番大事なところだと思います。
 土着微生物の使用方法は、ボカシ肥として使うのはもちろんのこと、いったん採取したものは米ぬかで増殖して眠らせておくと、一年保管しておいてもその強さは変わりません。土着微生物を増殖しておいた米ぬかを、ハウスには一ヶ月に一回定期的に、300坪で15袋(一袋15キロ)くらいずつ通路に散布しています。おかげで土はふわふわサラサラで、人差し指くらいの太さの竿なら二メートルくらい乃深さまで片手で差し込むことができます。結果として、土は排水がよく、しかも通気もよいため、根が丈夫で病気にもかかりにくくなっています。

平成23年10月

セロリ 10

202103141(650t).jpg
 2月1日に種をまいたセロリがやっと鉢上げできる大きさに育ってきました。大きいものでも本葉2枚を広げて1cmになるかならないかくらいです。
202103142(650t).jpg
 鉢上げをしました。昨年より一回り大きいポットを使いました。昨年の反省を踏まえて、昨年よりもう少し苗を大きく育ててみたいと思います。

きままに投資 20

投資
日本電産の損切りタイミングを逸しました
 2月16日に高値のピークで買った日本電産の株価がズルズルと下がり、迂闊にも、損切りラインの10%を下回ったことに気がつきませんでした。
 振り返ってみると、購入したときの株価 15,145円 が、2月26日には 13,520円まで下がっており、それが10%を下回る 13,630円 より低くなっていることに気がついていませんでした。株価はその後、一度戻りましたが3月3日には再び、10%を下回っています。ここでもまだ気がついていなくて、気がついたのは12,535円まで大きく値下がりした3月8日でした。下のチャートに大きな矢印で示したところです。
 気がついた時点で-17%と大幅に下がっていたので、ここで損切りするかどうか悩みました。損切りするのって本当に難しいですね。この日は大きく下がったから明日は少し戻すだろうと考え、損切りを持ち越したら、翌日、さらに下がり、とうとう-20%まで下げが拡大してしまいました。それが下のチャートの一番右端です。
日本電産3月10日
 この一番右端のチャートを見ていたとき、ここに現れたあるサインに気がつきました。チャートの下に示された棒グラフに注目して下さい。
これは、その日の出来高を表す棒グラフですが、今まで出来高に注目することはありませんでした。しかし、その日たまたまユーチューブで、出来高は移動平均線よりずっと重要な指標であることを説く番組を見ていました。
そこで、出来高という視点でこのチャートを見ると、ハッとすることがありました。ローソク足の本体は前日の5分の1ほどの巾しかないのに出来高は前日に比べるとはるかに多いです。おまけにローソク足には長い下ひげがついています。このことはこの日、前日より狭い範囲の価格帯で極めて多くの株が売買がされたことを示しています。つまり、多くの人がこの価格帯で利益確定または損切りを行ったために株価が下がったのです。それはつまり、売りたい人は大方売ってしまったと考えられる。そして、長い下ひげはその後、新規に買い注文を入れた人たちが大勢いて、それが株価を押し上げたたことを示している・・・・つまり、ここまで続いた株価の下落はこの日に底をつけたのではなかろうか。もしそうだとすれば、株価は明日から反転して上昇に向かうはずだ。
 そう考えた私は、損切りどころか、日本電産の追加購入を考え始めました。しかし、素人考えなので、もし間違っていたら、傷口を広げることになりかねません。そこで、2月16日に購入した10株に対して半分の5株だけ購入して、この考えが当たっているかどうか検証してみることにしました。この考えが当たっていれば、次に同じ状況に遭遇したとき、有効な手段として使えることになります。
結果は3月16日の中間報告でお知らせしますので、楽しみにしていて下さい。






ホウレンソウ 7

20210309ho(700t).jpg
 1月25日に種を播いたホウレンソウが収穫時期を迎えました。
きのう、2回目の出荷をしました。
種を播いてから一ヶ月半ほどしかたっていませんから、ホウレンソウの栽培サイクルは本当に速いですね。

車検終わりました

20210311(700t).jpg
 車検が終わってピッカピカになって帰って来ました。
ちょうどこの水森自動車の横の道が排水が悪く、雨が降るたびに水たまりになり、少しまとまった雨だと1週間くらい水が引きません。畑に行く途中、ここを通るたびに泥水をはねあげて、軽トラックの底面にはドロの塊が厚くこびりつきます。ドロを落としても雨が降れば元の木阿弥なので、基本、軽トラックのそうじはしません。
車検ではネジが泥で隠れていたら検査に合格しませんので、エンジニアの水森くんが奥さんと一緒になって一生懸命泥を落としてくれます。こうして、私の相棒は2年に一度だけピッカピカに綺麗になるのです。


おとといの続きです。

軽トラックの4回目の車検が終わりました。
軽トラックの購入とともに始めた農業ですから、農業を始めて丸々8年が経過したことになります。
農業を始める前から懸念していた腰痛の悪化が現実のものとなりました。
レントゲン写真を見たとき、もう誤魔化しができない、これ以上の無理はできないと直感しました。
しかし、トウモロコシやトマトの苗が育っています。ホウレンソウは収穫の時期を迎えています。
今すぐ、きっぱりと仕事をやめるということはできにくい状況です。
昨年、今年からは堆肥散布はしないことを決めていました。
これは、腰への負担を減らすのが最大の理由でした。
体への負担をかけないで出来る仕事を探しながら、続けられることを模索していかなければならないのかもしれまん。

経済的リスクの克服。
これも十分達成感があります。この8年間の農業収入は、教職を辞めた最後の1年分の給料を補っておつりが来るでしょう。
もう、儲けるためにあくせく働く農業をする必要はありません。
これまでは、一人前の百姓になりたいという思いと、経営的にも成り立たせたいという思いで夢中でやってきました。
しかし、もう十分です。儲けることへの求心力はなくなりました。
あくせくしないで、楽しみのための農業ならそれほど無理をしないで続けられるかもしれません。

だんだん考え方の方向性が定まってきた感じがします。
3月6日から続けてきたこのコラムも一旦、ここで区切りを付けて、もう少しはっきりした今後の方針を打ち出せないかどうか、しばらく考えてみたいと思います。











本107  雑誌「やさい畑」 畑の微生物入門講座

雑誌「やさい畑」
家の光協会
やさい畑2011秋号
 前回の「野菜だより」とよく似た園芸雑誌です。
こちらの出版社は家の光協会です。雑誌「家の光」は私が幼い頃、家で定期購読していました。大人のための農業雑誌で、子供にはわからない記事が多かったのですが、活字文化の少ない田舎の農家では唯一の文化財であったかもしれません。私は写真や漫画の載っている部分を隅から隅まで読んでいたことを思い出します。おかげで他の子供よりも早く字を覚えたそうです。
 今回は平成23年秋号に掲載された「畑の微生物入門講座」の内容を紹介します。

「畑の微生物入門講座」
平成23年秋号
豊田剛己
東京農工大学大学院農学研究院准教授

1限目 微生物とは何ものか?
土壌微生物はどこに多くいるのですか?
 3つ挙げられます。森などで落ち葉が降り積もった層。畑にはありませんが、有機物が多い場所とかんがえるとよいでしょう。
 次は土壌動物の周りです。ミミズが出す体液が付着する通り道や、糞などの周りでは微生物がいっぱい増殖します。
 もうひとつは植物の根の周りで根圏と呼ばれるところです。植物は根からその有機物の1~2割を排泄しています。根の周りにべたべたしたものを出して、土の中を根が伸びやすくしたり、根と土を密着させて、養分を吸収しやすくしたりしています。その有機物を利用して微生物が繁殖するのです。畑の中で多いのは土の表層から20㎝ほどの深さのところです。

2限目 その働きとは?
植物が育つために絶対必要ですか?
 微生物のいない土壌で化学肥料だけで、植物を育てた実験があります。微生物のいない土壌でも植物は育ちました。ところが、こうして育てられた植物は、病原菌が入ってくると、あっという間に広がり、感染して病気になってしまいます。現実には、植物はさまざまな微生物に囲まれて育っていて、免疫ができ、病気になりにくい体になっているのです。
 また、植物は施した肥料の半分ほどしか利用していません。しかし、植物は微生物の働きによって土の中に保たれている養分も利用しています。有機質の堆肥を与え、土壌微生物を増やすことで、植物は微生物からも養分を得られるようになります。

3限目 どうすればふえる?
土壌微生物は多いほどよいということですか?
 土壌微生物の中で病原菌は、だいたいバクテリアが100種、カビが1000種程度です。地球上にはカビだけで100万種ほどいると考えられていますから、病原菌は一部だといえます。
 病原菌を実験室で近縁でない微生物と一緒に培養しても、たいして変化はありません。ところが近縁の微生物の種類を増やしていくと、病原菌はあまり繁殖しなくなるのです。病原菌と近い仲間ほど、同じような成分を利用して繁殖するため、食べ残しが少なくなり、思うように繁殖できないのです。つまり、さまざまな土壌微生物がいるほうが、病原菌は繁殖しづらいのです。

どうすれば土壌微生物は増えますか
 まず、有機物をたっぷりと与えることです。有機物には炭素が含まれていて食べやすい状態にあること。つまり、リグニンなどの分解しにくい状態ではなく、セルロース、セミセルロースといった多糖質の高分子になった状態の有機物が望ましいのです。堆肥や腐葉土と呼ばれる状態が代表的なものです。米ぬか、ダイズ粕、魚粉など、肥料として用いられる有機物は一時的に特定の微生物が増減します。

微生物が多いほどよいのは、微生物が養分のプールとして機能しているからともいえます。
 春から夏にかけて温度が上がると、生物の活性が高まり、微生物が盛んに生まれては死にますが、ちょうどその頃は植物もよく育つ時期で、その微生物に含まれていた養分をうまく取り入れることができるわけです。
 こうして毎年、一定量の有機物を施して、4~5年たつと、土壌微生物の多様性はあまり変わらなくなり、安定した収穫が望める畑になります。

特別授業
野菜を育てる微生物!?エンドファイト研究の最前線

成澤才彦 茨城大学農学部資源生物科学科准教授

 エンドファイトとは「内生菌」と訳されますが、植物の体の中に住み、植物と共生関係を持つ菌のことです。エンドファイトの範囲は広く、根粒菌や菌根菌もありますが、他の植物に広く共生関係を持つ菌がたくさん見つかってきたのです。そこで、根粒菌、菌根菌以外の内生菌を示す言葉としてエンドファイトが用いられることもあります。
 あるエンドファイトは、アミノ酸を好んで吸収する性質がありますが、このエンドファイトが共生していると、植物は間接的にアミノ酸を利用できることになります。一方でこのエンドファイトは糖を植物からもらっています。したがって、エンドファイトの実力が発揮されるのは、最初から養分たっぷりの土壌よりも、どちらかというと、やせた土壌で植物の生育には不利な環境の方だとも言えるでしょう。
 エンドファイトが進入できるのは、表皮と皮層までで、維管束の手前と決まっています。もし、維管束に菌糸が入ると目づまりを起こし、植物が育たなくなります。エンドファイトは植物に悪影響を与えず、あくまで共生関係。病原菌とは違うのです。

 エンドファイトを加えた土壌と加えない土壌で生育試験をすると、種まきから2週間は違いが出ません。ふつう、エンドファイトは発芽から一〇日くらいで植物の根に進入し始め、植物との関係ができるのはおよそ2週間後ぐらいです。ですから、3週間たつと、エンドファイトを加えた土壌の植物はぐんぐん大きくなっていきます。エンドファイトは植物に必要な養分を与えるばかりでなく、植物ホルモンを産出することもわかってきました。

 エンドファイトが病原菌を死滅させたり、増殖を止める物質を出したりするなどして、病原菌に直接作用するわけではありません。病原菌より先に植物に住みつくことで、いわば予防接種のような効果があると考えられています。

 エンドファイトを探すために、いろいろな場所の土壌を採取したところ、おもしろいことに、化学肥料で育てた畑ではほとんど見つかりませんでした。有機栽培の畑でも全体の菌の0.3%ぐらいしか含まれていません。それにたいしてエンドファイトが多いのは森林の土壌です。
 菌類はまだまだ未知のものが多く、命名されているのは9万種ぐらいで、全体として100万種以上いるといわれていますが、エンドファイトはその中の数%。数万程度ということでしょう。

 実験室での培養は簡単で、ムギなどの穀物粒を使って培養し、乾燥させた後、使用する培土に混ぜて育苗します。

自宅の畑でエンドファイトを活用するには
 エンドファイトを活用するためには、化学肥料を施さず 、有機質を多用することです。堆肥に限らなくても植物性の有機質ならなんでもかまいません。徐々に土壌微生物が分解し、肥料分にしてくれます。化学肥料と違って、植物質のものであれば量が多くても障害を及ぼすことはありません。必要な分だけ微生物が分解してくれるからです。
 2番目に、石灰分などをまいて、無理に酸度調整しないことです。もともと酸性土壌で共生していたエンドファイトなら、酸性土壌のままでかまわないのです。実際、トマトの実験をすると、エンドファイトを加えた土壌では、pHが3~5でもよく生育し、差は見られませんでした。
 また、雑草が一本もなく、畑が乾燥しやすい条件では、エンドファイトはまず生き残れません。

エンドファイトを活かすと自然農法になる?
 一般的な慣行農法を否定するわけではありませんが、土壌微生物、なかでもエンドファイトにこだわって、それをできるだけ活かす条件を考えていくと、結果として、無農薬で化学肥料を施さない、そしてできれば不耕作の自然農法に近くなるわけです。
 エンドファイトの研究も自然のメカニズムに学んで、それを栽培技術にとり入れる、ひとつの方法に他ならないと思っています。

平成23年10月

車検に出しました

20210309(700t).jpg
 毎日欠かさず使っている相棒の軽トラックを車検に出しました。
実家と畑の往復、野菜の出荷になくてはならないものですから、軽トラックなしで農業はできません。
8年ものの中古をちょうど50万円で購入して、今回で4回目の車検になります。購入してから8年が経過しました。
途中で一度、タイミングベルトの交換をしていて、冷房のガスが抜ける、ラジオが鳴らない、時計の液晶表示ができないなど、経過年数相応の故障はありますが、通常の使用には問題がないのでもう一回車検に出すことにしました。これが最後の車検になるかもしれません。
写真の工場は個人経営の水森自動車です。周囲を畑に囲まれてぽつんと一軒建っている自動車工場です。
この軽トラックもここで購入しました。エンジニアの水森くんは子供の頃から同じ部落に住んでいた同級生です。さらに奇遇なことに、毎日通っている畑が、この工場と30mくらいしか離れていません。パンクしたときなどすぐ診てもらえるので、とても重宝しています。


昨日の続きです。

これほど多くの本を一定期間に読んだことは私の人生において他にありません。
どうしてこんなに速いペースで本が読めるのか、自分でも不思議なくらいでした。とにかく、本が面白いのです。読めば読むほど、知りたいことが次々に出てきて、あれも読みたい、これも読みたいとひっきりなしに読むようになりました。
そして、ある程度の冊数を読み込んだ段階で、私の心に大きな変化が起こりました。今まで読んだ本に書かれている内容が本当なのかどうか確かめたいという欲求が高まってきました。今すぐにでも農業を始めたいという欲求が高まってきたのです。
私はもともと農家の生まれですから、農家の生活というものは身についています。それに初任の学校が平塚農業高校初声分校という全国でも珍しいくらいのガチで農業の実戦指導をする学校でした。しかも、そこで私は三浦半島農業の主力科目である「野菜園芸」を担当したのです。そのときに野菜栽培の基礎的な技能は身につけたので、足りないのは農業経営を実際にやってみることだけでした。
おまけに、実家には、年老いた両親が隠居していましたが、小屋や農具や畑はそのまま残っていたので、軽トラック一台で乗り付ければ、いつでも農業を始められるというお膳立てが整っていました。
多くの本を読んで、農業をやりたいのにできる環境がない人が全国には大勢おられることを知っていたので、私はとても環境に恵まれていると思いました。

思いが大きく膨らんで、定年から3年前の年には、あと2年残して教職を退職して就農することを真剣に考えましたが、結果的には、退職を断念しました。
理由は、経済的リスクに対する懸念が払拭できなかったからです。
農業を始めて数年間の収入が逼迫することはわかっていましたし、何だかんだと言っても、教員の給料はいいのです。定年前の教員の給料と見合うだけのものが得られるという確信が得られなくて、苦渋の決断をしました。

しかし、定年から2年前の年には、あと1年残して退職することを容易に決断できました。
決断の根拠は2つありました。
ひとつは、1年前に断念した経済的リスクを克服する考えに至ったからです。
たしかに、残り1年分の教員の給料を新米がやる農業で補填することには不可能です。
しかし、1年分の給料を5年か10年かけて賄うことにすれば、それは新米の農業でも可能です。
このときは、61歳から年金が支給される時期でしたがら、経済的にそれほど困ることもないし、5年以上かけて、教員の1年分の給料が稼げればそれで十分だと計算しました。
定年を過ぎても雇用延長の制度を利用して学校で働き続ける人が一般的に多いです。しかし、現役と同じ量の仕事をしても給料は半減しますので、やりたい仕事をしたほうがいいとも考えました。
それからもうひとつは、すでに腰が痛かったことです。
以前から腰痛があり、整形外科にはずっと通っていました。
農業はやってみたいが、やれる期間が限られるかもしれないということと、加齢による体力の衰えを考えると、この1年を早めることの効果は十分に大きいものがあると感じたからです。


つづきはあさってにします。

ソラマメ 4 花が咲きました

20210308ソラマメ(700t)
 ソラマメの花が咲きました。
ソラマメは実も大きいですが、花もそれなりに大きく見応えがあります。
マメ科特有の面白い形をしていますね。


昨日の続きです。

退職したら農業をやるんだと確信して以来、すぐにでも始めなければならないことはっきりしていました。
それは、情報収集です。
退職するまでにまだ、4,5年ありますから、退職したら即農業を始められるように、しっかりと情報を蓄えて準備をしておこうと思いました。そのために農業に関係する本を読み出しました。最初は本屋に行って本を買っていましたが、たちまち狭い本棚が農業書でいっぱいになり置き場所がなくなってきたことと、このベースで読んでいったら、本代もバカにならないことから市立図書館や県立図書館に通い、片っ端から農業書を借りてきて読むようになりました。
図書館で借りた本は返さないと行けないので、読んだ内容を忘れないようにするために、重要だと思ったところには付箋を貼っておき、読み終わってから、再度付箋を貼っているところを読んで、その部分をパソコンに打ち込みました。パソコンに打ち込んだあとプリントアウトして再度読み返しました。さらに、半年くらい経ったあとにもう一度読み直すというように、一冊の本を何度も読み直すというような読書の方法をとりました。
その結果が、このブログの「農業書へのいざない」というカテゴリにいかさされているわけです。

つづきは明日にします。


シュンギク 5

20210301シュンギク(700t) 
 昨年の11月13日に種をまいたシュンギクが収穫できるようになりました。
レタスと同じ日に種をまきましたが、生育が真冬の期間になるので、ハウスの中でどのように生育するのか、気になっていましたが、それほど旺盛には育たず、まあまあ収穫できるという状態になりました。

レタスの方は、2月17日の記事に書いているように大きく綺麗なものが収穫できました。
2月17日の記事では、レタスはいつ種を播いたか記録を忘れたのでわからないと書いていますが、今わかりました。このシュンギクと同じ11月13日でした。

レタスは真冬でも大きく育ち、とっくに終了していますが、シュンギクは生育がだいぶ遅れました。シュンギクのほうが寒さに弱いことがわかりました。
 今回、大葉のシュンギクを初めて育ててみましたが、味は中葉のものと変わりませんが、大葉の方が柔らかいような気がしました。また、中葉の方がわき芽が伸びてくるのが速いので、収穫量の総量は中葉の方が多くなるかもしれないと思いました。


 昨日の続きです。
そもそも、退職後に、なぜ農業を始めたのかということについて振り返ってみたいと思います。

 退職後のことを考えるようになったのは、50歳を過ぎた辺りからだったと思います。
その頃は、頭や神経を使う仕事からは解放されたいと思っていたので、何となく体を使う単純な仕事がしたいと思っていました。
たとえば、新聞配達とか牛乳配達とか毎日規則正しく体を使う仕事なんか、健康維持のためにもいいのではないかと漠然と思っていました。農業をしようとは思ってもいませんでした。

 退職したら農業をやるという考えは、ある日突然降ってきました。
それは、私にとっても衝撃的な出来事でした。
最後に赴任した学校での、2年目の4月のことでした。
学校では、毎年、転勤して出て行く先生と新しく入ってくる先生がいます。
その年、新しく入ってきた体育の先生がいました。A先生としておきます。
A先生は私より2つか3つほど若い50代の先生でした。
A先生は体育科の先生でしたが、何と体育学部卒業ではなく農学部卒業でした。
どこで調べたのかわかりませんが、A先生は私も農学部出身だということを知っていて、私のところにわざわざ挨拶にこられました。学生時代にやった研究の話や、農学部出身でも体育科の教師になれるという話など、会ったばかりなのにいろいろな話をしました。
そのうちに、A先生は実家は農家で畑があるから、退職したら農業をやる計画でいることを話し出しました。
すると、私にまったく予想外の反応が起きたのです。
おい、おい、何てことを言うんだ。おまえがそんなことを言ってはダメじゃないか。それは俺の言うセリフだよ。俺が言おううとしていることを先に言わないでくれよ・・・・・と言いたい気持ちが突然沸き起こって、自分でも混乱しました。
なぜ、こんな気持ちになったのか自分でもわかりません。とても不思議な体験でした。
しかし、そのとき以来、自分は退職したら農業をやるのだということを何年も前からずっと決めていたことのように思えてきました。

つづきは明日にします。

水仙 2

20210304suisenn(700t).jpg
 今年も水仙の花が咲きました。
昨年は3月3日にアップしています。
当たり前かもしれませんが、毎年同じ時期に咲くんですね。
ブログを開始してから1年半が過ぎ、畑の記事は同じことの繰り返しになりそうです。
そんな予感がしてきた今日この頃ですが、このブログも畑中心の記事から脱却して、
他のテーマを模索する時期が来たのかもしれません。

実は、今までと同じように農業を続けるのは無理かもしれません。
一番大きな理由は、体の機能低下です。
先日、半年ぶりに行きつけの整形外科に行ってきました。
半年前までは毎週木曜日の午後、リハビリに通っていましたが、コロナのこともあり、しばらくリハビリをやめていました。
しかし、腰痛がひどくなってきたので、痛み止めと貼り薬をもらうために久しぶりに行きました。
医者は「久しぶりだからレントゲンを撮ってみよう」と言いました。
レントゲン写真を見ると、素人が見てもはっきりわかるように、脊椎骨の一部が滑っていました。
だるま落としの下から2番目のだるまが一個だけ突き出しているように見えました。
医者は「滑り症だ」 といいました。

一体いくつの病名がつけばいいのでしょうか。
20年くらい前、腰の痛みで整形外科に行ったときは、「椎間板ヘルニア」と診断され、ブロック注射を何度か打って治しました。
その後数年して、肩甲骨まわりの一点がピンポイントで激痛が起こるようになり、そのときは「後縦靱帯骨化症」と診断されました。この病気は原因不明で治療法も不明で治る見込みがないため難病に指定されている病気で、そう言われたときは、それなりにショックでした。
その後、今通っている医院でリハビリを受けるようになり、そこでは「脊柱管狭窄症」と言われ、頸椎、胸椎、腰椎のいずれからも骨棘が伸びて、それが神経を圧迫することにより痛みが生じる「脊椎骨変形症」だとも言われました。

病名が何であれ、痛みがひとくなって動けなくなれば、農業どころか生活自体がしにくくなります。車椅子が必要になる事態は何としても避けたいものです。
とりあえず、今考えられる対策は重いものを持つことを控えることと、前屈みの姿勢を長時間続けることを控えて腰への負担をできるだけ少なくすることです。
そうすると、刈払い機をぶんぶん振り回して草を刈ることができなくなります。ダイコンやカボチャ、大玉スイカなどの重量のある野菜は止めといた方がいいかもしれません。イモ類など収穫の時、掘り起こす作業も腰に負担がありそうです。ネギの植え付けなど、深い穴を掘って腰をかがめて植え付ける作業も止めといた方がいいかもしれません。ホウレンソウの種まきなど簡単そうですが、ずっとしゃがみ込んでやる作業ですから長時間は無理そうです・・・・・・と、いろんな場面を考えると、この仕事をいつまで続けるのかという問題と真剣に向かい合う必要がありそうです。

本106  雑誌「野菜だより」

有機・無農薬での野菜づくりを応援する家庭菜園誌雑誌
「野菜だより」
学研
野菜だより2011年9月号

 学研と言えば中学、高校時代に学習雑誌でお世話になった出版社です。
それが、今では農業の学習参考書を出しているんですね。
時代の変化を感じます。

イチゴ
 実がなったときに土に触れると傷むので、マルチは必需品だ。
 丈夫な苗の見分け方は、
「苗の大小や子株孫株の違いはあまり関係ない。白い根がびっしりと生えているのがいい苗。茶色の苗は活着が悪い。あまりでかいのも活着が悪い」と教えてくれた。
 植えてから春までは手入れの必要はない。真冬になると葉が枯れてくるが、「春になって新しい葉が出てくる」ので、3枚くらい残っていれば問題ないそうだ。 4月になると実が赤くなってくるので鳥に食べられないように防鳥ネットをかけてやる。この時期にもう一つ大切な作業がある。実に養分を集中するため、伸びてくるランナーを早めに摘んでやることだ。収穫が終わるまで続ける。

西村和雄(京都大学農学博士)
「健康な野菜は、雑草に近い色をしています。淡い緑色で、雑草よりもほんの少しだけ緑っぽいかなと感じる色です。こういう野菜は本当に味がいい。腹八分目で育つ健康そのものの野菜ですね。肥料をドカドカ与えた野菜は、黒みがかった濃い緑色で、姿こそ大きいけど、食べてもおいしくない。病気や害虫が出やすい野菜です。」
「野菜を丈夫に育てるには、根をどれだけ張らせてやれるかが大事なポイントです。元肥も追肥も、薄く広くまくのがポイント。野菜に『ここまでおいで』という気持ちで肥料を与えるといいと思います。追肥は毎日のご飯です。野菜の顔色や姿を見て『これは腹ぺこなんじゃないかな』とか『食べ過ぎだな』と判断して、量やタイミングを加減するといいですね」

トマト
 トマトの摘んだわき芽を捨てずに、挿し木にすると、容易に根づいて成長し、やがてトマトを収穫できる。わき芽は、斜めに寝かして挿すと根づきやすいので、試してみては。小さなわき芽なら、畑の隅かコンテナに挿して、少し大きく育ててから畝に定植しよう。大きくなってしまったわき芽なら、摘んだものを畝に直接挿してもいい。

ナス
落ち葉とワラの有機物マルチでナスは元気!
 ナスの畝と通路に、ワラと落ち葉を敷き詰めてあるのは、竹内裕子さんの菜園。ワラを敷いた上に、風で飛ばないように落ち葉を被せてある。厚さは敷いた時点で、約10㎝。細井繁子さんの場合は、落ち葉を2㎝ほど敷いた上にワラを2~3㎝被せて雑草を抑える。

ナスのせん定更新時には、根切りをしてから追肥する
 「8月初旬に更新剪定します。ナスの枝を刈り込んだら追肥をしますが、ナスの株元から30㎝くらい離れた場所に2カ所、スコップをグッと縦に押し込んで隙間をつくり、そこに肥料を入れて埋めるという方法です。根が切れますが、新しい根が再生して、ナスは勢いよく枝を伸ばし、立派な秋なすを次々と実らせます。肥料はボカシ肥料を一カ所に約40gずつ入れています」
 田中さんによると、根切りして追肥する方法はオクラにも向いているそうだ。お盆を過ぎた頃に追肥すると、10月までおいしいオクラの収穫が続くとのことだ。

サツマイモ
デパートで買ったサツマイモから苗づくり
 「安納イモは蜜のように甘くて、柔らかいと評判のイモです。4月にデパートで売っていた安納イモを買い、マルチを被せて温めておいた畝に植えて苗を育てたのです。少々肥料を与えると、ツルがよく伸びてたくさんの苗をとることができました。私は、イモを祖まま植えましたが、イモを切ってしばらく水耕栽培にして芽を出させてから土に植えると簡単です」

ニンジン
日よけをたててニンジンをスムーズに発芽させる
 昨年は、梅雨が明けてニンジンの種をまいたものの、水やりをしても強烈な日射しで土が乾いてしまい、ニンジンの発芽がうまくいかなかった。そこで福田俊さんは、余っていたブルーベリー用の暴風ネットを2枚重ねにして、畝のわきに簡単な日よけを立てた。そのおかげでニンジンの発芽が揃い、おいしいニンジンを収穫することができた。日よけは発芽後しばらくして撤収した。
 夏にタネまきするニンジンは、発芽するまでの間、日よけの工夫をするとよい。寒冷紗のトンネルで日射しをやわらげるのもおすすめ。そのまま育てれば虫よけにもなる。

こまめにタネまきして早どり野菜を楽しむ
 「贅沢な食べ方ですが、葉もの野菜、根菜類、ジャガイモ(メークイン)などは、早どりしてベビー野菜として食べた方がクセもなく、美味しく感じます」と、本郷三佳さん。

カラスよけ
 スイカの畝の周囲には高さ40センチに糸をピンと張る巡らせると、地上に降りたカラスが畝の中に侵入できません。高さ40センチの横糸はカラスの侵入防止に有効なので、スイカの畝以外(トマトやキュウリ)にも利用しています。
 ちなみに地上に降りたハトの場合は地上8センチの横糸が有効。豆類をまいたときはこれでハトよけにしています。

ヘアリーベッチを育てて土を肥やす
 ヘアリーベッチは株元の部分で切って、枝葉はそのままマルチとして利用できる。分厚く覆ったヘアリーベッチのおかげで、雑草が生えてこないものいいところだ。 

平成23年10月

ニンニク 9

20210301ニンニク(700t)
 去年の9月25日に植え付けたニンニクが順当に成長しています。今年も収穫できそうです。
ニンニクの一番奥に昨日のヒトモジが植わっています。
左側には収穫しなかったネギが残っています。ネギはトウが立ち始めていますので、採種用に残しておきます。

ヒトモジ

202103031(650t).jpg
ヒトモジが収穫時期を迎えました。

ヒトモジについてはどこかで記事を書いた記憶がありますが、どこに書いたかわからなくなりました。
カテゴリを調べたら、「ヒトモジ」のカテゴリがないので他の野菜のところでついでに書いたものと思います。
とりあえず、「ヒトモジ」のカテゴリを作りました。

ヒトモジは小ネギの一種で分葱(ワケギ)と同じものだと思います。熊本ではヒトモジといい、「ヒトモジのぐるぐる」という郷土料理があります。

種球は、母が実家の庭で植えていたものをもらって、畑で増やしたものです。栽培が容易で、植えておけば勝手に分球してどんどん増えてくれます。

このヒトモジは昨年の秋、9月25日に種球を植え付けたものです。
11月下旬に収穫時期を迎えて、何度か収穫しています。
収穫しきれなかったものや、生育が遅れていたものをそのままにして放っておくと、寒さで衰えて利用できなくなります。
暖かくなってくると成長を再開して、上の写真のように復活します。
202103032(650t).jpg
収穫して根を切り、洗って、袋詰めして出荷しました。

雨が降りました

202003023(650t).jpg
 昨夜は久しぶりにまとまった雨がりました。
午後になって、ハウスに来てみると、西風が強かったらしく、ハウスの西側1メートルほどの部分が、たっぷりと雨水を吸っていました。しかし、その東側は歩くと土埃がするくらいカラカラに乾いています。雨が降ったと思って油断していると生育中の野菜が水不足で傷んでしまいます。
202003022(650t).jpg
倉庫代わりに使っているハウスの周囲に置いた容器には、雨水がたっぷりと溜まっていました。
これを一輪車に積んで、ハウスまで運んで、生育中のトウモロコシや、キャベツ、トマト、セロリの苗に与えました。

プロフィール

blogst66

Author:blogst66
 教職在職中に木村秋則氏の「奇跡のリンゴ」を読んで感銘を受け、無農薬農法に関心を持ち、200冊以上の農業書を読み漁りました。本を読んで農業の知識が深まるにつれ、自分でも農業をやってみたくなり、一年早く教職を退き就農しました。(2013年)
 農業は8年間続けることができましたが、持病の腰痛の悪化により、農業活動を継続することが難しくなり、一線から退きました。(2021年)
 一昨年から趣味として「個別株投資」を始め、ブログの中身も投資に関することが増えてきました。投資はまだわからないことが多く、初心者が陥りやすい失敗例などを発信しながら経験を積み上げていこうと思っています。(2022年)
 2年半続けた個別株投資に限界が見えてきました。しばらく個別株投資に距離を置きます。(2023年6月)
 植物の写真集「みちばたの花」をはじめました。過去に散歩の途中で撮った植物の写真の中から、毎日ひとつずつ紹介します。(2023年6月)

カテゴリ

検索フォーム

ブロとも申請フォーム

QRコード

QR