2021/03/20
本109 細谷 剛「カビ図鑑」
細谷 剛「カビ図鑑」全国農村教育協会(2010年刊)
細谷 剛
1963年、東京都生まれ。国立科学博物館植物研究部勤務。
出川 洋介
1968年、神奈川県生まれ。筑波大学菅平高原実験センター勤務。
勝本 謙
1927年、清津府生まれ。鳥取大学教授。
2010年に日本産のあらゆる菌類の記録を集大成した『日本産菌類集覧』を発刊。
カビの世界へようこそ
最近は、菌類は人間とさまざまな利害関係を持つばかりでなく、自然界では生物遺体を分解したり、動植物と共生して栄養のやりとりをしたり、増えすぎた生物を間引く役割を担うなど、環境を調和する役割を持つ重要な存在であることが分かってきました。
第1章 カビの世界の扉を開ける
ミカンに生える緑色のカビはペニシリウム・ディジタートゥムというカビなのです。
カビは97,000種いますが、菌類の推定種数は150万種とも言われていて、われわれが知っているのは本当にわずかな部分だけだというわけです。
第2章 カビを探してみよう
サクラてんぐ巣病菌 タフリナ・ウィースネリ(子囊菌)
ウラジロモミのてんぐ巣病はメランプソラ・カリオフィラセウムによって、タケのてんぐ巣病は、アキクロスポリウム・タケによって引き起こされる。
モモ縮葉病菌 タフリナ・デフォルマンス(子囊菌)
オニタビラコ浮腫病菌 プロトミケス・イノウエイ(子囊菌)
マサキうどんこ病菌 オイディウム・エウオニミヤポニキ(不完全菌)
ツツジもち病菌 エクソバシディウム・ヤポニクム(担子菌)
バラさび病菌
ラグミディウム・ムクナトゥム(担子菌) このさび菌は、5種類の胞子をすべてバラの上でつくる。
異種寄生性のさび菌
マツこぶ病菌 (マツ←→ナラ類)
ススキさび病菌 (ススキ←→オオバコ)
シバさび病菌 (シバ←→ヘクソカズラ)
モモ白さび病菌 (モモ←→ヒメウズ)
ナシ赤星病菌 ギムノスポランギウム・アシアティクム(担子菌)
タケ赤衣病菌 ステレオストラトゥム・コルティキオイデス(担子菌)
クズ赤渋病菌 シンキトリゥム・ミヌトゥム(鞭毛菌類)
クサヨシ麦角病菌 クラビケプス・プルプレア(子囊菌)
トウモロコシ黒穂病菌 ウスティラゴ・マイディス(担子菌)
オオムギ裸黒穂病菌 (担子菌)
タケてんぐ巣病菌 アキクロスポリウム・タケ(子囊菌)
虫を襲うカビたち
白きょう病菌 (不完全菌)
ハナサナギタケ (不完全菌)
セミノハリセンボン(不完全菌)
ハエカビの仲間 (接合菌類)
こうやく病菌 セプトバシディウム spp(担子菌)
すす病菌 (子囊菌)
キズタすす病菌 メリオラ・ディコトマ(子囊菌)
クワ裏うどんこ病菌 (子囊菌)
黒紋病菌 (子囊菌)
カキノミタケ (子囊菌)
マコモ黒穂病菌 (担子菌)
イチゴ灰色カビ病 ボトリティスspp.(不完全菌)
コウガイケカビ (接合菌)
キノコに寄生するカビ
タケハリカビ (接合菌)
フタマタケカビ (接合菌)
ヒポミケス (子囊菌)
クロメロスポリウム (不完全菌)
アンペロミケス (不完全菌)
水生不完全菌
トリコデルマ (不完全菌)
ペスタロチオプシス (不完全菌)
樹液のカビ (不完全菌)
ベト病菌 (卵菌)
第3章 実験!カビを捕まえよう
① 水中のカビを釣る
② 土の中からカビを呼び出す
第4章 カビと深くつきあうために
カビを集めてみよう
ルーペ・顕微鏡で観察しよう
カビの写真を写そう
まとめ 菌類への深い理解をめざして
菌類の役割
本書で扱ったカビの多くは、植物寄生菌です。これらの多くは生きた植物や動物にとりついて、時としてその命を奪います。一見悪い印象を与えますが、これは増えすぎたり、弱ったり傷んだりした生物を間引き、自然界のバランスをとったり、健全化する働きであると考えられています。
平成23年10月
(評)
私のように菌類を専攻したものにとっては、よくぞ出してくれたと快哉を叫びたくなるような、わかりやすい菌類の入門書ができたものである。
写真が新しく、よく撮れていて、しかも美しく撮ってある。どのように撮っても、カビはカビであるから、カビくさいのは避けることができない。しかし、カビを専攻した者にとっては、顕微鏡下の微生物の世界に見られる、思わぬ造形美にはっとすることがよくある。その気持ちが、この本を完成させたであろうことが良く分かる一冊である。
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