NHK会長発言の波紋
従軍慰安婦問題のような歴史認識の問題は、基本的に「21世紀の価値観で過去を裁く」というのが世界の標準です。
そこで日本が侵略戦争を否定したとしても、まったく相手にされることはありません。日本の立場がますます悪くなるだけです。
「従軍慰安婦などなかった」と強弁しても、21世紀の人権感覚では、受け入れられず、野蛮で前近代的だと見られるだけです。
また「悪いのは日本だけじゃない」との主張は、銀行強盗が詐欺師を非難する程度の主張なので、客観的第三者の賛同はとても得られません。
http://blogos.com/article/78924/
衆議院議員山内康一(みんなの党)のブログからの抜粋です。
一世紀近く前の出来事を「21世紀の価値観で裁く」って、事後法による裁判と同じで、近代合理主義の全否定、蒙昧主義その物なのですが、みんなの党はこのような蒙昧主義には全く疑念はもっておらず、むしろそれを世界標準と考えたいようです。

しかし一応この蒙昧政党に付き合って、21世紀の価値観で裁いたとして、NHK会長の発言に何か問題はあるでしょうか?
全然ありません。
なぜなら21世紀の現在でも世界中の殆どの国で売春は合法です。
それどころかヨーロッパなどでは管理売春を合法化したり、売春婦として入国する外国人に労働ビザを出したりと、より広く売春を認める方向に進んでいます。
これは21世紀、現代の倫理観から言えば当然の帰結です。
なぜなら売春を悪としたり、女性の人権蹂躙と考えたりするのは、20世紀中期までの性道徳、つまりキリスト教や儒教などの性道徳が、女性に純潔や貞操を強制したからです。
またキリスト教や儒教では「性」を個人の自由とは考えず、神や家父長の意思に従うべきものと考えて居ました。
ところがこれを全否定したのが、現在のフェミニズムであり、個人主義ではありませんか?
彼等は「性」は完全の個人の自由に属する物と考えているので、婚姻を否定する一方、同性愛などキリスト教が悪魔視したものの差別を禁じ、更には同性婚を認めるように要求したりしているのです。
だったら売春の何処が問題なのでしょうか?
純潔や貞操に意味がないなら、代金を取って性交渉をする事の何処が問題なのでしょうか? 「性交渉は金銭ではなく愛情によるべき」なんてキリスト教道徳の強制の方が余程女性の人権を蹂躙している事になるではありませんか?

一方慰安婦は純然たる売春婦であり、また慰安所は管理売春での売春宿です。 そしてオランダやドイツなどでは管理売春による売春宿は完全に合法です。
唯一これらの売春婦や売春宿と違うのは、戦場に近い所にあり将兵だけを客にした事です。
しかしそれこそ世界中で古代から現在まで、軍隊と言うのは売春婦にとって大変良い顧客で、軍隊に売春婦はつきものでした。
古代や中世の厳しい性道徳が存在した時代でも、多くの人は常識的で現実的な発想ができました。 だから国家や宗教が個人の「性」を完全に支配する事は不可能と言う事はわかっていたのです。
それで軍律で兵士を縛る事のできる軍隊でさへも、売春婦がついて歩くのを問題視するような事もしませんでした。
勿論、軍隊相手の売春だけなく、一般の売春が全く合法だったことは言うまでもありません。

少し脱線しちゃうけれど、ワタシは昨年末「アナバシス」を読みました。
「アナバシス」は紀元前401年のギリシャ傭兵団の敵中横断記なのですが、このギリシャ傭兵団にも慰安婦がついて歩いていました。
幾ら商売の為とは言え、こんな危険な遠征によくもまあ着いて行くものだと呆れました。
でもそれはそうとして、「アナバシス」の著者であり軍団の指揮官でもあったクセノフォンも、この売春婦達もまた買春するギリシャ兵も全く問題視していません。 彼はソクラテスの愛弟子だったのですが・・・・・。
尤も神に貞潔の誓い立てた武装した修道士と言うべき十字軍の騎士団の騎士たちだって、売春婦は愛用したのですから、幾らソクラテス愛弟子だって世俗の軍隊に売春婦を問題視するはずもないのです。
そして2006年、オランダのアリメーレ市のアンヌマリー・ヨリマッツ市長はテレビに出演中こんな提案をしました。

[アムステルダム 23日 ロイター] オランダの市長が、海外駐留している自国兵士のために売春婦を派遣するアイデアを支持する発言を行い、波紋を呼んでいる。
オランダ中部にあるアルメーレのアンネマリー・ヨリッツマ市長はテレビで、「軍は兵士の欲求不満を解消する方法を考慮しなければならない。かつて数名の売春婦を軍に同行させてはどうか、という案がありましたが、私はこの提案を考慮すべきだと考えます。我が国から売春婦を派遣すれば、駐留先の地元女性を性の対象から除外できるでしょう」と語った。
オランダは売春が合法となっていることで有名だが、ヨリッツマ市長のこの発言により、オランダ国内で様々な意見が飛び交っている。
オランダの『フォルクスクラント』紙の取材に対し、軍兵士労働組合の広報担当は「僕の妻は反対するだろうね」とコメントした一方、セックス産業機構「VER」の関係者は「とても奇抜なアイデアだと思いますが、何か意味があるようにも思います」と意見を述べている。
現在、2000人以上のオランダ人兵士が海外駐留している。そのほとんどがアフガニスタンやボスニアでNATOの平和維持軍に加わって任務に当たっている。
Ananova - Woman MP demands hookers for the troops
A top female politician in Holland wants Dutch prostitutes sent abroad with the troops to help them relax.
Annemarie Jorritsma, a politician for the centre-right People's Party for Freedom and Democracy (VVD) and the mayor of the town of Almere, went on national Dutch TV to demand the 'extra benefits' for soldiers.
She added: "The army must think about how their soldiers can let off some steam."
The ideas has been backed by the Dutch sex workers union which said it thought the idea had some merit.
But an unnamed military spokesman, quoted in the 'Volkskrant' newspaper, expressed reservations.
He said: "I don't think my wife would like the idea very much."
There are currently around 2,000 Dutch soldiers stationed outside of the Netherlands, the majority in either Afghanistan and Bosnia.
http://www.hindustantimes.com/News-Feed/NM18/Woman-MP-demands-hookers-for-troops/Article1-164758.aspx

このアリメーレ市長の提案は実現しませんでしたが、大阪市長の提案のように問題視されたわけでもありません。
だってオランダは管理売春が完全に合法なのに、何を問題にできるのでしょうか?
そしてボスニアの国連軍も、軍用売春婦確保の為に人身売買をしたと言う疑惑があります。 それを国連が隠蔽していると言うのです。(PKOと世界最古の職業)
この国連の対応は実に悪質ですが、しかしそれにしても追軍売春婦=慰安婦の歴史は悠久にして普遍的なのです。
「どこの国でもやってる」どころか「いつの時代でもやってる」ことであり、21世紀の価値観でも全然問題のない事なのです。
>また「悪いのは日本だけじゃない」との主張は、銀行強盗が詐欺師を非難する程度の主張なので、客観的第三者の賛同はとても得られません。
イヤ!! だから日本は全然悪くないから!
紀元前400年から21世紀の現代まで、悠久普遍に合法的な事をしているのを非難するのがオカシイのだから。
こんな事を非難されるんだったら、日本軍が息をしたり食事をしたりしたことまで非難されちゃいますから。

第二次大戦中の日本軍慰安婦が問題になったのは、朝日新聞が慰安婦の強制連行を捏造して騒いだからです。
しかしあれから20年以上、「慰安婦に謝罪と賠償!!」を喚く人達が血眼になって探し続けても、強制連行を証明する合理的な証拠は一切見つかっていません。
彼等が強制連行を主張する根拠は、コロコロ変わり時系列や事実関係の辻褄が全くあわない自称元慰安婦の証言だけです。
そして民主主義国家では「被害者」の証言だけで、事件の事実を認定する事などあってはならないのです。
そんな事を認めたら、いつでもだれでも偽証により他人を陥れる事ができるようになってしまいます。 そうなったら人権も糞もないではありませんか?
しかし過去の事件を「21世紀の価値観で裁くのが世界標準」と言う蒙昧主義者には、こんな事は理解不能なのでしょう。
だから幾ら合理的な証拠が無くても「日本が悪い」と喚き続けるのです。
これはもうこの手の人間達は、完全に近代合理主義を放棄して、迷信とカルト世界に生きているのだと考えるしかありません。

けれどもこの蒙昧先生は自分が蒙昧主義者だと言う自覚は全くないようです。
それどころかこの蒙昧主義の盲信こそが正義だと信じているのではないでしょうか?
合理的な証拠と論理を元に思考するのが近代合理主義です。 証拠の無い物はすべて疑うべきと言うのが近代合理主義です。
けれどこれは近代合理主義だけではなく、古代から人類の知性の根源なのです。
しかしその知性を放棄して「日本が悪い教を信仰せよ」と喚く人が、国会議員になるなんて・・・・・。
戦後教育って、結局は知性の黄昏だったのでしょうか?