物語の二つの軸が交差した、うまくまとめた最終回ではありました。CANAAN 第13話 『キボウノチ』 の感想です。
二つの軸とは、一つは「アルファルドとカナンの確執」で、もう一つは「マリアとカナンの絆」でしょう。
前者については、説明不足の感はあります。アルファルドはシャムを信奉していたのに、自分で殺してしまいました。そしてその後はひたすら、シャムの亡霊に縛られて生きています。なぜそこまでシャムに執着するのかについて、もっと描写されていれば、説得力が増したのではと思えますね。アルファルドの過去話を1話使ってやっても良かったのでは。
自分流に解釈するなら、アルファルドがシャムを殺した理由は、カナンという「超人」を生み出したことに「絶望」したシャムへの失望と、いっそ安らかな死を与えたいという相反した気持ちからでしょう。
前回も書きましたが、完璧な兵士であろうとしたシャムは、カナンという化け物を見て、自分の人生が否定されたと感じ、絶望していたのだと思うのですね。その思いがカナンには「茶色」に見えたのでしょう。だからアルファルドにとってカナンは、”恋敵”であると同時に、シャムの死に責任がある”敵(カタキ)”だと言えます。
でも、大切なシャムを自分で殺したことも、また事実であり、自分こそがシャムの敵(カタキ)でもあるわけです。この矛盾した現実に、アルファルドの心は引き裂かれて、ある種”狂って”しまい、それが一連の行動(ウーアウイルスでカナンのコピーを作ろうとしたり、テロ組織を作ったり、カナンを追い詰めたり)を引き起こしたのだと考えます。どうしようもない過去をなんとかしたいと足掻いているので、無茶苦茶な行動になるのも仕方ないのでしょう。
そんなアルファルドがカナンには、シャムと同様に、絶望にとらわれている「茶色」に見えました。カナンがアルファルドを助けようとしたのは、”あの日”のシャムと重ね合わせたからでしょう。
もう一方の軸である「カナンとマリアの絆」については、綺麗に決着したように思います。当初の二人はお互いのことを自分の「光」だとみなしていて、つまり相互に依存していました。でも最後に、カナンはマリアのことを、「光ではなく友達」だと言いました。寄りかかる(依存する)関係から、寄り添う関係に昇華したのでしょう。
依存している時は、二人は近くにいたいと願ったけれど、それはお互いのためになりませんでした。カナンの側にいるとマリアに危険が及ぶし、マリアが危険になるとそれを守るためにカナンが危険を冒すことになります。なので二人は、離れて生きるけれど、心は寄り添う、という道を選びました。切ない結末ですね。
そしてこの2つの軸が、最後に交わったのでしょう。過去にしばられたアルファルドと、前を見ているカナン。カナンがそうなれたのはマリアのおかげで、アルファルドにはマリアが居なかった。そのことに決定的な敗北を感じたアルファルドは、カナンへの敵意を失って、自ら死を選んだ、と解釈しています。
まぁ、このようにいろいろ自分流で解釈させるのが、制作者の意図なのかもしれません。考えてみれば(同じ制作会社の作品である)true tearsも、あまり説明せずに視聴者の想像にゆだねる作品でした。物語の雰囲気は違いますが、考え方は近いのかも。
エピローグは綺麗に締めたのではないでしょうか。まさかのカミングズ登場とか、「いいケツしてたなー」とか、「あれ、私のだ」とか、一つ一つのシーンが印象的で、余韻がありました。
全体としてですが、正直、中盤までの話が広がっていくところが一番面白かったですね。大規模テロと大国との争いに、カナンやマリアが巻き込まれるという、大作映画のような雰囲気にワクワクしたのですが、その後はアルファルドとカナンの私闘になってしまい、尻すぼみ感は否めませんでした。大きく広げただけにですね。まぁ、ありがちなんですけれど。
でも雰囲気はとても好きだし、楽しめた作品ではありました。想像するに、原作ゲームがあって、その後日談のストーリーを作るというのはとても難しいことなのでしょう。人物設定や過去の事実は決まっていて動かせないんですから。そうした制約の中で、精一杯がんばったのではないでしょうか。
でも例えば、完全オリジナルストーリーならばもっと面白かったのかも、と思ってしまいますね。true tearsはほぼオリジナル(タイトル名を借りただけ)だったわけで、オリジナルを作る力はあるんですよ。なのでこちらスタッフの次の作品は、オリジナルを期待したいところです。
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CANAAN終わってしまいましたね。
このアニメ、実は最初はあんまり面白いと感じなくて惰性で見てたんですが、リャンチーの弾けっぷり(&カミングス)に心奪われて最後まで見ることになりました。
ラストは綺麗にまとまっていましたが、最後までアルファルドとカナンが分かり合えなかったのが残念なような気がします(特にアルファルド側が)。二期とかあるのかもしれませんが。
アルファルドにもリャンチーという、自分を慕ってくれてた人物がいたんですが、悲しいかなリャンチーが変態すぎて引いてしまったのかもしれませんね(笑)
最終話感想めぐってここに来た者です。
終わりましたね。
1クールって短いなと思いました。でも、かなり中身は濃厚で壮絶な旅から帰って来たような余韻の残る作品で……面白かっただけに、やっぱりあっという間のようにも感じられますね。
ここのサイトに来てやっと、茶色は「絶望」だったんだ、と分かりました(汗)
また、あの二人が撃ち合いをしてくれると期待して。そしてマリアとカナンが再会を心から懇願して。(TVサイドに♪)
製作者の皆さんに感謝ですね。
僕もリャン・チーは好きでしたね。OPのような格闘シーンが見られなかったのが心残りです。
アルファルドは、ある意味一貫していたのでしょう。宿命のライバルが最後にはわかりあう、というドラマはよくありますが、あえてそうしなかったのだと思えます。アルファルドを軸にカナンの変化を描くために。
アルファルドとリャン・チーの決別は、リャン・チー側に原因がありますよね。アルファルドは許していたのに。まぁ、リャン・チーはアルファルドに殺されたがっていたのだから、仕方ないのでしょう。それも愛、と。
■Caneさんコメントありがとうございます!
はじめまして。わざわざコメント残して頂いて嬉しいです。
回想シーンが大目でしたが、本筋は実はほとんど時間が経過していなくて、それも「あっという間だった」と感じる理由なのでしょう。
茶色は”絶望”というのは僕の推察ですが、それをほのめかす台詞はいくつかあったと思えます。
マリアとカナンは、いつか再会できると思いたいですね。マリアが有名な報道写真家になって、紛争地帯でカナンと再開、とか見てみたいです。