メルクマール

インタビュー風の画面を混ぜたり、場面を細かくザッピングしたりで、主人公の心理を描写しようとしていますが、いまのところ主人公にあまり共感できないのが、辛いところです。

主人公やヒロインは、いわゆる性同一性障害ですよね。自分の生物的な性別と、心で認識している性別が違うという。そういう方は一定数いるようですが、自分がそうではないので、気持ちを理解するためにはハードルがあります。

もちろん、自分が経験したことではなくても、共感を得ることはできます。例えば、幼少時に虐待を受けて、人間不信になった主人公がいたとして、虐待のいきさつに説得力があれば、共感できるでしょう。でも性同一性障害は、「気付いたらそうだった」という性質のものなので、いきさつもなにも無いですから。だから今のところ、修一が苦しんでいる描写があっても、「そういうもんですか」とどこか冷めた目で見てしまうのでした。

もう少し、一般化して見られればよいのでしょうね。誰しも、社会的に周囲から見られている自分と内面の自分とには乖離があるわけだし。マイノリティとしての悩みも普遍的です。そんなふうに見られるようになるかは、今後の見せ方次第でしょう。

「おんなのこって、なんでできてる？」は、マザーグースですね。男の子と女の子は、成分からしてまったく違うのだという詩です。フェミニストが聞いたら怒りそうですが。「僕の心は女の子なのに、なぜ体はそうではないのか」という修一の悩みを現わしています。

寓話的と言えば、『放浪息子』というタイトルは、聖書の『放蕩息子』の話から来ているのでしょうか。聖書の文章はこちらで見ていただくとして、つまりは、失敗してもいいんだと。失敗から学べば、周囲の人は決してあなたを見捨てない、という寓話です。修一君がいろいろ失敗しながら、周囲の人に助けられる話になるのでしょうか。

映像は独特ですね。少女マンガの淡い絵をそのままアニメにしたような。顔の区別が付きにくいのが辛いところです。メインの声優さんは、声優としては素人の方でしょうか。たどたどしい感じがキャラに合っているような、それでもやや辛いような、不安な感じです。この不安さを狙っているのかもしれない。

今期は叙情的な作品が少なそうなので、その枠として期待しています。ただし木曜日はアニメが多いので、感想は定期的には書かないでしょう。

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