今回のストーリーには、いろんな要素があるんですよね。本筋は、『無刀流』を封じられた七花が、いかに慚愧に勝つかという物語ですが、そこにとがめの勘違いによるラブコメが絡み、七花と慚愧との心の交流があり、さらに平行して真庭忍軍と衛門左衛門の戦いがあります。 前半から中盤にかけて、それらの前フリをじっくりとやって、終盤で一気に収束させました。
この構成は、30分モノの前編・後編では難しかったでしょう。前半の内容が薄くなり、引きが弱いですからね。1時間モノだから1時間の枠内で緩急がつけられて、終盤のラブコメの畳みかけや、衛門左衛門の戦いのスピード感や、とがめの奇策による勝負のあっけなさ、が効果的に表現されたと思えます。
とがめは勘違いで嫉妬していましたが、完全に勘違いとも言えないですね。七花と慚愧は、互いに惹かれ合っていたでしょう。互いの境遇が似ていて、互いに孤独で、互いが理解者だとわかったから。七花は剣が生理的に苦手なはずなのに、楽しそうに稽古をしていたのは慚愧がいたからです。あのまま続けていたらどうなったか分からず、とがめが勝負を急いだのは、正しい判断だったでしょう。
ちなみに、”王刀楽土”は”王道楽土”のもじりですね。満州国のスローガンで、孟子が唱えたような”徳の高い王”が統治する理想的な国という意味です。殺人のための剣は覇道であり、剣の王道は精神を鍛えることにあり、だから木刀なのですね。面白いなぁ。 将棋の”王”にも掛けているかも。
本当に、この作品のストーリー構成の巧みさには唸らされます。一つの設定で一つのことを説明するのは、簡単なのですよ。でも良いストーリーでは、一つの設定で多くのことを説明するものです。そしてそのような設定が有機的にからみあい、結末に向かって収斂していくのが、つまり「良いストーリー」です。
例えば、慚愧が真人間でフェアプレイを重んじるという設定は、王刀の持ち主にふさしく、また七花が道場通いする展開のため必要でした。さらに、七花と慚愧が接近するためにも必要だったし、結末の奇策のためにも必要でした。一つの設定で多くのことを説明している、ということです。
前回も前々回も良かったので、尻上がりに良くなっている感がありますね。とがめの奇策が冴えるようになったのがそのあたりなので、とがめ次第なのかもしれません。今後もとがめに期待します。次回はとがめの出生について語られるようで、「咎め」という、愛娘に相応しくない名前が付けられた理由についても語られるでしょうか。
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