メルクマール

高千穂は、｢アジアの安定と平和のため」というお題目を言いますが、それが本心なのか疑っていました。日本の繁栄を第一に考えて、アジアを日本の保護下に置くという思想が、言動の端々から感じられたからです。

今回、それが決定的になったと思えますね。高千穂は新型爆弾の抑止力よって、「帝国と国体も護持できる」と言いました。この「国体」とは、天皇が統治する国家体制のことで、それを守ることが国体護持です。第二次世界大戦の末期、日本の指導者は負けることは分かっていたので、早いところ戦争を止めたかったのですが、終戦後も「国体を護持」するために、無条件降伏はできず、方法を模索していました。そうこうするうちに、広島に原子爆弾が落とされたわけです。

高千穂は結局、この時代の軍部の一般的な思想に固まっていて、そこから出ることは無かったということなのでしょう。葵とは相容れないですね。彼は世界市民的な思想の持ち主で、「日本がどうなろうが、世界が平和であればよい」という考え方ですから。葛は高千穂に近いでしょう。

しかし高千穂は、新型爆弾を上海に落とそうとしています。条件付きですが、彼はやる気ですね。きっと上海が嫌いなのでしょう。この時代、上海は繁栄を極めていましたが、それは諸外国が中国を食い物にした結果であり、退廃だと高千穂は思っているのでしょう。なので破壊して、欧米諸国に目にもの見せてやると。でも彼は、上海に住んでいる無辜の人々のことは考えていません。

田中芳樹さんが書いていたのですが、世には2種類の思想があって、それは「人の命よりも大切なものがある」という思想と、「命より大切なものは無い」という思想であると。そして人は、戦争を始める時には前者を口実にし、戦争を終わらせる時には後者を口実にする。　高千穂は、大義のためであれば、上海市民を犠牲にすることも許される、という考え方です。それによって未来の平和が得られるなら。

葛は、さすがにこれには引いていました。でも高千穂には心酔しているので、葵の前に立ちふさがります。葵はどのようにして、葛を説得するでしょうか。

10話に続いて日常シーンがありましたが、10話とは様変わりしています。葛がいないし、葵も普段のおちゃらけがなく、どこか沈んだ様子。雪菜は笑っていましたが、緊張感の反動のようなところもあり、見ていて切ないものがありました。　風蘭がいいアクセントでした。

葛以外の全員が写った写真は、この後、彼らが離れ離れになることを暗示しているようで。事が終わったら、一緒にいる理由が無いですしね。そんな寂しい予感を感じつつ、最終回を待ちたいと思います。

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