2011年01月25日

いよいよ本格始動 ~名古屋トリプルクラウン選挙~ 後編

名古屋で行われる愛知県知事選挙・名古屋市長選挙・名古屋市議会の解散(リコール)賛否を問う住民投票を3つの王冠に例え、トリプルクラウン選挙と呼ぶ3回目は名古屋市議会の解散賛否を問う住民投票の話です。


今回の住民投票にまで至った背景は、現職市長(注:既に辞任しているものの、新市長就任までは現職として扱う。以下市長)が行おうとしていた減税10%・地域委員会設立・議員報酬の削減や議員定数半減などの議会改革などが次々と議会で否決されてしまったことから端を発しています。

次々に出す案が否決されるために、業を煮やした市長自身が旗頭になって市議会の解散(リコール)を求めたのが2010年の夏のことです。この運動は人口200万以上の都市だったにもかかわらず、わずか1ヶ月間の短期間しか行えなかった間に約45万のリコール賛成票を集めました
ところが、選挙管理委員会には違法な収集が行われていたなどの報告が相次ぎ、短期間で多数の賛成票が集まったことにも疑問符が投げかけれたため、選挙管理員会は再審査を行うことになります。そこで一旦不成立が確定したものの、その後行われた縦覧時に市長の活動を下支えする支援団体が動いたことから異議申し立てが続出不成立が確定した数週間後には一転してリコールが成立するという異例の事態をたどりました。


では賛成派・反対派の主張を見ていきましょう。


賛成派は基本的に現職の市長の政策を支持することになると思います。
賛成派がリコールを推し進める理由として、現状の議会に対して不満があるためだと言われています。早期に解散することで、市長が率いる地域新党・減税日本の活動に有利になるともされています。早く動くことで、民意が理解されたという意味を持たせたいのでしょう。
また、一連のリコールに対しての不信感から、彼らへの『制裁』の意味を含ませているとも言われています。というのも、今回リコールを不成立にさせた選挙管理員会のメンバーが市議会のOBがほとんど(4人中3人)を占めていたため、市議会の陰謀説がささやかれているからです(市議会や選挙管理委員会は否定している)。

逆に反対派は基本的にに名古屋市議会議員と対抗馬になる勢力を支持することになってくると思います。
一つに既に市議会は市長に対してある程度の妥協をしており、リコールされるのはおかしいという考え。もう一つはリコールが不成立になった際、市長が辞任を表明したから、例え成立しても議会解散させるまでもないという考えがあるからです。
そして一番主張しているのは、4月に統一地方選挙が行われるので、そこで行えばいいという考えそこでは県議会議員選挙も行われるため、コストの削減も図れるという考えでもあり、仮に市議会単独で選挙を行えば、3億円以上のコストが上乗せされるとしています。


一連の主張には一長一短があり、市長を支持している人でも今回の政策に強引さを持っているからと反対をする人もいれば、市長は支持しないものの、一連のリコールの動きから賛成を投じたいという人までおり、事態は複雑になっています。
かくいう私個人も非常に悩んでいます。市長に利することになる賛成票を入れればいいのか、かといって議会運営にも疑問を抱いていたので反対にも投じたくない・・・ということを以前書いたかと思います。恐らくこういう人が多いのではないかと思います。

ちなみに今回の住民投票に関しては、公職選挙法に厳格に縛られないため、違法行為(買収など)を行わなえれば、当日まで賛成反対の活動を行ってもよいとされます。そして票の入れ方にも注意が必要で、「賛成」ないしは「反対」を投票用紙に記入しないといけないことです。ひらがなやカタカナも有効として認められますが、○×は無効とされます。また「大賛成」や「絶対反対」などの修飾語や余計な文言が書かれた票も無効扱いになります。


今回の投票は自身の方針と推したい候補の背景(バックボーン)が合わないというケースが多々見受けられると思います。一部政党では、市長選ではAという候補に支持するものの、県知事では独自に候補者を立てたBを支持するというねじれが生じていることも。
そのため、様々なものを天秤にかけながら票を入れなければならない、重い決断をしなければならない人も出てくると思います。

後悔しないためにもじっくり『候補者の言葉』を吟味し、パフォーマンスで選ばないよう努めるべきだと思います。  

Posted by alexey_calvanov at 23:36Comments(0)TrackBack(0)

2011年01月24日

いよいよ本格始動 ~名古屋トリプルクラウン選挙~ 中編

名古屋で行われる愛知県知事選挙・名古屋市長選挙・名古屋市議会の解散(リコール)賛否を問う住民投票を3つの王冠に例え、トリプルクラウン選挙と呼ぶ2回目は名古屋市長選挙の話です。
名古屋市長選挙に出馬しているのは以下の通り(届け出順。個人名はここでは伏せる)。


  1. 民主党・社会民主党・国民新党、そして自由民主党愛知県連が推薦推薦している元衆議院議員。

  2. 共産党・革新市政の会が推薦している元参議院議員。

  3. 無所属の元市議会議員(今回新党なごやを結成)。

  4. 元民主党所属の現職市長(注:既に辞任しているものの、新市長就任までは現職として扱う。なお、今回減税日本結成)



このうち、④のみが減税10%と議員報酬半減など行政改革での刷新を訴え、①~③まではその減税による改革には反対しています。
そして①・②は議会の対決ではなく対話による政策実現を大きく掲げています。③に関しては(市民が納得する)議会改革・評価による議員報酬制導入を訴えています。


では詳細を見ていきましょう。


①は名古屋を教育・福祉・医療に税金を投資し、減税には名古屋を維持できないとして反対しています。また議会に関しては市長と議会の二重権力構造から議院内閣制への変革を唱えています。また様々な分野での雇用促進、国際大会や芸能分野(フィルムコミッションなど)への積極投資、名古屋高速のワンコイン化を促していくとしています。
なお、④が愛知県知事と共に掲げている中京都構想には反対し、あくまで名古屋市で実現(都市高速のみ愛知県との共同事業)と権限強化を目指しているということです。

②は基本的に愛知県知事の訴えと同じ。無駄使いの削減・道州制や中京都の反対・リフォーム事業の助成を核に中小企業の雇用の活性化をメインに掲げています。なお、無駄使いの削減には、名古屋城の木造化への反対が明記され、本丸御殿への言及はなされていません
これに加え、市長によって言いなりになる議会運営に反対し、チェック機能としての議会を確立しようと訴えています(ただし住民自治を促せるなら、地域委員会には賛成という立場を取っています)。

③は名古屋の地域活性化に重点を置いています。
若者を中心とした雇用の創出ばかりでなく、芸どころ名古屋の復興を目指すとしています。特徴的なのは、いじめホットラインの設立・市長の給与は400万以下にする・市バスの無料化。
その中で市バスの無料化は減税するうちの2/5でできるとしています。現在名古屋市交通局にある市バス事業。若干の黒字が出ているものの、地下鉄などの事業から切り離して行っていくのでしょうか。またメンテナンスの費用のねん出はどうするのかは全く触れられていません。

④は積極的な減税・議員によって市長自身が蹂躙された議会の定数削減を含めた改革を促すとしています。
また名古屋を魅力的な街にするための政策(歩行者天国の設定・名古屋城の木造化・B級グルメ選手権開催など)を行っていくとしています。なお、愛知万博・COP10開催の経験から、環境都市も併せて目指しています。
さらに国からの自立を目標に、愛知県との連携を深め、中京都構想には賛成を表明しています。さらに関西(大阪都)の連携を図り地方自治時代の確立を目指しています


詳細は、公式サイト内のマニフェストや後日配布される選挙公報、候補者の演説などを見て頂きたいなと。


で、全ての候補者に言えるのは、積極支出による雇用創出という点。ただ、それを財政の中で納めるか否かで大きく分かれると思います。
特に④に関しては借金を借金と思わずにやっていくことを明言しています。つまり首の回るうちは借りるだけ借り、そこから得た資金から返していけばいいという発想だと思います。

議会との関係は、④はどちらかというと大統領制(市長に大きな権力を持たせる)を目指し、①はその逆で現行の国会を目指すとしています。②・③は現状の中での改革に留まるでしょう。


細かなところを見ると、実は共通項はいっぱいあります。しかし、議会と減税で大きく異なるため、そこで迷うのではないかと思います。そしてこれから選出される議員とのセットで考えるという人にとっては、状況によって議会の早期解散を求めたいのではないかと思います。


次回は名古屋市議会の解散の賛否について触れていこうと思います。  
Posted by alexey_calvanov at 23:51Comments(0)TrackBack(0)

2011年01月23日

いよいよ本格始動 ~名古屋トリプルクラウン選挙~ 前編

今日、名古屋市長の出直し選挙が告示され、それ以前から告示されていた愛知県知事選挙と名古屋市議会の解散(リコール)賛否を問う住民投票と合わせ、3つの選挙(ないし住民投票)が行われることになります。


BlogPaint既に、市内には県知事選挙と市長のポスターが貼られる掲示板が据えられ、既に選挙戦が始まったかのような錯覚さえ感じられました(候補者名などには公正を期すためにモザイク処理を加えています)。



今回からしばらく、全国的に注目され、かつ4月に行われる統一地方選挙の前哨戦になるとされるこのトリプル選挙クラウン(王冠)になぞらえて書いていこうと思います。「市長選」・「県知事選」・「市議会解散の住民投票」という3つの王冠です。この3つの王冠を総取りしたのが、現職市長(注:既に辞任しているものの、新市長就任までは現職として扱う)。対して、いずれか1つないしは2つ(特に首長)を奪いたいのが反市長派ないしは市長と距離を置いた人達になるわけです。


その第1回は愛知県知事選挙について。


愛知県知事選挙に出馬を表明しているのは以下の通り(届け出順。個人名はここでは伏せる)。


  1. 一部の自民党議員と現職名古屋市長が『推薦』、公明党が支持している元衆議院議員。

  2. 自民党県連と自民党本部、現職知事が支持・推薦している官僚出身者。

  3. 民主党・社会民主党・国民新党が推薦している官僚出身者。

  4. 共産党と革新県政の会が推薦している医師。

  5. みんなの党が公認している元愛知県選挙区候補者で医師。



このうち、①のみが名古屋市長との連携を図り、減税などを行うことで効率的な運営ができると訴えています。対して②~⑤は名古屋市長の政策を愛知県へ持ち込むことに原則反対するという立場を取っています。ただ、反対の度合いは少々違うようです。

明確に反対を訴えているのは②・④・⑤。減税をしたところで増えるのは借金だけだという主張です。③に関してはノーコメントを貫いていますけれども、反対はしている模様です。


では、具体的に見ていきましょう。


①が掲げるのは、減税・市との連携・中京都構想。
減税は名古屋市と同じく10%引き下げることで、企業誘致を活発化し、地域経済の底上げを図ろうというもの。さらに中京都を設立することで名古屋市との一体化を図る傍ら経済圏を広げ、さらなる経済効果を促進・効率を図るということだそうです。
元々トヨタ自動車をはじめ、大企業から中小まで海外の動きをにらみながら活動する『ものづくり王国』だった愛知。そのため、海外の動きに翻弄されがちで、海外が倒れると他の地域が立ち直りを迎えても地盤沈下を起こしているようにも感じられることがありました。そういうことをなくすために、様々な地域産業を興そう、ものづくりを強化していこうという意図があるのかもしれません。
なお、これとは別に東三河の活性化を打ち出しているのも大きな特徴でしょう。東三河に関しては『県庁』を設置し、独自の施策を行い、南信(飯田・伊那など)・遠州(浜松など)との連携を図ろうとしています。

②は愛知の閉塞感を打破することに終始するとしています。
行政改革・事業仕分けを積極的に行うことで、無駄な財源を洗い出し、その財源を福祉や若者への雇用対策など現在の地盤沈下している愛知へのカンフル剤にしていくもの。また宮崎の例にならい、トップセールスを積極的に行っていくとのことだそうです。
減税には反対してるものの、福祉・環境・子育て・伝統文化などに取り組む団体に寄付を行うことで実質減税を行うという仕組みを確立させていくとしています。
また東海三県との連携や東三河地域への地域振興策といったものも積極的に行うとしています。

③は福祉と教育の充実、愛知ブランドの国際化、対立や混乱よりも改革実行を図ることを重点にしています。
教育に関しては、地域との連携・教師が子供と向き合えるような教育現場の生成を行うべきだと主張しています。そのための一つに30人学級の実現を掲げています。介護に関しては医療や介護に充てられる無料サービス券の配布を訴えています。
愛知ブランドの国際化に関しては、名古屋港民営化・東海連合から愛知を開いた地域にしていくことを重点とし、京都や秋葉原に並ぶような情報文化発信地点の設立、スポーツへの積極的な投資(選手育成や国際大会の誘致など)を掲げています。
行政改革に関しては、単純に人員を減らすのではなく、仕事をしない無駄な職員を減らすべきだと主張しています。ただ減らすのではなく、いい人材を残しながら減らしていくというふうなのでしょう。

④は無駄使いの削減・道州制の反対・リフォーム事業の助成を核に中小企業の雇用の活性化を訴えています。
リフォーム事業では100億円を使うことで1000億円の経済効果を得られると考えています。それを軸に地域経済の活性化を図り、1万人の雇用創生を行うというもの。それに加え正規雇用をした会社に補助金を出し、さらに1万人の雇用を増やせるとしています。
また国民健康保険の保険料を1万円引き下げや子供にかかる医療費を中学卒業まで無料にするとしています。
道州制や新たな市町村合併には消極的で、現状の体制からいかに立て直すかを焦点にしています。また大規模な公共事業(徳山ダム導水路・設楽ダム建設など)を止め、そこから先述の事業に回すとしています。
なお、基本的に職員の削減には反対しているとされています。減税にも無駄な公共事業を止めることでそれと同様な効果を得られると主張しています。

⑤は愛知開国を訴え、(みんなの党の公認を得ながらも)無党派を積極的にアピールしています。元々支持母体のない状態で50万票近くの票を集め次点になったこともあり、今回の知事選挙でもそういう立ち位置になったのだと考えられます。
大きな特徴として、職員(県公務員)・議員・知事給与の徹底カット。職員に関しては、総人件費の2割を、県議会議員に関しては3割、知事にはそれに加えボーナス・退職金の全面カットを打ち出しています。また天下りの根絶も訴えています。県議会の定数半減も打ち出し、さらなる財源カットを図っています。
医療に関しては、海外の看護師や医師を積極的に受け入れ、メディカルツーリズムを積極的に促して医療大国を目指しています。法人税を下げて経済特区を打ち出したり、ハローワークの権限を県に移譲して雇用の積極的な打ち出しを図っていくことも明言しています。


詳細は、公式サイト内のマニフェストや後日配布される選挙公報、候補者の演説などを見て頂きたいのですが、読めば読むほど迷います

ただ②~⑤は減税には大なり小なり反対であること④は改革政党出身者なのに、政策面では保守的な部分(特に道州制の反対や海外の流れを無視している点)が強いこと。⑤が開放政策としてはかなり異色で強い点が差となっているのではないかと思います。同じ官僚出身者でも②と③、同じく医師でも④と⑤はかなり異にしていますし。

ただ今回最も読めないのは自民支持者の分裂が起っていることこの票の割れがどう流れるかによって、全ての候補者に当選の可能性があるわけです。ホント冗談ではなく・・・。


しかし、さらに複雑になっているのが名古屋市長選挙。候補者は4人ですが、県知事選挙とリンクさせると事態は簡単に説明しにくいものになっています


次回は名古屋市長選挙を見ていきましょう。  
Posted by alexey_calvanov at 22:33Comments(0)TrackBack(0)
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