名古屋で行われる愛知県知事選挙・名古屋市長選挙・名古屋市議会の解散(リコール)賛否を問う住民投票を3つの王冠に例え、トリプルクラウン選挙と呼ぶ3回目は名古屋市議会の解散賛否を問う住民投票の話です。
今回の住民投票にまで至った背景は、現職市長(注:既に辞任しているものの、新市長就任までは現職として扱う。以下市長)が行おうとしていた減税10%・地域委員会設立・議員報酬の削減や議員定数半減などの議会改革などが次々と議会で否決されてしまったことから端を発しています。
次々に出す案が否決されるために、業を煮やした市長自身が旗頭になって市議会の解散(リコール)を求めたのが2010年の夏のことです。この運動は人口200万以上の都市だったにもかかわらず、わずか1ヶ月間の短期間しか行えなかった間に約45万のリコール賛成票を集めました。
ところが、選挙管理委員会には違法な収集が行われていたなどの報告が相次ぎ、短期間で多数の賛成票が集まったことにも疑問符が投げかけれたため、選挙管理員会は再審査を行うことになります。そこで一旦不成立が確定したものの、その後行われた縦覧時に市長の活動を下支えする支援団体が動いたことから異議申し立てが続出。不成立が確定した数週間後には一転してリコールが成立するという異例の事態をたどりました。
では賛成派・反対派の主張を見ていきましょう。
賛成派は基本的に現職の市長の政策を支持することになると思います。
賛成派がリコールを推し進める理由として、現状の議会に対して不満があるためだと言われています。早期に解散することで、市長が率いる地域新党・減税日本の活動に有利になるともされています。早く動くことで、民意が理解されたという意味を持たせたいのでしょう。
また、一連のリコールに対しての不信感から、彼らへの『制裁』の意味を含ませているとも言われています。というのも、今回リコールを不成立にさせた選挙管理員会のメンバーが市議会のOBがほとんど(4人中3人)を占めていたため、市議会の陰謀説がささやかれているからです(市議会や選挙管理委員会は否定している)。
逆に反対派は基本的にに名古屋市議会議員と対抗馬になる勢力を支持することになってくると思います。
一つに既に市議会は市長に対してある程度の妥協をしており、リコールされるのはおかしいという考え。もう一つはリコールが不成立になった際、市長が辞任を表明したから、例え成立しても議会解散させるまでもないという考えがあるからです。
そして一番主張しているのは、4月に統一地方選挙が行われるので、そこで行えばいいという考え。そこでは県議会議員選挙も行われるため、コストの削減も図れるという考えでもあり、仮に市議会単独で選挙を行えば、3億円以上のコストが上乗せされるとしています。
一連の主張には一長一短があり、市長を支持している人でも今回の政策に強引さを持っているからと反対をする人もいれば、市長は支持しないものの、一連のリコールの動きから賛成を投じたいという人までおり、事態は複雑になっています。
かくいう私個人も非常に悩んでいます。市長に利することになる賛成票を入れればいいのか、かといって議会運営にも疑問を抱いていたので反対にも投じたくない・・・ということを以前書いたかと思います。恐らくこういう人が多いのではないかと思います。
ちなみに今回の住民投票に関しては、公職選挙法に厳格に縛られないため、違法行為(買収など)を行わなえれば、当日まで賛成反対の活動を行ってもよいとされます。そして票の入れ方にも注意が必要で、「賛成」ないしは「反対」を投票用紙に記入しないといけないことです。ひらがなやカタカナも有効として認められますが、○×は無効とされます。また「大賛成」や「絶対反対」などの修飾語や余計な文言が書かれた票も無効扱いになります。
今回の投票は自身の方針と推したい候補の背景(バックボーン)が合わないというケースが多々見受けられると思います。一部政党では、市長選ではAという候補に支持するものの、県知事では独自に候補者を立てたBを支持するというねじれが生じていることも。
そのため、様々なものを天秤にかけながら票を入れなければならない、重い決断をしなければならない人も出てくると思います。
後悔しないためにもじっくり『候補者の言葉』を吟味し、パフォーマンスで選ばないよう努めるべきだと思います。