12/7、神奈川県横浜市神奈川区にあるニッパツ三ツ沢球技場でY.S.C.C.横浜×高知ユナイテッドSCとのJ3・JFL入れ替え戦(第2戦)を見に行ってきました。
この試合は、ホーム&アウェイの2戦で行われ、第1戦は12/1に香川県丸亀市にあるPikaraスタジアムで高知のホームとして開催しています。その時の結果は1-1のドローで、前半Y.S.C.C.が先制したものの、その後高知が追い付く格好になりました。
今回はY.S.C.C.のホームで開催することから、ドローで終えたY.S.C.C.が優勢だと思われていました。どちらも勝たないといけない状況ではあったものの、仮に引き分けに持ち込まれても、延長戦やPKはホーム側であるY.S.C.C.に有利に展開されるのではないかと思われたからです。ゆえに、高知としては、これまで以上に勝利が必須条件となってしまったのです。総得点数が低いチームがアウェイで1点をもぎ取るのは、かなり難易度の高いものだと思っているので、高知がそれに臆せず戦えるかが焦点になったと思っています。
こちらは、後半開始時に撮った高知側のスタンド。高知からのツアーバスが中止になったという話は聞いていたものの、なんのなんの、地元や関東圏などの高知出身者が、これだけ多く来場してくれました。メインスタンドもぎっしりしていましたよ。
この状況は、Y.S.C.C.サイドも同じで、普段開放されないバックスタンドも開放されるほどでした。その結果、この試合は5101人の来場者が来ておりました。けれども、普段からこのくらいの人間を呼べなかったのかとY.S.C.C.の運営には問いたいですね。
試合は、前半から双方緊迫感のある展開を見せるかと思ったら、前半7分、高知の左からのフリーキックをY.S.C.C.が弾いたと思ったら、それが高知の選手の下に飛び、右へ大きく展開。その展開された球を数人のパス回しを経て、今度は中央にクロス。その球をこの試合先発になった新谷聖基選手が頭で合わせ、ゴールマウス左隅に吸い込まれました。Y.S.C.C.が第1戦で行った奇襲を今度は高知がやってのけました。シンプルながらもお手本のような鮮やかなクロスからのヘディングシュートで先制となりました。
その後は、Y.S.C.C.が攻撃的になっていったものの、高知が全員で守る従来のプレースタイルが光り、精度の低さもあってシュートが入らない状況に。高知もチャンスは掴むものの、Y.S.C.C.の執念ある守備で追加点を許さないふうになっていました。
しかし、攻守を入れ替えてフレッシュにしたはずのY.S.C.C.の猛攻は実らず、高知は何とかして追加点を入れたい執念が徐々に実を結びそうな状況になった中、アディショナルタイム突入直後に大一番がやって来ました。
高知は、カウンターで前線に球を持っていき、左に出ていた途中交代の内田優晟選手(29番の選手)がY.S.C.C.の狭い守備の間をかいくぐる一閃を放ち、それがキーパー棒立ちになってしまうほど、ややふかし気味だったものの、まっすぐな弾道を描き、ゴールマウス上部に突き刺さっていきました。高知にとっては、J参入を決定付ける、Y.S.C.C.にとってはJクラブとしての終焉を示すことになった追加点となりました。しかも、彼は2年目の若手で、この試合が初登場という『持ってる』選手だから、ホントわからない。
そして、そのままタイムアップ。
0-2(2試合合計1-3)で、高知がJ参入を決めました。一方Y.S.C.C.は、いわてグルージャ盛岡に続くJ退会が確定となり、来年はJFLで戦うことになりました。
高知がアウェイながらも90分間を上手く支配していたように思いました。逆境かつ圧倒的不利な中で、自分達のサッカーを貫けたのが大きかったと思いますし、最後まで点を取る姿勢も素晴らしかったと思います。
一方でY.S.C.C.は細かいミスが目立っており、最初の失点は、ショートコーナーで起こしたミスがきっかけだったと思いますし、2点目も最後決めきれなかったことで生じたミスだと思います。たった一つのプレーでガラッと変わるY.S.C.C.の特徴が、今回は悪目立ちしてしまったようです。
遂に高知がJ参入を決めました。
今年のシーズンから独走状況で、首位での参入も夢ではなかったものの、後半失速して、今回の入れ替え戦にまで至ったわけですから、サポーターの人達も焦燥感を味わったのではないのでしょうか。
今回のために作られた、お手製の切符。
途中経由のアイゴッソ高知と高知UトラスターFCというのが、高知県のサッカー事情を表しているとも。
高知県には、元々J参入を目指したアイゴッソ高知と高知UトラスターFCの2チームがあり、お互いが地域リーグ内で潰し合う格好になっていました。そこで、高知県で一つのチームを作るべきだということで、双方を合併して生まれたのが、高知ユナイテッドSCなわけです。チームカラーの赤(えんじ色)はアイゴッソ、緑は高知Uトラスターのチームカラーだったんですね。このあたりは、鹿児島ユナイテッドFCが生まれた過程とよく似ています。
2016年に合併後、四国リーグで圧倒していたものの、地域サッカーチャンピオンズリーグでなかなか勝てない中で、2019年に遂にJFL昇格を獲得。しかし全国展開することやコロナ禍で経営面での悪化が目立つようになり、チーム解散の憂き目にも遭いながら、少しずつ成長し、2023年の天皇杯ではJ1のガンバ大阪と横浜FCを下し、ベスト16まで進みました。そして、今年2位で入れ替え戦に進み、J参入を果たしたのです。
このお手製の切符、本物のような切符で作られました。200枚限定配布だったようです。
「祝J3入会!」と書かれた紙弾幕が用意され、集合写真の時に出されました。
選手とスタッフが集合し、勝利の雄たけびを上げる瞬間。
この日は、高知の全選手が来場しており、FC岐阜から期限付き移籍していた和田侑樹選手もいました。ちなみに、プロ契約をしていたのは、その期限付き移籍でやって来た3選手のみで、それ以外の選手(つまり元々高知所属のチーム)は、全てアマチュア契約になり、どこかで働きながら選手活動を行うというふうでプレーしていたのです。
吉田岳史監督の胴上げシーン。
吉田監督は高知県出身で、現役時代は名古屋グランパス・横浜FC・水戸ホーリーホックなどで活躍していたそうです。だから名古屋サポも来ていたのか・・・。そして、ニッパツ三ツ沢球技場は選手時代の思い出の地でもあるのね。
一方のY.S.C.C.サイドは、お通夜状態。最後は選手や監督がゴール裏に来たそうですけど、怒号に近いエールが飛んでいたらしい。スタジアムDJの1年でJリーグに戻ろうと訴えたものの、平均観客動員数が2000人を越えない中で、本当に戻れるのかが心配ですね・・・。だから5101人来たのに驚かされたわけですけど、半数が高知のサポーターだったとしても、2500人くらいは呼べる実力はあるのですから、普段からこの営業活動を行ってほしいよねぇ・・・。
これで、来年のJ3は栃木シティFCと高知が参入を決め、ザスパクサツ群馬・栃木SC・鹿児島がJ3降格となります。勢いのあるチームと実力のあるチームがやって来ることもあり、来年も激戦が予想されますが、大宮アルディージャのように頭一つ飛び抜けたチームは無いため、団子レースになる可能性もあります。そうなると、選手の個性よりも集団で組織的に戦えるチームになるかだと思います。その点では、高知は有利に働くかもしれませんが、運営面での問題は、まだ完全に払しょくできていないため、今後運営面で安定を図れるのか気掛かりではあります。
来年、高知に行けるのはうれしい反面、アクセス大丈夫かなとか日程大丈夫かなという不安もあります。しかし、今は高知のJ参入を喜ぼうではありませんか。高知ユナイテッドSCの皆様、J参入おめでとうございます。来年の活躍を期待しています。