No 82
Date 2006・06・28・Wed
アニメ【獣王星】感想【獣王星】を観終わって
とても面白かった!! 原作者樹なつみ氏の作品に触れるのは初期のもの以来でしたが、インタバルが開いてもやっぱり魅了する作品を描き続けていたのですね。 理不尽な扱いを受ければその理由を知りたいのは道理。 真実を知らなければ良かったと思う事はある。 そしてそれに直面したとき、人はどんな行動に出るのか。 絶望の淵に立たされ、その中で必死に適応しようとするタフな人間の姿と、 巨大な肉食性生物や過酷な気候に次々と倒れて行く人間の描写との対比。 ハイテクノロジーが進み、人間に管理されたスペースコロニー『ユノ』と、 手付かずの厳しい自然環境が待ち受ける『キマエラ』。 「ユノで輝かしい将来を約束されていた」トールが、最終的には「キマエラで生きて行く事になった」のは皮肉だ。 地球が無くなった人類の、次なる惑星での存続をかけた実験の最終段階がトールだった訳ですが、「人類を存続させる為」に「人(特に恩赦を与えるという餌まで蒔いて勝ち残った歴代獣王)を“モノ”扱い」するという矛盾と、最高責任者オーディンの「自分が生きている間に結果が見たい」という傲慢。トールに殺されても良いとまで言っておきながら、やはり自分の目で結果を見たいから自転加速装置を発動する身勝手さ。 とっくになくなってしまっていた、憧れ続けた地球。 その存在を疑う事すら知らずに、地球へ行く為に肌や髪の色を変え、人格さえも変えて任務をこなしてきたサードの最期が哀しい。自分自身でオトシマエをきっちりとつけたところはどこまでも軍人でしたね(;;)。トールはサードと共に生きようとしていただけに、自害という形でけじめをつけて欲しいとは思わなかった筈(確かにあのままでは二人とも墜落してしまったでしょうけれど・・・)。 細かい事なのでさっと読み飛ばして下さって結構ですが、 ①トール寿命の問題は解決したのか。 ②カリムを亡き者にされた後、今迄あれだけラブ・コールを送り続けられたティズに対して「妹」という感情から「子どもを作る」存在に一気に気持ちが変わったところがちょっとなぁ(ーー)。 声優初挑戦というけれど、堂本光一さんは違和感なかった。むしろ熱演に好感が持てました。 オーディンを許した事(まぁオーディンも立場上仕方なかった訳だし)、 ティズと一緒にキマエラに戻れなかった事、 サードが自害した事、 と、ありきたりなラストにしなかった所がやはりすごい。 でも視聴者としたら、慕っていたオーディンからいきなり理不尽な扱いをされた事に対して何らかの決着を見たいだろうし、ずっとトールを慕い続けていたティズと結ばれるだろう事は想像しやすかったし、 ありもしないもののために、それがたとえサード自身が望んでとった行動だったとしても、それでも本来の自分を捨てて任務をまっとうしたサードには何らかの形でカタルシスを得たいと思った。 けれど、「SFという空想・想像ジャンル」で、生きていかねばならない「現実の厳しさ」をあえて描いたラストに敬意を表したいです。 あんなにも出たいと思ったキマエラで、これから生きて行く為、仲間の死を無駄にしない為にもキマエラに順応しているトールの逞しさに(遺伝子レベルも含めて)希望を見出せるラストでした。 ○●○●○ 追 記 ●○●○● 作画も常に安定していて良かったです。 勿論樹さんの原作がすばらしいからですが、それを上手くアニメーション化したスタッフの方お疲れ様でした。 作品上人々が死んでいくシーンは仕方ないですが、女性の原作ならでは(あ、鋼は女性が原作だけど、違う作風にアニメはなってしまいましたね・・・)の配慮を感じてそこもまた良かったです。シリーズ脚本も女性の吉田玲子さんでしたしね。そのおかげかな・・・ SFものですが、キャラクター商品に結び付けていないところがとてもすがすがしく感じました。 次回また樹さん原作のアニメが見られたらいいな、と期待してしまう出来でした♥ |
| WIND OF MOON |
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