メルクマール

サブタイトルが面白いですね。『復讐するは我にあり』という、聖書の言葉のもじりでしょう。この場合の”我”は神様のことで、悪への復讐は神がやるから、自分で復讐してはいけない、ということです。

どういう意味なのかなと思っていたら、復讐の替わりに、嫌いな食べものをまかない料理に入れるということでした。それで、自分への行為は水に流すという意志表示ですね。男なら「一発殴らせろ」と言うところですが、女性らしい感覚です。

あと、『復讐するは我にあり』という佐木隆三の小説もあり、直木賞を取っています。直木賞を狙っているという、自称小説家のエピソードとも絡ませているのでしょう。

赤毛のアンを思わせる、と前回のレビューで書いたのですが、今回も赤毛のアンっぽいですねー。認められるためにがむしゃらに働いたり、料理の腕を認められたり、物を失くした疑いをかけられたり。どれも赤毛のアンにもあるエピソードです。

ただ、赤毛のアンでは、マリラはアンを疑ってしまうのですが、女将は冤罪だと分かっているように見えます。女将が緒花をどう思っているのかが謎ですね。赤毛のアンは、実はマリラがヒロインだと言えるくらい、マリラ視点で心理描画も多いのですが。 女将の心理描写はありません。

考えてみれば、この作品は、緒花以外の人物の心理描写が一切ありまりませんでした。知らない人ばかりの環境に放り込まれて、誰が何を考えているかわからないという、不安な状況を視聴者と共有しているわけです。

困難な環境に置かれて、取れる行動は2種類でしょう。この場所は自分に合わないと諦めるか、強引にでも自分の居場所を作るかです。緒花は”見返してやる”という気持ちでがむしゃらに働いていますが、その根っこにある気持ちは”居場所が欲しい”でしょうね。子供の頃から、居場所を求めてきたのだから。　

最初のうちは、「働いて役に立つことを示せば、居場所が得られるはず」というシンプルな考え方で、ひたすら働いていたのですが、それでは必ずしもうまくいかないことが分かってきました。なので、同僚に直談判して、状況を変えようとしています。いろいろ試行錯誤することが必要でしょう。失敗するのも青春です。

緒花は、失敗するし、悩みもするけれど、常に前向きな選択肢を選びます。それが彼女の魅力であり、その前向きさが、周囲の人々をどう変えていくのかに注目しています。

ポチっとして頂けると励みになります！↓