やはりこの作品は、星の王子様だった。STAR DRIVER 輝きのタクト 第25話 『僕たちのアプリボワゼ』 のレビューです。
敵をあざむくにはまずは味方から。これまでさんざん裏切りフラグを立てて、実際に裏切ったように見えたスガタでしたが、自らザメクを封印することが真意でした。
でも、彼の中に裏切りの要素は、皆無では無かったはずです。ザメクの力に惹かれていたのは確かだし、ワコを巡るタクトとの関係に悩んでいたのも確か。すべてが演技だったとは、思わないのですよ。でも結果として、彼は仲間を裏切ることなく、自己犠牲を選びました。
彼には、そもそも綺羅星十字団に加わらず、ザメクを復活させない選択肢もあったはずです。でもそうではなく、リスクを取ってザメクを復活させたのは何故でしょうか。僕の想像では、ケイトの想いに応えたい、という気持ちからではないかと。
スガタはケイトに恩がありますが、ケイトの恋心に応えることは出来ません。ワコがいますからね。だからせめて、彼女の「ザメクを復活させて、スガタの役に立ちたい」という願いを叶えてあげたのではないでしょうか。ザメクを復活させ、それを自ら封印させることで、ケイトの願いは(一応)叶うし、ワコは安全になるし、スガタとワコの恋路を邪魔することも無くなる。自分が犠牲になれば、すべて上手く収まるという作戦でした。
でも、そんな犠牲を黙って見過ごすタクトではありません。たとえ無茶でも、後先考えずに全力を尽くすのが青春であり、タクトは青春そのものです。その八方破れの青春パワーで、ザメクを倒してしまったのでした。
この作品は、『星の王子様』を下敷きにしていて、その考察は2話のレビューで書きました。星の王子様は、語り手である「僕」が、王子様の純粋な魂に触れて、子供の頃の純粋さを思い出す話です。忘れていた大切なものを思い出させる、大人のための童話なのですね。 この作品も、その要素はあるでしょう。「僕」にあたる大人視点は、ヘッドとリョウスケです。
「いったいあいつには、何が見えているんだ」「俺やお前にはもう、見えないものさ」というセリフは、星の王子様にある、「大切なものは、目には見えない」という有名なセリフを想起させます。たとえば、「夜空が美しいのは、どこかに薔薇を隠しているから」という感覚で、「なにそれ」と思うのは、論理に毒された大人だからで、子供の純粋な魂があれば、直感的に分かるということです。
『星の王子様』での「僕」は、王子様のとりとめのないしゃべりを聞き流しながら、なにバカなことを言ってるんだと思っているのですが、次第に王子様に感化されて、「大切なものは、目には見えない」という感覚を、理解するようになります。ヘッドやリョウスケも、タクトに感化されたのではないでしょうか。 論理的ではなく、直感的に「やりたいこと」と「やるべきこと」を見出して、それを一致させるために「青春を謳歌する」パワーの偉大さに畏怖しています。
ヘッドは、サイバディを復活させるためのリスクさえ恐れる臆病者ですが、大人はそういうものかもしれません。いろいろ考えてしまいますからね。それでいて、未来に望みを持っていなくて、過去の悔恨の中で生きている、ダメな大人代表ですが、そういう大人は多いはずだと、自分を顧みても思います。
でも、そうじゃない”青春を謳歌した時代”もあったはずなのですよ。楽観的で、物事の良い面だけを見て、やりたいことをやればいい、と単純に信じていた時代。この作品は、大人たちに、そんな時代のことを思い出させるキッカケになったのではないでしょうか。そういう意味で、この作品は正しく、『星の王子様』の翻案だと思えます。
素晴らしい最終回だったし、全体的にとても面白い作品でした。映像や音楽も素晴らしく、ほとんど完璧だと言えます。残念なところがあるとすれば、魅力的な登場人物が多いので、それぞれの人物のエピソードをもっと見たかったな、ということですね。BDに後日談みたいな回が入るとしたら、間違いなく買うのですが。ともあれ、この余韻を残す終わり方も良いでしょう。いろいろ考えさせられました。生きている限り、自分の銀河を輝かせたいものですね。
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スガタはタクトに出会う以前から、自分の代で全てを終わらせようと思っていたのではないでしょうか。
そしてその時は、きっと最悪の結末を迎えていたのでしょうが、なんとタクトはそれを全部覆えしてしまいましたね。
そして父親でありながら、単純化された童話の悪役のように描かれたトキオの存在があるからこそ、真っ直ぐで迷わないタクトの輝きが際立ったのかも知れません。
もしかしたら、自分の息子として生まれたかも知れないタクトとカタシロの語らいなどが見たかったところですが、後日談がまた気持ちいいほどにスルーされましたね(苦笑
ただ、スタドラ制作スタッフは相当に悪戯好きのようですので、必ず劇場版なり何なりの展開があると信じて、今はこの目眩いばかりの青春無双の物語を、胸のすくような堂々たる大団円に導いたクリエーター諸氏に拍手喝采を贈りたいと思います。
メルクマールさんもありがとうございました。
それは確かに、そうなのかも。ワコが島から出られないという話をしていたときに、スガタは「自分が何とかする」というようなことを言っていました。つまり、自分がワコの封印を解き、全てを終わらせることだったのでしょう。
だから、綺羅星十字団に寝返って、ザメクをよみがえらせたのは、ワコのためでもあったのですね。
タクトとリョウスケのからみは欲しかったし、じっちゃんとヘッドのシーンも見たかったところです。タクトの母親も登場して欲しかった。いろいろ見たいシーンはあるのですよね。更なる展開は期待したいところです。
最後までお付き合い頂きありがとうございました!