メルクマール

中原めいこの『ルナルナ TIKI TIKI』という曲を、知ってる方はあまりいないでしょう。古い曲で、しかもシングルカットされていませんから。　ラテンのリズムに乗せ、”島の娘”と”旅人の男”の掟に背いた恋を描いた、ストーリー仕立ての歌詞になっています。

ワコとタクトを見ていて、この曲をふいに思い出しました。もうCDは絶版ですが、YouTubeにあったので、興味がある方のためにリンクしておきます。名曲です。→中原めいこ　ルナルナ・TIKI TIKI

 女が何かに囚われていて、男がそこから救いだす、というのは古典的なラブストーリーで、この作品もそうなのでしょう。タクトは「やるべきこと」を見つけたようです。サイバディをすべて壊して、ワコを島の掟から自由にするという。

サカナの惑星の物語も、考えてみれば同じストーリーです。サカナの惑星から少女を救い出し、銀河の世界に旅立つためにサムは戦っている。これは、ワコとタクトのことを表しているのでしょうか。それとも「少女」とはサカナちゃんのことで、自分を助けだしてくれる「サム」が現れるのを待っているのでしょうか。

二人が閉じ込められた世界は、「まぎれ込んだ人の思い出や願望」だそうですが、誰の願望だったのかな。自販機とかすごく古い型なので、過去の世界に見えます。タクトが、 ワコとスガタとの長い付き合いを、内心羨ましく思っているとしたら、「過去に戻ってワコと知り合いたい」という、タクトの願望なのかもしれません。

この作品は『星の王子さま』を下敷きにしているのだろう、ということを2話の感想で書きましたが、今回は、「大事なものは目には見えない」という、一番有名なセリフが登場しましたね。王子さまと仲良くなったキツネが、去り際に「ひみつを教えてあげる」と言って告げる言葉です。　キツネは知恵の象徴で、王子さまに、愛情とは何か、人生にとって大切なものは何か、といったことを教えます。

タクトは、これをじいちゃんから聞いたそうなので、じいちゃんが”キツネ”なのかな？　でも、王子さまはこの言葉を教わって、”僕”（作者の投影）にも教えているので、じいちゃんが”王子さま”と考えたほうが自然か。タクトは星の王子さま（銀河美少年）の跡継ぎ、というわけです。

「大切なものは目に見えない」とは、本質は見えない部分にある、ということです。星空が綺麗なのは、その中に一輪のバラが咲いた星を隠しているから。砂漠が綺麗なのは、そこに井戸を隠しているから。タクトは本質を見抜く目で、隠されていたタウバーンを見つけ出したのでした。

「人はパンのみにて生くる者に非ず」 と言いますが、ではパン（物質的な満足）以外に必要なものは何でしょうか。『星の王子さま』のテーマは、その「人生にとって本当に大切なものは何だっけ」ということにあります。　この作品が『星の王子さま』を下敷きにしているとしたら、そこまで突っ込んだストーリーになるのでしょうか。なにかと寓話的なのは、そういう雰囲気を盛り上げているので、期待しています。

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