メルクマール

電車の吊り広告を見ていると、女性誌では定期的に「男心をつかむには」みたいな特集がされているわけですが、書いてあることの基本は同じで、「とりあえず褒めておけ」ということのようです。男は単純な生き物で、褒めてくれる女性を好きになるものだと。

それはまぁ、かなり当たってると思えますね。子孫を残すには女性に見染められることが必要なので、本能的に女性に能力を認められたいと思っているからです。 また、根っこには「母親に褒められたい」という子供の頃からの意識もあるでしょう。

私事ですが、かなり前のこと。　製品発表イベントのために機材を調整していると、それを見ていた広報の女性が、「スゴイですねー。大学でどういう勉強をしたら、こういうことが出来るようになるんですか？」と聞くんですね。えらく無邪気に、キラキラした目で言われたのが印象的で、ドキドキしたものでした。　彼女は辣腕広報ウーマンとして知られていて、さすが、人の心をつかむ術を心得ていると感心したのですが、要するに男は単純ってことです。

森島はるかは、褒めるのが上手い女の子です。「あなた、可愛い目をしてる」「キミって優しいんだね」「そういう風に言ってくれたのって、響と橘君だけかも」とかとか。会うたびに必ず褒めています。これで美人なんだから、好きになってしまうのも無理はないでしょう。僕なら、100%好きになる自信があるね！

これはつまり、はるかは橘に気があって、惚れさせようとしているわけです。当然、橘もそういうサインだと受け取るでしょう。あそこで告白できたのは、そのサインの後押しがあったからのはず。

でも、ちょっと拙速だったようですね。「男らしいんだね」と褒めつつも、「でもダメ」と。　はるかの気持ちが橘に向いていることは確かだけれど、付き合うほどのレベルには達していなかったらしい。しかし、橘は諦めるべきでは無いのです。「ごめんなさい」じゃなくて、「ダメ」と言われたのだから。　これは「まだダメ」という意味だと受け取るべきで、「頼りがいがある人が好み」というのは、そういう男だと証明してみせろということでしょう。「年上」とも言っていましたが、少々の年の差に意味は無いはず。

ただ気がかりなのは、橘君は過去に手ひどく振られていることで。そのトラウマを塗り重ねてしまったことで、このままでは再チャレンジするガッツが出ないかもしれません。なにかキッカケが必要なのでしょう。

恋愛モノは、主人公に感情移入できないといろいろ辛いわけですが、橘君は納得できる行動をしていて、はるかに惹かれていく過程も丁寧でした。この調子でやって頂ければ、期待できる作品になりそうです。

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