前にも紹介しました、Libertarianism Japan Projectからお誘いがありまして、今後、記事を投稿することになりました。 既に蔵研也さんといった専門の学者サンまで書いておられるところに、私が出るのは正直勇気が要る話ではあるのですが、一口にリバタリアンといってもいろんな切り口があるはずだから、私の文章も意味があろう、と自らに鞭打ちつつ、今後投稿していくつもりです。
その第一弾として、 山の遭難に対する救難費用を例に、政府の民営化(というより、民営的に扱わざるを得ない日本の状況)をUPします。
といいたいんだけど、Livedoorのログインページが妙に重くて入れない(涙)
待ってもいられないので、 このBLOGで先行公開です。
======
8/12の朝日新聞の朝刊に、山岳事故・遭難の救援費用を有料化せよ、と羽根田治サンがオピニオン記事を掲げている。
中高年の登山ブームの結果として、「連れられ登山」者のような危機意識のない人が増え、安易な救援要請が相次いでいる。この状態を停めるには、ヘリなどの救援費用を有料化するよりない。 費用負担が大変だろうが、それは、山岳保険で対処すればいい。今は、年5000円程度の山岳保険の商品もあるのだから。
といった趣旨のインタビューである。
この議論は、いずれ出てくるだろうな、と私も予測していた。 論点は2点ある。 (1)ヘリの需給バランスはどうか (2)政府の行為は、保険商品で代替可能か これらの二点で、現状を分析すると、 救難という事業を、政府が担いきれない。政府が担う必然性も薄い。よって、民営化しても、なんら問題が出ないだろう、と私は結論した。 まず(1)について。 有料化の議論が出てきた背景には、政府・公機関の救難用ヘリコプターが絶対的に不足しだしたことに遠因がある。 公機関のヘリでは、絶対数が不足しており、民間ヘリも併用しないといけない という現状では、確かに、公機関のヘリを使わせてもらった遭難者と、民間ヘリを使わせてもらった遭難者との間で、費用的な不公平さが如実に表れる。 なにせ、公機関のヘリは、今のところ無料なのだ。
だから、「公機関のヘリでないなら、自力で下ろします」などと 救難の電話をかけてきたはずの人が、言ったりするという皮肉な事態も起きる遠因になっている。
この状態が不公平であることは、海難救助と比較するとよくわかる。 海難救助は、基本的に公機関で担うことになっているので、遭難事故ごとに費用がほとんど異ならずに済んでいる。 同じ救難でも、海では、公共サービスがあまねく行き渡っており、山では手が足りない、というアンバランスがある。 まあ、これを不公平とはいうまい。行政サービスには、物理的な限界があるのだから……。むしろ問題にしないといけないのは、海難の場合に達せられている「事案ごとの公平さ」が、山の場合に確保できていないと言う点だ。
事案ごとの公平さを確保するためには、結局は公機関のヘリも有料化するよりないのだ。
(2)の観点でいうと、私以上に世論がリバタリアン化しているのが興味深い。 登山という「嗜好」のために、我々の税金を使うのは、理屈に合わない。登山者を優遇するじゃないか…… という考えが根底にあって、遭難事故が起きるごとに、世論の反発が起こる。
政府がなんのために税金を集めるのか……。 その根拠の一つに、「租税保険説」というのがあるという。 いち個人や、一地域に散発的に起きる怖れのある事態・事故にそなえ、一種の保険金として税金を集め、復興や再起のための費用を被害者に支払う、という描像だ。 (もっと考え方を進めると、事故を未然に防ぐためのインフラつくりへも、保険料が使われるようになる。予測される保険金の支払額をインフラ整備の費用が下回れば、経済合理性から、その手段も正当化される。 生命保険の商品に、健康増進のためと、フィットネスクラブの優待がつくようなものだろう……)
その視線に沿って考えると、救難費用を有料化(一般的な税金に付加して料金を払う制度)するというのは これまでは、税金(一般財源)としていわば「総合保険」としてあつめていたのが、我々には関係がないと、一般の人たちの異議に従い、特約保険として別ものにされた、といったところか。 自動車保険のリスク細分化商品 ……「30歳代ゴールド免許なら……」というあの保険のCMの謳い文句そっくりな税金・社会保険の体系になってきそうで、ちょっと苦笑してしまう。
このようにして、保険と税金とを比較すると、 多くの社会保障政策が、既存の保険商品が開発され世の中へ広まって行く様子とそっくりなのに気づく。
そういえば、 自動車事故の場合には、事故の責任比率を判定するのは、公機関ではなく、保険会社に委託された別機関になりつつある、という事実もある。
このように考えると、いまや政府は、巨大な保険会社なのかもしれない。
テーマ:政治・経済・社会問題なんでも - ジャンル:政治・経済
|