さて、ここからが、私の技術者としての興味の本題です。 各社の3DTVを見て、またホログラムでの投影も比較してみて、 人間が求める立体映像って、どういうものなのだろう、と改めて考えてしまいました。
立体表示の最も原始的なものとして、ピープショー(覗きからくり、と日本語ではいいます)があります。 ピープショーの具体例は、画家の吉田稔美さんのお仕事で私は知ったのですが、 なかなか美術品としても面白いですし、仕掛け自体が単純なわりにしっかりと立体に見えるという優れものですので、みなさんも、彼女のHPや、作品展でぜひ見てください。
(吉田稔美さんによるピープショーの解説 http://www.nevergirls.in-www.jp/peepshow-info.html )
このように覗き込むことで、(1)視野いっぱいに立体世界が展開し、(2)距離を詰めて見ることで、左右の視差を強調し、奥行き感も実際以上に知覚され、(3)しかも目を近づけてみるので、適度なボケ(カメラ風にいうと、「焦点深度が足らずに、近景か遠景かどちらかがボケる」)がおきて、立体視が強調されている、というものです。 今の3Dテレビでは、(2)だけを用いています。まだ、TVのレベルでは、(1)のように視野いっぱいに画像を展開することができないですし(大金持ちで、壁中をTVにしたら別ですが)、つまりは、TVという枠の中での浮き上がり/沈み込みに過ぎません。 もちろん、それで十分、という言い分は、私もわかります。現に、TV自体が、数十年、「額縁の中の出来事」を映像として見るように人々との約束が成立していたからです。 そしてそのような、映像に慣れているというせいもあるでしょう。TVのカメラワークでカメラが人と人との間をすり抜ける、という動きを意識的に避けているという事実があります、つまり額縁の中にある「箱庭世界」へ、私たちが入ることがなく、万一それをやったら、すごく違和感が発生するのです。 (このあたりのことは、映画監督の矢口史靖さんが、「Swing Girls」の”いのしし襲撃”のシーンで見つけた、「静止している世界にカメラが入ってはいけない」という映像の原則にも一致します。
が、です。本当にわれわれが映像に求めていることは、それだけなのでしょうか。 [READ MORE...]
テーマ:映像・アニメーション - ジャンル:学問・文化・芸術
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