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ほしあかりをさがせ
山登り・サイクリング・星見・石仏探し 本命は何なのか、出たとこ勝負で行ってみましょう
プロフィール

デルタ

Author:デルタ
四十才代、三重北勢在住の技術者です。ちょっとだけ営業マンもしてました。
ネット上では、磨崖仏の研究家としてごく一部の人から認知されてる(らしい)。磨崖仏・星見・歴史小説創作については、本館のHPを見て下され。

他の任務:東洋的リバアタリアニズムの確立。
       日本まんなか共和国 勝手に観光大使

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洒落という文脈(磨崖仏探査こぼれ話 福島篇その2)
余り時間に、福島市内を散策した。
時間が非常に限られていたので、日銀の福島支店長が歴代住んだというお屋敷「御蔵邸」を訪ねた。
書院造の公邸部分と、現代風に改装した私邸部分と、さらに公邸の玄関部分には進駐軍関係者が下宿した名残のアメリカ風の居室とがある大きなお屋敷だ。
それらは、お台所と茶室(4畳半)を中心にして配置されていて、一つの建家に構成されている。
庭は、大河阿武隈川を借景にし、なんとも広々とした味わい。夏には、ほんとうに涼しげ。

また、単なるお金持ちのお屋敷とは違う、日銀の権威を反映したような贅を尽した建物でもあった。
もっともビックリしたのは、私邸部分の部屋の欄間に、桐と菊とがあしらってあるのだ。まさに日銀だからこそ許される「紋所」である。
建材もすごい。
公邸部分の床の間の板材は屋久杉の一枚板……優に畳一畳分はある、茶室の天井にも、畳の大きさに合わせて切った屋久杉の一枚板を4枚はめ込んである。
柱材は台湾から取り寄せているのだそうだし、

そういう説明を、係の女性の方に1対1でしていくうちに、私は無口になってしまった。
日本の芸術の持っている、パワー……力でねじ伏せようとする「猛々しさ」に、考え込んだのだ。
日本の伝統芸術が自然との調和を意識している?
嘘をつけ!畳大の屋久杉の一枚板なんて、樹齢何千年の木からしか切り出せないぞ!
云々……。

一昨年の秋、米原で見た織部灯籠のことを紹介した。
キリシタンの墓石をそのまま灯籠の台座部分に使う、というデザインが、江戸のはじめに流行したのだ(*1)。
この種のアバンギャルドなデザインは、後々の茶道や庭造りに影響を与える。
茶室の障子の骨を、わざと左右の対称性を破って組んだりするのもそう、
また、古びた石臼を解体して、庭の敷石に使う、などというのも、その延長にある「遊び」だろう。
冷静に考えると、それらの「アバンギャルド」は、子どものイタズラと同種のものだし、そこに深い精神性だのがあるとも思えないのだけど、
芸道や歴史というものはオソロシイもので、
この種のデザインに、「つまらないイタズラを」と異議を唱える人はいない。

デザインする人が、文化的な意味での、勝者いや「覇者」であり、文化的に絶対的優位にいるからこそ、
そのアバンギャルドなデザインを笑おうとする人が逆に嗤われるという構造が、いまや完成している。

幸い、御蔵邸には、なかったけれど、
野仏や磨崖仏を切り取ってきて、庭石に据えるのも、おなじアバンギャルドな空気から派生した奇習だろう。
この風習は、私の知る限り昭和になって始まった様子だけど、
国内の磨崖仏はおろか、朝鮮から石人像(おそらく王・王妃クラスの墳墓にあったもの)まで対象になる。

これも、庭を造る側からすれば、「デザインの一部」なのだ。
美しいかどうか、庭全体としてバランスが取れるようなものか
という吟味はあるけれど、
導入しようとするもの自体の来歴を問うことはしない……必要なのは、デザインだけなのだ……。

同じ日本の文化文脈を引き継いでいる私でさえ、本音では理解不能なこの奇習。
ましてや、茶道がどうだとか織部がどんな美的センスを持っていたか、などということと無関係に生きている朝鮮半島の人々に、この庭石に使い続けるというを、文化の一言で(あるいは「金を払ったからいいだろう」という理屈だけで)、是認せよ、というのは、通じない話だろう。

日韓の文化財返還の話には、この種の話も絡んでいる、デリケートなものであることが、
私には、心を傷める原因なのだ。

(*1)奈良本辰也さんの本で読んだのだったか……、かすかな記憶なのだけど
 細川三斎忠興が、庭に墓石が据えてあるのを後々に気に病んで、遺言でもとの場所に戻すよう指示した、という話があったのを、私は覚えている。当時にもやはり野蛮と嫌う人があったようだ

テーマ:日本文化 - ジャンル:学問・文化・芸術

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