兼業・副業と労災の関係
一昨年あたりだった思いますが、厚生労働省が公表しているモデル就業規則で兼業・副業に肯定的な条文が書き加えられ、経済産業省などが兼業・副業を奨励する立場をとっていることから、今後兼業・副業に係る労働問題の議論がここ数年かなり顕在化してくるようになっています。現在、労災保険については、労働基準法が適用されるすべての労働者が対象ですから、兼業・副業が特に問題になることはないともいえます。しかし、休業補償、障害補償、遺族補償等の算定は、実際に災害が発生した勤務先での賃金額のみに基づくことになっています。短時間の兼業・副業先では非常に低く算定されることになるのが問題でした。また、勤務先Aから勤務先Bへ向かう途中の移動時に起こった災害は、通勤災害として移動の終点たる事業所、つまり勤務先Bの保険関係に基づき処理されるということになります。Bが、兼業・副業先であるときには、同じような問題が生じることになります。
この問題に関連する記事が昨日の日本経済新聞電子版に掲載されておりました。記事の要旨は以下の通りですが、兼業・副業の推進は、現実に労働時間の合算ができるのか、情報漏洩の危険の高まり、長時間労働による労災発生の責任の所在の分散などなど、非常に深刻な労働問題が発生しそうな種を含んでいるような感じ致し、少々心配な世の中の潮流だと思います。
1.厚労省は12月23日開いた労働政策審議会の部会で労災保険制度の見直し案を示し、了承されました。2020年の通常国会に改正法案の提出をめざします。
2.労災保険の制度改正では、本業と兼業・副業先の合算月収額を基準に補償額を算定することになるため、副業をする人への補償が手厚くなります。通勤災害の場合も同様に賃金を合算して給付額を決めることになります。現在の労災保険の給付規模は全体で年間8300億円程度で、制度の見直しによって2つ以上の職場を合算すると、給付は年120億円程度増えると見込まれています。
3.長時間労働を原因とする労災の認定基準についても、複数の勤め先の労働時間を合算する仕組みが変わるのに伴い、発症前1箇月の残業時間が100時間を超えているかの労災の認定基準が合算した労働時間に適用されやすくなります。
4.総務省の17年就業構造基本調査によると、副業を持つ人の数は267万人にのぼり、仕事を持つ人の4%を占めてており、非正規社員だけでなく、正社員にも副業がじわじわと広がる傾向が見られます。
5.雇用保険については65歳以上に限り、複数企業で働いた場合に労働時間を合算する制度を試験導入することになっているようです。現行制度では、適用事業所においては、各事業所ごとに個別で判定されますので、週当たりの労働時間がA社で20時間未満、B社でも20時間未満ならば、雇用保険関係は成立しないことになってしまいます。逆に、両社で雇用保険関係が成立している場合には、労働者が生計を維持するに必要な主たる賃金を受ける雇用関係のある事業所でのみ被保険者となります。
この問題に関連する記事が昨日の日本経済新聞電子版に掲載されておりました。記事の要旨は以下の通りですが、兼業・副業の推進は、現実に労働時間の合算ができるのか、情報漏洩の危険の高まり、長時間労働による労災発生の責任の所在の分散などなど、非常に深刻な労働問題が発生しそうな種を含んでいるような感じ致し、少々心配な世の中の潮流だと思います。
1.厚労省は12月23日開いた労働政策審議会の部会で労災保険制度の見直し案を示し、了承されました。2020年の通常国会に改正法案の提出をめざします。
2.労災保険の制度改正では、本業と兼業・副業先の合算月収額を基準に補償額を算定することになるため、副業をする人への補償が手厚くなります。通勤災害の場合も同様に賃金を合算して給付額を決めることになります。現在の労災保険の給付規模は全体で年間8300億円程度で、制度の見直しによって2つ以上の職場を合算すると、給付は年120億円程度増えると見込まれています。
3.長時間労働を原因とする労災の認定基準についても、複数の勤め先の労働時間を合算する仕組みが変わるのに伴い、発症前1箇月の残業時間が100時間を超えているかの労災の認定基準が合算した労働時間に適用されやすくなります。
4.総務省の17年就業構造基本調査によると、副業を持つ人の数は267万人にのぼり、仕事を持つ人の4%を占めてており、非正規社員だけでなく、正社員にも副業がじわじわと広がる傾向が見られます。
5.雇用保険については65歳以上に限り、複数企業で働いた場合に労働時間を合算する制度を試験導入することになっているようです。現行制度では、適用事業所においては、各事業所ごとに個別で判定されますので、週当たりの労働時間がA社で20時間未満、B社でも20時間未満ならば、雇用保険関係は成立しないことになってしまいます。逆に、両社で雇用保険関係が成立している場合には、労働者が生計を維持するに必要な主たる賃金を受ける雇用関係のある事業所でのみ被保険者となります。
2019年12月24日 11:00 | 労働保険