都庁第一庁舎45階展望場より見た明治神宮の森古代文明は森林を失って滅びたと言われます。現代でも西欧では殆どが人工林で自然林は消滅していると言われます。しかし、日本にはその自然林が数多く残されていると、フランスの人類学者で神話学者のクロード・レヴィー=ストロース氏は言います。そして、それは日本人の自然に対する尊敬の念に原因があると言うのです。
同氏は日本の文化人類学者の川田順造氏との対談で、日本の総面積の七五パーセントは開発されないままの状態である、西欧では森林を開発後に保護を試みてはいるが、日本では森林を手つかずに残して自然を尊重しているからだと述べています。神話学者でもある同氏は別の著書で、日本に原生林が数多く残っている原因は神道の自然崇拝にあると見抜いていました。
そう言えば神社は必ずと言っていいほど鎮守の森に囲まれています。そして明治神宮を代々木の練兵場跡地に創建するときには、全国から数多くの樹木を集めてきて植林し、その森を自然林として育成し、明治神宮の鎮守の森としました。
造林開始から100年後には鎮守の森の計画は見事に成就しました。その後も、明治の森には人手を入れずに樹木の自生に任せており、従って今では樹林の樹種構成は原生林の姿になっています。
このように東京の大都会の真ん中に人工で始まった広大な原生林が誕生した姿を見て、クロード・レヴィー=ストロース氏は今度はなんと言うでしょうか。 (以上)
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