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多様に姿態を変えるススキ
  1.富士山-15P 93t
  写真1
  2.五色沼-11P 96q
  写真2
                 3.すすき-03P 84t
                 写真3
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                                6.すすき-01PAt
                                写真6

花は多様な色彩と形態で変化に富んでいますが、ススキは白一色で、種類はあっても立ち姿や穂の形は似ているので見ていて単調な植物です。花は盛衰の変化があって盛りの時期ははっきりしていますが、ススキには盛りの時期はないので、見頃の時期を話題にする人は少ないです。

しかし、単調で変化の少ないススキにも、よく見ると微妙で興味ある表情の変化を発見します。それらは僅かな違いであり、徐々に現れるので、注意深く観察しないと見逃します。それだけに人の知らないススキの表情を見出したときは嬉しいものです。

初夏にはススキが穂を出して、すくっと立ちます。穂に花が咲く前のツイッとした細い穂先は軽やかで爽やかです。細い目の人をススキのような目をしてると喩えるのは、その爽やかさを褒めているのです。(写真1、2)

やがてススキに花が咲き、穂が膨らみます。頭が重くなったススキは斜めに傾き、周囲に会釈しているようす。太陽に当たってつやつやとした色で風にそよぐのはこの頃です。ススキの盛りの時期があるとすれば、この頃でしょう。

花が終わった初秋にはススキの穂は白さを増しますが、まだ膨らみを保っています。白髪になった初老の人の頭の髪のように、未だふさふさしている様(さま)に似ています。(写真3、4)

初老になったススキは、秋が深くなると白髪の穂が透けてきますが、まだ茎はしっかり立っています。ススキの一生は長いのです。初冬の寒風が吹く頃になっても背筋を伸ばして立っています。

年を越してもススキは直立不動の姿勢で佇んでいます。体の茎は枯れましたが、頭の穂は悴んだ手のように縮んで残っています。枯れても生き続けるススキの芯の強さを見せています。
(写真5、6)

ススキは素朴で地味な草ですが、多様に姿態を変える草で、古来日本人が愛してきたのが分かりました。
(以上)
【2013/11/27 13:54】 | 風景 | トラックバック(0) | コメント(0) | page top↑
ススキは水辺がよく似合う
1.すすき-05PAt
写真1
               2.すすき-07P 89t
               写真2
                              3.すすき-04P 89t
                              写真3
4.中川-20D 1202qt
写真4
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                              写真6

大正時代に流行った、野口雨情作詞、中山晋平作曲の船頭小唄は「おれは河原の枯れすすき おなじお前も枯れすすき どうせ二人はこの世では 花の咲かない枯れすすき」と歌います。

ススキはイネ科の代表のひとつで川や沼の近傍に生えますが、河原のような荒れ地にも繁殖する強い植物です。船頭小唄では頼りなく寂しげな草に喩えられていますが、実は荒れ地を最初に開拓する強靱な草なのです。

河原に吹く強風の中で、白い穂をなびかせるススキは、強靱な本性を顕して豪快に波打ちます。殆ど寝るように押さえ込まれても、風の勢いが弱まればムックと起き上がり、この河原は俺たちの住み家だと背伸びします。(写真1)

しかし、枯れたススキは繊細な表情を見せます。穂を並べて水辺にかがみ込む、山の稜線のようなススキのラインは、音楽のトリルのように震えて見えます。足元を水中に没して佇むススキは、孤独で悲しげです。夕暮れの凪いだ湖面は、ススキによって更に静かになります。(写真2、3)

そのススキに近づいて見ると、水面のさざ波を背景にして、ススキの穂はこちらに顔寄せて暖かく語りかけてきます。ススキは優しく暖かい草です。(写真4)

流れに沿って行儀良く並んだ小川のススキは、三段のひな壇のようです。くねる小川の土手に生えたススキは、流れの襟巻きのように小川をくるみます。ススキは風景の巧みな演出家です。
(写真5、6)

こうして見るとススキは水辺がよく似合うのです。
(以上)
【2013/11/19 22:06】 | 風景 | トラックバック(0) | コメント(0) | page top↑
夕陽はススキを奏でる名演奏家
                       1.すすき-01P 83tnext
                       写真1
                     2.すすき-01Pt
                     写真2
                     3.すすき-12P 89t
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                     写真5

ススキ野が最も映えるのは夕陽を浴びたときです。ススキの穂は光を捉える名人ですから、晴れた日なら自然の中でススキは何時でも目立ちますし、夕方になると最高の輝き見せるのです。

ヨセミテ渓谷の美を世界に知らしめた写真家、アンセル・アダムスは、主としてモノクロ写真で作品を発表していますが、彼は写真を音楽に喩えて、フィルムのネガは楽譜であり、それをプリントする行為は演奏であると述べています。

彼が言わんとしたのは、優れたネガを生かすのはプリントであり、プリントされて写真は完成すると言うことです。撮影した写真家が自らプリントした写真に、その写真家がサインした「オリジナルプリント」が高い値段で売買されるのも、プリント即ち演奏に価値があるからです。

アンセル・アダムスの比喩にあやかれば、夕陽はススキ野を奏でる名演奏家です。地平線に沈む太陽光線は、横からススキの穂と茎を浮かび上がらせます。赤みを帯びた夕陽は、白いススキの穂を鮮やかな金色に変えます。(写真1、2)

ススキ野に凹凸のリズムがあれば、ススキの穂は、海原の押し寄せる波頭の白波のように輝き、メリディを奏でます。ススキ野に走る電線があれば、邪魔な筈の電線が光り輝き、ススキのメロディを伴奏するように見えます。(写真3、4)

夕陽が落ちて残照が空を照らすと、ローキーの野山の姿が消えて、ハイキーススキの穂だけが浮かび上がり、幻想的でロマンティクな風景が生まれます。(写真5)

誠に夕陽はススキを奏でる名演奏家です。
(以上)
【2013/11/10 12:22】 | 風景 | トラックバック(0) | コメント(0) | page top↑
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