写真1 福島県猪苗代湖畔 五月節句のころ満開です。
写真2 福島県三春の滝桜は早咲きの垂れ桜です。四月中旬に満開でした。
写真3 昨年の新宿御苑の桜は散り始めていました。
写真4 散った花びらは路面を白く縁取っていました。
今年も桜の季節が来て、気象庁が開花予想を発表しました。植物のことは農水省が所管しているのに、何故気象庁が桜の開花予想を取り扱うのかと言うと、桜の開花時期は気象条件で決まるからです。
気象庁に続いて民間の気象会社も日本全国の桜の開花予想を発表し始めて、桜の開花前線が日本列島を北上する時期まで予想します。それによると東京地方が南の四国や九州地方と並んで常に最も早い時期に開化するのは不思議なことです。
その理由は、桜の開花を促すのは、気温の平均的な高さではなく、気温が上昇する変化にあるからだそうです。暖かい南の地域では冬の気温が高いため春になって急に暖かくなるわけではありませんが、関東では冬は寒い日が続きますが、お彼岸以降に急に気温が上がるので、桜の花はそれに反応して開化を始めるのだそうです。桜は冬の寒さが厳しいほど、春の目覚めがよくなると言われます。総じて東北地方の桜が鮮やかなのは目覚めが良いからでしょう。
(写真1、2)
次の疑問は、桜は一斉に咲いて一斉に散るのは何故でしょうか。
ここで言う桜は、昔の日本人が愛した山桜ではなく、江戸末期に江戸の染井村で誕生して盛んに栽培された園芸品種のソメイヨシノです。ソメイヨシノはエドヒガン系の桜とオオシマザクラの交配から生まれました。
ソメイヨシノは散り際がよろしいようで、散り始めたら三日くらいで一斉に散り終えてしまいます。ツツジやアジサイのように次から次へと咲く花は、散り際も徐々に枯れ姿をさらして散りますが、ソメイヨシノは咲くのも散るのも素早く一斉です。それも気象条件の同じ地域では全ての桜の木が足並みを揃えて咲き、散るのです。
(写真3、4)
この不思議は、ソメイヨシノと言う木が一本の木を元にして接ぎ木で増やされているからです。同じ遺伝子を持つ人間をクローン人間と言いますが、生物学で使うクローンと言う言葉は本来は挿し木という意味だそうです。百年ほど前に日本からアメリカに送られた桜の苗木は、首都ワシントンのポトマック河畔に植えられて、立派な桜並木になっています。日本産のクローンですから、アメリカでも一斉に咲いて一斉に散っています。
(以上)