冬の夕暮れは足早に来る 明るかった空が陰り出すと 木々の姿態がシルエットで浮かび上がる
葉が落ちた大木は 梢を軽やかに空に延ばして 小木は自慢げなポーズをとって 土手の斜面に一列に並ぶ
大木たちは梢で囁やきかける 小木は離れて傍耳を立てる 喰違見附跡の土手上の だれも見ない一幕の芝居 (以上)
|
写真1 写真2 写真3 写真4 戦後ヒットした演歌「昭和枯れすすき」は、映画の主題歌にもなり、多くの有名歌手に歌い継がれました。演歌の歌い出しは「貧しさに負けた」で始まり「花の咲かない二人は枯れすすき」で終わります。
ですから枯れすすきには寂しさのイメージが付きまといます。しかし、群生する枯れすすきの原野は、落ちぶれた寂寞とした景色ではなく、生命が最後に見せる深遠な自然の摂理を造形化したものに映ることがあります。
それを目にしたとき厳粛な気持ちになり、すすきの原野は美しくも神々しい光景に変じるのです。初冬の霞ヶ浦へドライブに出かけたとき、湖畔の水辺に群生する枯れすすき野に出会いました。
遠くの水中に佇むす枯れすすきは寒そうで寂しく感じましたが、手前の枯れすすきの溜まり場は、僅かに薄日を浴びて、穂がしらを揃えて幾重にも並び、大勢で楽しそうでした。 (写真1、2)
残照の一瞬の輝きに照らされて、すすき野は田園の夕べのハイライトになります。水溜まりの反射の光がアップライトになって、身を躍らせるすすきの穂は得意げに背伸びします。 (写真3)
ふと目を遠くに転ずると、夕空に光り輝く電線の束が波状に走り、その下を土手の団子状のすすきが珠々つなぎに延びています。薄暗い田園風景をバックにして夕日に映える電線とすすきだけが浮かび上がる光景に、一瞬息をのみました。 (写真4)
手前を見ると、すすき野は足許まで続いていました。すべてのすすきの穂は、暖かいオレンジ色の光を確りと捉えて精一杯反射しています。足許から丘の彼方まですすき野の原野は、光の夕景を謳歌していました。 (以上)
|