ストーリーはいまいち釈然としないけれど、最終回らしい勢いはあったかと。よくわかる現代魔法 第12話(最終回)「TMTOWTDI」 の感想です。
美鎖が世界中のコンピュータを使ってジギタリスに対抗したり、時間停止のコードを打ち破るあたりは熱かったですね。いいクライマックスでした。
ただ、彼女がやりたかったことはいまいち謎です。自分が死ぬことで、ジギタリスを自分に憑依させ、そのまま異世界に葬り去る作戦だったんですよね? でも結局、彼女は死なず、ジギタリスは弓子に憑依してしまいました。ここまでは計算違いということでいいのかな。
なので弓子を異世界に送らなければならないわけで、本人もそう言っていましたが、それは本意ではないはずと、嘉穂から突っ込まれていました。ではどうするつもりだったのか。
結果は、こよみの熱意でジギタリスが回心したわけですが、これこそが美鎖の狙いということなんですかね。そのためにこよみを秋葉原に呼び寄せたと。もうひとつはっきりしませんでしたが、そう解釈するしか無い気がします。
久しぶりに感想を書くので、今更感はありますが、ホアンの目的について言及しておきます。ホアンが魔女のライブラリを手に入れる目的は、それを世界に知らしめることで、魔法をすべての人のものにすること、でした。これは、フリー・ソフトウエア思想に似ていて、まさにそれを意識しているのでしょう。
「フリー・ソフトウエア」は、リチャード・ストールマンというスーパープログラマが提唱したもので、ソフトウエアのコードは万人に公開されて、誰もがそれを自由に活用できるようにするべき、という考え方です。
これの反対の概念が、「プロプライエタリ・ソフトウエア」ですね。コードは原則として非公開で、改変や再利用は認めないものです。
フリー・ソフトウエアは、知識を共有することにより、ソフトウエアの進化をうながす面があります。しかし、公開されて自由に使えるということは、商売にならないということであり、個人が趣味で作ったものが大半なので、企業がお金をかけて作ったプロプライエタリ・ソフトウエアにはかなわない面もあります。一長一短なんですね。OSで言えば、前者がLinuxで後者がWindowsです。
ホアンと美鎖の衝突は、この「フリー・ソフトウエア」と「プロプライエタリ・ソフトウエア」の対立を模していて、興味深いと思ったのでした。
ただ、肝心の、現代魔法の仕組みや限界を生かしたエピソードを期待していたのですが、あまり無かったのが残念ですね。せっかく面白そうな舞台装置なのに、うまく生かされていない感があります。おそらく原作ではもっと何かあると思えるのですが、アニメでは伝わりにくいからとカットされているのかもしれません。
また、展開がいまいちワンパターンであり、敵に襲われて、弓子が剣の魔法で戦い、こよみがタライに変換して決着、というパターンに終始していました。せめて魔法はもっとバリエーションが見たかったですが、もしかして弓子は剣のコードしか使えないでしょうか。だとしたら、あまりこよみのことを馬鹿にできませんね。
ともあれ、全体的な雰囲気や作画は好みで、特にキャラ同士の掛け合いが好きでした。お約束のタライ落ちも笑えた。だから毎週楽しみに観てはいたのですが、もうちょっと何かあればなぁと、惜しい作品でありました。
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美鎖がしたかったこと
1)嘉穂にクリスマス・ショッパーを大量にばらまかせる。
2)自分がいったん死ぬことで、大量にばらまかれたクリスマス・ショッパーがGhostScript美鎖を生み出す。(いちおう生き返るための手段はこうじていた)
3)GS美鎖はクリスマス・ショッパーに感染した世界中のコンピューターの力を集約して強大な魔法を使う事ができる。(生身の美鎖には限界があって無理)
4)GS美鎖が異世界へのゲートを開けてジギタリスを引きずり込む。
また 魔女のライブラリとは、ジギタリスそのもののデータです。6年前に封印は解かれていましたが、起動はしていませんでした。弓子が刺されたことが引き鉄となって起動し、弓子の身体にインストールされたのです。(新しいパソコンに外付けHDDからバックアップをリストアして、以前と同じ状態にするようなもの)もう一度弓子を殺しても今度は魔女のライブラリが残ってしまいます。
ジギタリスの復活は弓子の身体を使う事をホアンから聞いていたのでしょうね。
嘉穂が突っ込んだのは、生身の美鎖にはもう何も用意がないと言う事で、すべてGS美鎖に任せているといえます。
TMTOWTDI=There's more than one way to do itの略
「やり方はひとつではない」は、(Perl におけるスローガン)
「たったひとつの冴えたやり方」に対して嘉穂やこよみが出した別の答えという所でしょうか。
ホアンは美鎖と弓子に殺し合いをさせようとして、美鎖はそれに敢て乗った、というのはわかりますが、そこからがわかりにくいのですね。せっかく面白そうな筋なのですが。
フリーソフトウェア…いずれどなたかがおっしゃるのにぶつかるだろうと思っていました。原作では、確かそういう直接の表現はないのですが、そうした思想の対立は美鎖とホアンのかなり長い言い争いに表れています。ホアンの論理には「お前ら、一人占めしてずるいぞ!」というものがあり、その色はアニメではホアンが中国の下層民出身であることを匂わせるという別の形で表現されることになりましたね
この問題は、私見では原作でも明らかに消化不良…というか未アニメ化の6巻以降で新たな謎?をともなってさらに展開されている感じです。マジにやるならかなり長丁場のペースで進んでいて、原作者の方が途中で投げ出さないことを祈るばかり(笑)
戦闘シーンは…なんというか原作ではもっと別の醍醐味が…(ヒロインたちのやられっぷりとそこからの立ち直りの熱い描写が!)…それを割り引いても、前作の狂乱家族日記を見ても、この監督さんは戦闘シーンは苦手なのでは(笑)
ちなみに、原作の桜坂さんは元システムエンジニアだそうで、確かにメルクマールさんとは話が合いそうですね(笑)別作品で筒井康隆から絶賛を浴びたとかで、確かに原作にはSFファンを引き付けるものがあると思います
それでは失礼します
戦闘シーンの描写は、たしかにいまいちでしたね。1話はいいなと思ったのですが、あれがピークでした。
検索してみると、桜坂さんの作品は星雲賞候補にもなってるんですね。なにか読んでみようと思います。