メルクマール

カナコは、「何でも出来て、何でも持っている」という特殊な境遇に生まれて、それを世のために生かさなければならないという、強い使命感を持っているようです。

サイバディは、『古代銀河文明の遺産』であることが明らかにされました。その存在は、一般人には知らされていないけれど、政界や財界のトップは知っているのでしょうね。ODA（政府開発援助）を受けているようだし。となると、超文明の秘密を、私利私欲のために使おうという人はいくらでもいるでしょう。カナコの使命感は、サイバディが正しく人類のために使われるように、自分たちが管理することにあると思えます。

それは、すごいプレッシャーでしょうね。全人類の運命を、肩に担いでいるようなものなので。だからこそ、学園生活によって「青春を謳歌」したいという気持ちは、わかる気がします。特別な才能があるがゆえに、普通の学生生活が貴重なのでしょう。

そしてそれは、主要登場人物のほとんどがそうだと言えます。タクトも、ワコも、スガタもそうですね。ミズノもそうだし、ヘッドをはじめとする綺羅星団の連中もそうでしょう。特殊能力のために戦わなければならない裏の顔と、学園での表の顔があり、まだ十代の彼らにとって、表の顔も不可決なのだと思えます。「青春を謳歌」できるのは、今しかないのだから。タクトも、青春を謳歌するために、この島に来たのでした。

その中でも、カナコは特別かもしれませんけどね。確かに、普通でない能力の持ち主です。彼女はきっと、人生において敗北を知らないのでしょう。タクトにも、負けるつもりは全くありませんでした。戦いの場にボクシングのリングを設定したのは、戦うけれど殺したくはないという余裕の現われでしょうね。スタガも「これに力を貸すのは無粋かな」と言うくらい、命のやり取りの雰囲気はありませんでした。そしてそれが、彼女にとって命取りだったかもしれなせん。

タクトに負けたことで、カナコの綺羅星での影響力はかなり下がったようです。それによって、肩の荷が下りて、吹っ切れたようにも見えました。彼女個人としては、これも良かったのでしょう。

カナコは複雑な、裏のある人に見られがちだけれど、実は見たまんまの、裏表の無い人なのかもしれません。誰にでも愛を与える、広い心と包容力の持ち主です。それが悪ふざけと取られがちですが、シモーヌはカナコの理解者なので、これは悪ふざけではないと、タクトに伝えたのでした。カナコとシモーヌの関係は、とてもよいですね。どことなく退廃的な、それでいて心温まるような、不思議な関係です。

この作品は、「悪いやつらから好きな女の子を守る」というシンプルな命題を中心にしていて、敵の描写も漫画チックなので、ともすると子供っぽい雰囲気になってしまいそうです。なのに、どこか大人っぽいしっとりした雰囲気を持っているのは、当初はサナカちゃんとヘッドのおかげでした。二人のシーンがなんといっても印象的で、作品全体の雰囲気にもなっていたのです。しかしサカナちゃんは退場したので、どうなるかと思いましたが、今はカナコとシモーヌが、作品に奥行きを与えていると思えます。さすが『おとな銀行』です。

まぁ本来は、サカナちゃんの後継者はミズノなんでしょうけど、彼女はそれこそ幼いですからね。でも今回の、ミズノとカナコの会話は、なにやら緊張感がありました。いつになくミズノも真剣で。あの会話には何か裏がありそうです。カナコは、ミズノが巫女であることを知っているのかな？　　そろそろミズノが本領発揮するならば楽しみだし、カナコとの絡みも期待しています。

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