メルクマール

７話の内容の90%が、歴史ドキュメンタリーでしたね。「これはフィクションです」としつこく掲示していますが、言い張るのは無理があるでしょう。シナリオ作者の『満州事変』への歴史観がそのまま出ています。あれは軍部の謀略で、正当な行為では無かったのだ、という。

実際のところ、それが主流の歴史観だと思えますが、見解の相違もあるでしょう。石原莞爾を崇拝する人もいます（実際、優秀な軍人ですし）。なので「こういう描き方はケシカラン」と怒る人もいるはずで、そういう批判をテレビ局が回避したという事情はありそうです。

満州事変を、ここまで丁寧に描写したのは、やはりこの作品が「歴史のIF」を描きたいからでしょう。特別編の感想でも書きました。日本の現代史の分岐点だったこの時代を舞台にして、「日本はどこで間違えたのか。どうすればよかったのか」を描くことがテーマだと思えます。

現実の歴史では、関東軍は満州を占領することに成功し、日本政府は現状を追認して、石原莞爾は処罰されるどころか大佐に昇進します。このことが、「中央に背いても、結果を出せばいいんじゃん」という空気を、軍の内部に生みました。そして、二二六事件や盧溝橋事件といった、後の軍部の暴走の温床になるのです。

でもこの物語の世界では、「関東軍の一個中隊が消滅」という、現実にはない事件が起こっています。高千穂勲が関わっていることは確実ですが、それがどう、歴史を変えるのでしょうか。

預言者（日傘の女性）は、今回を見る限り、満州事変を焚きつける行動をしています。箸が「中止」に倒れたはずの会議の、空気を変えたのは彼女でした。また、建川が関東軍を黙認したのは、彼女の言葉の影響もあるでしょう。預言者は何がしたいのか。満州事変が発生したのが”正しい歴史”なわけなので、そうなるように干渉しているのかな。

主人公もヒロインも出ないという、ずいぶん地味な内容でしたが、あえてこれをやったのは、この物語は単なるアクション娯楽ものでは無い、という制作者の主張だと思えます。今後の展開に期待が持てるでしょう。

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