メルクマール

美琴は最初から才能があったわけではなく、レベル1から努力してレベル5に登りつめたそうですが、「努力の才能」というのもありますよね。目の前の課題に集中して、細かいことは考えず、ひたすら頑張れるタイプの人がいて、美琴もそのタイプでしょう。　超能力開発は、パーソナルリアリティという「あるべき現実」を強く信じることが必要なので、そういう単純なタイプのほうが向いているとも思えます。

なので、学園都市の人の多くがぶつかるという壁や、疎外感のことが、美琴にはいまいち分からないのでしょう。尊敬していた固法先輩が、かつては”犯罪者”の一味であり、今もそのことを引きずってフラフラしていることが理解できずにいます。　前半は、そういう美琴の子供っぽさや単純さを強調して描かれていました。

でも、佐天（たぶん固法先輩に多少共感している）の話を聞いたり、固法先輩と黒妻のやり取りを見たり、黒子と話したりするうちに、美琴の考えも変わってきました。　確かに、今や固法先輩と黒妻の立場は違うけれど、かつては仲間だったわけで、その思い出は固法先輩にとって大切なのだと。　だからといって、過去に戻るのも間違っている。

そこで、第３の道を思いついて、実行するのが彼女らしいところでした。過去を精算するのでも、過去に戻るのでもなく、現在の立場の違いを認めつつ新しい関係を作る、という道です。

美琴は固法先輩にジャッジメントの腕章を付けさせましたが、これは『ビッグスパイダーの固法』ではなく、『ジャッジメントの固法』として黒妻と会ってほしいという想いであり、それは固法先輩に伝わりました。彼女の心境を”ジャンパーと腕章”で表現したのがうまいところで、黒妻も一目見て、固法の気持ちに気づいたようです。

固法先輩は自らの任務に従って、黒妻を拘束することになりましたが、二人の新しい関係がここから始まるのでしょう。

今回の件で、これまで学園都市の中心にいた美琴が、そこからちょっと離れ、外縁部から学園都市を見つめ直す機会になりました。Cパートのシーンはそれを象徴しています。　

当初、美琴は『ストレンジ』に嫌悪感しか抱いていませんでした。でも、そこにも人は生きていて、必ずしも悪いことばかりではなく、”気持ちいい風”が吹くこともある、ということを美琴が実感したエピソードであり、このことは今後の伏線になるのでしょう。

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