メルクマール

持って生まれた才能のことを、英語でGiftといいます。「神様からの贈り物」という意味で。　超能力はGiftの面もあるけれど、努力で獲得するもので、特別講習はそれを再認識させるためのものでした。「どうせ自分はレベル低いから」と限界を決めてしまうのではなく、自力で限界を超えてみろと。

限界を超えたところに、何があるのでしょうか。一種の”相転移”みたいなものなのかな。　水を熱すると温度が連続的に上がっていきますが、あるところで水蒸気になります。逆に冷やすと氷になります。そのように、連続した現象が、ある時点で不連続に変わることを”相転移”と言います。

頭の中で”相転移”が起こることは、あると思うんですよね。高校で虚数（複素数）について習いますが、その時点では、何の意味があるのかわからないわけです。実在しない数なんてイメージできないじゃんと。でも理系の大学生であれば、信号処理などで虚数の入った式をたくさん見るようになり、ある時点でハタと、そうか、虚数ってこういうことなんだ、とイメージできるようになるんですよ。

それ以前と以後では、大げさに言えば、世の中の見方が変わります。いろんな現象が、虚数を使えばスッキリ理解できることに気づくから。こういうのは一種の”相転移”だと思うのでした。努力の末に、限界を超えるわけです。

黒子はテレポートのために11次元の座標演算をするそうですが、普通の人には11次元はイメージできないわけで、黒子は訓練でそれを克服したのでしょう。それも似たような感じかなと想像します。　涙子は、黒子や美琴がそうやって努力してきたことがわかっているので、「ズルをした」自分を責めているのでしょう。

涙子は、超能力の基本である『パーソナルリアリティ』がイメージできないようですが、努力していれば、ふとしたキッカケでイメージをつかんで、そこから劇的に変わる（相転移する）ことがありえるはずです。

12話のAIMバーストの事件で、美琴が「とにかくがんばれ」と言って解決してしまったのは、「強者の驕り」だという批判を目にしました。でも涙子たちはまだ中学生で、夢を諦めるには早すぎるんですよ。涙子はがんばりたいと思っているのだから、かける言葉は、「超能力だけがすべてじゃないよ」じゃなく、「がんばれ」が正しいでしょう。それはキレイ事ではないはずです。超能力はGiftでは無いのだから。

戦闘も萌えもない、地味な回ですが、レベルアッパー編の後日談として、それなりにフォローした良いエピソードでした。OPが１クール目から変わってないのは、内容が後日談だからかなと思ったりします。

それにしてもこの特別講義、レベルアッパー使用者のケアという親切な目的だけでは無く、追跡調査の意味もあるのでしょうね。レベルアッパーの効果は学園都市の上層部も注目して然るべきで、涙子たちは研究対象のはず。そのあたりがストーリーに絡んでくるのかは不明ですが。

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