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デルタ

Author:デルタ
四十才代、三重北勢在住の技術者です。ちょっとだけ営業マンもしてました。
ネット上では、磨崖仏の研究家としてごく一部の人から認知されてる(らしい)。磨崖仏・星見・歴史小説創作については、本館のHPを見て下され。

他の任務:東洋的リバアタリアニズムの確立。
       日本まんなか共和国 勝手に観光大使

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えっと一年は、何時間だっけ?
原発被災地での学校の屋外活動の基準ということで、文部科学省から次のような指針が通達された。

管理値(瞬時)3.8μSv/h
年間管理値  20mSv(上限)


が、という数値だけが一人歩きし、さらに年間の管理値の20mSvが大きいということで、よく検証しないうちからの感情的な全否定が世論に溢れている。
もっとも、特にラジオで聞いた私には、数値の意味自体が分からなかった。
一時間当たりの上限が3.8μSvで、年間の管理値が20mSv(20000μSv)ならば、
その環境に5260時間居る、と見込んでいることになる。
一方、学校には年間で190日くらいしか行かないし、屋外活動もせいぜい1日3時間程度であるから、570時間にしかならない。
10倍も差があるぞ、どういう計算だ?

……ここまで暗算し、疑心暗鬼になった私。……たぶん、こういう方向に疑心暗鬼になった人は、私くらいだろうな。
というわけで、私なりの検算をし、文部科学省の指針について見解を示したい。
【モデル】
一般に言われていることだけど、
屋外からの放射線が遮られるため、屋内は屋外にくらべ低い放射線濃度になる。その比率が、木造建築だと1/4、コンクリート建築だと1/10とされている。
この比率(係数)を参考に一般的な小学生を想定して(ただし、ちょっと屋外活動を縮小気味に)生活モデルを想定して
(1)学校の教室で授業を受けている時間
  環境 コンクリート建築内(環境係数1/10)
  時間 年間950時間
     登校日(190日)に5時間

(2)学校のグラウンドに出ている時間
  環境 屋外(環境係数1)
  時間 年間570時間
     登校日に3時間

(3)登下校時間
  環境 屋外(環境係数1)
  時間 年間190時間
     登校日に1時間
(4)在宅時間
  環境 木造建築内(環境係数1/4)
  時間 年間6282時間
     登校日(190日)に15時間
     非登校日(156日)に22時間

(5)屋外活動時間
  環境 屋外
  時間 年間352時間
     非登校日(176日)に2時間

と分類してみると、本来一番影響が大きそうなのは、実は在宅時間であることがわかる(グランドの3倍の影響が予測される)

そこで新たな疑問点その1。なぜ、小学生以下の児童幼児がいる「家庭(在宅時)環境」へ指針が示されないのか

この疑問はひとまず置く。


【モデルからの計算結果】
上記の生活モデルに基づき、年間の被ばく線量1mSv以下に抑える瞬間の「グラウンドでの」線量を計算すると、
0.36μSvという数字が出てくる。
年間の被ばく線量が20mSvというなら、7.2μSvとなる……やはり、瞬間の値3.8μSvと年間の20mSvとを比較して、20mSvが「大きすぎて無意味な規定」だと判明する。

【放射線源が消滅していく効果の算定】
さらにいうと、放射線源がすべて放射性セシウム(Cs137)だとしても、30.07年で半減することから、一年後には2.3%濃度が薄くなっていなければおかしい。この効果を勘案すると、年間被ばく線量は(環境にさらされた時間)×(当初の放射線強度)の値より、1.1%低くなると見込めるので、瞬間で3.8μSv/hを上限としても、年間10.4mSvまでしか達しえない。

【文部科学省通達の解析】
やっぱり、あの通達の値の意義がわからん!
というわけで、
文部科学省のプレス発表をあらためて見直そう。

http://www.mext.go.jp/b_menu/houdou/23/04/1305174.htm

16時間の屋内(木造)、8時間の屋外活動の生活パターンを想定すると、20mSv/年に到達する空間線量率は、屋外3.8μSv/時間、屋内木造1.52μSv/時間である。

いまどき、木造校舎の学校って存在するんかい!とか、
教室での授業はなくって、青空学級かい!とか、
いろいろ突っ込みたくなるような粗いモデルだが、まあ受け入れるとして、
彼らのいう一日の被ばく線量の見込みは、54.7μSv/日になる。
それをなんと一年間=365日同じ生活パターンを繰り返すとして、確かに2万μSv=20mSvまで想定している、といっているのである。

なんと厳しめのモデルだろう!毎日8時間屋外活動をする、なんていう学級運営をして、文部科学省の学習指導要領に準拠するというのだろうか。

【結論】
文部科学省の指針に示された数値は、確かに甘すぎる規制値になっている。だがそれ以上に、「学校運営の実態に合わない」モデルを平然と示していることもはっきりした。
よって、私としては、2つのことを提案して終わりたい。
(1)学校ではなく、各家庭の生活環境での規制値こそを定める。
  文部科学省のモデルでも、私の示したモデルでも、家庭に戻ってからの影響が、学校のグラウンドで受ける影響よりも大きくなると見込める。(私のモデルでは、3倍程度)

(2)やむを得ずグラウンドでの値を規定値にするならば、
  0.36μSvを規制値とし、それを上回る場合には、暫定的には使用時間の制限を、半恒久的には土の入れ替えなどによりこの値を達成すること。

なお、(2)で示した値は、確かに福島県中通地方などでもかなり厳しい数値であるが、
だからといって、文部科学省の値をむやみに怖がり、
「年間20mSvになる値が、瞬時で3.8μSv/hであるのだから、瞬時で0.19μSv/hとしなければ、もとの暫定規制値1mSvを満たすことができない」
と単純計算をしないでほしい。
もっと生活の実態に目を向け、きめ細やかな運用基準を現場で作ることが望ましい。

テーマ:ほっとけない原発震災 - ジャンル:政治・経済

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