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自由民主党総裁選結果と岸田新総裁

 昨日9月29日、自由民主党総裁選挙が行われ、岸田文雄新総裁が誕生しました。選挙結果は以下の通りです。

1回目     議員   党員党友
岸田文雄   146   110    256
河野太郎    86   169    255
高市早苗   114    74    188
野田聖子    34    29     63
棄権・白票    2
       382   382

2回目     議員   党員党友
岸田文雄   249     8    257
河野太郎   131    39    170
棄権・白票    2
       382    47

 岸田文雄新総裁は、来月開かれる臨時国会で第100代内閣総理大臣に指名されることは間違いないので、実質的に新総理と呼んでも問題ないでしょう。岸田新総裁は、自由民主党の中の宏池会を率いる派閥の領袖でもあります。宏池会とは、吉田茂氏の直系の弟子である池田勇人氏によって創立されて以来、大平正芳氏、鈴木善幸氏、宮澤喜一氏、そして、岸田新総裁を加えて4人の内閣総理大臣輩出した名門派閥です。

 今回の総裁選挙で岸田新総裁が唱えている特徴的な経済政策については、「分配」に重点を置くという点が大手メディアでは強調されがちですが、特筆されるべき点は次のような主張です。「令和版所得倍増」、これは1960年代の高度成長を成し遂げた派閥の創設者池田勇人首相に自身をなぞらえた経済成長重視の政策を示唆しています。まず経済成長してパイを増やさねば、「分配」をするといっても絵に描いた餅です。次に「小泉改革以降の新自由主義的政策を転換する」と新自由主義からの脱却を明確に語っています。新自由主義の下の経済政策の定義を明確にしないとなりませんが、仮に財政均衡主義による公共投資や公務員の削減など政府の役割を極限まで削る小さな政府志向、規制緩和による民営化推進などの政策とすると、これこそがこの20年あまり続いた経済政策の基本にあった思想といえます。しかし、これらの政策はすべて供給を増やし、需要を抑制するインフレーション下の経済政策であって、泡沫経済の崩壊で急激に需要不足に陥っていた1990年代の日本がとるべき政策ではなかったことが徐々に明らかにされ出し、感染症騒動の影響もあってそのことが白日の下に曝され、誰の目にも明らかになってきたのが去年から今年にかけてです。岸田新総裁は、「新しい日本型資本主義の構築に向けて先頭に立つ」とおっしゃっておいでのようですが、新しい日本型資本主義が格差を広げる「今だけ、金だけ、自分だけ」、「失敗しても自己責任」の新自由主義的資本主義からの決別とデフレーションの克服を意味していることを切に願う次第です。

 岸田文雄新総裁は昭和32年生まれの64歳、中小企業庁長官、衆議院議員を務めた岸田文武氏を父に、戦前戦後に衆議院議員を務めた岸田正記氏が祖父という政治家一家の3代目です。毛並みの良さと温厚な人柄がうかがえる半面、派閥の領袖としての指導力や腕力が感じられず、これまで凡庸な政治家で自由民主党を率いて選挙を戦う総裁としては力不足と思われる節もあったようです。しかし、今回の総裁選挙では自派閥の宏池会をしっかり一枚岩にまとめたばかりでなく、通称3Aといわれる安倍・麻生・甘利各氏の支援もとりつけて、菅総理、二階幹事長、小泉・石破各氏の支援を受けた河野太郎氏に決選投票で大差をつけて総裁の座を勝ち取りました。岸田氏の経歴を眺めてみると、大学受験の失敗、加藤の乱の失敗、日韓慰安婦合意では外相として韓国に騙され、令和元年の参議院議員選挙では宏池会所属の現職ベテラン議員を件の河合案里氏の2人目候補での出馬を許して落選させてしまい、そして、昨年の総裁選で菅氏に敗れると何度も苦汁をなめる挫折を経験していることが分かります。数多くの挫折から立ち直って、総裁・総理の地位に昇りつめた岸田新総裁に日本国民の痛みがわかる日本国民のための政治を期待したいと思います。

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