改正労働契約法の認知度
本年4月に改正労働契約法が施行されましたが、今回の改正は「有期労働契約の無期転換」など非常に重要な改正点を含むものでした。先月末、連合が行った改正労働契約法に関する電話アンケートの集計結果が発表されています。
このアンケートは、「有期契約労働者に関する調査」と称して、携帯電話によるインターネットリサーチにより、2013年9月14日~9月23日の10日間において連合が実施したもので、1,000人(調査対象者:週20時間以上労働する民間企業の有期契約労働者)の有効サンプルを集計した結果であるとのことです(調査協力機関:ネットエイジア株式会社)。
1.改正労働契約法の認知状況や施行状況
今回の改正の内容を知っているかという設問では、「無期労働契約への転換」については、「ルールの内容まで知っていた」が12.2%、「ルールができたことは知っているが、内容までは知らなかった」が24.4%で、それらを合わせた「認知率(計)」は36.6%となりました。6割以上の回答者は「ルールができたことを知らなかった」(63.4%)と回答しています。
また、「不合理な労働条件の禁止」(註)については、「ルールの内容まで知っていた」方は1割に満たず(6.3%)、7割の回答者は「ルールができたことを知らなかった」(69.9%)と回答しています。新しいルールが定められてから半年が経ちますが、十分に周知されているとはいえない状況のようです。
これらの認知率は、雇用形態別にみると、パート・アルバイト(それぞれ30.7%、26.0%)は契約社員(それぞれ47.5%、37.8%)よりかなり低い結果になっています。
次に、最近の労働契約の条件変更の状況について聞いたところ、「これまでに契約期間に上限がなかったが、新しい契約では期間に上限が設けられた」は11.9%、「これまでよりも短い期間での契約を求められた」は6.2%となりました。大学の非常勤講師の契約期間の問題が採り上げられたことなどを考慮すると意外に低い結果です。しかし、30代及び40代男性に限ってみると「これまでよりも短い期間での契約を求められた」割合は、1割超になり、他の性別年代層に比べ高い数字になっています。
また、改正労働契約法では、「不合理な労働条件の禁止」がルールとして定められ、通勤手当や食堂の利用などについて、「正社員のみ通勤手当支給の対象とする(契約社員は対象外)」、「正社員のみ社員食堂利用の対象とする(パートタイマーは対象外)」といったことは、特段の理由がない限り合理的とは認められないことと解されています。
そこで、通勤手当の支給や食堂の利用などについて、職場で対象となっているか聞いたところ、制度が存在するのに「対象になっていない」との回答が調査項目中多かったのは、ボーナスと退職金で、「ボーナスの支給」では57.0%、「退職金の支給」では81.7%となりました。「ボーナスの支給」について、職場の労働組合有無の視点からみると、労働組合がある層(379名)では「対象になっていない」は42.7%であるのに対し、労働組合がない層(268名)では61.2%と6割を超えていました。
また、「通勤手当の支給」では19.7%と5人に1人、「慶弔休暇の取得」では26.0%と4人に1人の割合で「対象になっていない」としました。休憩室や食堂の利用についてもみると、「休憩室の利用」は4.3%にとどまるものの、「食堂の利用」では11.9%と1割となっており、ボーナスや交通費などの賃金、休暇制度や食堂の利用などの福利厚生で正社員との格差があることが明らかになりました。
有期契約労働者の「無期労働契約への転換」についての考えや気持ちを聞いたところ、「無期契約に転換できる可能性があるのでモチベーションアップにつながる」では、同意率(「非常にそう思う」と「ややそう思う」の合計)は51.6%と半数を超えたものの、「無期契約に転換できると、待遇もあがる可能性がある」は18.3%にとどまったほか、「契約期間が無期になるだけで待遇が正社員と同等になるわけではないから意味が無い」では68.7%となり、待遇改善につながるか不信感を持つ労働者が多いことがわかりました。
(註)有期契約労働者の労働条件が、期間の定めがあることにより無期契約労働者の労働条件と相違する場合、その相違は、職務の内容や配置の変更の範囲等を考慮して、不合理と認められるものであってはならないとしています。
2.有期契約労働者の有給休暇や育児休業について
「年次有給休暇の取得」及び「育児休業の取得」、「妊娠や出産を理由とした雇止め等の不利益な取り扱いの禁止」についても聞いたところ、「有期雇用契約者でも一定の条件を満たせば、年次有給休暇を取得できること」の認知率は77.0%、「有期雇用契約者でも一定の条件を満たせば、育児休業を取得できること」では39.7%、「有期雇用契約者であっても妊娠したことや出産したこと等を理由として雇止め等の不利益な取り扱いをしてはいけないこと」では57.5%でした。
男女別にみると、「年次有給休暇の取得」や「妊娠・出産による不利益な取り扱いの禁止」の認知率は男性の方が低く、それぞれの認知率は、「年次有給休暇の取得」が女性の79.6%に対し男性では69.2%、「妊娠・出産による不利益な取り扱いの禁止」は女性の59.7%に対し、男性では50.8%となり、開きがみられました。
年次有給休暇の取得に比べ、育児休業の取得や妊娠・出産による不利益な取り扱いの禁止は、あまり認知されていない様子が窺えました。
有期契約労働者でも一定の条件を満たせば、年次有給休暇の取得が可能であることを知っていた回答者の割合は4人に3人の割合と、比較的高くなりました。実際に取得したことがある回答者の割合は、年次有給休暇の取得が可能であることを知っていた770名に、現在の勤務先で、年次有給休暇を取得したことがあるか聞いたところ、「取得したことがある」としたのは70.0%、一方、「取得したことはない」は30.0%となりました。
取得したことがない回答者が年次有給休暇を取得していない理由は、「まだ条件を満たしていないから」が最も多く37.2%となりました。「6箇月間継続勤務し、全労働日の8割以上出勤」という条件を満たしていないことが最多の理由であったものの、「アルバイト・パートや契約社員なのにと思われそうで取りづらい」(18.6%)、「正社員が有給休暇を取っていないから取りづらい」(9.5%)といった「取りづらい雰囲気」や「休暇を取ると業務に支障が生じるから」(13.4%)、「仕事量が多く取れない」(8.7%)といった「取れない環境」も年次有給休暇取得の妨げになっていることがわかりました。また、「申請したが、ダメと言われた」(9.5%)や「契約更新に影響がありそうだから」(7.4%)との回答も1割弱ありました。
3.有期契約労働者の意識
業務内容について、正社員と同じか異なるかを聞いたところ、「正社員と同じ」は48.0%、「正社員と異なる」は41.3%となり、半数近くの有期契約労働者の回答者が、正社員と同じ業務内容であると回答していました。
また、仕事上の責任では「正社員より軽い」(54.4%)が半数以上、残業時間では「正社員より少ない」(59.5%)が半数以上となりましたが、仕事上の責任を「正社員より重い」(11.7%)とした回答者や、残業時間を「正社員より多い」(9.8%)とした回答者が1割前後みられました。また、仕事への姿勢では「正社員より真面目」(48.7%)が半数近く、仕事を遂行する能力では「正社員より高い」(21.2%)が2割となりました。
有期契約で働くことになった状況を聞いたところ、「自ら進んで」は51.0%、「正社員になれなくて」は35.1%となり、半数は自らの希望で有期契約になったものの、有期契約労働者の3人に1人は正社員になれずに、有期契約で働いていることがわかりました。雇用形態別にみると、正社員になれず、有期契約で働いているのは、契約社員でその割合が高くなり、47.6%と半数近くになりました。そして、今後の働き方の希望を聞いたところ、「このままでよい」が37.5%であるのに対し、「正社員になりたい」は40.7%と、正社員への転換希望を持っている回答者の方が高くなりました。特に、正社員になれずに有期契約で働いている回答者では、当然のことながら正社員への転換希望を持っている割合は高く、73.5%占めています。
有期契約労働者は、どの程度現在の仕事にやりがいを感じていたり、現在の職場に満足しているのか、回答者に聞いたところ、現在の仕事のやりがいでは、「感じる」が49.3%、「感じない」が24.3%、現在の職場についての満足度では、「満足」が42.0%、「不満」が32.5%となり、やりがいを感じているや現在の職場に満足している回答者が多数派であることがわかりました。
しかし、有期契約で働くことになった状況によっては傾向が異なり、正社員になれずに有期契約で働いている回答者では、「現在の仕事のやりがいを感じない」割合が、自ら進んでなった回答者よりも10ポイント以上高くなり、現在の職場についての満足度では、不満を感じている方が42.2%で多数派となりました。希望通りの雇用形態か否かが、仕事のやりがいや職場に対する満足度に影響を及ぼしている様子が窺えました。
また、有期契約労働者の職場に対して抱く不満については、全回答者に聞いたところ、「給料が上がらない」(52.0%)が最も多く、次いで、「給料が安い」(50.7%)が続き、給料に対する不満を持っている回答者の割合が高いことがわかりました。また、給料以外にも「働きぶりが評価されない」(30.1%)や「自分たちの意見を聞いてくれない」(18.7%)という「認めてもらえていないこと」が不満の理由になっている実態が明らかになりました。さらに、「正社員がちゃんと働いていない」(22.0%)も2割以上ありました。
そして、パワハラやセクハラがあるとの回答もみられ、「パワハラがある」は11.5%、「セクハラがある」は2.3%となりました。
「有期契約労働者に関する調査」(連合)
このアンケートは、「有期契約労働者に関する調査」と称して、携帯電話によるインターネットリサーチにより、2013年9月14日~9月23日の10日間において連合が実施したもので、1,000人(調査対象者:週20時間以上労働する民間企業の有期契約労働者)の有効サンプルを集計した結果であるとのことです(調査協力機関:ネットエイジア株式会社)。
1.改正労働契約法の認知状況や施行状況
今回の改正の内容を知っているかという設問では、「無期労働契約への転換」については、「ルールの内容まで知っていた」が12.2%、「ルールができたことは知っているが、内容までは知らなかった」が24.4%で、それらを合わせた「認知率(計)」は36.6%となりました。6割以上の回答者は「ルールができたことを知らなかった」(63.4%)と回答しています。
また、「不合理な労働条件の禁止」(註)については、「ルールの内容まで知っていた」方は1割に満たず(6.3%)、7割の回答者は「ルールができたことを知らなかった」(69.9%)と回答しています。新しいルールが定められてから半年が経ちますが、十分に周知されているとはいえない状況のようです。
これらの認知率は、雇用形態別にみると、パート・アルバイト(それぞれ30.7%、26.0%)は契約社員(それぞれ47.5%、37.8%)よりかなり低い結果になっています。
次に、最近の労働契約の条件変更の状況について聞いたところ、「これまでに契約期間に上限がなかったが、新しい契約では期間に上限が設けられた」は11.9%、「これまでよりも短い期間での契約を求められた」は6.2%となりました。大学の非常勤講師の契約期間の問題が採り上げられたことなどを考慮すると意外に低い結果です。しかし、30代及び40代男性に限ってみると「これまでよりも短い期間での契約を求められた」割合は、1割超になり、他の性別年代層に比べ高い数字になっています。
また、改正労働契約法では、「不合理な労働条件の禁止」がルールとして定められ、通勤手当や食堂の利用などについて、「正社員のみ通勤手当支給の対象とする(契約社員は対象外)」、「正社員のみ社員食堂利用の対象とする(パートタイマーは対象外)」といったことは、特段の理由がない限り合理的とは認められないことと解されています。
そこで、通勤手当の支給や食堂の利用などについて、職場で対象となっているか聞いたところ、制度が存在するのに「対象になっていない」との回答が調査項目中多かったのは、ボーナスと退職金で、「ボーナスの支給」では57.0%、「退職金の支給」では81.7%となりました。「ボーナスの支給」について、職場の労働組合有無の視点からみると、労働組合がある層(379名)では「対象になっていない」は42.7%であるのに対し、労働組合がない層(268名)では61.2%と6割を超えていました。
また、「通勤手当の支給」では19.7%と5人に1人、「慶弔休暇の取得」では26.0%と4人に1人の割合で「対象になっていない」としました。休憩室や食堂の利用についてもみると、「休憩室の利用」は4.3%にとどまるものの、「食堂の利用」では11.9%と1割となっており、ボーナスや交通費などの賃金、休暇制度や食堂の利用などの福利厚生で正社員との格差があることが明らかになりました。
有期契約労働者の「無期労働契約への転換」についての考えや気持ちを聞いたところ、「無期契約に転換できる可能性があるのでモチベーションアップにつながる」では、同意率(「非常にそう思う」と「ややそう思う」の合計)は51.6%と半数を超えたものの、「無期契約に転換できると、待遇もあがる可能性がある」は18.3%にとどまったほか、「契約期間が無期になるだけで待遇が正社員と同等になるわけではないから意味が無い」では68.7%となり、待遇改善につながるか不信感を持つ労働者が多いことがわかりました。
(註)有期契約労働者の労働条件が、期間の定めがあることにより無期契約労働者の労働条件と相違する場合、その相違は、職務の内容や配置の変更の範囲等を考慮して、不合理と認められるものであってはならないとしています。
2.有期契約労働者の有給休暇や育児休業について
「年次有給休暇の取得」及び「育児休業の取得」、「妊娠や出産を理由とした雇止め等の不利益な取り扱いの禁止」についても聞いたところ、「有期雇用契約者でも一定の条件を満たせば、年次有給休暇を取得できること」の認知率は77.0%、「有期雇用契約者でも一定の条件を満たせば、育児休業を取得できること」では39.7%、「有期雇用契約者であっても妊娠したことや出産したこと等を理由として雇止め等の不利益な取り扱いをしてはいけないこと」では57.5%でした。
男女別にみると、「年次有給休暇の取得」や「妊娠・出産による不利益な取り扱いの禁止」の認知率は男性の方が低く、それぞれの認知率は、「年次有給休暇の取得」が女性の79.6%に対し男性では69.2%、「妊娠・出産による不利益な取り扱いの禁止」は女性の59.7%に対し、男性では50.8%となり、開きがみられました。
年次有給休暇の取得に比べ、育児休業の取得や妊娠・出産による不利益な取り扱いの禁止は、あまり認知されていない様子が窺えました。
有期契約労働者でも一定の条件を満たせば、年次有給休暇の取得が可能であることを知っていた回答者の割合は4人に3人の割合と、比較的高くなりました。実際に取得したことがある回答者の割合は、年次有給休暇の取得が可能であることを知っていた770名に、現在の勤務先で、年次有給休暇を取得したことがあるか聞いたところ、「取得したことがある」としたのは70.0%、一方、「取得したことはない」は30.0%となりました。
取得したことがない回答者が年次有給休暇を取得していない理由は、「まだ条件を満たしていないから」が最も多く37.2%となりました。「6箇月間継続勤務し、全労働日の8割以上出勤」という条件を満たしていないことが最多の理由であったものの、「アルバイト・パートや契約社員なのにと思われそうで取りづらい」(18.6%)、「正社員が有給休暇を取っていないから取りづらい」(9.5%)といった「取りづらい雰囲気」や「休暇を取ると業務に支障が生じるから」(13.4%)、「仕事量が多く取れない」(8.7%)といった「取れない環境」も年次有給休暇取得の妨げになっていることがわかりました。また、「申請したが、ダメと言われた」(9.5%)や「契約更新に影響がありそうだから」(7.4%)との回答も1割弱ありました。
3.有期契約労働者の意識
業務内容について、正社員と同じか異なるかを聞いたところ、「正社員と同じ」は48.0%、「正社員と異なる」は41.3%となり、半数近くの有期契約労働者の回答者が、正社員と同じ業務内容であると回答していました。
また、仕事上の責任では「正社員より軽い」(54.4%)が半数以上、残業時間では「正社員より少ない」(59.5%)が半数以上となりましたが、仕事上の責任を「正社員より重い」(11.7%)とした回答者や、残業時間を「正社員より多い」(9.8%)とした回答者が1割前後みられました。また、仕事への姿勢では「正社員より真面目」(48.7%)が半数近く、仕事を遂行する能力では「正社員より高い」(21.2%)が2割となりました。
有期契約で働くことになった状況を聞いたところ、「自ら進んで」は51.0%、「正社員になれなくて」は35.1%となり、半数は自らの希望で有期契約になったものの、有期契約労働者の3人に1人は正社員になれずに、有期契約で働いていることがわかりました。雇用形態別にみると、正社員になれず、有期契約で働いているのは、契約社員でその割合が高くなり、47.6%と半数近くになりました。そして、今後の働き方の希望を聞いたところ、「このままでよい」が37.5%であるのに対し、「正社員になりたい」は40.7%と、正社員への転換希望を持っている回答者の方が高くなりました。特に、正社員になれずに有期契約で働いている回答者では、当然のことながら正社員への転換希望を持っている割合は高く、73.5%占めています。
有期契約労働者は、どの程度現在の仕事にやりがいを感じていたり、現在の職場に満足しているのか、回答者に聞いたところ、現在の仕事のやりがいでは、「感じる」が49.3%、「感じない」が24.3%、現在の職場についての満足度では、「満足」が42.0%、「不満」が32.5%となり、やりがいを感じているや現在の職場に満足している回答者が多数派であることがわかりました。
しかし、有期契約で働くことになった状況によっては傾向が異なり、正社員になれずに有期契約で働いている回答者では、「現在の仕事のやりがいを感じない」割合が、自ら進んでなった回答者よりも10ポイント以上高くなり、現在の職場についての満足度では、不満を感じている方が42.2%で多数派となりました。希望通りの雇用形態か否かが、仕事のやりがいや職場に対する満足度に影響を及ぼしている様子が窺えました。
また、有期契約労働者の職場に対して抱く不満については、全回答者に聞いたところ、「給料が上がらない」(52.0%)が最も多く、次いで、「給料が安い」(50.7%)が続き、給料に対する不満を持っている回答者の割合が高いことがわかりました。また、給料以外にも「働きぶりが評価されない」(30.1%)や「自分たちの意見を聞いてくれない」(18.7%)という「認めてもらえていないこと」が不満の理由になっている実態が明らかになりました。さらに、「正社員がちゃんと働いていない」(22.0%)も2割以上ありました。
そして、パワハラやセクハラがあるとの回答もみられ、「パワハラがある」は11.5%、「セクハラがある」は2.3%となりました。
「有期契約労働者に関する調査」(連合)
2013年11月06日 07:00 | 人事労務