いきなりの急転直下な出来事で、驚かされた方々も多かったことでしょう。
北海道日本ハムファイターズに所属していた中田翔選手が読売ジャイアンツにトレードされることになりました。移籍期間ギリギリの中で決まったこともさることながら、トレードの経緯もかなり異例なのです。
まずトレードというのは、基本的に1対1ないしは複数対複数が多いですけれども、大物選手を獲得したい場合は、1対複数という例も無くは無いです。ただ、日本でのトレードは、戦力外ないしは戦力としては不十分な選手の入れ替えという印象が強いですね。
そのためか、金銭トレードという方法もよく採られます。この場合は、選手を獲る代わりに一定金額を放出する球団に支払う格好になります。言葉は悪いですが、人身売買ですわな(苦笑)。
しかし、今回採られたトレードはいずれのケースでもなく、無償トレードというものに。選手は出すけど、対価はいりませんよという、非常にまれなケースです。当時ダイエーホークス(現在のソフトバンクホークス)に所属していた小久保裕紀さんや東北楽天ゴールデンイーグルス設立の経緯で出たくらいだよね・・・と思って調べてみたら、結構あるな(爆)。
じゃあ、何で無償トレードなんてことになったのかというと。
今年はオリンピック開催中はプロ野球が中断されていました。その間も選手勘を養うためにエキシビジョンマッチ、つまり練習試合をこなしていたんですよ(そんなことをやっていたのも初めて知りましたよ)。
そのエキシビジョンマッチで事件が起こりました。
8/4の横浜DeNAベイスターズ戦試合開始前に中田選手がチームメイトに暴行を振るっていたのです。被害選手の言葉に中田選手がキレたのが原因ではないかと言われてましたけれども、後の球団発表では被害選手には落ち度は無く、中田選手が突発的にキレたとのことだそうです。この日の試合では、ヒットを放っていたものの、代走を出される格好で途中交代になり、そのまま自宅謹慎処分となったのです。
その後の調査により、中田選手は野球協約などの規則に則り、無期限の公式戦(1軍・2軍の)試合出場停止処分とされ、チーム練習への参加は禁止、球団施設などでの個人練習は可能なもののユニフォーム着用はできないというかなり厳しいものになっていました。
公式戦再開後、栗山英樹監督が中田選手の今シーズンの復帰は不可能であることや来年以降も選手として復帰は難しいことを漏らしたため、今シーズン終了後に退団かとも言われていました。
そんな中で、巨人の原辰徳監督が獲得に意欲を見せ、急転直下で電撃的にトレードが成立したのです。原監督曰く、「(前略)過去、現在、未来全てを共有する覚悟で、ジャイアンツとしてはもう一度チャンスを与えるべき(後略)。(前略)(中田選手)自身の過ちにおいてしっかりと謝罪するところから始めよう」とのこと。そして今日、謝罪会見も兼ねた入団会見に至ったわけです。
ただ、謝罪会見はあくまで巨人の球団で行ったものであって、日本ハムで行ったものではないのです。そして日本ハムは今回の件に関しては、ほとんど語っていません。栗山監督の反省の言葉しか出ておらず、ゼネラルマネージャーのコメントは未だ無し。いやはや、こんなに隠蔽体質な球団だったかなと結構訝しがって見ておりますわ・・・。一昔前に親会社の日本ハムが牛肉偽装事件で苦しんだ経緯を忘れてしまったのではないかと思わされていますよ。
実のところ、日本ハムには差別疑惑も挙がっておりまして・・・。チームメイトに差別的な発言をしているのが、球団の上げた公式動画から発覚しまして、現在も絶賛炎上中。これも公式のコメントが一切無いのよ。中田選手の問題共々、うやむやにされないか心配ではあります。そう、中田選手は巨人に移籍したことで、『無かったことにされる』可能性も無くは無いのです。
ただ、最悪の状況でスタートしている事実は変わらない。背負わされた10という番号は、現在2軍で監督を務めている阿部慎之助さんの現役時代の番号だったもの。中田選手の入団会見で述べていた「本当に皆さんに迷惑をかけてしまったこと、本当に反省しています。(被害選手)本人にももちろんそうですし、ファンの皆さんに対しても裏切ってしまったということに対して、すごく後悔だったり、本当に反省しています」が本当にそう思っているのか、日本ハムのゼネラルマネージャーの前で泣きながら述べた「野球をやめる覚悟はある」というのも本当なのか。それこそ1軍昇格のために必死になってやるしかないでしょう。私自身は、今年1軍帯同までなら御の字だと思っています。それだけ酷い成績(.193 4本)なのですよ。
もし今シーズン十分な成績を残せなければ、かつ素行不良な面が垣間見られたら、即刻切られるでしょうね。「巨人軍は紳士たれ」という球団訓があるくらいですし、原監督自身も「仮に繰り返すようなことがあるならば、そこは私が断を下します」とも述べている。もう後が無いのです。
中田選手の今回の謝罪会見を日本ハムで開かなかったこと(この点は、球団がやらないように提言した可能性もある)、日本ハムの球団の対応のお粗末さにはファンとしてでなくとも非常に残念で、怒りと不満があふれそうになっていますけど、本人が新天地で変わると思っている限りは、その思いをぐっとこらえようと思います。