同一労働・同一賃金は非正規労働者救済が真の狙い
政府が提唱している「同一労働・同一賃金」の導入は、業種ごとに一律の基準を設けるのではなく、同じ企業の正社員と非正規社員の間に限って実現をめざす方針になりつつあるようです。これですと、職種に一定の値札を付けるのが基本の欧米流とは異なる制度になります。小職は、同じ企業の中で同じ仕事をしていても、その社員の様々背景、例えば将来性やこれまでの会社への貢献度など目に見えない要素も勘案して経営者が賃金に差異をもうけることはありだと思っています。しかし、そういう措置は、合理的な範囲において行われていないと、従業員の納得は得られず、労務管理は上手く回らなくなります。
政府が「同一労働・同一賃金」の標語を使ってやろうとしていることの真の狙いは、正規と非正規の格差是正であることは明らかです。これから非正規労働者を使用している経営者の留意すべき点は、(1)非正規だからといって、低賃金で使い捨てるコストではなく、正社員と同じように戦力として育てるという視点を持つこと、(2)正規社員と非正規の賃金差は、その雇用条件から導かれる合理的な範囲にとどめること、です。また、正規社員の賃金を下げて非正規に合わせるような格差是正は、いうまでもなく、本末転倒です。なぜなら、今後生産年齢人口の減少に伴う人手不足は深刻化すると予想され、人材の確保とその活用は企業にとって死活問題となると思われるからです。
=== 日本経済新聞電子版 11月25日 ===
政府は働き方改革の柱の一つである「同一労働同一賃金」の導入について、業種ごとに一律の基準を設けるのではなく、同じ企業の正社員と非正規社員の間に限って実現をめざす方針だ。企業間で賃金の格差が生じるのは認める。年内に問題のある待遇の違いを事例で示したガイドラインをつくり、企業側に正社員と非正規社員の格差をなくすように促す。29日に開く政府の働き方改革実現会議で打ち出す。12月にも開く次の会議で、同一労働同一賃金のガイドラインの内容を固める。
9月に発足した実現会議はこれまで賃上げやテレワーク(在宅勤務)、病気治療と仕事の両立といったテーマを議論してきた。同一労働同一賃金を取り上げるのは29日の会議が初めてとなる。
バブル崩壊後に非正規社員の比率を上げてきた日本企業は、非正規でも正社員並みの仕事をする例が増えている。非正規社員の間では正社員と同じ仕事をしているのに、給料を正社員より低く抑えられていることへの不満が強い。政府は非正規の働く意欲を高めて深刻な人手不足を解消するには、同一労働同一賃金の実現が欠かせないとみている。
フランスやドイツでは、業種ごとに同一労働同一賃金が定められ、労使交渉も業種単位で実施する。職種や技能のレベルに応じて賃金が決まり、正社員と非正規の違いはない。日本政府は同一労働同一賃金の導入にあたって、仏独の事例を参考にしている。日本の経済界は欧州のような業種ごとの同一賃金の導入には慎重な立場を取る。日本の労使交渉は欧州と違って企業単位で、職務内容も明確に決まっていないからだ。政府は経済界のこうした懸念を踏まえ、同一賃金の対象を同じ企業内に限定することにした。転勤の有無や同じグループ内の違う会社で待遇に差がつくことも、ある程度は容認する方向だ。
年内に策定するガイドラインは、基本給や諸手当など賃金だけではなく、福利厚生や教育訓練といった待遇全般について行きすぎた格差の事例を示す。就業規則を変更する際に企業が参考にしやすいように「交通費は正社員と非正規社員で差があってはならない」などの具体例を記載する。政府は正社員の待遇を引き下げて、非正規の格差を縮める動きが出ることを警戒している。あくまで非正規の待遇を底上げして同一賃金を実現するよう経済界に促す考えだ。しかし経済界の側は大幅な人件費の上昇につながるため、警戒する声も出ている。
日本では、パートタイム労働者の時間あたり賃金がフルタイム労働者の6割弱にとどまる。米国の3割に比べれば格差は小さいが、フランスの9割、ドイツの8割、英国の7割より大きく見劣りする。政府は10年かけて賃金格差を欧州並みに縮めたいと考えている。
=== 転載 終わり (下線 浅草社労士) ===
政府が「同一労働・同一賃金」の標語を使ってやろうとしていることの真の狙いは、正規と非正規の格差是正であることは明らかです。これから非正規労働者を使用している経営者の留意すべき点は、(1)非正規だからといって、低賃金で使い捨てるコストではなく、正社員と同じように戦力として育てるという視点を持つこと、(2)正規社員と非正規の賃金差は、その雇用条件から導かれる合理的な範囲にとどめること、です。また、正規社員の賃金を下げて非正規に合わせるような格差是正は、いうまでもなく、本末転倒です。なぜなら、今後生産年齢人口の減少に伴う人手不足は深刻化すると予想され、人材の確保とその活用は企業にとって死活問題となると思われるからです。
=== 日本経済新聞電子版 11月25日 ===
政府は働き方改革の柱の一つである「同一労働同一賃金」の導入について、業種ごとに一律の基準を設けるのではなく、同じ企業の正社員と非正規社員の間に限って実現をめざす方針だ。企業間で賃金の格差が生じるのは認める。年内に問題のある待遇の違いを事例で示したガイドラインをつくり、企業側に正社員と非正規社員の格差をなくすように促す。29日に開く政府の働き方改革実現会議で打ち出す。12月にも開く次の会議で、同一労働同一賃金のガイドラインの内容を固める。
9月に発足した実現会議はこれまで賃上げやテレワーク(在宅勤務)、病気治療と仕事の両立といったテーマを議論してきた。同一労働同一賃金を取り上げるのは29日の会議が初めてとなる。
バブル崩壊後に非正規社員の比率を上げてきた日本企業は、非正規でも正社員並みの仕事をする例が増えている。非正規社員の間では正社員と同じ仕事をしているのに、給料を正社員より低く抑えられていることへの不満が強い。政府は非正規の働く意欲を高めて深刻な人手不足を解消するには、同一労働同一賃金の実現が欠かせないとみている。
フランスやドイツでは、業種ごとに同一労働同一賃金が定められ、労使交渉も業種単位で実施する。職種や技能のレベルに応じて賃金が決まり、正社員と非正規の違いはない。日本政府は同一労働同一賃金の導入にあたって、仏独の事例を参考にしている。日本の経済界は欧州のような業種ごとの同一賃金の導入には慎重な立場を取る。日本の労使交渉は欧州と違って企業単位で、職務内容も明確に決まっていないからだ。政府は経済界のこうした懸念を踏まえ、同一賃金の対象を同じ企業内に限定することにした。転勤の有無や同じグループ内の違う会社で待遇に差がつくことも、ある程度は容認する方向だ。
年内に策定するガイドラインは、基本給や諸手当など賃金だけではなく、福利厚生や教育訓練といった待遇全般について行きすぎた格差の事例を示す。就業規則を変更する際に企業が参考にしやすいように「交通費は正社員と非正規社員で差があってはならない」などの具体例を記載する。政府は正社員の待遇を引き下げて、非正規の格差を縮める動きが出ることを警戒している。あくまで非正規の待遇を底上げして同一賃金を実現するよう経済界に促す考えだ。しかし経済界の側は大幅な人件費の上昇につながるため、警戒する声も出ている。
日本では、パートタイム労働者の時間あたり賃金がフルタイム労働者の6割弱にとどまる。米国の3割に比べれば格差は小さいが、フランスの9割、ドイツの8割、英国の7割より大きく見劣りする。政府は10年かけて賃金格差を欧州並みに縮めたいと考えている。
=== 転載 終わり (下線 浅草社労士) ===
2016年11月25日 18:00 | 人事労務