マクロ経済スライドを見直すという記事について
昨日、6月17日の日経新聞に「公的年金、15年度から給付抑制 物価下落でも減額」という記事が掲載されておりました。読んでみても、やや意味不明な記事です。要は、決定済みですが未だ実施されていないマクロ経済スライドという年金額決定方式を一段と年金受給者にとって厳しいものにするということのようです。
=== 日経新聞電子版 6月17日 ===
厚生労働省は公的年金の給付水準を物価動向にかかわらず毎年度抑制する仕組みを2015年度に導入する方針だ。いまの制度では物価の上昇率が低い場合は給付を十分抑制できないが、少子高齢化の進展に合わせて必ず給付を抑える。すでに年金を受給している高齢者にも負担を分かち合ってもらい、年金制度の持続性を高める。
少子高齢化にあわせて毎年の年金給付額を抑えるマクロ経済スライドと呼ぶ制度を見直す。15年の通常国会への関連法案提出を目指す。現在のルールではデフレ下では年金を削減できず、物価の伸びが低い場合も、前年度の支給水準を割り込む水準まで減らすことはできない。年金は物価水準に連動して毎年度の給付水準が調整されるが、物価下落以外の理由で名目ベースの年金額が前年度より目減りすることを避けているためだ。
今後は物価や賃金の動向に関係なく、名目で減額になる場合でも毎年度0.9%分を削減する方針だ。この削減率は平均余命の伸びや現役世代の加入者の減少率からはじくので、将来さらに拡大する可能性もある。改革後は、例えば物価の伸びが0.5%にとどまった場合、翌年度の年金は物価上昇率から削減率0.9%を差し引き、前年度より0.4%少ない額を支給する。物価がマイナス0.2%のデフレ状況なら、翌年度の年金は1.1%減る。
マクロ経済スライドは04年の年金制度改革で導入した。15年度は消費増税の影響で物価が大幅に上昇しているので、現行制度のままでも年金は抑制される。ただ、将来デフレや物価上昇率が低くなった局面では給付を抑えられないので、今のうちに改革を急ぐ方針だ。
(以下省略)
=== 引用終わり ===
「厚生労働省は公的年金の給付水準を物価動向にかかわらず毎年度抑制する仕組みを2015年度に導入する方針だ。いまの制度では物価の上昇率が低い場合は給付を十分抑制できないが、少子高齢化の進展に合わせて必ず給付を抑える。」という記述ですが、2013年10月及び2014年4月に実施され、さらに2015年4月に予定される年金額特例水準の引下げ実施で、平成12年から14年の景気後退期に生じた-1.7%の物価下落がその後の物価上昇によって相殺されるまで、マクロ経済スライドを含む原則的な年金額の改定方法の実施を延期することとされていた暫定措置的状況が解消されます。
つまり、2015年に本来の年金給付額の決定に使うと一旦決められたマクロ経済スライドが例外的な状況下でその実施が停止されていましたが、その例外的な状況が解消されたため、本来の決定方法がいよいよ実施されるということをいっているようにも読める(特例水準の年金額解消の先にあるもの_2013年10月17日)のですが、どうもそれだけにとどまらないということのようなのです。これまで実施されてこなかったマクロ経済スライドが実施されるのではなく、「マクロ経済スライドと呼ぶ制度を見直す。15年の通常国会への関連法案提出を目指す。」という下りです。
さらに、「現在のルールではデフレ下では年金を削減できず、物価の伸びが低い場合も、前年度の支給水準を割り込む水準まで減らすことはできない。年金は物価水準に連動して毎年度の給付水準が調整されるが、物価下落以外の理由で名目ベースの年金額が前年度より目減りすることを避けているためだ。」と書かれておりますが、これは事実と異なります。ここ数年、昨年10月及び本年4月の特例水準の年金額解消のための引下げ以外に前年の消費者物価の下落にほぼ連動して年金の引下げが実施されています。マクロ経済スライドは、この消費者物価及び名目賃金の動きに加えて、労働力人口(被保険者数)の減少及び平均余命の伸びをも考慮に入れて、平成35年度末まで年金額の上昇を抑制するという代物です。つまり、賃金及び物価の上昇率(まともに経済成長している国では普通毎年上昇するものなので)を労働力人口の減少及び平均余命の伸びで値切る仕組みですから、これが実施される運びとなれば、自然に年金支給額は抑制されることになり、年金受給者にとっては厳しい仕組みです。
「今後は物価や賃金の動向に関係なく、名目で減額になる場合でも毎年度0.9%分を削減する方針だ。」という記述から、今後マクロ経済スライドを適用すると毎年度これくらいの厳しい負の下駄が履かせられ、これを厳格に適用するということのようです。しかし、マクロ経済スライドの実施は、「平成35年度末まで」の時限措置ということが今のところの決定事項なのですが、-0.9%の下駄は、現役世代の賃金の50%前後若しくは下回る程度まで実施されることになるのでしょうか。世代間格差の解消は重要な課題と認識しているものですが、こんなことをすれば、さすがに公的年金制度自体の存在意義が問われることになると思います。
=== 日経新聞電子版 6月17日 ===
厚生労働省は公的年金の給付水準を物価動向にかかわらず毎年度抑制する仕組みを2015年度に導入する方針だ。いまの制度では物価の上昇率が低い場合は給付を十分抑制できないが、少子高齢化の進展に合わせて必ず給付を抑える。すでに年金を受給している高齢者にも負担を分かち合ってもらい、年金制度の持続性を高める。
少子高齢化にあわせて毎年の年金給付額を抑えるマクロ経済スライドと呼ぶ制度を見直す。15年の通常国会への関連法案提出を目指す。現在のルールではデフレ下では年金を削減できず、物価の伸びが低い場合も、前年度の支給水準を割り込む水準まで減らすことはできない。年金は物価水準に連動して毎年度の給付水準が調整されるが、物価下落以外の理由で名目ベースの年金額が前年度より目減りすることを避けているためだ。
今後は物価や賃金の動向に関係なく、名目で減額になる場合でも毎年度0.9%分を削減する方針だ。この削減率は平均余命の伸びや現役世代の加入者の減少率からはじくので、将来さらに拡大する可能性もある。改革後は、例えば物価の伸びが0.5%にとどまった場合、翌年度の年金は物価上昇率から削減率0.9%を差し引き、前年度より0.4%少ない額を支給する。物価がマイナス0.2%のデフレ状況なら、翌年度の年金は1.1%減る。
マクロ経済スライドは04年の年金制度改革で導入した。15年度は消費増税の影響で物価が大幅に上昇しているので、現行制度のままでも年金は抑制される。ただ、将来デフレや物価上昇率が低くなった局面では給付を抑えられないので、今のうちに改革を急ぐ方針だ。
(以下省略)
=== 引用終わり ===
「厚生労働省は公的年金の給付水準を物価動向にかかわらず毎年度抑制する仕組みを2015年度に導入する方針だ。いまの制度では物価の上昇率が低い場合は給付を十分抑制できないが、少子高齢化の進展に合わせて必ず給付を抑える。」という記述ですが、2013年10月及び2014年4月に実施され、さらに2015年4月に予定される年金額特例水準の引下げ実施で、平成12年から14年の景気後退期に生じた-1.7%の物価下落がその後の物価上昇によって相殺されるまで、マクロ経済スライドを含む原則的な年金額の改定方法の実施を延期することとされていた暫定措置的状況が解消されます。
つまり、2015年に本来の年金給付額の決定に使うと一旦決められたマクロ経済スライドが例外的な状況下でその実施が停止されていましたが、その例外的な状況が解消されたため、本来の決定方法がいよいよ実施されるということをいっているようにも読める(特例水準の年金額解消の先にあるもの_2013年10月17日)のですが、どうもそれだけにとどまらないということのようなのです。これまで実施されてこなかったマクロ経済スライドが実施されるのではなく、「マクロ経済スライドと呼ぶ制度を見直す。15年の通常国会への関連法案提出を目指す。」という下りです。
さらに、「現在のルールではデフレ下では年金を削減できず、物価の伸びが低い場合も、前年度の支給水準を割り込む水準まで減らすことはできない。年金は物価水準に連動して毎年度の給付水準が調整されるが、物価下落以外の理由で名目ベースの年金額が前年度より目減りすることを避けているためだ。」と書かれておりますが、これは事実と異なります。ここ数年、昨年10月及び本年4月の特例水準の年金額解消のための引下げ以外に前年の消費者物価の下落にほぼ連動して年金の引下げが実施されています。マクロ経済スライドは、この消費者物価及び名目賃金の動きに加えて、労働力人口(被保険者数)の減少及び平均余命の伸びをも考慮に入れて、平成35年度末まで年金額の上昇を抑制するという代物です。つまり、賃金及び物価の上昇率(まともに経済成長している国では普通毎年上昇するものなので)を労働力人口の減少及び平均余命の伸びで値切る仕組みですから、これが実施される運びとなれば、自然に年金支給額は抑制されることになり、年金受給者にとっては厳しい仕組みです。
「今後は物価や賃金の動向に関係なく、名目で減額になる場合でも毎年度0.9%分を削減する方針だ。」という記述から、今後マクロ経済スライドを適用すると毎年度これくらいの厳しい負の下駄が履かせられ、これを厳格に適用するということのようです。しかし、マクロ経済スライドの実施は、「平成35年度末まで」の時限措置ということが今のところの決定事項なのですが、-0.9%の下駄は、現役世代の賃金の50%前後若しくは下回る程度まで実施されることになるのでしょうか。世代間格差の解消は重要な課題と認識しているものですが、こんなことをすれば、さすがに公的年金制度自体の存在意義が問われることになると思います。
2014年06月18日 18:00 | 社会保険