街道のLandscape 59
川越街道を歩く旅である。前回到達した新座駅から歩き始めた。
新座市大和田一丁目の川越街道である。緩く下っていく。
緩傾斜の坂の途中の路傍に塚がある。「鬼鹿毛の馬頭観音」である。
屋根の下に三面六臂の馬頭観音が祀られている。元禄9年(1696)に造立された丸彫馬頭観音像である。
大和田四丁目、郵便局の先に大和田観音堂がある。明治初年に管理していた寺が廃寺となり、地域の方々によって管理されている観音堂である。
観音堂の前には地蔵尊が祀られている。台座には享保4年(1719)とある。
地蔵尊の横に置かれた手水鉢である。龍が浮彫りされている。縁には盃状穴が穿たれている。明治34年の奉納。
観音堂の先の路傍に蔵がある。
塀越しに脱穀機が見えた。大正時代に普及した足踏式脱穀機ではないか。珍しいものを見つけた。脱穀機の左にあるのは臼である。
蔵の向いには、藁葺き屋根にトタン板を被せた古民家がある。煙抜きにも水色のトタンを巻いてある。
川越街道を進むと浦和所沢バイパスの英インターチェンジがあり、川越方向へ進む歩行者は窮屈なトンネルを通る。
トンネルを抜けると蔵が空き地にポツンと建っている。屋敷が撤去され蔵だけが残されたのだろう。手前には井筒も残されている。
英インターチェンジを過ぎると川越街道は国道254号となる。
中野一丁目の路傍の民家である。組物で桁を支えている。民家では珍しい構造ではないか。
三芳町と新座市の境界近傍の中央分離帯に川越街道と刻された碑が建っている。
三芳町竹間沢の路傍に青春出版社の三芳物流センターがあった。青春出版社は、大昔、路傍学会が大学受験の際に使った「試験に出る英単語」の出版元である。関東では「デル単」と呼ばれ、関西では「シケ単」と呼んだというが、真偽は分からない。
この区間には欅が植栽されており、歩行者に木陰を提供してくれる。今年のように暑い夏には大変ありがたい。
欅の並木が途切れて暫く歩くと広源寺がある。寛永十六年(1639)に開山した寺院で、明治七年には藤久保小学校が開設された所である。
本堂の前には仁王像がまさに仁王立ちし、この寺を守っている。
藤久保の路傍で見かけた門である。これは現代風の長屋門ではないか、などと思いたくなるような造りである。
川越街道を歩く旅はまだ続く。
- [ edit ]
- 街道
- / trackback:0
- / comment:6
- [ 編集 ]
- 2024/09/02(月) 10:08:21 |
- URL |
- まるほ
デル単、シケ単の違いは、私も同じ話を予備校で聞きました。どの辺が、表現の境界なのでしょうか。やっぱ、糸魚川静岡構造線か・・。
Re: タイトルなし
- [ 編集 ]
- 2024/09/02(月) 23:58:22 |
- URL |
- 路傍学会長
コメントありがとうございます。
シケ単、デル単の境界線は富士川か、関ヶ原か、フォッサマグナか、
うーむ、興味は尽きませんね。
どなたかご教示くださいませ。
路傍学会長拝
Re: タイトルなし
- [ 編集 ]
- 2024/09/03(火) 08:26:25 |
- URL |
- 路傍学会長
コメントありがとうございます。
大和田観音堂は、廃寺後、地元の方々によって管理されてきたとのことで、
やさしい温もりが感じられます。
現代風の長屋門は、おっしゃる通り、もともと長屋門があったのではないでしょうか。
路傍学会長拝
- [ 編集 ]
- 2024/09/03(火) 22:46:27 |
- URL |
- kozoh55
鎮座されているのですね、それだけでも逢いに行きたくなります。
川越街道の中央分離帯に置かれた『川越街道』の案内、
ええ、雰囲気ありますよね。
Re: タイトルなし
- [ 編集 ]
- 2024/09/04(水) 08:46:39 |
- URL |
- 路傍学会長
コメントありがとうございます。
鬼鹿毛の馬頭観音は、写真ではうまく表現できていませんが、
慈悲、憤怒の顔が巧みに彫られている優品だと思います。
今でも地域の方々に大事にされている馬頭観音で、
お勧めの一体です。
路傍学会長拝
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