「ゼロ円ビジネスの罠」
ゼロ円ビジネスの罠 (光文社新書)
posted with amazlet at 10.12.01
門倉 貴史
光文社 (2010-09-17)
売り上げランキング: 89420
光文社 (2010-09-17)
売り上げランキング: 89420
題名を見て最初キワモノ本かと思ったけど、著者が門倉氏だったので読んだ。題名から想像されるような「ゼロ円ビジネスは危険」とか逆に「これからはゼロ円ビジネスがアツい」とかいうアジテーションの本ではなく、あくまでも事例やデータを門倉流で解説する本。
前半がいわゆるFREEビジネスの話、後半が主に無料商法の話。両者がつながってない感もある、というか著者が無料商法の話でノッてる気がするけど。ちなみに前半ではゼロ円売春宿の事例で、後半では包茎商法の事例で吹いた(←どっちもシモの話かよ)。
以下、本書で書かれていたことからメモ。
- 広告型
- ポケットティッシュ、電話帳、フリーマガジン
- タダコピ、エコフル、タダノート、Google、Yahoo、ミクシィ、digg、twitter、evite.com
- リーマンショックでフリーペーパーやフリーマガジンの広告収入は大幅減、インターネットの連動広告は影響少
- ぐるなび:加盟店制による中長期広告モデル
- フリーミアム型
- Sendomatic、グリー、モバゲー
- Radioheadの「In Rainbows」:38%がお金を払った。無料の人を含めると平均金額は2.26ドル。ファン層拡大?
- NIN:複数グレード
- Adobe Reader、クセロPDF(当初)、Skype、Gyao
- マクドナルドの無料コーヒー、無料カフェ播磨屋ステーション、丸の内カフェ(有料クラブへ)、109のSBY(集客)とLCAFE(マーケティング情報)、無料宿泊、価格.com(販売サポート)、HPのゼロ円プリンター(インク代)、ロッテリアの親子割、韓国の食堂の「パンチャン」(無料おかず)
- それ以外のモデル
- Transfercar:乗り捨てのレンタカーを戻すルートをネットで集めて無料レンタカー
- チェコの無料売春宿:その様子をインターネットで有料配信
- 原理
- 返報性の原理
- 保有効果:入手したものを手放したくない
- 確実性効果:損失を嫌う心理
- アンカリング効果:最初の印象
- バンドワゴン効果:流行
- 無料商法
- 無料カウンセリングで不安を煽って有料契約させる
- エステの無料体験で「このままでは大変」といって有料コースを契約させる
- 包茎の無料カウンセリング。“下半身裸の状態で「これは予想していた以上にひどい」と言われて恥ずかしさと緊張から高額な手術を承諾”(本書より)
- 開運商法:無料占いから高額の印鑑などを販売
- 点検商法:リフォーム商法、羽毛布団点検商法
- 無料の着物、帯は有料
- 睡眠商法(SF商法)
- 閉め切った会場に人を集め、無料や格安の商品で場を盛り上げたうえで、興奮状態で高価な商品を買わせる
- パチンコ・パチスロ商法:無料の情報で儲からないと言われると有料コースに
- 送りつけ商法
- アダルトSPAM
- フリーダイヤルを使った詐欺:知らない番号からの電話は出なくてもフリーダイヤルなら出る
- 当選商法
- 無料招待商法:無料のツアーで宝石を売りつけられる
- 無料カウンセリングで不安を煽って有料契約させる
- ブラジルの音楽産業:9年で11億ドルから2億ドルに売上減少
- 海賊盤
- 違法着うた:推定4億514万ダウンロード/年
- ゼロ円ビジネスと経済
- 経済への影響は実際には複雑で予測できない。単純に物価下落圧力になるわけではない
- 競争関係や代替関係にある商品やサービスには下落圧力
- 無料コーヒー→ライバル店
- 補完関係にある商品やサービスには上昇圧力
- 無料コーヒー→ミルク需要増
- フリーミアムが利益になる場合
- 有料商品の需要増
- 競争関係や代替関係にある商品やサービスには下落圧力
- 知識・技術集約型産業と資源集約型産業
- 知識・技術集約型産業は最初にシェアを握った企業が勝者になりやすい(収穫逓増の法則)
- 初期コストが大きく、生産が増えるにしたがい限界費用が減少(限界費用低減の法則)
- 利用者が増えるほど満足度が高まる(ネットワーク外部性)
- ゼロ円ビジネスのメリット
- 資源集約型産業は収穫逓減の法則
- 限界費用は上昇傾向
- ミクロ経済学の標準的な教科書「限界費用が製品価格と一致する点が利潤最大化の条件」
- ゼロ円ビジネスの初期コストを回収しにくい
- 無料カレーライスのネットカフェの失敗例
- 競合が激しく、充分な差別化を提供できなかった
- 新規出店のコスト
- 知識・技術集約型産業は最初にシェアを握った企業が勝者になりやすい(収穫逓増の法則)
- 先進国においてセイの法則(供給はそれみずからが需要をつくりだす)が成り立たなくなったという背景
- 消費者へのパワーシフト
- コモンズの悲劇(ギャレット・ハーディン)
- 知識・技術集約型産業のゼロ円ビジネスの失敗ケース
- 1999年ごろの無料パソコン
- 初期コストに耐えられなくなる
- 競合が急増し会員数が増えなくなる
- 多数の追随者が出てきた瞬間にゼロ円ビジネスは終わる
- 米国の新聞社、インターネット版を有料の方向に
- ポータルなどのニュースアグリゲーターは、フェアユース協定を利用して顧客を囲い込む
- 経済への影響は実際には複雑で予測できない。単純に物価下落圧力になるわけではない
- 非貨幣経済(ジャン・ジャック・ルソー)
- 寄付ビジネス
- 市場規模は、米国(GNP比1.85%)、イスラエル(1.34%)、カナダ(1.17%)、アルゼンチン(1.09%)の順
- フードバンク
- Wikipedia
- 寄付ビジネス
- 小学生のいる家族夢をパティシエがケーキで表現する「夢ケーキイベント」
- 店頭で販売するケーキも売上増
- アンチコモンズの悲劇
- 著作権関係が複雑になり利用者が不利益になる場合
- ヒトゲノムの研究での特許リスク
- エコ・パテントコモンズ
- 環境保全に活用することを条件に、企業が特許を開放するしくみ
- IBM、ソニー、Nokia、ピツニーボウズら
コメント
コメントの投稿
トラックバック
https://emasaka.blog.fc2.com/tb.php/844-091b0b77