「東映ゲリラ戦記」「トラック野郎風雲録」
5月に映画の鈴木則文監督が亡くなった。代表作はやはり「トラック野郎」シリーズか。娯楽に徹したケレン味の強い作風で、「下品こそ、この世の花」とうそぶく。「ドカベン」「コータローまかりとおる!」「パンツの穴」といった、まあ割り振られたんだろうなという企画も多く手がける職人タイプの監督。今でいうと、三池崇史監督の路線だろうか。
「映画は花火のように消えゆくもの」と言って自作を語ることの少なかった鈴木監督の珍しい回顧録が「東映ゲリラ戦記」だ。「わたしはいわば花火職人であり、職人であるわたしが、打ちあげる花火の火薬の種類がどうの、調合がどうの、と言うのはわたしの性格に合わない」とか。
話は、ポルノ映画監督に転向し、会社(というか社長)の無茶振りの中、スピードとアイデアで作品を作っていくところから。いわく、「時代の風をモロに受けるポルノ路線は、その時代のもつオーラを素早くつかまなければ<時代の花>になえないのだ。拙速といわれようと即断即決はゲリラ隊の勝利の方程式であると確信した」。
なにしろ、出てくる作品名からして「温泉みみず芸者」「女番長ブルース 牝蜂の逆襲」「徳川セックス禁止令 色情大名」「温泉スッポン芸者」「エロ将軍と21人の愛妾」「不良姉御伝 猪の鹿のお蝶」などなど、B級さ爆発。本書でも「B面賛歌」という言葉が出てくる。
ちなみに、「ポルノ」という言葉も「温泉みみず芸者」の宣伝のために使って普及したものだとか。同じく「スケバン」も映画のキャッチフレーズから。
そのほか、多岐川裕美のデビュー作「聖獣学園」や、志穂美悦子のデビュー作「女必殺拳」、あの実写版「ドカベン」、小林旭版「多羅尾伴内」、真田広之の「忍者武芸帖 百地三太夫」「吠えろ鉄拳」、「伊賀野カバ丸」「コータローまかりとおる」といった作品のエピソードも。
本書で、娯楽とサービス精神に徹する様子を描きながら、詩情のようなものをそこはかとなく感じさせるのが、著者なりのダンディズムなのだと思った。
ちなみに、本書でも「映画の本道はアクションとメロドラマである」が持論と書かれていて、「トラック野郎風雲録」ではそのあたりのセンチメンタリズム多めに書かれている。
愛川欽也の深夜ラジオ番組のリスナーである長距離トラッカーを題材にスタート。まさに祭や花火のイメージで、わっしょいと盛り上げた舞台裏を語った本。ちなみに、デコトラ(アートトラック)も当時は多くなく、「トラック野郎」シリーズから広まったのだそうだ。
「東映ゲリラ戦記」と比べると、多くの関係者やロケ地への郷愁などをわりと多めに吐露している。娯楽に徹した映画作りを何度も語りながらも、「娯楽映画の使命は弱い人間、孤独な人間への応援歌をつくることにある」なんてロマンチックな言葉も。
「トラック野郎」はいわば裏「寅さん」で、グラビア系マドンナが毎回登場するのだけど、そのマドンナたち、なかでも夏目雅子の思い出なども。
「トラック野郎」シリーズの映画そのものの話だけではなく、デコトラの話や東海道中膝栗毛、ほかの娯楽映画作品の話など、周辺の話題もエッセイ形式で語られている。
しかし、「カミオン」誌の連載が国書刊行会から書籍化ってのも、両者のキャラを考えるとすごいな。
reveal.jsを使ってMarkdownでプレゼン
ほぼ自分用メモ。
やりたいこと
- reveal.jsを使うと、スライドをMarkdownで書いて、変換とかなしでKeynoteとかみたく切り換えエフェクトを付けてプレゼンできる
- ただし、ぜんぶMarkdownで書く場合はhttp:〜で読み込む必要がある(HTMLで書いた場合や、ページ単位のMarkdownで書いた場合は、file:〜でよい)
- 追加ソフトのインストールなしにreveal.jsとMarkdownでプレゼンしたい
準備
- reveal.jsはgitで入手しておく(https://github.com/hakimel/reveal.js/)
- gitでブランチを切る
- 「reveal.js+Markdown - Qiita」あたりを参考に、index.htmlからMarkdownのスライドを読み込むようにする
プレゼン
- Markdownでスライドを書く。ページの区切りは「---」で前後空行、ところどころ「--」を混ぜる(縦移動表示)
- 「$ ln -s <reveal.jsのディレクトリ>/* .」
- 「$ python -m SimpleHTTPServer &」を実行して、Python付属のWebサーバーを起動する
- Webブラウザで「localhost:8000」にアクセスする
LinuxやMacではデフォルトでPythonが入っているのがミソ。
2014.6.30追記:そもそも何をしたいのかが書いてなかったので追加。
「日経Linux」2014年7月号
執筆に参加したので宣伝。……といいつつ発売から半月たってますが、ようやく読んだのでメモとして。
特集1「蔵出しフリーソフト67」で、いくつかのソフト(ゲームや音楽ものなど)を担当しました。定番のもの以外にも、テキストエディタのAtomや、シェルのfish、アプリケーションサンドボックスのFirejail、OpenFlowコントローラフレームワークのRyu、分散ストレージのSheepdogあたりの新しいソフトも紹介されてました。
自分関係はそれくらいにして、以下メモ。
別冊付録「Ubuntu 14.04 LTSが超わかる本」は、半分書きおろし。前半分がUbuntu Japanese Teamによる書きおろしで、Ubuntu 14.04の変更点の紹介や、日本語入力でのIBusやFcitxまわりをWindows 7/8との比較をまじえた解説。後半分が過去に掲載したTipsやソフトの再編集。「Ubuntu 14.04 LTSリリースパーティ」のレポートも。
ほかUbuntu関係では、Ubuntu連載が、Ubuntu 14.04の変更点やアップグレード、サポートサイクルの紹介など。
特集2が「Raspberry Piで自宅を楽しく」。Part 1が、Raspiを学習リモコンにする話と、それをラピロに載せるところ。Part 2が、Wolfson Audio Cardによるハイレゾ音楽再生で、カーネルパッチや、USB接続LCDの自作も。Part 3が、センサーを無線接続するTWE-Liteを使って室温やドアの開閉をチェックしてTwitterでツイートする話。
ほかRaspi関係では、「Raspberry Piで始めるモノ作り超入門」が第1期最終回で、サーボの種類を、内部処理や材質、耐久性、用途、トルク、制御方法、コネクタなどで分類するというふり切った内容。Rasberry Piプログラミング連載が、アナログ端子や圧電スピーカーから音を鳴らす話と、専用モジュールやUSBカメラでのタイムラプス撮影、JettyでWebから撮影した画像を見られるようにするとこと。
特集3が、「話題の『SteamOS』を使い倒そう」。インストールやデスクトップ環境の日本語化にはじまり、おすすめゲーム紹介、デスクトップ環境でのWebブラウザーでの動画視聴とXbmc利用まで。
特別企画で「暗号通過『Litecoin』を“採掘”」。ウォレットの導入、グラフィックカードを付けてディスクを外したマシンからUSBメモリー起動の「PiMP」で採掘、Ubuntu上のアプリ「sgminer」で採掘、まで。Bitcoinとの方式の違いなども。
中井悦司氏のOpenStack連載が自動化の回。カスタマイズスクリプトによるアプリケーション導入の自動化、PythonからOpenStackのAPIを呼んで操作する自動化、Heatによるオーケストレーションの3種類。
まつもとゆきひろ氏の「作リながら学ぶプログラミング言語」連載が、言語デザインの話の前編で、Rubyの仕様をEmacsでオートインデントを実装しながら決めていった話なども。
Linuxカーネルの仕組み連載が、ファイルシステムとブロックレイヤー。ファイルシステムの役割とVFS、ファイルシステムの分類としての「古典」「ジャーナリング」「ログストラクチャード」「COW」、I/Oスケジューラー。最後に、RHEL 7でデフォルトになったXFSの解説。
ほか、カーネルハッカー連載が、namespaceの種類として、PID、UTS、MOUNT、Network、IPC、UIDを紹介。LIPC連載が、Sambaによるファイルサーバーの立て方。復活PC連載が、ネットブックにUbuntu Serverを入れて、fbtermを使ってコンソールで日本語を使う話。
巻頭記事は、巻頭レポートが、Ubuntu Unity 8やTails 1.0、LinuxCon Japan 2014。電子工作マンガ「ハルロック」作者のインタビューも。フリーソフトコーナーが、万葉の大場社長によるWeb家計簿「小槌」。美女Linux連載が、パーミッションとその変更。コミュニティ訪問が、PostgreSQLエンタープライズ・コンソーシアム。
「#!シス管系女子 Season 2」が、正規表現の話の続きで、繰り返し(量指定子)や、ブラケットの否定形、行頭と行末、sedの-eオプション。水着もあるよ。
「Q.E.D.」48巻、「C.M.B.」26巻
人気ミステリーコミックシリーズが今回も2冊同時発売。
以下、ネタバレに気をつけているつもりだけど、未読の方は念のためご注意を。
「Q.E.D.」は、「代理人」と「ファイハの画集」の2編を収録。今回はどちらも人が死ぬ話。
「代理人」は、極度の人見知りの作家にとって唯一の窓口である著作権エージェントの殺人事件。同じエージェント会社の新人が作家といっしょに犯人を探す話。
ネタバレぎみになるけど、事件の起点がトリックになっている。あの場面が伏線というかヒントだったのか。あと、作家や作家志望者の気持ちもテーマになっていると思う。
「ファイハの画集」は、才能はあるが貧しいモロッコの少女が進学を夢みてスペインに不法入国する話と、そのとき起こった事件、さらにそれを追うアラン・ブレード一行の話。スペインの街中を飛び回る活劇つき。これも、あれが伏線だったのか。それにしても、エリーさんってやっぱり気まぐれな天才を扱うのが上手いなw
講談社 (2014-06-17)
「C.M.B.」は、「ゴンドラ」「ライオンランド」「兆し」の3編を収録。
「ゴンドラ」は、料理タレントとその義弟の事件の倒叙もの。刑事コロンボ同様の倒叙ものの見せどころとして、そこに決定的なミスがあったのか、というシーンのキレが勝負。
「ライオンランド」は、密猟に悩むケニヤの動物保護区を背景に、ライオンに殺された戦士と、それを見てトラウマで心を閉ざした弟分の謎、それを治療すべく“悲しい記憶を消す薬”を追ってサバンナを行く一行の話。最初と最後の呪医のモノローグが、ストーリーの基調となっている。
「兆し」は、中国の文化大革命期を舞台に、歴史上繰り返されてきた、虐殺に至る集団心理を描く作品。トウガラシの意味が切ない。
Secure EraseとWindows 8とParted Magic
実験用に借りたPCを返すためSSDをSecure Eraseしようとして知った2つのこと。
- Windows 8以降ではアプリケーションからSSDにSecure Eraseを発行できない
- Parted Magicは有償になった
ちなみにParted MagicのSecure Eraseツールを見てみたら、hdparmを呼び出すラッパーのシェルスクリプトだった。freezeされているときの処理とか考えるのは億劫なので、Parted Magicを買う意味はあると思う(1バージョンで$4.99)。いや、今回は手元にある古いのを使っちゃたんだけど。
「Software Design」2014年6月号
技術評論社 (2014-05-17)
発売から約3週間たっているけど、ようやく通読したのでメモ。
第1特集が、中井悦司氏による新人向け記事「設定ファイルの読み方・書き方でわかるLinuxのしくみ」で、主に設定ファイルを中心としたLinux入門。Part 1がディレクトリとファイル編集の基礎。Part 2がユーザー管理とそのためのツールやファイル。Part 3がLinux起動に関わるブートローダからシステム初期化、サービス起動のプロセス、あとcronの処理。Part 4がネットワークで、IPアドレスのしくみから設定ファイル、/etc/hosts、/etc/resolv.conf、iptables。Part 5がアプリケーションごとの設定ファイルの定石。そしてPart 6が、今年リリース予定の次期RHEL「RHEL 7」で新しく採用される、systemdの解説と、盛りだくさん。
第2特集が、4月にリリースされたUbuntuの最新版かつLTSの「Ubuntu 14.04」の解説。第1章がGUIまわりの変更点。第2章がUbuntu GNOME 14.04 LTS。第3章がインプットメソッド事情。第4章が、LTSにまつわる開発やサポート、リリースの体制。第5章が、デスクトップとUbuntu Touchで共通に使えるGUIアプリを作るUbuntu SDKと、そのUbuntu Touchについて。第6章が、Ubuntuのコアの部分であるFoundationsの解説と、Ubuntu Server関連の新しいパッケージの解説。
Linuxディストリビューション関係ではほかに、Ubuntu連載が、MongoDBをREPLのmongoコマンドからJavaScriptで操作する話。Debian連載が、Squeeze-LTS、systemdデフォルト化決定、プロジェクトリーダー選挙、RUby 2.0、Heartbleed問題、deb-multimediaのピン留め、experimentalの解説。Red Hatの.SPEC連載が、メジャーバージョンとマイナーバージョンについて、変更や延長サポートなどの細かい話。レッドハットの恵比寿通信も藤田稜氏で、“Red Hat Way”について。FreeBSD連載が、bhyveを使う話。
また、Linuxカーネル観光ガイドが、スケジューラのスケジュールクラスと、Linux 3.14のdeadlineスケジューラについて。ハイパーバイザの作り方連載が、bhyveでの仮想ディスクと、virtio-blkのしくみ。Linuxマンガ連載はターミナルマルチプレクサ(screen・tmux)ネタ。
単体記事で、Google Glass(と、Android Wear)のアプリケーション開発の記事も。あと、短期連載で、数千〜数万台を対象にしたサーバー監視ツール「OpenTSDB」の記事も。
Retty社のDevOps連載は、セキュリティのための管理を一歩ずつ改善していくところ(セキュリティグループの分割、公開鍵の管理など)と、モニタリング(おおまかなモニタリングにNew Relic、プロセス監視にNagios、AWSサービスのリソース監視にCloudWatch)。サービスの性質上、昼と夕にアクセスピークがあるので、自分たちが外食に行けなくなるという話もw
シェルスクリプトではじめるAWS入門が、AWSアカウントとIAMユーザーの作り方と利用ノウハウ。AWSアカウントはプロジェクトごとに作り、AWSの操作はIAMユーザーを作ってそちらで、と。
Web Performance Working Group連載は、XHR・COMET・Polling・WebSocketの流れと、SPDY/HTTP2、キャッシュ判定(サーバー側・クライアント側)の話。Emacs連載が、終了方法と、バッファ、ミニバッファ、チユートリアル、補助輪としてのcua-mode。セキュリティ連載は、電子メールのしくみのふりかえりと、SPAMの問題、SPF、DKIMなどについて。
ほか、DIGITAL GADGET連載がドローン。結城浩氏連載が、コンピュータと日常生活のボトルネック。enchant連載が、スウェーデンの大学でのエピソードと、エフェクトについて。キーボード連載が最終回で、HHK。はんだづけカフェ連載が、Maker Faire SHinzhenレポートの話や、Maker系とクラウドファンディング系の違いの話、POV、PWM。ITむかしばなし連載が、I/Oバスのうつりかわり。Hack For Japan連載が、3年間を振り返るイベント「Hack For Japan 3.11〜3年のクロスオーバー振り返り」のレポート。
「いちえふ」1巻
講談社 (2014-04-23)
事故後の福島第一原子力発電所に作業員として入った作者さんが現場の模様を描くマンガ……と聞いて、暗いルポルタージュものとか、社会的メッセージをテーマとしたものを想像してちょっと及び腰だったけど、手を伸ばしてみた。
が、読んでみたらそうではなく、特殊な現場で働く作業員の日常を淡々と描く、オッサンの日常系マンガだった。「今はなにより鼻が痒い」とか、合間に喫煙室に駆け込むとか。もちろん現場の説明は細かい。ノリとしては「刑務所の中」みたいな感じ。