「リトル・フォレスト」1・2
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カテゴリーとしては食べ物マンガだろうか。東北(岩手)の過疎の村で一人暮らしをする若い女性の自給自足生活を、毎回1つの料理を中心に描く。各エピソードには「nth dish」という番号が付けられている。
一人称的な創作エッセイとでもいう感じで、内容も雰囲気も違うけど、形式や路線としては「大東京ビンボー生活マニュアル」を連想した。本書は2002年〜2005年に「月刊アフタヌーン」に連載された作品で、作者(男性)の体験が元になっているらしい。
主人公はスローライフというほど前向きではなくて、一度街で暮らして、訳アリで逃げるように戻ってきたらしい。まあでも、料理はおいしそうだ。
最初の1st dishがグミの実をジャムにして食べる話。甘い物では、あまざけを作る話(5th dish)とか、あまざけをベースに米サワーを作る話(23rd dish)とかも。
主食まわりでは、ばっけみそ(6th dish)が素朴でおいしそう。くるみごはん(13th dish)とかも。なっとうもち(4th dish)は、納豆を作るところから、というかそっちがメイン。
合鴨の雛をかわいがり、田んぼで活躍してもらうエピソードでは、最後は自分の手でシメて食べるところも描いている。別のエピソードでの別の人物の言葉でいうと「他人に殺させといて殺し方に文句をつけるような、そんな人生送るのはやだなって思ったんだよね」。
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「リトル・フォレスト」夏・秋・冬・春の4部作として映画化もされている(BDやDVDでは夏・秋と冬・春の2巻)。実は先に映画を観て良かったので原作を読んだのだけど、驚くほどそのままだった。
ちょっと秘密のありそうな若い美女役で橋本愛さんというのは、定番ですな。岩手だし。友達役で松岡茉優さんも出演している。
「桜花忍法帖」上・下
講談社
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講談社
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アニメ化のニュースを見て、「バジリスク」の続編が書かれていることを知った。しかし、山田風太郎の小説「甲賀忍法帖」を、せがわまさきが漫画化した「バジリスク」の続編を、山田正紀が小説で書くとは、なんか名前の語呂あわせみたいだ(笑)。
「甲賀忍法帖」とも「バジリスク」とも、けっこうノリが違うので、原作厨には怒る人もいるかも。私は別物として楽しんだけど。二次創作とかスピンオフっぽい感じ。
甲賀忍法帖が動物をモチーフにした忍法だとすると、こちらはSFやファンタジーのような超能力や魔法の世界といったところか。山田風太郎風というより、その影響を受けた後世の、半村良や夢枕貘を思わせる伝奇小説っぽくも感じる。
なにしろ、徳川秀忠が忍者によって亜空間を見せられ、江与(お江)があの女傑2人の霊を呼び出す。最後には戦国で毎度おなじみのあの人物が再臨し、あの戦国ヒロインも降臨するという。
それぞれタイプの違う美女によるチームという設定はアニメに抜いているかも。ただ、桜花と有情とか、絵にしづらい要素も多いなあ。
ほかの山田風太郎作品っぽいねたや、バイオレンスジャックばりの設定、根来転寝(ねごろ・ごろね)みたいな杉浦茂っぽいネーミングとか、遊びもいろいろ。
「マンガでわかるホルモンの働き」
SBクリエイティブ
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少し前にKindleのサイエンスアイ新書セールで買って読んだ。マンガでわかるといっても、マンガは挿絵の延長で、それだけ読めばいいというわけではない。
神経系と並行して内分泌系があるという話は聞いたことがあって、それってどういうことかを知りたくて読んだ。
臓器で作られたホルモンが受容体に伝わることで、何らかの情報が伝達されて身体の動作に影響を与えるんだそうな。速いのが神経系で、内分泌系は遅い。出来事に反応するのが神経系で、抑えるのが内分泌系とか。でも神経伝達物質も広義のホルモンに入るのだとか。
精神活動もやはり物質的な身体の活動によって起こっているのだよな、と月並みなことを思った。で、ホルモンに似た物質が身体に入ると身体を誤動作させると。人間の心や気持ちって、化学物質で簡単に変わっちゃうんだな。まあ典型的な例が酒や麻薬だったりするわけだけど。
後半は男性ホルモンと女性ホルモンの話が中心となる。
ところで本書によると、モツ料理の「ホルモン」が戦後の大阪で「放るモン」から来たというのは誤りで、戦前にはすっぽんなどの精力料理がホルモンと呼ばれていたんだとか。
「外天楼」
何かすっきりさっぱりしたい気分になったので、1巻で完結するおすすめマンガをネットで調べて、本書をKindleで買って読んだ。
「ネットの感想を読む前に読んだ方がいい」というアドバイスに従って読んだけど、まさにその通りだった。作者お得意の、ゆるい雰囲気に伏線を張り巡らせる感じが好きならお勧め。
ミステリー仕立ての短編が集まった短編集。エロ本を手に入れようとするガキたちのエピソードに始まり、ヒーロー番組登場が没になった男のエピソードでちょっとアレッと思った。で、バラバラだと思われた各エピソードが実はつながっていたというのは選択肢として想像できたけど、こんな結末になるとは。
「東西奇ッ怪紳士録」
水木しげるが、古今東西広いジャンルで奇人の生涯をそれぞれ短編で紹介する短編集だ。奇人といっても、まとめて読んでみると建築や発明関係の人が多い。
たとえば二笑亭の渡辺釜蔵と、シュヴァルの理想宮のフェルディナン・シュヴァルという、東西の奇怪建築を作った人物がそれぞれ取り上げられている。傑作「始祖鳥記」や筒井康隆「空飛ぶ表具屋」という小説でも取り上げられた、日本で初めて空を飛んだ浮田幸吉も「幸吉空を飛ぶ」で描かれる。最初のほうで大きなページ数を占めている平賀源内もそれらと同じカテゴリーか。これらの人物を、作中に登場する水木サンは羨望と同情の目で語る。
「劇画ヒットラー」に続いて、アドルフ・ヒトラーも「国家をもて遊ぶ男」で登場する。ここでは前述のとおり、建築に執着する面を多めに描いている。
「貸本末期の紳士たち」は、水木サンの自伝モノや奥さんの「ゲゲゲの女房」でもおなじみの、貸本マンガが廃れていく時代を、そこで出会った奇人たちを中心に描く。
ちょっとノリが変わるのが、旅シリーズと呼ばれる、アフリカやボルネオ、ニューギニアのヘンテコな人々を取り上げた3作品。土着的でときに猥雑なノリで描かれる。
以上のような感じで、脈絡があるようなないような、独特の人選が面白い。