Ubuntuでmotdメッセージをいじる
最初にお断り:これは雑誌用の原稿としていちど書いたものの、使いどころがなくて見送ったビギナー向け小ネタの再利用です。
Linuxサーバーにsshなどからログインすると、motd(message of the day)と呼ばれるメッセージが表示されます。
Welcome to Ubuntu 12.04 LTS (GNU/Linux 3.2.0-24-generic x86_64) * Documentation: https://help.ubuntu.com/ System information as of Tue May 8 21:12:27 JST 2012 System load: 0.0 Processes: 65 Usage of /: 8.1% of 180.68GB Users logged in: 0 Memory usage: 3% IP address for eth0: 192.168.1.1 Swap usage: 0% Graph this data and manage this system at https://landscape.canonical.com/
何度もログインして見ていると、面倒になってくるかもしれません。motdのメッセージは/etc/motdに書かれています。なので、このファイルを消せばメッセージが消えます。
…というのも工夫がないので、もう少し調べてみます。
Ubuntu 12.04では、見てみると、/etc/motdは/var/run/motdへのシンボリックリンクになっています。ちなみに、/var/runは/runへのシンボリックリンクです。
$ readlink /etc/motd /var/run/motd $ readlink /var/run /run
/runディレクトリは、従来の/var/runとかをtmpfsで統合するディレクトリです。最近のLinuxディストリビューションが共通で採用しつつあります。
本題に戻ると、Ubuntu 12.04の/run/motdは、起動したとき(正確には/runが用意されたとき)と、ログインするたびに動的に生成されます。ログインするたびの処理は、PAMのpam_motd.soモジュールへのパッチに埋め込まれています。わかりやすいところで、起動時の処理を見てみます。
$ grep /run/motd /etc/init/mounted-run.conf [ -d "/etc/update-motd.d" ] && run-parts --lsbsysinit /etc/update-motd.d > /run/motd &
/etc/update-motd.dに置かれたスクリプトをrun-partsで順に実行しているようです。素のUbuntu Server 12.04で見てみます。
$ ls /etc/update-motd.d 00-header 50-landscape-sysinfo 91-release-upgrade 98-reboot-required 10-help-text 90-updates-available 98-fsck-at-reboot 99-footer
motdのメッセージのパーツごとらしきスクリプトが、上から順に並んでいます。このスクリプトを消したりいじったりすれば、motdの内容を変えられます。
参考:update-motd(5)
「サブカルで食う」
白夜書房
売り上げランキング: 731
大槻ケンヂの自伝と教訓…なんだけど、トホホな話や身も蓋もない話ばかりが並ぶ、脱力系の語りで面白い。オビにいわく「全てのボンクラへ」。
サエないオタクな大槻少年が、勢いで同級生とバンドを組んでライブハウスに出演したり、油揚げのネタでTVでウケたり、ラジオで苦しまぎれに叫んだり。AVを借りたら学生時代に誘った子が出てた、とかねw
いいこともあったでしょうにと思うのだけど、そのへんは冷静。人気が出ると「ものすごくハングリースピリッツのある一握りの人以外はみんな一度は心がやられちゃう」と。そんな感じで、TVとかでの自分のポジションとか、意外とクール。
軽い調子だけどシビアなのが「サブカル経済事情」の章。所属事務所が三回倒産したので原盤権(著作隣接権)がわけわからないところに売り払われている、とか。バンドなんだから権利はみんなで仲良く、というのはやめたほうがいい、というのは、いろいろあったんだろうな。
自虐ネタなんだけど自分語りにならないバランスがよく、ニヤニヤしながら一気に読んだ。
第88回東京エリアDebian勉強会に参加
第88回東京エリアDebian勉強会に参加してきました。今回は事前課題で、参加者各自の紹介したい本(技術書に限らず)とプログラミング初心者に勧めるスクリプト言語を答えるようになっていて、その発表で盛り上がってました。
発表資料は公開されているので、主にそれ以外のコネタのメモ。
- 2011年モデルのMacBook Air(のグラフィックチップ)でXが調子いいらしい
- 「Smooth CoffeeScript」という電子書籍がわかりやすかったらしい
- 野良debパッケージを入れるとき、dpkg -iで入れてからapt-get -f installで依存関係を解決できるらしい
- たくさんのdebパッケージを入れるとき、apt-ftparchiveでfile:///なリポジトリを作るという手があるらしい
- chroot環境で不意にデーモンが起動しないようにするにはpolicy-rc.dをいじるといいらしい
あと、自分としては、manでpo4aを試している人が何人か参加していて、ちょっと雑談レベルで話せたのも収穫でした。
「日経Linux」2012年6月号
日経BP社 (2012-05-08)
執筆に参加しましたので、報告と宣伝を兼ねて。
特集1「Linuxだからできる新発想の活用法30」では、写真を撮影日で探す(jhead + grep + find)、Webの情報を電子ブックリーダーに(wkhtmltopdf + instapaper text API + PDF::API2 + Calibre)、Instagramの写真を縮小してEvernoteに(Instagram + ifttt + Dropbox + inotifywait + ImageMagick)、画面キャプチャーで情報共有(Gyazo)、の4本を書きました。“Linuxでライフハック”というお題をいただき、Linuxらしさとして“複数のコマンドや機能をつなげる”というのをメッセージとしてネタを選んだのですが、考えすぎだったかもしれません。ちなみに、p.39の3段目のリストで「wkhtmltopdf」とあるのは、「web2calibre」の間違いです、すみません。ほかの方のネタは、純粋に役に立つものだと思います。ペンギンかわゆす。
また、巻頭のレポートコーナーで、Ubuntu 12.04の紹介を2ページだけ書きました。書いたときはβ版で、発売日にはすでに正式版が出ているというタイミングでしたが。
自分の書いたものはさておき、第2特集「本当に使いやすいLinuxデスクトップ環境」では、Part 3でXの仕組みとWaylandの仕組みを細かく解説していたのが参考になった。へー、Waylandのサーバーとクライアントの役割分担ってそうなってるんだ、と。
新連載「Android 4.0で始めるアプリ開発」は、あんざいゆき氏が執筆。UIの機能と操作デザインの両面をからめて、ドラッグ&ドロップを実装する実例で紹介。
レポートで、話題の低価格ワンボードLinuxのRaspberry PIの、紹介と使ってみたレポート。そっち系では、ARMマシン連載がサーバー化で、UBuntuのarmhfサポートや、JDKの性能差など。特別企画は、デジ像メディアプレーヤーのファームウェアを変更したりソフトを追加したりしてWebサーバーやDLNAサーバーを動かす話。
第3特集「ログ活用の勘所」は、rsyslogdのバックエンドでPostgreSQLにログを集めて、統計やグラフで分析する話。そっち方面ではほかに、本格Linuxサーバー構築・運用連載が、pg_dumpによるDBのバックアップと、sarやMuninによる監視。
ほか、アジア連載が、ベトナムのベンチャーとその気質について。OpenStack連載が最終回で、Swiftの解説と、Essexの紹介を少し。旧型PC+ディストリビューション連載が、VAIO type Sでリモートデスクトップ端末用LinuxのThistation。昔はVAIO+Linuxはいろいろ大変だったな。Android向けWebアプリ連載が、jQueryによるDOM操作やイベント処理。CPU連載が、MMUやキャッシュメモリのあたり。歌声合成Utauの後編は、伴奏の追加。Linux完全移行超入門が、コマンドライン操作の基礎。libreoffice --onvert-toなどの豆知識も。カーネル機能連載は、カーネル内のソフトウェアwatchdogのhangcheck。人気の連載マンガ「シス管系女子」はscpで、谷町先輩も登場w
あと、Matz氏の連載がひとまず最終回で、ここまでを「コードの未来」として書籍化、と。テーマはクロージャ。
「できるPRO VMware vSphere 5」
インプレスジャパン (2012-05-08)
売り上げランキング: 6878
編集のお手伝いをした新刊が発売となったので宣伝しておきます。
“できるPRO”シリーズで、題材は定番のVMware vSphere 5。ネットワールドの方々の執筆で、ヴイエムウェア社の監修です。
もともと既刊で「できるPRO VMware vSphere 4」があって、その改訂版になります。前版から画面等はすべてさしかえたのはもちろん、それにともなって変わっている操作手順をすべて著者さんが検証のうえ反映。さらに製品やラインナップ、時代の変化にともない、ネタの入れ替えや追加もかなり入って、総ページ数も285ページから328ページに増えました。
扱ってる内容は、基礎知識編がvSphereの特徴や製品構成など。構築編がESXiやvSphere Clinetのインストールと基本操作、仮想マシンの作成と構成変更、仮想ネットワーク設定など。拡張編がvCenter ServerやWeb Clientのインストールと基本操作、テンプレート、クローン、P2V、マイグレーションなど。運用・管理編がvSphere HA、vSphere FT、Data Reoveryなど、といった感じです。
マニュアルとして網羅的に学ぶ、という方向ではなくて、典型的なケースについて必要なポイントを実例でオーバービューするタイプの本です。チュートリアルビデオのような使い方になると思います。ちょっとジャンルやノリは違いますが、「ドットインストール」的な感じで。
というわけで、新人教育の参考書に、というのがいちばんフィットするかと思いますが、これからvSphereを学ぶ方の自習用にもどうぞ。
pdfgrepでPDFをgrepする
タイトルで出オチのような気もしますが、LinuxにはPDFファイルをgrepするpdfgrepというコマンドがあります。UbuntuやFedora、Debianなどでは標準リポジトリからインストールできます。
$ sudo apt-get install pdfgrep
正規表現はPOSIX拡張正規表現です。-Hオプションでファイル名が、-nオプションで該当するページ番号が付きます。
$ pdfgrep -Hn --color auto 'Dash|ダッシュ' *.pdf UM06_P008-010.pdf:2: ダッシュして UM06_P011-033.pdf:8: Dashホーム UM06_P011-033.pdf:8: と、Dashがデスクトップ上にオー UM06_P011-033.pdf:8: バーレイ表示される。DashはWi UM06_P072-085.pdf:3: をDashで検索 UM06_P072-085.pdf:3: をDashで検索 UM06_P072-085.pdf:3: をDashで検索 UM06_P072-085.pdf:3: をDashで検索 UM06_P072-085.pdf:3: をDashで検索 UM06_P072-085.pdf:3: をDashで検索 UM06_P072-085.pdf:3: をDashで検索 UM06_P072-085.pdf:11: Dashを起動する UM06_P072-085.pdf:11: LauncherとDashの操作
PDF形式の文書の検索や、雑誌や書籍のPDF校正などに便利ではないかと思います。ちなみにPDFの解釈には、CUPSやxpdfなどでも利用されているpopplerが使われているようです。
「WEB+DB PRESS」Vol.68
技術評論社
売り上げランキング: 356
発売から10日以上たってるけど、ようやく通読したので、メモ。
特集1は新人特集として、Web、言語、サーバー、DB、クラウドの5ジャンルごとに概要を説明。数ページずつの説明だけど、末尾にそれぞれ読書案内がついているので、書かれている以上のことはそちらで。
特集2はNode.js。各ポイントに深入りせず、背景からインストール、npm、非同期処理の作法とユーティリティ、expressを使った実例、Socket.IO、デバッグツール、クラスタ機能など、実際にサービスを作るのに必要なポイントを1つのストーリーとして実例でオーバービューできるのが、実践入門たるところか。
新連載がいくつか登場。森田創氏の「Comparators」第1回は、Hackability(ハックしやすいキレイさ)とHackiness(ハックされやすいユルさ)を比較。mala氏の「フロントエンドWeb戦略室」第1回は、主に外部JavaScript(ブログパーツ等)の速度、セキュリティ、プライバシーについて。「JavaScript活用最前線」第1回は、クライアントサイドのMVCフレームワークBackbone.js。奥野幹也氏の「理論で学ぶSQL再入門」第1回は、SQLとリレーショナルモデルの違いというテーマから。A-Listersの「海外テック情報局」は、濃縮オレンジニュースの後継の位置づけかな。
いっぽうで連載最終回も。「Rubyわくわくナビ」は、RubyGemsのライブラリの動向を集計したデータを紹介。GitHub以降で急に増えてるんだなとか、日本人でいちばんライブラリを上げてるのはやはりあの人かとか。「再考するJava」は「エリック・エヴァンスのドメイン駆動設計」に影響されたアーキテクチャについて。「いまどきの.NET開発」は、Windows 8のMetroスタイルアプリケーションで今までのアプリケーションと変わる部分について。
そのほか、特集3がゲームの敵キャラクターをどう動かすかという「はじめてのゲームAI」。特別企画が、クックパッドによる「速習リーンスタートアップ」。「Perl Hackers Hub」が5.10以降の新機能など。「Software is Beautiful」はSNSがエンジニアの生産性を下げるという話で、DHHの「朝一番にメールのチェックはするな」という言葉には耳が痛い。
「Software Design」2012年5月号
技術評論社 (2012-04-18)
発売から半月ぐらいたってるけど、ようやく通読したのでメモ。
特集が「Cloud Foundry」と「ZFS」。Cloud FoundryはVMwareが公開しているPaaS基盤ソフト。この特集では、概要だけとか実例だけとかではなくて、その両方とその間をひととおりカバーしているのが、まとまった記事として参考になる。どのレイヤーの機能を持っているのか、とかも。
ZFS特集は、主にRAIDまわりを中心に、ディスクの増設とか交換とかの実運用で遭遇するあたりを重点的に解説。「新しい機能を有効にすることはおすすめしない」「バージョンを上げない」「チューニングを行わない」「必要のない機能は標準を使用する」とか。あと、最後にコラムでZFSとBtrfsの比較も。
そのZFSとBtrfsのコラムを書いた青田直大氏による連載「Linuxカーネル観光ガイド」は、Linux 3.2の新機能。write中のプロセスをkillしたときの挙動、dirtyなページのライトバックのしくみ、プロセス間でデータを直接コピーするCMA(Cross Memory Attach)について。
Linuxでは、ちょうどこれを書いているころに日本語RemixもリリースされたUbuntu 12.04のレポート記事も。書かれた当時はβ版だったけど、紙媒体ではたぶんこれが最初の解説記事。ほかに、Ubuntu関連では、Ubuntu Monthly Report連載が、Ubuntu版ChefみたいなJujuの解説。これも、日本語(だけでなくても)情報がないので参考になると思う。
単発記事では「DNS浸透問題」の記事も。サーバー移転やDNSサーバー移転のさまざままパターンを紹介しつつ、いちばん問題になるのが“DNSサーバー移転で正しくない移転をした場合”であると。あと、DNSのTTLとDNSキャッシュポイズニングの関係なども。
連載インタビューSoftware Designerは、「情熱プログラマー」のChad Fowler。話の情熱度もさることながら、最後に載っていたダイエット前後の写真にびっくり。
OpenFlow連載は最終回で、Switch Managerやライブラリ、Tremasharkなどの“細かい”話。
そのほか、Emacs連載がEmacs上のシェル環境。はんだづけカフェ連載が、.NET Micro Frameworkが動くARM7ベースのNetduino。Digital Gadget連載がいろいろな「スキャン」。iOS連載が魔窟コードでスピーディーにアプリを作ってヒットした話。Android連載が、入門者向けにGoogle Playやバージョンなどの基礎知識と最新状況を説明。UNIX連載がシステム停止処理。Hack for Japan連載が、OSMで復興状況を記録するHack for Iwateの活動。ダイエット連載が、三大栄養素のバランスを重視した食事の重要性。
「ふらり」「ひとり家飲み通い呑み」
たまたま、「孤独のグルメ」の絵担当の谷口ジロー氏のマンガと、原作担当の久住昌之氏のエッセイを、続けざまに読んだ。いや、いろいろ活躍されてるお二人にそういう括り方はまったく失礼なのだけど、こちらミーハーなので。
どこまでも地道に歩いてゆこうかと思うてな
「ふらり」は江戸を散歩する初老の男を主人公とした、ゆったりした感じの短編連作時代マンガ。その中で、江戸の町や人、風物詩などを描く。
大きな出来事もなく、桜、潮干狩り、雨、蛍、七夕、雷、月見、落語、雪など、定番の題材なんだけど、各エピソードがじっくりしみじみと描写されいて、うまいなあ。
たとえば雨が降りそうな日に散歩に出るエピソード。歩測について考えながら、露天商や船の様子を観察し、ぬかるみを気にし、平賀源内を思い、子供と遊び、泥んこになり、江戸患いの患者を目撃し、量程車を設計する。そして、雨上がりの空には虹が浮かぶ。こんな、主人公の見たものや自問自答の様子を、12ページの分量で、急がずいきいきと描いているのが見事だ。
ちなみに主人公は、隠居して江戸に出てきて、天文学や測量を学び、測量機器を工夫し、最後には蝦夷に旅立つ。ということで、モデルはあの人らしい。あの俳人との出会いとかの出し方も、ちょっと「坊ちゃんの時代」っぽい。
「ひとり家飲み通い呑み」は、家飲み料理について、大雑把なんだかこだわってるんだかわからない感じで解説してるのが楽しいエッセイ。家飲みだけでなく、近所のトンカツ屋とかも出てくるけど。
なにしろ、1本目から「チャーハン de 焼酎ロック」。チャーハンに焼酎ロックの組み合わせがいいと、ほかの酒と2ページかけて比較したあと、一人なんだからごはんと卵とネギが入って醤油がちょっと焦げりゃ、ウマければいいんだよと。
そんな調子で、キャベツ炒めで「まんが道」のチューダーのシーンを思い返したり。「タカダワタル的」を見ながら少し高い赤ワインを飲んだり。ケンミンの焼きビーフンで、なつかしくも不気味で面白いCMの話をしたり。もつ焼きでライトニング・ホプキンスとかの泥臭いブルースを語ったり。
あと、大相撲は屋内の花見ってのは、知らない世界だったな。
そんなグダグダな饒舌なようでありつつ、からっとしていて自己陶酔にならない文章がいい感じ。実写ドラマ版「孤独のグルメ」を見た人は、毎回最後に久住氏が出てきた「ふらっとQUSUMI」コーナーみたいなノリを想像してもらえれば。知らなかったけど、プロフィールによると赤瀬川原平に師事していたそうで、言われてみれば似たところがあるなと。
そうそう、細かいレシピではないけど、それぞれ作り方も紹介している。難しい料理はしてないので、読んでいるとつい、つられて真似したくなる。