「カリスマ幻想」
税務経理協会
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米国の大手企業というと、CEOが業績不振とかで更迭されては外部から新しく就任したり、というのが繰り返されている印象がある。本書はそうしたCEO人材市場の知られざるメカニズムを調査し解説した本。もともと著者の博士論文からスタートしたプロジェクトで、米国の大企業850社の調査とフィールドワークが元になっているという。CEO選任の話でしばしば本書の名前が上がるので、ちょっと前に読んだ。
そのさまざまな事例から著者が論じるのが、ショー化するCEO選任の姿だ。投資家や金融メディアは「停滞している企業を、外から招かれたカリスマCEOが救う」という、アイアコッカ的なドラマを求める。企業の好調も不調もCEO一人のものとされ、不調であれば更迭され、好調であれば賞賛される。CEO選任は手さぐり状態で進み、そもそも誰も経営者の“カリスマ性”の正体がわかっておらず、単なるスター性で選んでしまう。
もちろん内部から選任する旧来のプロセスが問題となっていた点なども解説している。また、エグゼクティブサーチ(ESF)会社の存在と、その特異性なども興味深い。
以下、自分メモ。
- リーダーシップやカリスマ性に異常にこだわる
- 選抜プロセスのすべては、企業の救世主をプロデュースすることに傾注される
- 新CEOが就任後比較的早期に結果を出せない場合には、そのCEOを選抜したこと自体が問題視される
- 取締役たちは期待を裏切られるたびにCEOを取り替える、という悪循環
- 諸悪の根元はCEOにある、との決めつけ
- リーダーシップと企業実績との相関性についても決定的なことは何一つ実証されていないにもかかわらず、CEOは極めつきの重要性を持つ、と根強く信じられている
- リーダーシップ説とコンストレイント説
- 「リーダーシップは役に立つか」ではなく「いつ役に立つか」という説も
- ウォーレン・バフェット「業績不振企業に優れた経営者がやってきても、無傷で残るのはせいぜいその企業の名声だけ」
- 米国の個人主義を過度に偏重する文化
- 社会的、経済的、政治的な影響力を軽くみてしまう
- 複雑な事象を個人の力量に落とし込んで錯覚してしまう
- サーチは極めて閉鎖的に行われる
- 直接的または間接的な知己
- 取締役の人脈
- 通常の感覚で理解される「市場」とは異なる
- 買い手、売り手とも参加者が極めて少ない
- 参加者にとってハイリスク
- 逆選択、情報の非対称性
- 候補者の上司などの意見を聞くわけにはいかない
- 正当性が常に意識される
- 「生き返った」ことを誇示するため
- 有能な社内候補者よりも社外の魅力的な候補者を好む傾向
- カリスマ志向
- 投資家からのプレッシャー
- ビジネス誌は、企業の戦略や資金計画よりも、CEOの癖や私生活などについて多くのページを割く
- アナリストは、自説がメディアに取り上げられるため、CEOの特定のパーソナリティをCEOの職務に不可欠なものとして確立
- 企業のイメージ戦略
- 「カリスマ性」という言葉が漠然としている
- スペックシートが、完成されるまでの間だけ重要性を発揮されるものに
- 企業業績とCEOの資質の関係が事前にわからない
- 「リーダーシップ」「チームビルダー」などの言葉だけが踊ることに
- エグゼクティブサーチ(ESF)会社
- 経済理論どおりにいかない市場
- ほとんどのケースで、候補者についてはESF会社より取締役会のほうがよく知っている
- 四大ESF
- 候補者にコンタクトするときに、社名を伏せることによってリスクを回避
- 経済理論どおりにいかない市場
- リスク
- CEO解任から短期間で次のCEOを探す
- CEO報酬の高騰
- 内部の人たちの貢献が低く評価される
「ヴィクトリア朝時代のインターネット」「謎のチェス指し人形「ターク」」
都会の大きな書店でいろいろな本を眺める機会が減ったこともあって、本に関する自分のアンテナが錆びついてるなと思う。で、この2冊を「新春座談会 このコンピュータ書がすごい! 2012年版」で知って、その場で買って帰った。
2冊とも同じトム・スタンデージ著で服部桂訳、NTT出版から同時発売となった本で、どちらもえらく面白かった。
エヌティティ出版
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「ヴィクトリア朝時代のインターネット」は、情報通信技術が19世紀の世の中を変えていく様子を描くノンフィクション。ちょっと長いけど、本書のまえがきから引用してみる。
「ヴィクトリア女王の治世には新しいコミュニケーションの技術が開発され、とてつもない距離を即時に越えるコミュニケーションを可能にし、それが結局、世界をあっという間にかつてないほど小さなものにしてしまった。大陸や海を越えてケーブルが引かれることで世界規模のコミュニケーション・ネットワークができ、それがビジネスのやり方を革命的に変化させ、新しいかたちの犯罪を生み出し、利用者を情報の洪水で呑み込み、これを介した恋も芽生えた。秘密の鍵を誰かが作ると、他の誰かが破った。このネットワークがもたらす恩恵を手ばなしで擁護する人がいれば、それを否定する懐疑派もいた。政府や当局は、この新しいメディアを規制しようとして失敗した。ニュース報道から外交まで、あらゆるものにどう向き合うべきかを、一から考え直さなくてはならなくなった。その一方で、その周辺では、独自の習慣や言葉を持ったテクノロジーのサブカルチャーが立ち上がってきた」
というわけで、電信の誕生から衰退までの間に社会がいろいろ変化していくようすが、さまざまなエピソードをからめて語られる。書名どおり、インターネットのときと同じようなさまざまなことが起こった様子が描かれている。
そこからインターネットの今やこれからについて考えるのもいいけど、それより細かく描かれた各エピソードが滅法面白い。最初の海底ケーブル敷設をめぐる無知やごたごたは、よくそんな調子で通ったなとか。料金を節約するために短い言葉で伝える工夫と、それで起きたトラブルとか。自分を示すためのsigとか。電信による駆け落ち結婚とか。ニュースの規模とスピードが圧倒的に変わった話とか。電信が世界に平和をもたらすという思想とか。ウォール街に迷い込んだエジソンとか。
あと、気送管(エアシューター)が電信の短距離中継用として発明されたというのは知らなかった。
「謎のチェス指し人形「ターク」」は、ポーの「メルツェルの将棋差し」などでも知られる18世紀の自動チェス人形「ターク」の数奇な運命をたどるノンフィクション。
製作者ケンペレンにはじまる代々の所有者と、タークの謎を解こうとする人々について、それぞれ詳細に描いているのが、「ヴィクトリア朝時代のインターネット」と共通する手法だ。当時のタークにまつわる噂とその検証まで細かく語られている。
ターク自体はトリックなのだけど、結果的に自動紡績機のカートライトや、階差機関と機械知能構想のバベッジ、“観客を発明した男”P.T.バーナム、推理小説の祖であるポーに影響を与えたというあたりも面白かった。
「Software Design」2012年2月号
技術評論社 (2012-01-18)
海外開発者インタビューシリーズ「Software Designer」が、Rubyのまつもとゆきひろ氏。「RubyとAppleではまったく逆の立場にあります」とか。Rubyを開発した当時の写真や、信仰の話なども。
第2特集がDebian。「エンジニアがDebianを愛する理由」「Debianインストールガイド2012」「cowbuilderではじめるお手軽sandbox」「Debian GNU/kFreeBSDで広がるDebianの世界」「Wheezyの開発状況とDebian Project」の5章構成。ちなみに、この記事を読んで、いまではDebian GNU/kFreeBSDのsid(unstable)やtestingではFreeBSD jailが使えてjailコマンドも使えることを知って、試してみた。動かしてみるだけならdebootstrapしただけでjailコマンド一発で動くのが楽だった。
Debianといえば、サイバーエージェント連載にDebian JP Projectの人でもある前田耕平氏が。内容は、VMware製品やOpenStackを使ったプライベートクラウドの構築プロジェクト。
第1特集は、30才前後のエンジニアのためのキャリアについて。“不良資産”にならずに“生き抜く”ためのさまざまな道を、事例やインタビューをまじえて解説。
新連載で水越賢治氏の「システムで必要なことはすべてUNIXから学んだ」。第1回は、インストーラを使わないFreeBSDのインストールと、パーティション構成。一方、「教えて! ござ先輩」が最終回。
連載では、「はんだづけカフェなう」が、Make: Tokyo Meetingの話で、Arduinoの中の人の講演など。Ubuntu Monthly Reportが、system-config-printerと印刷処理の流れ。Emacs連載が、ひらメソッドによるコードリーディング。
ほか、dankogai氏連載がJSの==と===。シェルスクリプト連載がawkの使い方。OpenFlow連載が、ファイル構成やサンプルアプリ。ObjectiveC連載とiPhone開発連載が、ともに画面遷移を作るStoryboard。Android開発連載が、ADKをラップするAnyLibライブラリと、それを使った「くわがたロボット」。mixi連載がCI。
「妹先生 渚」1・2巻
「光路郎」の約20年ぶりの続編が1・2巻同時単行本化ですよ。題名どおり、主人公はサムライ娘の渚。マット(つや消し)系の白地にパステル調のイラストを描いた表紙もいいね。
「光路郎」ファンは読むだろうから、内容は説明しなくていいよね。あいかわらず真っ直ぐで熱血だけど、違いは父親としての視点がそこはかとなく見えるところかな。とりあえず昔のキャラクターも何人か再登場。みかん山もね。
「ニセドイツ」1・2
社会評論社
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トラバントといえば、旧東ドイツ製の「ダンボール製自動車」だ。実際にはボディはプラスチック製で、作りがチャチく、性能が低く、燃費が悪く、煙もくもくだったところからダンボール製と呼ばれたのだけど、旧東ドイツ末期には物資不足から本当に紙繊維を混ぜて作られるようになっていたのだとか。
そんな東ドイツの、計画経済によって進化からとり残された、コレジャナイ感満載の製品を、愛をもって紹介している本。豊富な写真と、ペダンチックながら軽妙でトボけた感じの解説文で、旧東ドイツの事物を図鑑として“鑑賞”するようになっている。ちなみにタイトルは「西ドイツ」のもじりで、そんなダジャレもたくさん。
東ドイツ製のPCは「ロボトロン」という、一回りしてカッコいい名前なのだけど、デカいのだとか。東独ジョークでは「シュタージ(秘密警察)のロボトロン付き盗聴器にどうして気付いたんだ?」「タンスと小屋が増えていたんだ」と…
ドイツといえばビールだが、東ドイツのビールは不味いという。ただし輸出用は美味いというのがなんとも。また、コーヒやチョコレートは非常に高価で、民衆は大豆などの代用品を飲食してたそうな。
交通もいろいろ大変。日本の山手線も参考にしたベルリンの電車網が作られてから東西に分かれたため、西の電車は東の駅を素通りという、タグVLANのような運行だったとか。
そんな東ドイツの生活なのだけど、傍観者として見てるぶんには、ノスタルジックさやシンプルさがいい。いまのドイツではオスタルギー(オスト(東)+ノスタルギー)という言葉もあって、東の画一化された集合住宅が逆に珍しがられてウケたりしているのだとか。
クオリティとしても、木工おもちゃは伝統が受け継がれていたというし、IKEAにも東ドイツ製家具があるとか。あと、なんといってもドレスデンは東ドイツだし。
でもシュタージ(秘密警察)とか嫌だなぁ。石ころ隠しカメラとか。
いちばん驚いたのは、古くなった旅客機を展示品として寄付するのに、解体して運ぶ予算がないから、自力で飛行させて畑の中に着陸させたという映画のようなエピソードだ。ちなみにこの着陸はギネスに載ったそうな。
「新春座談会 このコンピュータ書がすごい! 2012年版」を聴いた
ジュンク堂池袋店で開かれたトークイベント「新春座談会 このコンピュータ書がすごい! 2012年版」を聴きに行ってきました。
あいかわらず、前半の売上ランキング本から、後半のランキング外のマニアック本まで、一気に駆け抜けて紹介して、圧巻でした。あと、版元各社担当さんからのポロリもあったり。
私も「Amazonランキングの謎を解く」「ヴィクトリア朝時代のインターネット」「謎のチェス指し人形「ターク」」を買って帰りました。
以下、メモほぼそのまま。
基準
- 年賀状素材や雑誌は入ってない
- ジョブズねたの一般書なども
年間
- 1位 アジャイルサムライ
- 2位 Rails 3レシピブック
- 3位 Androidプログラミングバイブル
1月
- だいたい2010年に出た本
- プログラマが知るべき97のこと
- 日本語版で追加も
- プロセッサを支える技術
- W+D P PLUS
- 最後のほうでGPGPUとかも
- パタヘネ第4版(ランク外)
- 初歩からわかるAndroid最新プログラミング
- Android 2.1プログラミングバイブル
- Illustratorデザインメソッド
- (村田)年間ランキングに唯一入っているデザイン系の本
- Webを支える技術
- 2010年年間一位
2月
- JavsScriptパターン
- (矢野)疑問に答えてくれる
- 初級が終わったぐらいで読むと
- そのあとはGood Partsもね
- 小悪魔女子大生のサーバエンジニア日記
- (稲尾)著者はこの本のおかげで小悪魔正社員に
- (高橋)サーバーの基礎
- iOS開発におけるパターンによるオートマティズム
- (村田)入門書の次のステップに、という思いで作った
- (高橋)ベストプラクティスっぽい。ていねいに説明
- プログラミングコンテストチャレンジブック
- よくわかるiPhoneアプリ開発の教科書
- 総合15位
- シリーズ中のiPhoneアプリ編
- フルカラー、画面キャプチャーの入門書
- コストかかってそう
3月
- 徳丸本
- (杉山)レビュアーを大量に募ってクオリティをあげた
- (高橋)日本は攻撃ではそれほどでもないが守りには知見がたまっている
- Facebookでビジネスを加速する方法
- Facebook本たくさんでている
- 映画でユーザーが増えた
- これ以後のFB本は細分化されていく
- オンラインゲームを支える技術
- (稲尾)シリーズでいちばん暑い。CEDEC著述賞
- (高橋)ゲームにかぎらずオンラインでのインタラクションの問題に役立つ
- エンジニアとしての生き方
- ブログ+W+D連載
- iPhone Androidスマートフォンサイト制作入門
- このころから両対応の流れ
- アプリでなくサイト
- よくわかるPHPの教科書
- 同じくたにぐちまこと氏
- jQueryデザイン入門
- 上のスマートフォンサイト本と同じデザイン
- フルカラーの入門書
- 2011年はJSやjQueryの本がよく出た
- Android Layout Cookbook
- アプリの画面の見せ方
- いろいろな解像度
4月
- 良いコードを書く技術
- (稲尾)情熱プログラマーとかを読む前に
- (高橋)初級と中級の間の人に
- Androidプログラミングバイブル SDK 3.0~2.1対応
- ドメイン駆動設計
- なかなか翻訳されず、原書で読んで挫折する人が続出していた本の訳
- 設計
- サーバーインフラエンジニア養成読本、Linuxエンジニア養成読本、Androidエンジニア養成読本
- (稲尾)ひさしぶりのムック
- 仮想化と監視も
- ゲームシナリオのためのSF事典
- (杉山)ゲームやラノベなどに
- 4刷
- (高橋)ふつうにSFの書
- FOREM+CODE(ランキング外)
- (村田)Processing
- 美大とかの人に向けて、考え方の基礎を体系的にまとめた
- (高橋)コード(ルール)がどんな見た目を生成するかを解説
- 現場のプロから学ぶXHTML+CSS
- 2008年に出てコンスタントに
- 4月に新人需要?
- Perl CPANモジュールガイド
- いままでなかった
- JavaScript本格入門
- 年間19位
5月
- facebookデザインブック
- コンテンツを作りたい人向け
- Android SDK逆引きハンドブック
- C&R研究所の逆引きシリーズ
- 各バージョンに対応
- ビッグデータを征す クラウドの技術 Hadoop & NoSQL
- ASCII.technologiesの記事をまとめた本
- NoSQLデータベースファーストガイド(ランク外)
- NoSQLの個別の本はあまり出ていなかった
- いろいろなNoSQL DBをまとめて紹介
- Cassandra
- 12月末
- ウェブオペレーション
- 日本でこの本から「ウェブオペレーション」という言葉ができた
- サイト運用
- 章ごとに著者がちがう
- (矢野)大きなサイトを動かしてきた著者たちのエッセイ集。困ったときにヒントになるかも
- WordPress 3サイト構築スタイルブック
- マスタリングTCP/IP
- なぜこの月にかは不明
- (森田)来月、第5版がでる。だいぶ変わっている。PDF版も出る
6月
- HTML 5+CSS 3
- Web Creatersの特別号
- ふつうに使えるようになってきたタイミング
- Titaniumm Mobileで開発するiPhone/Androidアプリ
- バージョンアップが激しいのでいつ出すかは難しい
- Coders at Work、Founders at Work
- Founders~もプログラマ上がりの創業者の話
- プログラマも両方読むといい
- Scala実践プログラミング
- Sclaもけっこう本が出た
- 日本で書かれた
- 応用っぽい話
- Scalaスケーラブルプログラミング第2版(後の月)
- だいぶ加筆
- 2.9の新機能も
- iPhoneアプリ設計の極意
- (矢野)UIからアイコンから挙動まで、ベストプラクティス
- フルカラー
- (高橋)日本語版アプリでキャプチャーしなおしている。本文もあわせている。手がかかっている
- Being Geek
- (矢野)技術を武器に生き延びていく本
- 転職が前提な本なので、そうでない人は混乱するかも
- Blender 2.5マスターブック
- Blenderの本が入るのはあまりない
- (村田)MMD(MikuMikuDance)の人に売れたんじゃないか
7月
- RubyKaigiにジュンク堂が出張した数が入っている月
- Rails 3レシピブック
- (杉山)RubyKaigi先行販売、2日目追加、ジュンク堂でトークセッション
- アジャイルサムライ
- (角谷)オーム社のランキングでも売れているのでチートではなく本当にもの
- 「アジャイル」と名のついた本は売れない、と言われていた
- 7つの言語 7つの世界
- 7つの言語を7週間でやっつける内容
- その言語に詳しい人からのツッコミはあるが、なにより概要を知ってもらうための本
- ソフトウェアテストPRESS総集編
- いままで全部
- CD-ROM
- これでiPhoneアプリが1000万本売れた
- iPhoneアプリで稼ぐ本
- 考え方とか発送とか
- 抽象によるソフトウェア設計
- 形式手法
- ジャクソン法の人の息子
- ずっと受けたかったソフトウェア設計の授業
- ジャクソン父
8月
- Android NDKネイティブプログラミング
- Androidでネイティブプログラミング
- ゲームストーミング
- (矢野)会議などのゲーミフィケーション
- iPhoneアプリで稼ごう
- 名前のわりに真面目な内容
- システム障害はなぜ起きたか
- 読むとツラいので
- スグに使えるEQレシピ
- 音楽系。波形
- この一冊でツイッター&フェイスブックの裏ワザ・基本ワザが全部わかる
- コンビニで売ってるような作り
9月
- このころからUnityがブレイク
- Unityによる3Dゲーム開発入門、Unity入門、Unityマスターブック、Unityではじめるゲーム作り
- vimテクニックバイブル
- ついにvimの本が出る、という前評判
- よくわかるiPhoneアプリ開発の教科書 Xcode4対応
- リアルタイムOSから出発して組み込みソフトエンジニアを極める(ランク外)
- 前に出た本を出し直した
- Cooking for Geeks
- コンピュータ書じゃないw
- (矢野)1章が「Hello Kitchen」w
- 朝日新聞で山形浩夫氏の書評、料理雑誌でも
- パーフェクトJavaScript
- 打倒サイ本ぐらいの位置づけ?
- (高橋)サイ本の最新版は日本版が出てない
- (矢野)さらに厚く。jQueryも
- (高橋)こちらの本はサーバーサイドも
- 実践JS サーバサイドJavaScript入門
- エバンジェリスト養成講座
- MSの人
- プレゼンのサンプルがみなMS製品w
- 「画面が汚い」->「画面が美しくない」という言い換えなども
10月
- WEB+DB PRESS総集編
- (稲尾)4年ぶりの総集編
- 震災の影響による紙の手配で、表紙が少し黄みがかっている
- ASCII.technologies the complete
- 創刊号からすべて
- ウェブデザインのつくり方、インターフェイスデザインの考え方
- 矢野りん
- FacebookPerfect Gudebook
- 使うがわあ
- ソーシャルゲームはなぜハマるのか、幸せな未来はゲームが作る
- ソーシャルゲーム流行
- パソコンで学ぶ簡単耳コピドリル
- 「音感もいらねえ、楽譜もいらねえ」
11月
- Jenkins実践入門
- (稲尾)W+D PRESSではない編集者が作った2冊目
- W+D PRESS vol.67では川口さんの記事も
- iPhone iPod pOid touch2プログラミングバイブル
- iPhone 4sパーフェクトマニュアル、iPhone 4s完全活用マニュアル
- 4sが出た時期
- ゲームグラフィックス2011、すべてわかる仮想化大全
- 毎年
- やさしいAndroidプログラミング
- このシリーズでAndroid
- Gitによるバージョン管理
- 著者たちが分担して書いた
- (森田)執筆にもGit
- (高橋)一人、チーム、など、実際に使う場合で
- HACKING 美しき策謀 第2版
- (矢野)大幅増
12月
- 言語実装パターン
- (矢野)パーサジェネレータANTLRの人
- まつもとゆきひろ氏序文
- 12月のオライリーでいちばん売れてる
- プロジェクトマネージャが知るべき97のこと
- ゲームプログラマのためのC++
- (杉山)Effective C++の前に
- In The Plex
- S.レヴィがGoogleの中で取材
- テスト駆動JavaScript
- JSのテストまわりが本としてまとまった本はなかった
- 入門ソーシャルデータ
- (矢野)膨大なデータ
- 集合知プログラミングの応用編のような
- RailsによるアジャイルWebアプリケーション開発
- (森田)PDF版もあります
- (高橋)原書は3.0、翻訳は3.1
それ以外
- Steve Jobs
- よく知られているヘンな話が載っている
- よくも悪くも公式的な感じ
- iOSプログラミング 第2版
- Objeective-C 2.0
- エキスパートObjective-Cプログラミング
- 達人出版会 -> 紙
- 大手メーカーが作らないB級iPhoneゲームが売れる50の理由
- 個性的なゲーム
- エッセイ
- 稼げない話をおもしろく
- デジタルゲームの技術
- インタビュー集
- ルールズ・オブ・プレイ上巻
- そもそもゲームとは、という内容
- (杉山)担当いわく、鋭意作っております、と
- 超実録 裏話ファミマガ
- ゲーム雑誌の黎明期
- ゲームメーカーの実名も
- 店にほとんど並んでない。ジュンク堂にもAmazonにも
- キネクトハッカーズマニュアル
- Kinnectプログラミング
- XBeeで作るワイヤレスセンサーネットワーク
- Make系
- (矢野)Arduinoの次はXBeeで無線
- フィジカルコンピューティングを仕事にする
- 各社のケーススタディ
- TAOCP Vol.4 分冊1
- これでVol.4が揃った
- Coders at WorkでTAOCPを読んでるかみんなに聞いている
- オブジェクト指向でなぜつくるのか 改訂版
- なぜか関数型言語も
- 改訂版 文字コード超研究
- 実際に手を動かす
- Unicode最新版も
- Making Software
- 話題になっていないがおもしろい
- ウォーターフォールは悪なのか、など
- エビデンスで答える
- プログラミングGroovy
- 粛々と進化している
- Beautiful Data
- どう集めるか、どう見せるか
- 章ごとに著者
- Scheme修行
- Scheme手習いの続編
- 実践F#関数型プログラミング入門
- 理論面より、実際にやってみる
- C言語入門書の次に読む本 改訂版
- ライブラリとか
- Emacs Lispテクニックバイブル
- プチコン公式活用テクニック
- DS上のBASIC
- プログラミング言語の基礎概念
- ガウディ本やSICPのような
- OCaml
- ジオモバイルプログラミング
- 位置情報
- iPhone、Android
- プログラミングの心理学
- 日経BPから出直した
- ストラウストラップのプログラミング入門
- これだけのボリューム
- Java THe Good Parts、Javaルールブック
- Javaのスタイル
- カラーコレクションハンドブック
- 色補正
- NUK 101
- 「101」=大学の講義のイントロの意
- ビジュアルエフェクト
- ユーザーエクスペリエンスのためのストーリーテリング
- UXをストーリーに注目して解説
- Webデザイン受発注のセオリー
- デザインの発注、というかわった切り口
- デザイニングインターフェース
- (矢野)250p増えた
- スマホ、FBなど
- 徹底解説HTML 5
- 最終ドラフト対応
- ひたすらHTML 5本体のみを解説
- 10日でおぼえるCSS/CSS3入門教室、10日でおぼえるHTML 5入門教室
- 「10日でおぼえる」といっても最近は初心者ではない
- だいたいCSS/HTMLがわかっている人向け
- 1日4レッスンぐらいのペース
- UMLモデリングの本質
- 実例をあげて説明
- 「よいモデルは美しいモデル」と断言
- IAシンキング
- Information Architect向け
- 演習も入っている
- 設計の設計
- 建築寄り
- 建築にアルゴリズム
- なぜかgit
- 建築と情報の接点。越境的
- ユニコード戦記
- ユニコードの中の人
- 国際化、グローバルの中で日本人はどうするか
- 樋浦さんの話も
- 科学の花嫁
- オーガスタ・エイダの伝記と時代
- 情報時代の到来
- 情報とその歴史
- 百科全書
- ビクトリア朝時代のインターネット
- 同じ著者のタークの本も同時期に翻訳
- 電信とインターネットで同じことがおきている
- 携帯少女
- 右ページに萌え絵イラスト、左になつかしの携帯端末
- 同時に楽しめる人はあまりいないか?
- Amazonランキングの謎を解く
- 高橋さんの2011年ベスト
- 確率論の人が、自著のランキングの推移をプロットしてアルゴリズムを推測したら、ぴったりだった
- 在庫もわかる
- ジュンク堂の実名も出てくる
- コンピュータパースペクティブ
- 文庫化
- コンピュータができるまでの歴史の写真
- 自炊のすすめ
- 裁断用の線が入っている
- 一般意志2.0
- 東さんの本はだいたい読んでる(高橋)
- ツッコむより、自分はそこをどう埋めるかを考えるとよい
- サイバー・クライム
- 守る側
- サイバー犯罪捜査入門
- 捜査応用編
- 捜査令状の出すためにおさえること、とか
- 速く正確に読むITエンジニアの英語
- マンガでよみたいWebマーケティング、マンガで読みたいプロジェクトッマネージメント
- ITエンジニアのためのハイプレッシャー下での対応術
- 怒っている人への対応
- アート・オブ・コミュニティ
- コミュニティマネージャー向けの本
- 検索エンジンはなぜ見つけるのか
- Groongaの人
- アルゴリズム
- 情報検索のためのユーザインタフェース
- 同じようなテーマの研究本
- インターネットのカタチ
- インターネットが壊れる、というのはどういうことか、なにが起こるのか
- rsyslog実践ログ管理入門
- Hadoop 第2版
- 実践DNS
- JPRSの人
- DNSSECにも対応
- Sambaのすべて 改訂版
- 800p以上
「日経Linux」2012年2月号
日経BP社 (2012-01-07)
自分の記事はさておき、特集2がディストリビューション特集。いずれも、ディストリビューションそのものの紹介というより、そのディストリビューションで使える“技”の紹介になっていて参考になる。書いているのが、Fedoraが中井悦司氏(「プロのための Linuxシステム構築・運用技術」著者、現レッドハット)、Debianがやまねひでき氏&岩松信洋氏(Debian Project)、Knoppixが須崎有康氏(Knoppix Japanese edition)、Vineが鈴木大輔氏(Project Vine)というのも信頼ポイント。
その中井悦司氏の新連載「初めての“本格”Linuxサーバー構築・運用」も登場。入門知識レベルを超えて実運用サーバーを動かすためのハウツーを、著者が過去にはまったエピソードもまじえて紹介している。第1回は、パーテイション、ネットワークとそのカーネルパラメータ、iptables、サービス、ユーザー、sosreportなどの初期設定。AWSクレジットクーポンの先着500名プレゼントもあるらしい。
特集1はLinuxカーネル入門。中でもPart4で、レッドハットの人とオラクルの人の連名で、それぞれRHELとOracle Linuxのカーネルの独自の部分を解説しているのに驚いた。Part1はユル目のイラストと説明文でカーネルの役割を紹介。Part2はカーネルビルドの方法を解説(make localmodconfigなども)。Part3はQEMNU上でのARM向けカーネルビルド。Part 5は、カーネル2.4から3.2あたりの変化について。
特集3は、Kindle FireをAndroidタブレットとしてカスタマイズする話。adbからのアプリインストール、root取り、逆テザリング、フォント変更、カスタムROMなど。あと、Silkブラウザーって要するにプロキシなのか。
なんと、鳥人間社長が作った“ラピュタの飛行石”の開発レポートも。Arduino+Android+AWSで、国際宇宙ステーションの方向をレーザーポインタで示すもの。これが日経Linuxに載るとは、いい意味で驚いた。
連載マンガ「シス管系女子」は、第6回にしていきなりtmux。Linux入門ではなくサーバー管理者入門と考えると、なるほど。ちなみに後書きによると、screenとかではなかったのは、初期設定(の説明)が不要だからとか。
新連載として「WindowsからLinux完全移行超入門」「Androidで動くWebアプリ開発」「Linuxで旧型PCを復活」がスタート。いっぽう、Linux認証が最終回で、ネタはOpenAMでのエージエント方式のSSO。
特別企画のDart言語の記事(前編)は、EclipseベースのIDE「DartEditor」を使ったプログラミングについて。
ほか、Linuxカーネルの新機能の連載が、サードパーティモジュールを警告するTAINT_OOT_MODULEなどのフラグ。アジア連載がシリコンバレーで起業して帰ってきた日本のエンジニアの体験談。美女Linux連載がtouchとrm。OSS-DB試験連載が、バックアップと統計情報。LPIC連載がセキュリティまわりの機能。トラブルシューティング連載が、NICドライバの話と、GRUBでカーネルを選ぶ話。
Webページ中の短縮URLをまとめて多段展開するブックマークレット
Webブラウザが開いているページ中にある短縮URLを、まとめて多段展開するブックマークレットを作りました。短縮URL展開Web APIのnagainoを呼び出してるだけなんですが。
ブックマークレットのインストールはnagainoのTools and Examplesのページから。
Firefox、Chrome、Chromium、Safariで動作を確認。XMLHttpRequest Level 2を使っているので、現在のIEやOperaでは動作しないと思います。いずれにしても、まだ人柱クオリティではあります。
展開対象は、a hrefなリンクと、そのテキストノードです。地のテキスト中のURLは展開しません。
「WEB+DB PRESS」vol.66
技術評論社
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特集1「HTML構造化指南」は、HTMLでいかに論理構造を表現してそれをCSSでレイアウトしていくかを、典型的なパターンに絞ってさくっと解説していて、ためになる。「なんでもdivにする“div病”」とか、「トルツメされる要素にはfloat、トルママになる要素にはposition: absolute;」とか、パンくずリストは意味的にolだとか。
特集3はクックパッドの開発関連について。クックパッドならではの画像サーバーの工夫とか、テストとCI(継続的インテグレーション)で品質を保つとか、新機能を疎結合で追加して特定のユーザーだけ見せる仕組みとか、スマートフォン対応とか、いろいろな分野の工夫を紹介していた。それと同時に、「Goodはやらない、Bestに集中する」という判断基準とか、営業などほとんどの部門で意思決定にエンジニアをまじえるという体制などの話も興味深い。
CIといえば注目されているようで、JavaScript連載とPHP連載もCIの話だった。
特集2は「きっちりわかるアルゴリズム」として、文字列検索(BM法とか)、圧縮アルゴリズム(ハフマン圧縮とか)、レコメンドアルゴリズムをそれぞれワンポイントで紹介。入り口としての紹介なので、簡潔な紹介にとどめて、興味を持ったら文献で学ぶような作りになっている。
SQL連載は、SQLは進化しているから最近の機能を使うべし、という話。とはいえ、CTEとかMySQLでは使えないし…。
DB関連では、サイバーエージェント連載では、MongoDBを導入したときに注意した点やハマった点などを語っていた。分散KVS okuyama連載は、ストレージの種類と特性、チューニングについて。
Perl連載は特別編で、YAPC::Asia会場の一角で公開座談会をやった模様を収録。Java連載は、スレッドセーフのためのさまざまなパターンや、並行コレクションについて。Ruby連載はBundler。RubyGemsライブラリを作るのにも使えるのか。スマートフォン連載はPhoneGap。.NET連載は、Entity Frameworkでのデータベースをコードで定義するコードファースト開発。mixi連載は、mixiページアプリの開発。
修正2012.1.6:誤記修正「CTL」→「CTE」
「Software Design」2012年1月号
技術評論社 (2011-12-17)
インタビュー連載「Software Designers」の今回は、「Angelgeek: 20代のエンジェル投資家たち」でもとりあげられた、WordPress創始者のMatthew Mullenweg。主に、オープンソースモデルについて。
特集1がひさしぶりに正面から開発系と思ったら、「Android受託開発の奥義」というあえて泥臭い切り口。W+Dとの立ち位置の差別化なのか。序章は受託哀歌のような内幕話だけど、あとは「急の仕様変更にも対応できるAndroidアプリ開発」のノウハウを、マルチデバイス、WebView、アップデート、Titanium Mobileなどごとに紹介。
特集2は無線LANの設置。家庭でもアクセスポイントが何もせずに立っているのだけど、仕事場できちんと速度を出すように構成するにはいろいろ考えるべき点があるのだと思わされる。
単発記事で、11月にあったさくらインターネットの石狩データセンターの開所イベントを、「小悪魔女子大生」ことaicoさんが絵でレポート。ゆるい雰囲気ながら、うまくネタをおさえてる。ほか、単発記事で、iOS 5のiCloudや通知センターなど新機能解説の記事も。
新連載で、USP研究所の人による「開眼シェルスクリプト」が登場。パイプやテンポラリファイルを使って、データの集まりを順次処理していく話。細かいところだけど、行末に“|”を置いてコマンドを縦に並べる書き方が面白かった。一方、アメーバの自作インフラ連載が最終回で、自作ストレージサーバーのためのRAIDの設定やファイルシステム、I/Oスケジューラなど。
その他、OpenFlow連載はテストファーストでコントローラを開発する話。Ubuntu連載はライブCDを作る話。Emacs連載は、PythonでEmacsのライブラリを作る話。はんだづけカフェ連載はドットマトリックスLEDの裏にArduinoを収めるDotsduino。Objective-CはARC(自動参照カウント)のメモリ管理。iPhone連載はOpenGLのフレームワークGLKit。Android連載がADK。Hack for Japan連載は、原発情報と風向きをマッシュアッププするプロジェクト。mixi連載は、Android用のmixi SDK。
「ケヴィン・ケリー著作選集1」
今年の読書初めは本書だった。元日にごろごろしながらKindleで読んでたのだけど。
ケヴィン・ケリーは「Wired」の初代編集主幹。その前に「Whole Earth Review」の編集者もしていたということで、その系統のバックボーンを持っている。と、以上、yomoyomo氏による本書序文からのウケウリ。その序文でも書かれているように、好敵手であり悲観主義者であるニコラス・カーと好対照なポジティブっぷりが特徴。
すでに多くのところで紹介されているように、断片的な各章は「“巨大なコピー機”であるインターネット上でいかにコンテンツに価値を持たせるか」と「テクノロジーの未来」が2本の柱になっている。特に前者に属する、「千人の忠実なファン」では、ショートヘッドを狙わず、ロングテールの消耗戦にも巻き込まれず、その間で“千人の忠実なファン”を相手にビジネスする、というモデルが語られる。このへん、日本のWiredをやっていた“こばへん”さんの「新世紀メディア論-新聞・雑誌が死ぬ前に」あたりはモロに影響を受けてると思う。ほかの章で語られる(広義の)編集の価値とかも。
ポジティブっぷりは、「千人の忠実なファン」の続編でむしろ発揮。“千人の忠実なファン”がうまくいっている例を募集し、反例ばかり集まるのをあっけらかんと公開しつつ、自説を信じて募集を続ける。現在では確立している人もあると思うけど。ちなみに、自身の体験を語ったミュージシャンからの、ファンこそが難しい要因だ、という証言が興味深かった。
後者のテクノロジー論では、1つの技術はさまざなまな技術からできているので、新しい技術がぱっと出てくるように見えるのは要素技術が揃ったとき、という話なども面白かった。
すごく細かいところでいうと、ブログで途中に図を散りばめたタイプの本は、(電子)書籍にしたときにレイアウトが難しいなと。「小悪魔女子大生のサーバエンジニア日記」ではそのへんを編集部ががんばっていた印象があるけど、今後EPUBなどのリフロー形式ではどうなるのか、細けーこたーいいんだよとなるのか、そのへんちょっと興味。
「源平合戦の虚像を剥ぐ」
講談社
売り上げランキング: 61618
源平合戦というと、「貴族化した平氏 vs. 全国の武士を代表する源氏」という図式で伝えられることが多い。頼朝の挙兵とか、富士川の戦いでビビって逃げる平氏とか、義経の活躍とか。で、盛者必衰というまとめに。
本書はそのような「平家物語史観」に対して反論する。そもそも「源平合戦」というのは「治承・寿永の内乱」の一部にすぎず、そのバトルロイヤル状態を勝ち抜いたのが源氏である、という。
また、武士の職能起源論をとり、そうした堂々とした武士像から治承・寿永内乱期に変化した様子を検証。これは平氏も源氏も同様であること、戦い方が変わったことと相互に関連して多くの人が動員され、その戦時体制が鎌倉幕府となったこと、だからこそ武士としての正当性の主張として、その当時でも古い形の武士である「弓馬の道」が鎌倉幕府に推奨されたことなどが論じられる。
このような史観を、一般向けの平易な解説ながら、さまざまな検証をまじえて解説している。上記の本筋以外の部分でも、日本史をよく知らない自分にとってへぇな話がいろいろ続いて面白かった。巻末の解説によると、1996年に刊行された本書が歴史学と国文学に少なからぬ影響を与えたのだとか。
以下、本書からの自分メモ。
- 平家物語史観=源平交替の思想
- 歴史的発展段階として必然視する石母田領主制論から、全国的内乱とする「治承・寿永の内乱」論へ
- 鎌倉幕府は予期せぬ結末
- 軍事的成長をとげた反乱軍がみずからを位置づけていく事態
- 馳射の技術にすぐれていたのは平氏軍
- 富士川合戦では平氏が敗れたものの、1183年初頭までは平氏のほうが優勢
- 駆武者は当時の軍隊の一般的特徴
- 馳組み:今昔物語時代の武士像
- 源平時代の老武者の証言:最近は敵の馬を射たりして組打ちで倒す戦闘が流行してきたことの嘆き
- 相撲、馬当て
- 平安後期:芸能者の一類としての武士
- 武士成立について、在地領主の武装化説への疑問
- 9世紀の狩猟民からの精兵組織 → 類党、説
- 武士は都の貴族社会で発展した説
- 大鎧:近衛次将の装備から発展したものと推定
- 合せ弓:宮廷の儀式で出現
- 騎射:貴族社会の伝統
- 馳組みは至近距離、馬術が大きな比重
- 源平時代:馬を走らせないで弓を引く形態に
- 那須与一
- 掻楯
- 同時多発だった治承・寿永の内乱
- 源平合戦はその一部にすぎない
- 数千・数万規模の軍勢に飛躍的増加
- 農耕馬に乗って出陣するような「器量に堪えうる輩」=小名階層の出現
- 戦闘様式の変化
- 鎌倉幕府が馳射を奨励したのは、それが軽視されていた武装集団を都の伝統を受けつぐ武士に仕立て上げる政治的努力、とする説
- 治承・寿永内乱期の「城塞」=バリケード
- 馬が越えられないようにする
- 石弓
- 戦闘員の拡大による徒歩立ちの軍勢を優位にする
- 決戦の場ではなく、包囲はしても攻城線は避け交渉で開城させるのが基本形態だった、とする説
- 大規模な工事をともなう「城郭」の例も:阿津賀志山二重堀
- 平氏の杣工の大量動員
- 工兵隊
- 兵站指揮官としての梶原景時
- 民衆動員と勧農政策
- 大飢饉
- 兵糧調達:国平均賦課、有徳役、路次追捕(掠奪)
- 夫兵:補給部隊
- 戦場に動員された村人が路次地域の資材を掠奪する事態
- 人取り
- 民衆が資材を守る方法
- 寺社に資材を預ける
- 梶原景時の勝尾寺襲撃
- 頼朝が挙兵したときには、義朝の武士団の多くは平氏軍下にあった
- 「(平家の)恩こそ主」
- 頼朝、武士一人一人を呼んで「汝を恃む」
- 平氏軍政から疎外された東国武士の危機感が頼朝挙兵に
- 路次にあたる国々宿々で国々の輩を動員
- 御家人制:軍事動員の中で形成
- 主人を替えるのはあたりまえの時代
- 文治勅許
- 義経・行家追討のため地頭職の設置を認める、というかつての通説
- 石母田氏、国地頭職の発見
- 川合説:再設置された
- 敵方所領没収=地頭制度
- 占領の継続化
- 平氏は朝廷体制下にあったので敵方所領を自ら家人に与えられなかったが、鎌倉方は反乱軍なので与えられた
- 戦時体制の没官刑システムが朝廷に追認された鎌倉幕府
- 奥州合戦の翌年からの諸政策:朝廷接近政策と御家人政策
- 武家の棟梁として主従関係を設定しなおす
- 奥州合戦は治承・寿永の内乱の頼朝による延長
- はじめて頼朝自身が出陣
- かつて敵方中枢にいて囚人とされていた武士までを動員し、失地回復のチャンスに
- 有力御家人でも不参は所領没収
- 義経反乱以前に計画されていた
- 挙兵時には、源氏の間で「一門更に勝劣なし」
- 頼朝が貴種性を確立するための政策へ
- 藤原泰衡追討:前九年合戦の再現