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あつじ屋日記
まんが家・山本貴嗣(やまもとあつじ)の日記です。 作品から日々思うことまで色々書いてます。
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マンガのアドバイス
 マンガの講師もしている友人のマンガ家に頼まれて先日、あるマンガ家志望の若い方(まだ二十代)の原稿を見させていただきました。
 まだ描きはじめて2~3年の方で、デッサンとかパースとかは全然未熟だし、見せ方も問題だらけでしたが

 いい。

 キャラが魅力的で目ぢからがあります。
 核がなければ真珠も育ちませんが、才能の核のないところに、努力は無意味です。
 元手もなければ利子もつかない。

 その方には才能と、見せたいものの輝きがありました。

 マンガ家には、大きく分けて2タイプあります。
 描きたいもの、訴えたいものが内にあり、吹きこぼれてくるそれらを描かずにはいられないタイプ。
 そんなものは別にないけど、読者の求めるものを敏感に感じ取り、それに応じて作品を作り出せる頭のいい器用なタイプ。

 私のお会いした方は前者のようにお見受けしました。
 友人も、数年間見てきた教え子の中で、類例のないタイプと言っていましたが
 そうだろうと思います。そうそう、ころがってはいない。
 けしてメジャー王道のタイプではないけれど、化けると化けるかもしれない。野に埋もれさせるのは惜しい人です。

 喫茶店でお会いして一時間くらい話して、その後場所を変えて、メシを食いながら3時間くらい、計4時間くらい原稿を拝見しながらお話ししました。
 その場のコトバだけではご理解いただけないだろうと、コピーをいただいて帰宅。
 数ページに渡って私ならこう描くという作例と、十数ページの改訂版コンテ(いずれもパソコンでその方の絵と私の絵を切り貼りして作成)を3日がかりくらいで作って、お送りしました。

 あくまで、私の限られた知識と知性を基にした私の意見であり、ご自身が納得いかなければ、何一つ受け入れられる必要はありませんと、前置きしておきました。
 せっかく相談に乗ったのにアドバイスを無視されたとか言って気を悪くするのは、相手に良かれではなく、ただの自己チュー、自己満足です。
 人は自分の納得いく道を歩むべきであり、犯罪などの特殊なケースを除いて、誰も干渉する権利はありません。
 今回のアドバイスも、意見を求められたからであって、こちらから、余計なおせっかいで口を出す気はありません。

 まあ、何も受け入れるものがなかったとすれば、相手の方には時間の無駄だったかもですが(笑
 私には十分得るものがありました。


 人様の原稿の問題点を目にして、おのが作品を振り返るとき、果たして自分は常にそれをクリアしてきたか。
 同じ過ちを犯した作品がなかったか(あります)。
 自分はこの人のこの作品、いや、この登場人物と比べて、読者の胸に訴えるだけの輝きを持つ人物を描いているか。
 この熱、この想いを持っているかetc・・・
 他者への剣は己への剣であり、他者へ差し伸べる手は、己に差し伸べる手です。
 親子ほども歳の離れたアマチュアの方の原稿と、真剣に向かい合うことで、私は多くのことを気づかせていただきました。
 お会いする前から、そういう展開はある程度想像していたのですが、予想を超えたインパクトがありました。

 たまたま、連載の合間であり、単行本の直しが終わって一息ついていたところでもあり、私に余裕があったからできたことですが、種のない畑に水は撒かないように、私がそれだけマジになるものを、お持ちの方だったということです。 
 これっきりのご縁なのか、まだまだ続くご縁かは、相手の方のお気持ち次第ですが
 とてもいいものを見せていただきました。
 友人にも、その方にも、すべてに感謝しています♪
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