先日の日記「なぜマンガを描くのか(お客様の質問にお答えして)」に補足です。
mixiでも同じ記事をアップしたんですが、そこで同業の方からいただいたご意見を少しまとめてみました。
まず
<マンガには、何重もの「達成感」があるからでしょう>
とのご意見。
まず作品のストーリイ(主人公が苦難を乗り切って成功するとかサバイバルするとか)そのものの
「劇中の達成感」
があり、
作者としては、そのお話を思いついたときの達成感
原稿を描くときの達成感(「お、この表情いいじゃん」とか「このアクション迫力あっていいじゃん」とか「以前は描けなかった難しい構図が描けるようになったぞ!」とか)
描き上がって、原稿を編集さんに渡したときの達成感。
雑誌やら、本になったときの達成感。
読者に喜んでもらったときの達成感。
売れて、儲かれば、そこで「金銭面での達成感」
etc・・・。
<漫画は、ほとんどの作業を一人でやろうと思えば出来ますから・・・
普通の職業にはない、「何重もの達成感」があると思います>
だから、やめられないんじゃないでしょうか?とのコメントをいただきました。
確かに執筆中はそれぞれの段階での苦労もある代わり達成感もあって、金になったかどうかというのは、あくまで結果であり、そんなこと関係なく途中途中の喜びがあります。
以前も書いたかと思いますが、原稿料や印税というのはあくまで結果であって、描いている最中に、いちいち
「このページでいくら儲かった」
とか
「この1コマで何円の利益」
とか、考えながら描いているマンガ家というのは、そういないのではないでしょうか(少なくとも私は聞いたことがありません。例外的に考えられるのは、生活のためすごく不本意なやりたくない作品を描かざるをえない作家が、そうでも思わないと仕事する気になれなくて、「こんなに嫌だけど、これ描いてナンボ」とわが身を励ますために考える、という状況でしょうか?)。
普通は、しんどくて、儲からなきゃ、そんな仕事はやめます。
<漫画の場合は・・・
「何重もの達成感」があるから、そして、
しんどいぶんだけ、達成感に酔いしれるから。
いつまでもやめられないんだと思います。
「ウケた時の達成感」「金銭面での達成感」「社会的評価の達成感」なんか、
最後の最後のモノなので・・・案外、どうでもよかったりする>
<でも、こういう「達成感」は、それなりにマジメに漫画に取り組まないと
得られません>
確かにおっしゃるとおりです。
真剣さの欠如は、「報酬」もそれなりなのだと思います(笑)。
ただ、マンガ以外のお仕事でも、程度は違っても、それぞれに段階ごとの達成感はあるのではないでしょうか。
無論ピンキリで、本当に給料以外なんの喜びも感じられない苦行のようなお仕事というのもあるのでしょう。
私はマンガ以外の仕事というのは、ほとんど学生時代ソバ屋のアルバイトとかいった、ごく限られたものしか知りませんので、その辺の実情は人づてに聞くしかないのです。
こういう点は、一度会社勤めや一般的な職業を経験されてから、マンガ家になられた方の経験にかなわないところです。
言うなれば「世間知らずの箱入りマンガ家」でしょうか(笑
それから
<(自分は)何かの目的があって、その手段として漫画を描くのでなく、
漫画を描くのが目的で、描き続ける手段としてプロになりました>
とのご意見。
<漫画家志望の人にときどき
「プロの漫画家になるにはどうすればよいか・・・?」
という質問をされますが、これは私的には答えようがない問題
だったりします。
なんせ、プロの漫画家というのは、そうでない人からは目標だったり
夢だったり目的のように思えるのかもしれませんが、
私が出会った限りの作家さん達は、自分が描きたい漫画を描くために
漫画家という職業を手段にしているにすぎないのです>
ああ、そう言えば私もそうですね。
私は幼い頃からマンガ家を目指し、19才でデビューして一直線にその夢をかなえました。
しかし、その後のマンガ家人生は色々と苦難の連続でした。
オレの夢はマンガ家になること以外何もかなえられない人生なのかと絶望したものでした。
しかしそれは勘違いでした。
マンガ家になるというのは、あくまで自分がマンガを描いて暮らすための方便とか象徴のようなものです。
極端な話、私がドラマに出てくるような大富豪の息子で、なんの労働も無く暮らせる資産家であれば、別にプロにならなくても日々好きなマンガを描いて暮らせばいいわけです。ただその場合、自己満足の退屈な作品の繰り返しになる可能性が大ですが(笑)、もっとも今でもお口に会わない読者の方にとっては同じことかもしれません(爆)。
何かの大会、コンテストで優勝するとかいう夢なら、一度かなえれば終わりですが
マンガ家になるというのは、一度なって終わりという夢ではなく
マンガ家であり続けるという夢です。
と言うことはつまり、30年以上に渡ってマンガで飯を食い続けてこられた自分は、若い頃一度夢をかなえて思い出に生きている存在などではなく、それからずっと今日まで
「日々夢をかなえ続けてきた」
人生だということです。
先に「なぜマンガを描くのですか」というお尋ねをくださった方から、私の夢についての質問もいただき、もっかまとめている最中なのですが
その回答の一つはこれです。
私が独力でなしえた何か、などと言うものは人生にほとんど存在しません。
それは、たなびく鯉のぼりが自力でたなびいていると言うのに等しい話です(笑)。
鯉のぼりなくしては、何もたなびきようがありませんが、たなびかせている風は鯉のぼりのものではありません。
きょうまで私をあらしめてくださった読者の方々と編集者の方々、その他有形無形のお力添えをいただいたすべてに、心より感謝いたします。本当に本当にありがとうございました。
これからもどうぞよしなに♪
mixiでも同じ記事をアップしたんですが、そこで同業の方からいただいたご意見を少しまとめてみました。
まず
<マンガには、何重もの「達成感」があるからでしょう>
とのご意見。
まず作品のストーリイ(主人公が苦難を乗り切って成功するとかサバイバルするとか)そのものの
「劇中の達成感」
があり、
作者としては、そのお話を思いついたときの達成感
原稿を描くときの達成感(「お、この表情いいじゃん」とか「このアクション迫力あっていいじゃん」とか「以前は描けなかった難しい構図が描けるようになったぞ!」とか)
描き上がって、原稿を編集さんに渡したときの達成感。
雑誌やら、本になったときの達成感。
読者に喜んでもらったときの達成感。
売れて、儲かれば、そこで「金銭面での達成感」
etc・・・。
<漫画は、ほとんどの作業を一人でやろうと思えば出来ますから・・・
普通の職業にはない、「何重もの達成感」があると思います>
だから、やめられないんじゃないでしょうか?とのコメントをいただきました。
確かに執筆中はそれぞれの段階での苦労もある代わり達成感もあって、金になったかどうかというのは、あくまで結果であり、そんなこと関係なく途中途中の喜びがあります。
以前も書いたかと思いますが、原稿料や印税というのはあくまで結果であって、描いている最中に、いちいち
「このページでいくら儲かった」
とか
「この1コマで何円の利益」
とか、考えながら描いているマンガ家というのは、そういないのではないでしょうか(少なくとも私は聞いたことがありません。例外的に考えられるのは、生活のためすごく不本意なやりたくない作品を描かざるをえない作家が、そうでも思わないと仕事する気になれなくて、「こんなに嫌だけど、これ描いてナンボ」とわが身を励ますために考える、という状況でしょうか?)。
普通は、しんどくて、儲からなきゃ、そんな仕事はやめます。
<漫画の場合は・・・
「何重もの達成感」があるから、そして、
しんどいぶんだけ、達成感に酔いしれるから。
いつまでもやめられないんだと思います。
「ウケた時の達成感」「金銭面での達成感」「社会的評価の達成感」なんか、
最後の最後のモノなので・・・案外、どうでもよかったりする>
<でも、こういう「達成感」は、それなりにマジメに漫画に取り組まないと
得られません>
確かにおっしゃるとおりです。
真剣さの欠如は、「報酬」もそれなりなのだと思います(笑)。
ただ、マンガ以外のお仕事でも、程度は違っても、それぞれに段階ごとの達成感はあるのではないでしょうか。
無論ピンキリで、本当に給料以外なんの喜びも感じられない苦行のようなお仕事というのもあるのでしょう。
私はマンガ以外の仕事というのは、ほとんど学生時代ソバ屋のアルバイトとかいった、ごく限られたものしか知りませんので、その辺の実情は人づてに聞くしかないのです。
こういう点は、一度会社勤めや一般的な職業を経験されてから、マンガ家になられた方の経験にかなわないところです。
言うなれば「世間知らずの箱入りマンガ家」でしょうか(笑
それから
<(自分は)何かの目的があって、その手段として漫画を描くのでなく、
漫画を描くのが目的で、描き続ける手段としてプロになりました>
とのご意見。
<漫画家志望の人にときどき
「プロの漫画家になるにはどうすればよいか・・・?」
という質問をされますが、これは私的には答えようがない問題
だったりします。
なんせ、プロの漫画家というのは、そうでない人からは目標だったり
夢だったり目的のように思えるのかもしれませんが、
私が出会った限りの作家さん達は、自分が描きたい漫画を描くために
漫画家という職業を手段にしているにすぎないのです>
ああ、そう言えば私もそうですね。
私は幼い頃からマンガ家を目指し、19才でデビューして一直線にその夢をかなえました。
しかし、その後のマンガ家人生は色々と苦難の連続でした。
オレの夢はマンガ家になること以外何もかなえられない人生なのかと絶望したものでした。
しかしそれは勘違いでした。
マンガ家になるというのは、あくまで自分がマンガを描いて暮らすための方便とか象徴のようなものです。
極端な話、私がドラマに出てくるような大富豪の息子で、なんの労働も無く暮らせる資産家であれば、別にプロにならなくても日々好きなマンガを描いて暮らせばいいわけです。ただその場合、自己満足の退屈な作品の繰り返しになる可能性が大ですが(笑)、もっとも今でもお口に会わない読者の方にとっては同じことかもしれません(爆)。
何かの大会、コンテストで優勝するとかいう夢なら、一度かなえれば終わりですが
マンガ家になるというのは、一度なって終わりという夢ではなく
マンガ家であり続けるという夢です。
と言うことはつまり、30年以上に渡ってマンガで飯を食い続けてこられた自分は、若い頃一度夢をかなえて思い出に生きている存在などではなく、それからずっと今日まで
「日々夢をかなえ続けてきた」
人生だということです。
先に「なぜマンガを描くのですか」というお尋ねをくださった方から、私の夢についての質問もいただき、もっかまとめている最中なのですが
その回答の一つはこれです。
私が独力でなしえた何か、などと言うものは人生にほとんど存在しません。
それは、たなびく鯉のぼりが自力でたなびいていると言うのに等しい話です(笑)。
鯉のぼりなくしては、何もたなびきようがありませんが、たなびかせている風は鯉のぼりのものではありません。
きょうまで私をあらしめてくださった読者の方々と編集者の方々、その他有形無形のお力添えをいただいたすべてに、心より感謝いたします。本当に本当にありがとうございました。
これからもどうぞよしなに♪
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