以前日記で『風の隼人』の西田敏行さんがいいと書きましたが
以後もずっと見てますが、西田さんだけじゃなく、このドラマ自体素晴らしい。
そもそもはNHKで1979年に放映されたもので、原作は直木三十五が昭和の始めに新聞に連載した小説『南国太平記』です。
「お由羅騒動」と呼ばれた薩摩藩のお家騒動にからむ、呪術と剣戟、スパイ活動をからめた娯楽小説なんですが、私は原作は未読です。
しかし現在、時代劇専門チャンネルで再放映中のこのドラマ
とにかく見ていて気持ちが良い!
出てくる連中が清清しい。
最近のドラマにはない深みのある人情があり、敵も味方も好感が持てます。
なんでかなーと思ってましたが、つまが
「こんなEQの高い人ばっか出てくるドラマは近頃ねえよ」
と笑ってて、おお、と膝を打ちました。
実際、皆さんそうなんですよね。
たとえば、主人公、仙波小太郎(勝野洋)は島津斉彬の命を受け、斉彬の子を呪殺した牧仲太郎暗殺を狙うのですが、その過程で、小太郎の仲間の侍たちが牧と同じサイドの家老、調所(ずしょ)笑左衛門襲撃を企ているのを見、それはかえって敵方の悪行を暴く生き証人を消すことになって敵方を利することになると止めに入ります。
詳しい事情を知らず
きさま裏切るのか?
などと色めき立つ仲間たち。
結局その場は襲撃を阻止して終わるんですが
最近のドラマのパターンだと、これで仲間たちが敵に回って、主人公を延々付け狙ったりするんですよね。
もうそういうのはウンザリで
人の話を聞けない頭の悪い人というのは、どこにもいますが、そういう人ばかり出てくる作品はげっそりなんです。
で、『風の隼人』はどうかと言いますと
今日は久しぶりに、主人公がその時の仲間たちと会う下りがあるんですが
すでに仲間たちは事情を飲み込んでいて
「あの時は止めてくれて良かったと思っている」
みたいなことを言って、もうそれ以上追求しない。
それとは別に、新たな陰謀があったりもしますが、そこで無駄にもめて時間稼ぎしたりしないのがいい。
そういう感覚が全編に満ちています。
主人公の妹が旅の空で困り果てているのを、偶然、敵方の家老、調所が拾って、お互いの素性も知らず面倒を見た上、路銀まで与えて分かれます。
共の者が
「なぜ見ず知らずの女子にあのように?」
と問うと、家老は
「功徳じゃ」
なんだか、物語はかくありたいなあと思うものがあって、今の創作者が忘れている大切なものを思い出させてくれます。
そもそも、薄汚い悪党がほとんど出てこないんですよね。
便宜上敵味方はいますが、双方それぞれの信念に従って戦っている。
例えて言うなら、高潔な右翼と高潔な左翼(ちょっとオーバーですが、ニュアンスお察しください)が諜報合戦をしてるような世界で、一人ひとりは好感の持てる人物がいっぱい。
どれだけ露悪でどれだけ外道かを競うような、自分らしくあることと偽悪を混同しているような、ある種のドラマとは真逆を行っている作品世界。
自分が進むべき道を示されているような気がして、毎日の放映時間が楽しみなのでした♪
追記
島津斉彬の子を呪殺した牧仲太郎暗殺を狙う主人公、仙波小太郎は仲間の侍たちに乗せられ、斉彬と敵対する斉彬の父の側室お由羅を狙撃。
負傷するも一命を取り留めたお由羅。
回復したお由羅が牧を相手に語ります。
自分はこれまで二度も、あの仙波一家の者に命を奪われかけた。
しかし、なぜか彼ら彼女らを恨む気にはなれない。
むしろ憐れにさえ思う。
彼らも藩を放逐される前は善良な人々だったのでしょう。
私はむしろ、彼らにあのような過酷な(牧仲太郎暗殺)使命を課した斉彬さまを憎む、と。
対する牧(主人公に何度か殺されかけている)も
自分もそのように思いもす、と答えます。
ああ、いいなあ、こういう適役。
反射だけで生きてて、ただ盲目的に敵を憎む薄っぺらなキャラと違って
人間の厚みを感じます。
こういう人、いないとこにはいないけど、いるとこにはいっぱいいます。
もっとこういうキャラを自分の作品でも登場させたいなあと思います♪
以後もずっと見てますが、西田さんだけじゃなく、このドラマ自体素晴らしい。
そもそもはNHKで1979年に放映されたもので、原作は直木三十五が昭和の始めに新聞に連載した小説『南国太平記』です。
「お由羅騒動」と呼ばれた薩摩藩のお家騒動にからむ、呪術と剣戟、スパイ活動をからめた娯楽小説なんですが、私は原作は未読です。
しかし現在、時代劇専門チャンネルで再放映中のこのドラマ
とにかく見ていて気持ちが良い!
出てくる連中が清清しい。
最近のドラマにはない深みのある人情があり、敵も味方も好感が持てます。
なんでかなーと思ってましたが、つまが
「こんなEQの高い人ばっか出てくるドラマは近頃ねえよ」
と笑ってて、おお、と膝を打ちました。
実際、皆さんそうなんですよね。
たとえば、主人公、仙波小太郎(勝野洋)は島津斉彬の命を受け、斉彬の子を呪殺した牧仲太郎暗殺を狙うのですが、その過程で、小太郎の仲間の侍たちが牧と同じサイドの家老、調所(ずしょ)笑左衛門襲撃を企ているのを見、それはかえって敵方の悪行を暴く生き証人を消すことになって敵方を利することになると止めに入ります。
詳しい事情を知らず
きさま裏切るのか?
などと色めき立つ仲間たち。
結局その場は襲撃を阻止して終わるんですが
最近のドラマのパターンだと、これで仲間たちが敵に回って、主人公を延々付け狙ったりするんですよね。
もうそういうのはウンザリで
人の話を聞けない頭の悪い人というのは、どこにもいますが、そういう人ばかり出てくる作品はげっそりなんです。
で、『風の隼人』はどうかと言いますと
今日は久しぶりに、主人公がその時の仲間たちと会う下りがあるんですが
すでに仲間たちは事情を飲み込んでいて
「あの時は止めてくれて良かったと思っている」
みたいなことを言って、もうそれ以上追求しない。
それとは別に、新たな陰謀があったりもしますが、そこで無駄にもめて時間稼ぎしたりしないのがいい。
そういう感覚が全編に満ちています。
主人公の妹が旅の空で困り果てているのを、偶然、敵方の家老、調所が拾って、お互いの素性も知らず面倒を見た上、路銀まで与えて分かれます。
共の者が
「なぜ見ず知らずの女子にあのように?」
と問うと、家老は
「功徳じゃ」
なんだか、物語はかくありたいなあと思うものがあって、今の創作者が忘れている大切なものを思い出させてくれます。
そもそも、薄汚い悪党がほとんど出てこないんですよね。
便宜上敵味方はいますが、双方それぞれの信念に従って戦っている。
例えて言うなら、高潔な右翼と高潔な左翼(ちょっとオーバーですが、ニュアンスお察しください)が諜報合戦をしてるような世界で、一人ひとりは好感の持てる人物がいっぱい。
どれだけ露悪でどれだけ外道かを競うような、自分らしくあることと偽悪を混同しているような、ある種のドラマとは真逆を行っている作品世界。
自分が進むべき道を示されているような気がして、毎日の放映時間が楽しみなのでした♪
追記
島津斉彬の子を呪殺した牧仲太郎暗殺を狙う主人公、仙波小太郎は仲間の侍たちに乗せられ、斉彬と敵対する斉彬の父の側室お由羅を狙撃。
負傷するも一命を取り留めたお由羅。
回復したお由羅が牧を相手に語ります。
自分はこれまで二度も、あの仙波一家の者に命を奪われかけた。
しかし、なぜか彼ら彼女らを恨む気にはなれない。
むしろ憐れにさえ思う。
彼らも藩を放逐される前は善良な人々だったのでしょう。
私はむしろ、彼らにあのような過酷な(牧仲太郎暗殺)使命を課した斉彬さまを憎む、と。
対する牧(主人公に何度か殺されかけている)も
自分もそのように思いもす、と答えます。
ああ、いいなあ、こういう適役。
反射だけで生きてて、ただ盲目的に敵を憎む薄っぺらなキャラと違って
人間の厚みを感じます。
こういう人、いないとこにはいないけど、いるとこにはいっぱいいます。
もっとこういうキャラを自分の作品でも登場させたいなあと思います♪
この記事へのコメント
リアルタイムで見てましたよ。DVDでたら絶対買いたいくらい。
山本さんの文にはうんうんと納得しますが、付け加えるなら仙波一家の運命、幸せな一家が時代の波に飲み込まれながらも、幸せに一家揃って暮らせる日を夢見ながら、それぞれががんばる姿が好きです。
あと、チャンバラですね。特徴的な「チェストー!」のかけ声と共に繰り出される示現流の一撃。単なるチャンバラではない立ち回り。迫力もさることながら、同じ薩摩藩士同士が志を違う故に、示現流で斬り合う姿は悲しくせつないです。
山本さんの文にはうんうんと納得しますが、付け加えるなら仙波一家の運命、幸せな一家が時代の波に飲み込まれながらも、幸せに一家揃って暮らせる日を夢見ながら、それぞれががんばる姿が好きです。
あと、チャンバラですね。特徴的な「チェストー!」のかけ声と共に繰り出される示現流の一撃。単なるチャンバラではない立ち回り。迫力もさることながら、同じ薩摩藩士同士が志を違う故に、示現流で斬り合う姿は悲しくせつないです。
2008/04/27(日) 00:34:10 | URL | 直木賞 #-[ 編集]
>直木賞さま
コメントありがとうございます。
おっしゃるとおりですね。
ああいう芳醇なドラマ、めったにあるものではないと思います。
仙波一家の運命
ただ一通りの悲劇でもなければ、ただ一通りの予定調和でもない、
この悲喜こもごもが人生だなあと思わせる厚みがあります。
薩摩人ならではの斬り合いをあそこまで描いたテレビドラマも類を見ないのではないでしょうか。
まことにテレビドラマ史上に残る傑作だと思います。
なんだかこうしてお返事を書かせていただきながらも、思い出してせつなくなってまいりました。
コメントありがとうございます。
おっしゃるとおりですね。
ああいう芳醇なドラマ、めったにあるものではないと思います。
仙波一家の運命
ただ一通りの悲劇でもなければ、ただ一通りの予定調和でもない、
この悲喜こもごもが人生だなあと思わせる厚みがあります。
薩摩人ならではの斬り合いをあそこまで描いたテレビドラマも類を見ないのではないでしょうか。
まことにテレビドラマ史上に残る傑作だと思います。
なんだかこうしてお返事を書かせていただきながらも、思い出してせつなくなってまいりました。
2008/04/27(日) 15:39:26 | URL | 貴嗣 #pmWGJPUI[ 編集]
母が原作を読んでいたようで、原作ではああなのよ、こうなのよ、と言いつつ、夏目雅子さんの美しさと八十助、当時の妖しい美しさ、儚い切ない恋情に子供心にも惹かれました。この度、角川文庫から南国太平記上下が出ており、早速読破。でもやっぱり夏目雅子さん、八十助さん、若き西田さん勝野さん、観たいなあ、、と思います。原作も読むのを止められない面白さでした!
2019/06/09(日) 00:19:42 | URL | まるみ #-[ 編集]
>まるみさま
こんな昔の記事にコメントいただき感激です。
ほんとステキなドラマでしたね。私もまた見てみたいです。
ありがとうございました!きょうもよき日をおすごしください♪
こんな昔の記事にコメントいただき感激です。
ほんとステキなドラマでしたね。私もまた見てみたいです。
ありがとうございました!きょうもよき日をおすごしください♪
2019/06/10(月) 06:15:12 | URL | 山本貴嗣 #-[ 編集]
リアルタイムでは見てなかったのですが、作家の桐野作人氏に勧められてDVDを購入致しました。はまってしまい、ほとんど3日間徹夜で28話、全て観賞してしまいました。大河ドラマなどでもたまに先祖が出てきますが、中村伸郎さんの顔もムードも、この作品が1番実像に近いと感じました。
>調所一郎さま
コメントありがとうございます。
ほんと、いいドラマでしたね。また見てみたいです。
今日も良き日をお過ごしください。
コメントありがとうございます。
ほんと、いいドラマでしたね。また見てみたいです。
今日も良き日をお過ごしください。
2019/11/20(水) 01:50:44 | URL | 山本貴嗣 #-[ 編集]
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