漫画編集部の原稿紛失ですが
私も何度か経験があります。
私のサイト「あつじ屋」で以前書きました内容と一部重複しますが、改めて申し上げますと
私が駆け出しのころアシスタントをさせていただいた友人や先輩漫画家さんにも被害者はおいででした。
当時売れっ子の漫画家さんでも、連載漫画の途中の何枚かをなくされてコピーを渡され
「すまないね」
で済まされたという話も聞きました(その雑誌社のドル箱ですよ)。
私も丸々一話単位でなくされた原稿があります。
あまりに古い作品で、賠償請求もせずにすませました(そういうおまえみたいな奴がいるから、漫画界の体質が変わらないんだ!と言われれば、返す言葉もありません)。
ずいぶん昔の話です。
また、某社から返却されたカラー原稿が何枚も、画面の端が水にぬれてカラーインクが滲んで修復不能というケースもありました(おそらく編集部に保管中に暖房の結露かなにかでやられたと思われます)。
電話を入れると、編集長と担当さんがお詫びに見えられ、いくばくかのお金をいただきました。
誠心誠意謝ってくださいましたし、修復不能と言っても画面の端でしたし、それ以上追い込むつもりもなく、終わりました。
蛇足ですが、私の代表作『エルフ17』(最初の白泉社版のほか、二社から復刻版が出ています)も、途中原稿が何枚が紛失しており、もはや完全な形では残っていません。幸い、フィルムが残っていたので復刻版が出せているのです。これも私は紛失原稿の賠償請求はしませんでした、なくした出版社(どの出版社かは伏せます)にも責任はあるでしょうが、返却を要請せず何年も放置していた私にも責任があると思ったからです。
私が昔聞いた紛失原稿の賠償額の相場は
白黒が原稿料の三倍
カラーが五倍というものでしたから
今回問題となっている編集部の提示額は、おそらくそのライン(業界の常識というのでしょうか)に沿ったものと推察されます。
それが妥当かどうかは、私には判断できません。
私の場合、執筆はどんなときも全力投球で行っていますが(体調や精神状態の良し悪しで出来不出来が変わります)これは自分でも気に入った改心の作というのはめったにありません。
別に手を抜いてるのではなく、限られた時間内で限られたことしかできないのが商業誌の宿命で、もっと手を入れたかったけど仕方ないなあという残念な想いがたいてい残るからです。
しかしたまに、自分でもベストの(その時点での)できだったなあという絵もあり
それが傷つけられたり無くされたら
他の絵とは違ったショックを受けると思います。
それがいったい賠償額とどう結びつくのか、専門知識がないのでわかりません。
業界には色々謎の事件があり
これも10年以上昔のことで記憶があいまいなんですが
ある先生など単行本一冊分の原稿をまるまる無くされ
付き合いのあった誠実で力の在る編集さん(問題の原稿の担当ではない)に相談したところ、少し動きがあったところで
差出人不明でまるまる原稿が送りつけられてきたという話を聞いたこともあります。
作家さんも相談を受けた編集さんも「???」なまま終わった事件でした。
想像ですが、返却を忘れた編集さんか誰かが、バツが悪くて(謝るのも面倒で)無記名で送り返されたのではないかと・・・;
ちなみに
私はここ数年、手描き原稿をスキャンしてパソコンに入れ、フォトショップで仕上げたものを完成稿にしています。
プリントアウトでお渡しする場合とデータでお渡しする場合とありますが(編集部によります)
いずれにしても原稿紛失の問題はもはや発生しません。
ただ、まだまだデジタル導入作家は業界では少数派で、週間連載の作家さんは大半がアナログ手描き原稿ですから、まだ当分は今回のようなトラブルは絶えないものと思われます。
これは私の知り合いの受け売りですが、原稿を受け取った編集部がソッコーでスキャン、データ化して、生原稿をすぐに作家に返却することで、かなりのものが防げるはずです。
業界のデジタル化がいくら進んでも、自分はどうしてもアナログで描くという方はおいででしょうから、早急な対策が望ましいと思うものです。
追記
漫画家のデジタル化を阻む原因が二つあると思われます。
新人さんの場合はお金です。
いわゆる初期投資というやつがかかります。
専門学校で漫画講師をしている友人(複数)の証言だと、やはり生徒さんでデジタル作画を導入している人はまだ少数派だそうです。
うちはメインのパソコンとスキャナ、タブレット(タブレットペン含む)、プリンタでワンセットですが、プロの刑事や殺し屋がバックアップと言って予備の銃を別に持つように、急な故障に備えて予備のマシンをもうワンセットそろえてあります(プロとしての勤めだと思いますので)。
締め切り間際でクラッシュしても即予備システムに切り替えられるのと、格システムを家庭内LANで結び外付けのハードディスクにデータを保存、どのマシンからもアクセス可能なため、原稿をスキャンする際はメインと予備を同時に起動して高速で取り込んでいける強みもあります。
ただ、漫画の原稿はB4サイズが基本であり、それに対応したスキャナとなるとA3しかありません。
私はもっともコストパフォーマンスと信頼性を考慮して推奨するのはEPSONのA3スキャナです。
うちの機種はもう何年か前の旧型機ですが、スキャナ一台で十数万円、追加のパーツで取り込み高速化を計るのにもう数万かかってます。
システムひとセットが数十万となります。
そういうシステムをそろえる資金を、これから漫画家を目指す貧しい学生さんなどが調達するのはかなり大変だと思われます(うちも貧しい漫画家なんで苦労しました)(爆
蛇足を言うと、A3スキャナは巨大で、大変場所をとります。ほとんど机の半分以上(へたすればまるまる一個)を占領します。
これもネックの一つでしょう。
A4サイズのスキャナで1ページを分割して取り込んでPC内で合成してる方もおいでですが、締め切り間際のタイムアタック状態では辛いものがあります。
一方、雑誌でばりばり執筆中の財力に余裕のある漫画家さんの場合は別の問題点があります。
先生もアシスタントさんも、新しい技術を学んでいる暇がないことです。
デジタル対応のシステムを導入したのはいいけど、不慣れでその週の原稿が間に合いませんでしたでは、本末転倒。
出版社のパーティなどで話をすると、えっ?あんな若手で流行の先端っぽい先生が、完全アナログ?みたいなケースにしばしば出会うのですが、そういう理由もあるのではないかと思います。
無論根っからデジタル嫌いアナログが好きという方もおいでで
それはそれでありだと思うものです。
デジタルを導入している漫画家さんの中には、パソコン技術のあるアシスタントさんしか雇わないという方もおいでですし、授業料を払ってアシスタントさんをパソコン講座に通わせる人までいます。
若い方の中には、十代からデジタル専門で、はなからタブレットでしか絵を描かないという方も出て来ていらっしゃいますし
本当に色々な方がおいでです。
私も何度か経験があります。
私のサイト「あつじ屋」で以前書きました内容と一部重複しますが、改めて申し上げますと
私が駆け出しのころアシスタントをさせていただいた友人や先輩漫画家さんにも被害者はおいででした。
当時売れっ子の漫画家さんでも、連載漫画の途中の何枚かをなくされてコピーを渡され
「すまないね」
で済まされたという話も聞きました(その雑誌社のドル箱ですよ)。
私も丸々一話単位でなくされた原稿があります。
あまりに古い作品で、賠償請求もせずにすませました(そういうおまえみたいな奴がいるから、漫画界の体質が変わらないんだ!と言われれば、返す言葉もありません)。
ずいぶん昔の話です。
また、某社から返却されたカラー原稿が何枚も、画面の端が水にぬれてカラーインクが滲んで修復不能というケースもありました(おそらく編集部に保管中に暖房の結露かなにかでやられたと思われます)。
電話を入れると、編集長と担当さんがお詫びに見えられ、いくばくかのお金をいただきました。
誠心誠意謝ってくださいましたし、修復不能と言っても画面の端でしたし、それ以上追い込むつもりもなく、終わりました。
蛇足ですが、私の代表作『エルフ17』(最初の白泉社版のほか、二社から復刻版が出ています)も、途中原稿が何枚が紛失しており、もはや完全な形では残っていません。幸い、フィルムが残っていたので復刻版が出せているのです。これも私は紛失原稿の賠償請求はしませんでした、なくした出版社(どの出版社かは伏せます)にも責任はあるでしょうが、返却を要請せず何年も放置していた私にも責任があると思ったからです。
私が昔聞いた紛失原稿の賠償額の相場は
白黒が原稿料の三倍
カラーが五倍というものでしたから
今回問題となっている編集部の提示額は、おそらくそのライン(業界の常識というのでしょうか)に沿ったものと推察されます。
それが妥当かどうかは、私には判断できません。
私の場合、執筆はどんなときも全力投球で行っていますが(体調や精神状態の良し悪しで出来不出来が変わります)これは自分でも気に入った改心の作というのはめったにありません。
別に手を抜いてるのではなく、限られた時間内で限られたことしかできないのが商業誌の宿命で、もっと手を入れたかったけど仕方ないなあという残念な想いがたいてい残るからです。
しかしたまに、自分でもベストの(その時点での)できだったなあという絵もあり
それが傷つけられたり無くされたら
他の絵とは違ったショックを受けると思います。
それがいったい賠償額とどう結びつくのか、専門知識がないのでわかりません。
業界には色々謎の事件があり
これも10年以上昔のことで記憶があいまいなんですが
ある先生など単行本一冊分の原稿をまるまる無くされ
付き合いのあった誠実で力の在る編集さん(問題の原稿の担当ではない)に相談したところ、少し動きがあったところで
差出人不明でまるまる原稿が送りつけられてきたという話を聞いたこともあります。
作家さんも相談を受けた編集さんも「???」なまま終わった事件でした。
想像ですが、返却を忘れた編集さんか誰かが、バツが悪くて(謝るのも面倒で)無記名で送り返されたのではないかと・・・;
ちなみに
私はここ数年、手描き原稿をスキャンしてパソコンに入れ、フォトショップで仕上げたものを完成稿にしています。
プリントアウトでお渡しする場合とデータでお渡しする場合とありますが(編集部によります)
いずれにしても原稿紛失の問題はもはや発生しません。
ただ、まだまだデジタル導入作家は業界では少数派で、週間連載の作家さんは大半がアナログ手描き原稿ですから、まだ当分は今回のようなトラブルは絶えないものと思われます。
これは私の知り合いの受け売りですが、原稿を受け取った編集部がソッコーでスキャン、データ化して、生原稿をすぐに作家に返却することで、かなりのものが防げるはずです。
業界のデジタル化がいくら進んでも、自分はどうしてもアナログで描くという方はおいででしょうから、早急な対策が望ましいと思うものです。
追記
漫画家のデジタル化を阻む原因が二つあると思われます。
新人さんの場合はお金です。
いわゆる初期投資というやつがかかります。
専門学校で漫画講師をしている友人(複数)の証言だと、やはり生徒さんでデジタル作画を導入している人はまだ少数派だそうです。
うちはメインのパソコンとスキャナ、タブレット(タブレットペン含む)、プリンタでワンセットですが、プロの刑事や殺し屋がバックアップと言って予備の銃を別に持つように、急な故障に備えて予備のマシンをもうワンセットそろえてあります(プロとしての勤めだと思いますので)。
締め切り間際でクラッシュしても即予備システムに切り替えられるのと、格システムを家庭内LANで結び外付けのハードディスクにデータを保存、どのマシンからもアクセス可能なため、原稿をスキャンする際はメインと予備を同時に起動して高速で取り込んでいける強みもあります。
ただ、漫画の原稿はB4サイズが基本であり、それに対応したスキャナとなるとA3しかありません。
私はもっともコストパフォーマンスと信頼性を考慮して推奨するのはEPSONのA3スキャナです。
うちの機種はもう何年か前の旧型機ですが、スキャナ一台で十数万円、追加のパーツで取り込み高速化を計るのにもう数万かかってます。
システムひとセットが数十万となります。
そういうシステムをそろえる資金を、これから漫画家を目指す貧しい学生さんなどが調達するのはかなり大変だと思われます(うちも貧しい漫画家なんで苦労しました)(爆
蛇足を言うと、A3スキャナは巨大で、大変場所をとります。ほとんど机の半分以上(へたすればまるまる一個)を占領します。
これもネックの一つでしょう。
A4サイズのスキャナで1ページを分割して取り込んでPC内で合成してる方もおいでですが、締め切り間際のタイムアタック状態では辛いものがあります。
一方、雑誌でばりばり執筆中の財力に余裕のある漫画家さんの場合は別の問題点があります。
先生もアシスタントさんも、新しい技術を学んでいる暇がないことです。
デジタル対応のシステムを導入したのはいいけど、不慣れでその週の原稿が間に合いませんでしたでは、本末転倒。
出版社のパーティなどで話をすると、えっ?あんな若手で流行の先端っぽい先生が、完全アナログ?みたいなケースにしばしば出会うのですが、そういう理由もあるのではないかと思います。
無論根っからデジタル嫌いアナログが好きという方もおいでで
それはそれでありだと思うものです。
デジタルを導入している漫画家さんの中には、パソコン技術のあるアシスタントさんしか雇わないという方もおいでですし、授業料を払ってアシスタントさんをパソコン講座に通わせる人までいます。
若い方の中には、十代からデジタル専門で、はなからタブレットでしか絵を描かないという方も出て来ていらっしゃいますし
本当に色々な方がおいでです。
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